有価証券報告書-第60期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/26 10:01
【資料】
PDFをみる
【項目】
154項目
(1)【コーポレート・ガバナンスの概要】
1) コーポレート・ガバナンスの内容
① コーポレート・ガバナンスに関する基本的な考え方
当社は、経営の基本方針に沿った事業活動を適切に実行し、経営の公正性を確保するため、コーポレート・ガバナンス体制の強化を経営の重要事項の一つと考え、健全かつ透明性の高いコーポレート・ガバナンス体制を構築しています。
当社のコーポレート・ガバナンス体制の特徴は、以下のとおり4点です。
・指名委員会等設置会社制度を採用(執行と監督の分離)
・指名、監査、報酬の三委員会をすべて社外取締役で構成
・すべての社外取締役が当社の「独立性を有する取締役の要件」を充足
・すべての社外取締役が各分野において高い専門性を保有
② 当該体制を採用する理由と体制強化の歩み
当社は、事業内容を事業環境の変化に迅速に対応させるためには、業務執行の機動性が極めて重要であると考えています。また、それぞれの専門分野における知見を有した社外取締役が、独立した立場から、適宜当社の業務執行の適法性および妥当性についての監督を行うことのできるガバナンス体制は、経営の透明性の向上につながると考えています。これらの考えから、取締役会が高い監督機能を有し、かつ三委員会が実効的なガバナンスの重要な役割を担う「指名委員会等設置会社」制度を採用しています。
さらに、取締役会の内部機関である三委員会(指名・監査・報酬)では、全委員を社外取締役で構成することによって、取締役会による監督機能を業務執行と切り離し、株主との利益相反を回避する体制を構築しています。また、すべての社外取締役が指名委員会において定めた客観的かつ具体的な「独立性を有する取締役の要件」を満たしています。
[体制強化の歩み]
1997年6月 諮問委員会を設置
1998年6月 執行役員制度の導入
1999年6月 社外取締役制度の導入
2003年6月 委員会等設置会社へ移行
2006年5月 会社法施行に伴い委員会設置会社へ移行
2015年5月 改正会社法施行に伴い指名委員会等設置会社へ名称変更
③ コーポレート・ガバナンス体制図
本有価証券報告書提出日現在におけるコーポレート・ガバナンス体制の模式図は、以下のとおりです。
0104010_001.png※ 業務執行体制は「4) オリックスグループの内部統制システム」をご参照ください。
2) 会社の機関の内容
① 取締役会に関わる事項
取締役会は、経営方針および内部統制システムの基本方針等の法令、定款上執行役に委任できない事項および取締役会規則に定める重要な事項の決定ならびに執行役等の職務執行の監督を行います。
取締役会が決定する事項を除き業務執行の決定を代表執行役に委任し、意思決定と業務執行の効率化、迅速化を図っています。
取締役会が行う職務執行の監督については、自らが決定した基本方針等について定期的にチェックするとともに、執行役および各委員会からその職務の執行状況について報告を受け、また、監督に必要な情報収集を行い、それらの情報を踏まえた業務執行の適切性について監督します。
当連結会計年度における取締役会は合計8回開催しました。これらの取締役会における取締役の出席率は100%でした。
当連結会計年度における各取締役の出席状況は以下のとおりです。
氏名出席回数/取締役在任期間中の取締役会開催回数
井上 亮8回 / 8回
入江 修二8回 / 8回
松﨑 悟8回 / 8回
鈴木 喜輝8回 / 8回
スタン・コヤナギ8回 / 8回
マイケル・クスマノ8回 / 8回
秋山 咲恵8回 / 8回
渡辺 博史8回 / 8回
関根 愛子8回 / 8回
程 近智8回 / 8回
柳川 範之6回 / 6回
竹中 平蔵2回 / 2回

当連結会計年度において、取締役会では、株主総会に提出する議案の決定、経営の基本方針の決定、執行役の選任、業務執行の決定に係る代表執行役への委任、取締役会の実効性評価、執行役および各委員会からの報告に基づく執行役等の職務執行の監督等を実施しました。
<取締役会の構成、規模に関する考え方>取締役会は、社外取締役も含め、多様な知識や経験をもつ取締役で構成し、効果的・効率的な議論を妨げない適切な員数を維持する方針です。
(構成員)
社内取締役 井上 亮(議長)、入江 修二、松﨑 悟、スタン・コヤナギ、三上 康章
社外取締役 マイケル・クスマノ、秋山 咲恵、渡辺 博史、関根 愛子、程 近智、柳川 範之
② 三委員会に関わる事項
指名委員会、監査委員会および報酬委員会の全委員は、社外取締役で構成されています。
指名委員会監査委員会報酬委員会
本有価証券報告書提出日における構成委員3名(社外取締役3名)
秋山 咲恵(議長)
渡辺 博史
関根 愛子
3名(社外取締役3名)
関根 愛子(議長)
程 近智
柳川 範之
3名(社外取締役3名)
渡辺 博史(議長)
マイケル・クスマノ
程 近智
当連結会計年度
における開催回数
合計6回合計14回合計4回
(出席率)(100%)(98%)(100%)

(a) 指名委員会
指名委員会は、株主総会に提出する取締役の選任および解任に関する議案の内容を決定します。取締役の選任および解任は、株主総会決議によって行われます。また、会社法に基づく権限ではありませんが、指名委員会は取締役会で決議される執行役の選任および解任に関する議案を審議するものとしています。
当連結会計年度における各委員の出席状況は以下のとおりです。
氏名出席回数/指名委員在任期間中の指名委員会開催回数
秋山 咲恵6回 / 6回
渡辺 博史6回 / 6回
関根 愛子6回 / 6回

当連結会計年度において、指名委員会では、株主総会に提出する取締役の選任に関する議案内容の決定、各委員会を組織する取締役の選定の審議、執行役、グループ執行役員の選任、職務の分掌変更についての審議、サクセッションプランについての審議等を行いました。
指名委員会では、取締役会が全体としての知識・経験・能力のバランスや多様性が確保された構成となるよう、取締役候補者を決定するに際して、下記のとおり基準を定め、指名委員会における取締役候補者の選任を適切に行うことができるようにしています。なお、当社は指名委員会において、取締役候補者選任基準の下に「独立性を有する取締役の要件」を定めています。また、執行役の選任において、指名委員会では、執行役候補者の個々の経験や知見を確認し、社内に限らず、当社の新たな事業展開や業況に応じ適切に業務執行できる人材であることを審議し、取締役会に上程しています。
取締役候補者選任基準
(社内取締役)
・オリックスグループの業務に関し、高度の専門知識を有する者
・かつ、経営判断能力および経営執行能力に優れている者
(社外取締役)
・企業経営者として豊富な経験を有する者
・もしくは、経済、経営、法律、会計等の企業経営に関わる専門的な知識を有する者
・もしくは、広く政治、社会、文化、学術等、企業経営を取り巻く事象に深い知見を有する者
(b) 監査委員会
監査委員会は、取締役および執行役の職務の執行を監査し、監査報告を作成します。また、株主総会に提出する会計監査人の選任および解任ならびに再任しないことに関する議案の内容を決定します。
(当連結会計年度における具体的な検討内容および各委員の出席状況ならびに監査体制に関する事項については、「(3) 監査の状況 1) 監査に関する事項」をご参照ください。)
(c) 報酬委員会
報酬委員会は、取締役および執行役の個人別の報酬等の内容にかかる決定に関する方針、およびそれらの個人別の報酬等の内容を決定します。
当連結会計年度における各委員の出席状況は以下のとおりです。
氏名出席回数/報酬委員在任期間中の報酬委員会開催回数
渡辺 博史3回 / 3回
マイケル・クスマノ4回 / 4回
程 近智4回 / 4回
竹中 平蔵1回 / 1回

当連結会計年度において、報酬委員会では、2022年3月期業績連動型報酬(年次賞与)にかかる業績評価および個人別の支給額の決定、2023年3月期役員報酬体系の審議・決定、第三者調査機関の調査結果をもとにした役員報酬水準の審議等を行いました。
3) 業務執行に関わる事項
① 執行役
当社は、指名委員会等設置会社制度を選択し、法令により執行役に委任することができる事項の業務執行の決定については、一部事項を除き、基本的に代表執行役(CEO)に委任することを取締役会で決議しており、意思決定と業務執行の効率化、迅速化を図っています。
代表執行役は、各種社内規程の定めるところにより重要な業務執行の決定を、エグゼクティブ・コミッティ等の審議を経て行います。執行役は、取締役会の決定、代表執行役による業務執行の決定および各種社内規程に従って業務を執行します。なお、グループ執行役員は、取締役会の決議によりグループ会社の取締役または執行役員の中から選任されます。執行役およびグループ執行役員については、「(2) 役員の状況 1) 役員一覧 ② 執行役の状況」をご参照ください。
② 業務執行に関わる機関
執行役による重要な意思決定、モニタリングおよび議論、情報共有は、次の機関において行われています。
(a) エグゼクティブ・コミッティ
代表執行役ならびに代表執行役が指名する執行役およびグループ執行役員をもって構成します。主に経営上の政策など経営に係る重要事項を審議します。また、審議された案件・事項の内容、重要性等を考慮し、必要に応じて取締役会に報告します。
(b) サステナビリティ委員会
代表執行役ならびに代表執行役が指名する執行役およびグループ執行役員をもって構成します。サステナビリティ推進に関する重要な事項を審議します。また、審議された案件・事項の内容、重要性等を考慮し、必要に応じて取締役会に報告します。
※外部の有識者を招聘する場合もあります。
(c) 投・融資委員会
代表執行役ならびに代表執行役が指名する執行役およびグループ執行役員をもって構成します。主として一定金額以上の投資・融資に関する案件を審議します。また、審議された案件の内容、重要性等を考慮し、必要に応じてエグゼクティブ・コミッティで審議し、取締役会に報告します。
(d) 経営情報化委員会
代表執行役および当社テクノロジー統括部管掌役員ならびに代表執行役が指名する執行役をもって構成します。グループ経営における情報化の基本方針・戦略や情報システム導入および維持等に関する重要事項を審議します。
(e) ディスクロージャー・コミッティ
重要情報の開示に関わる管理部門を担当する執行役をもって構成します。オリックスグループにおける重要情報の適時適切な情報開示を実現するため、各部門の責任者から未開示の重要情報の報告を受け、その重要情報の適時開示の要否や開示方法など重要情報の開示に関する事項について検討し必要な対応を行います。
(f) グループ執行役員会
執行役およびグループ執行役員の全員が参加し、オリックスグループ全体の業務執行に関わる重要な情報を共有します。
(g) 部門戦略会議
代表執行役および代表執行役が指名する執行役が参加し、各部門の戦略や事業環境の変化等を議論します。
4) オリックスグループの内部統制システム
① 業務の適正を確保するための体制(内部統制システム)の概要
オリックスグループは、事業環境の変化に迅速かつ柔軟に対応する効率的な業務執行、ならびにリスク管理、コンプライアンス、グループ会社管理、監査体制などのオリックスグループの適正な業務の執行の確保の観点から、内部統制システムを構築・運用しています。さらに事業環境の変化や事業の拡大、多様化にあわせて、内部統制システムの継続的な改善と向上に積極的に取り組んでいます。
当社の「業務の適正を確保するための体制(内部統制システム)」の概略図は以下のとおりです。
<内部統制システムの概略図>0104010_002.png
内部統制システムの基本方針
当社の取締役会で決議された「内部統制システムの基本方針」の概要は以下のとおりです。
Ⅰ.オリックスグループの業務の適正を確保するための体制の整備について
1.業務執行の効率性の確保体制
(1) 当社では、指名委員会等設置会社制度を選択し、取締役会の決議により法令によって認められた範囲でその業務執行の決定を代表執行役に委任し、業務執行の効率化・迅速化を図ります。
(2) オリックスグループでは、各社においてその規模や業態等に応じた職務権限を定め、効率的に業務遂行を行います。
(3) オリックスグループでは、経営に関わる重要な事項を審議または情報共有し、代表執行役の業務執行の決定が適正かつ効率的に行われるよう、エグゼクティブ・コミッティをはじめとする各種機関を設置します。
2.リスク管理体制
オリックスグループでは、事業環境の変化や事業拡大に伴い変化、多様化するリスクを的確に把握し、リスクの種類、グループの経営への影響度に応じた適切な管理を行うことができるリスク管理体制を構築します。
3.情報管理体制
執行役の職務の執行にかかる議事録または社内承認申請にかかる文書その他の情報につき、情報を分類した上で情報の管理方法、保存期間および廃棄に関する事項を定め、情報の有効活用と秘密保持を図る体制の整備を進めます。
4.コンプライアンス体制
(1) オリックスグループに共通するグループとしての企業理念、経営方針および行動指針等を定め、遵守します。
(2) コンプライアンスにかかる規程を制定し、オリックスグループの役員および使用人が法令、社内規程および社会通念等を遵守した行動をとるための規範や行動基準を定め、その推進を図ります。そのなかのオリックスグループ企業行動規範においては、社会から批判を浴びる反社会的な者や団体への関与を永遠に排除することを宣言します。
(3) オリックスグループでは、内部通報窓口を設置し、法令等違反、社内規程違反、人権侵害、および社会通念に反する行為等の通報・相談を受け、これらを早期に発見し、不祥事を未然に防ぐとともに、必要な改善を図り、オリックスグループの健全性を高めます。
(4) 当社に内部監査部門を設置し、オリックスグループにおける経営上の内部統制の有効性、業務の効率性および有効性、法令遵守等についてリスクアプローチによる内部監査を行います。内部監査部門は、子会社の監査役と連携して重要リスクを共同でモニタリングします。
(5) オリックスグループにおける財務報告の信頼性を確保するため、財務報告にかかる内部統制が有効に機能する体制の整備を進めます。
(6) グローバルレベルで内部管理態勢をさらに強化します。
(7) 当社の内部統制関連部門は、オリックスグループにおける職務執行が法令または定款に適合するよう体制整備、モニタリングおよび支援等を行います。
5.グループ会社管理体制
オリックスグループを構成する子会社の運営・管理その他の事項については、当社が定める規程、当社と子会社との間で締結する経営管理契約または役員等の派遣を通じて、子会社に対し、子会社における重要な業務執行にかかる事項の当社への報告に関する体制を整備させるとともに、当社は子会社に対し必要に応じて指導・助言を行います。
Ⅱ.監査委員会の職務の執行のために必要な事項について
1.監査委員会への報告体制
(1) オリックスグループの役員および使用人は、各社において発生した職務執行に関し法令・定款違反および不正行為の事実、または会社に著しい損害を及ぼす事実を知ったとき、監査委員会に報告します。
(2) 当社の内部通報窓口責任者は、内部通報窓口に通報・相談があり、その通報・相談事項について重要と判断した場合には、その内容を当社の監査委員会に報告します。また、オリックスグループの役員および使用人は、会計、会計の内部統制および監査に関係する事項、ならびに当社の取締役、執行役およびグループ執行役員に関係する事項については、監査委員会または監査委員会において選定された監査委員(職務執行の報告徴収および業務財産の状況調査を担当する監査委員。以下、「選定監査委員」)に対して、通報できます。
(3) オリックスグループの役員および使用人は、当社の選定監査委員から求められた事項を定期的または適時に当社の監査委員会に報告します。
2.監査委員会への内部通報者が不利な取扱いを受けない体制
オリックスグループは、内部通報窓口または監査委員会に通報・相談がなされたことを理由として、当該通報・相談を行った役員または使用人に対して不利益な取扱いをしてはならないことをグループの社内規程に規定します。
また、社内規程に違反して不利益な取扱いを行った者は社内規程に基づき処分の対象とする旨もあわせて規定し、通報・相談者が不利益な取扱いを受けない体制を構築します。
3.監査委員会の監査の実効性を確保するための体制
(1) 選定監査委員から委嘱をうけた内部監査部門を管掌する役員がオリックスグループにおける重要な会議に出席し、監査活動に必要な情報を適時的確に監査委員会に報告することで、監査委員会の情報収集をサポートします。
(2) 当社の内部監査部門は、内部監査の実施に際しては、当社における年度監査計画を策定し、その監査計画は監査委員会の承認を得ます。
(3) 当社の内部監査部門は、オリックスグループ各社の内部監査の監査結果を、監査結果報告書により監査委員会に報告します。また、監査により改善すべき事項とされた事項につき必要な措置を講ずるものとし、フォローアップ監査を行う等してその後の改善措置状況を監査委員会にも報告します。
(4) 当社の内部監査部門は、監査委員会と常に連携し、監査委員からの調査要請があれば、これに全面的に協力します。
4.監査委員会の職務を補助する取締役、使用人
(1) 監査委員会の職務を補助する組織として、監査委員会事務局を置きます。
(2) 監査委員会は、その職務の執行に必要な場合は、監査委員会事務局に監査委員会の職務の執行の補助を委嘱します。
5.監査委員会事務局スタッフの独立性確保
監査委員会事務局のスタッフについての任命、評価、異動および懲戒は、監査委員会の同意を得てこれを行います。
6.監査委員会の指示の実効性の確保
執行役は、監査委員会事務局のスタッフが監査委員会から指示を受けて行う業務について、自ら協力し、かつ協力を指示します。
7.監査委員会の職務執行にかかるコスト
(1) 当社は、監査委員会の職務の執行に関する費用または債務を負担します。
(2) 監査委員会は、その職務を執行するために必要な外部の専門家を利用できます。
② コンプライアンス体制およびグループ会社管理体制
当社では、コンプライアンス意識の浸透と目指すべき企業像を共有し、ブランド価値向上に資するため、当社の「企業理念(Corporate Philosophy)」をはじめ、「役職員倫理規程(Principles of Conduct)」や「役職員行動指針」等を定めて、これらの企業理念等の役職員への周知、浸透を図っています。また、内部統制関連部門は、当社における職務執行が法令または定款に適合することを確保するための体制を整備し、コンプライアンスの推進等を実施しています。さらに、社内外に内部通報窓口を設置して、その旨を国内外の子会社を含めて全社的に周知し、不祥事等の早期発見、未然防止を図っています。また、グループ外の取引先等の社外の方からもアクセスできる外部通報窓口を設置し、オリックスグループ役職員によるコンプライアンスに反する行為やそのおそれのある行為について通報を受け付ける体制としています。
グループ会社管理に関しては、グループ執行役員会において、当社の執行役、グループ執行役員および子会社の取締役等との間で、オリックスグループの経営にとって重要な課題を共有しています。また、子会社を担当する役員は、事業計画の達成状況、役職員の職務執行状況、各社を取り巻く事業環境等について、当社の取締役会、監査委員会および部門戦略会議等のグループ共通の重要な会議ならびに委員会において適宜報告をしています。さらに、子会社は、当社の事前承認事項にかかる規程または経営管理契約に基づき、各社が定める役員人事、財務、経理、ITシステム、監査、投融資など経営の枠組みや個別の業務執行状況につき、当社に事前に承認・協議依頼し、または報告をする体制となっています。各内部統制関連部門は、当該報告等を受けて、子会社に対して直接、管理上の助言、指導、指示を行っています。
5) 全社的リスク管理体制
① リスク管理体制の整備の状況
オリックスグループでは、経営戦略に基づいた全社的なリスクの選好および各事業部門の事業戦略を勘案して、経営資源の配賦を行っています。リスクに見合った経営資源の最適な配賦を実現するため、オリックスグループでは、グループの事業に関する様々なリスクの特性をグローバルレベルで適切に把握し、取締役会、取締役会の内部機関の1つである監査委員会、エグゼクティブ・コミッティ等に適時に報告を行う体制を整備しています。取締役会やこれらの執行機関は、事業部門のパフォーマンスとこれらリスクの特性を総合的に評価し、必要な施策を実行しています。このプロセスを通して、バランスシートのコントロールと、成長性のある事業部門により多くの経営資源を配賦することの両方を可能としています。また、内部統制関連部門が相互に連携しながら、リスクの分析および管理を実施しています。これらのリスク管理体制は内部統制システムの一部として取締役会で決議され、毎年、その運用状況について検証し、取締役会に報告しています。内部統制システムの決議の概要および運用については、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 4)オリックスグループの内部統制システム」をご参照ください。
② 主なリスク管理
オリックスグループでは、主なリスクを、外部環境に関するリスク、信用リスク、ビジネスリスク、市場リスク、流動性リスク(資金調達に関するリスク)、コンプライアンスリスク、法的リスク、情報システム・サイバーセキュリティリスク、オペレーショナルリスクと認識し、それぞれの特性に応じたリスク管理を行っています。
(a) 外部環境に関するリスク管理
オリックスグループは、外部環境に関するリスクのうち、特に自然災害のリスクに対処するために、災害リスクマネジメントに関する社内規程を策定し、自然災害やテロリズム、感染症等に対するリスクマネジメントの基本的な考え方、活動内容、リスクマネジメントを組織的に実行していくための枠組みを定めています。
災害の発生や感染症の拡大等によりオフィスが閉鎖された際等には、従業員の安否確認システムにより、全従業員の状況を迅速に把握できる体制を確立しています。また、出社困難な状況に備え、在宅勤務を可能とするITシステムを導入し、事業運営に支障が生じないような就業環境を整備しています。
また、予測不能な事象が発生した場合に備え、オリックスグループでは、多角的な事業展開による収益構造の多様化、十分な流動性の確保により、健全な財務運営を継続できる体制を整備しています。
(b) 信用リスク管理
与信審査については、十分な担保や保証の取得、業種や与信先の分散を基本方針としています。個別案件の審査時は、与信先の財務内容、キャッシュ・フロー、保全条件、採算性などを総合的に評価しています。
さらに、ポートフォリオの分析を行い、与信制限措置も講じることで、潜在的にリスクの高いマーケットへのエクスポージャーをコントロールしています。
また、破産、民事再生などの法的整理申請先、銀行取引停止処分先、手形不渡り発生先、3ヶ月以上未収先などへの債権を管理債権と認識し、事業部門が審査部門と協力して保全強化と回収を行います。初期督促から差し押さえなどの強制執行に至るまでの回収ノウハウは、審査部門に集約され、個別案件の審査基準やポートフォリオ分析に反映させています。
(c) ビジネスリスク管理
事業や投資については、新規参入・投資時にシナリオ分析やストレステストなどを行い、実行後も事業計画やオペレーションを定期的にモニタリングし、その時々での事業撤退コストも評価、検証対象としています。
提供する商品、サービスにおいては、品質を維持するための定期的なモニタリングを行うとともに、事業環境の変化や顧客ニーズの多様化に応じて、商品やサービスの内容を見直し、品質の改善を常に図っています。
オペレーティング・リースでは、リース物件の残存価額の変動が重要なリスクであり、リース物件の在庫や、市場環境、事業環境のモニタリングを行っています。オペレーティング・リースは、汎用性の高い物件に限定して取り扱っており、市況変化に応じて売却を検討します。
不動産物件の価格変動リスクに対しては、金融危機を始めとしたこれまでの知見を基にマーケットの傾向を十分に織り込むことで、リスクの極小化を図っています。
(d) 市場リスク管理
資産、負債の統合管理(ALM)に関してグループ共通の規程を制定し、市場リスクを包括的に把握検証しています。
金利リスクについては、金利変動時の期間損益やバランスシートへの影響、資産や負債の状況、調達環境などの分析を行い総合的に判断しています。また、分析方法は状況に応じて見直しを行っています。
為替リスクについては、外貨建ての営業取引や海外投資に伴う為替の変動リスクに対して、原則として同通貨での借入、為替予約および通貨スワップ等を利用してヘッジしています。ヘッジされていない外貨建て資産、海外子会社の利益剰余金等については、VaR(バリューアットリスク)などの指標を活用しながらリスク量を定量的に把握し、状況に応じてヘッジ額を調整し適切に管理を行っています。
なお、ヘッジ手段としてデリバティブ取引を利用する際は、社内規程に基づき、相手方の信用リスク等同取引にかかるリスクを適切に管理しています。
LIBORおよびその他の金利ベンチマークからの移行については、公表停止時期が2023年6月末に延長された米ドルの一部の期間のLIBORを除き、後継金利への移行が完了しています。2023年6月末に公表停止される米ドルLIBORについて、関係する契約先との後継金利の協議、ヘッジ目的で使用されるデリバティブ契約とヘッジの対象となる契約との間で使用される後継金利が一致しない場合に対する準備など、対応を進めています。また、後継金利への移行によるオリックスグループの財政状態や経営成績への将来的な影響についても評価しています。
(e) 流動性リスク管理(資金調達に関するリスク管理)
流動性リスクを低減するために、調達手段の多様化とともに手元流動性の管理を行っています。手元流動性の管理については、将来のキャッシュ・フローの状況を把握した上で、環境変化時に事業継続に支障の無いよう、ストレス時を想定した流動性リスクを分析し、必要な対応を行っています。
また、事業を行う国や子会社ごとの流動性リスクを把握し、オリックスグループの流動性リスクが各子会社の事業へ与える影響についてもモニタリングしています。モニタリングの状況次第では親子ローンなど必要な対策を講じています。
オリックス銀行およびオリックス生命保険は、日本の金融当局の規制を受けているため、他のグループ会社から独立した流動性リスク管理が必要とされています。規制に準じて単独で社内規程を定め、他のグループ会社から切り離した流動性リスクを管理しています。
具体的には、オリックス銀行は、資金繰りの逼迫度を複数の段階に区分し、段階に応じた流動性リスク管理態勢の強化策を定めています。また、必要な流動性資産の水準や市場性資金調達額などに限度を定め、遵守状況をリスク管理部門がモニタリングを行っています。
オリックス生命保険は、現預金および流動性の高い公社債等の残高について保有する水準を設定することで、適切な流動性の確保に努めています。また資金繰りの状況については、足元および将来の資金繰り確認を行うとともに、資金繰りの逼迫度に応じた区分を設定し、ストレス下においても各区分の状況下で迅速かつ適切な対応が取れるよう、基準と対応策を設けています。
(f) コンプライアンスリスクの管理
オリックスグループはコンプライアンスを経営上の最重要課題の一つと位置づけており、適切なコンプライアンス体制を構築し、高い倫理観をもってコンプライアンスを実践する企業文化の醸成に努め、誠実かつ公正で透明性の高い企業活動を遂行します。
コンプライアンス部門では、オリックスグループの各社に年間のコンプライアンスプログラムを策定・実施させ、オリックスグループの事業にかかるコンプライアンスリスクを監視し、リスクの回避、低減、予防を実践します。
コンプライアンスの企業文化を支えるプログラムを実践することにより、コンプライアンスリスクの顕在化を予防・抑制し、オリックスグループの健全な事業運営を実現します。
オリックスグループのコンプライアンスに関する最上位原則である役職員倫理規程(Principles of Conduct)に則って、各種規程の制定・周知活動等を行うことで、役職員のコンプライアンス意識の向上を図っています。コンプライアンスに関する研修等の周知活動の状況等は、定期的に監査委員会に報告されています。
また、内部統制システムの一環として、オリックスグループの役職員が利用できる内部通報窓口およびグループ外の取引先等の社外の方が利用できる外部通報窓口を設置し、コンプライアンスリスクへの未然防止に向けたオリックスグループ内外の体制を整備しています。内部通報および外部通報事案ならびに法令等違反事案のうち重要な事案は、速やかに代表執行役に報告され、代表執行役の指示のもと適切な対応をとる体制を構築しています。また、それらの対応状況については監査委員会に報告し適切な情報共有を図っています。
なお、税務にかかるコンプライアンスの観点から、各国租税法、租税条約およびガイドラインならびに社内関連諸規程等を遵守した納税を行い、租税制度の定めに則り、誠実な態度で納税業務に取組み、グループ全体の税の透明性の確保に努めています。
(g) 法的リスクの管理
オリックスグループでは、法令遵守のために必要な社内規程を制定するほか、改正法令の施行に適切に対応するために、各事業に適用される法令を把握し、法改正に伴い必要な対応を対象部門に指示する等、必要な措置を講じています。
各種取引における法的リスクについては、法務部門、コンプライアンス部門、審査部門が関与し、リスクの回避、低減、予防を図っています。
営業取引等にかかる契約関係書類は、所定の社内規程に従って法務部門が関与し、契約審査を行い、決裁を得るプロセスを確立しています。訴訟を提起する場合、または提起された場合にも、法務部門、コンプライアンス部門、審査部門が関与し解決へ導きます。また、オリックスグループの商標権を侵害するような商標出願が行われていないかモニタリングをする等、訴訟を未然に防ぐ取組を行う他、侵害が発見された場合には直ちに必要な措置を講じています。
(h) 情報システム・サイバーセキュリティリスクの管理
オリックスグループでは、役職員等の情報および情報システムの適切な利用や情報セキュリティ管理体制、基本方針、管理基準、教育および監査等に関する社内規程を制定しています。
オリックスグループの情報セキュリティ統括部門は、サイバー攻撃などの外部からの脅威により損失を被るリスクを低減するため、情報システムの脆弱性テストを含む脆弱性管理やネットワーク防御等の技術的施策も実施しています。また、外部との物理的および論理的境界に加え内部不正による情報漏えいなども視野に入れたセキュリティログの収集および管理に関する社内規程等を制定しています。
また、情報セキュリティインシデント発生時の対応体制の構築などにより、サイバー攻撃および情報セキュリティの毀損を含むシステム障害や情報漏えいなどのセキュリティ侵害が発生するリスクの軽減を図っています。情報セキュリティインシデントが発生した場合、情報セキュリティ統括部門、法務部門およびコンプライアンス部門が連携し、被害の最小化、二次被害防止の対応を図るとともに、重大な事案は都度、代表執行役まで報告を行い、その指示の下、適切な対応を行っています。その対応状況については監査委員会に報告し適切な情報共有を図っています。また重大なサイバーセキュリティインシデントに関し、適時開示可能な体制を整備するとともに、インシデントに関する管理状況に加え、リスクや戦略、ガバナンスに関し定期的に開示可能な体制の整備を行っています。
オリックスグループのテクノロジー統括部門は、システム障害等の発生リスク軽減のため、情報システム開発・運用等に係る規則・ガイドラインを提示するとともに、情報システム導入に対するレビュー実施(一定規模以上の情報システム導入については経営情報化委員会による審議)、情報システム開発の着手からリリースまでのプロジェクト・システム品質に対するガバナンスに重点をおいて取り組んでいます。また、稼働済情報システムの安定運用に関するITサービス管理およびグループ各社が管理するシステムの重要障害報告に対する再発防止策の妥当性評価についても強化を図っています。なお、経営情報化委員会については「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 3)業務執行に関わる事項 ② 業務執行に関わる機関 (d) 経営情報化委員会」をご参照ください。
(i) オペレーショナルリスクの管理
オリックスグループでは、業務執行の内部プロセスを明確にするため、社内規程を整備し、周知、教育を行っています。また、法令等遵守のために、内部統制の構築とその評価に注力しています。
オリックスグループは多様な人材を安定的に確保するために、社員がそれぞれの能力や専門性を最大限に発揮できるようなダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進と、すべての社員にとって働きがいのある価値ある職場づくりに取り組んでいます。また、各国・地域の労働市場および市場慣行、報酬水準、法規制、職務内容や業務特性に応じた人事制度を構築の上、人権を尊重するとともに、社員が健康的に安心して生き生きと働ける職場環境の整備を行っています。
また、インシデントや顧客クレーム等が発生した際には速やかにリスク管理部門に連携し、迅速かつ丁寧に対応し、再発防止策を定める体制を整備しています。
内部監査部門では、年度内部監査計画に基づき、オリックスグループの重要なオペレーショナルリスクについても焦点をあてて内部監査およびモニタリングを行うことによって、グループ経営に影響を与える事象発生の抑止に努めるとともに、これらのリスク管理機能の強化を図っています。
③ 個別事業のリスク管理
オリックスグループは、金融サービス事業をはじめとする幅広く分散した事業ポートフォリオを保有しているため、個別事業の特性にあわせ、網羅性と透明性を確保したモニタリングとリスク管理を行っています。
(a) 法人営業・メンテナンスリース
法人営業事業の主なリスクは、法的リスクと信用リスクです。
法人営業事業では様々な商材、サービスを取り扱っていることから、関連の法令や規則、税制、会計基準などの制定や、改正、変更が行われた場合、取り扱っている商品やサービスに悪影響を及ぼし、手数料収入等が減少する可能性があります。このようなリスクを低減するため、法令改正等に関する情報について、適時に法務部門との連携および事業部門における情報収集等を行うとともに、必要に応じて営業戦略の見直しを行っています。
与信案件については、与信先の業績、保全、回収状況について、事業部門では一定額以上の残高のある先を、審査部門では大口与信先を定期的に確認します。
特定の業種や業界について現状や見通しの分析を行い、与信先に与える影響を分析するとともに、各事業部門や専門部署の見解も考慮した上で今後の当該業種・業界に対する取組についての判断を行います。
管理債権については、特に不動産を担保とする取組に対しては、他の不動産関連部門のネットワークを生かして売却先やテナントの斡旋を行うなど様々な対応策を講じます。
メンテナンスリース事業の主なリスクは、ビジネスリスクと信用リスクです。
オペレーティング・リース物件の市場価値の変動リスクに対しては、市場環境の動向を常に把握し、保有物件価値の変動のモニタリングや、新規に投資する案件における残存価額の見積もり額の再検討を行います。
オペレーティング・リースに付帯する各種サービスの提供にあたっては、サービス提供に伴うコストの変動リスクがあります。サービス策定時の前提と実績の検証、今後の見込みを勘案し、適切なコスト管理を実施しています。
加えて、事業環境の変化、お客様のニーズの変化・多様化に伴い、提供しているサービスがお客様の要求するレベルを下回るリスクに対しては、サービスの質の状況を定量的・定性的に把握し、お客様の要求を満たすことができるサービスの継続的提供、またその質的向上と、事業環境に合わせた改善を図ります。
この他、信用リスクに対しては個別案件の与信審査のみならず、事業環境の変化や予測を考慮した総合的な判断を行います。
(b) 不動産
不動産セグメントの主なリスクは、ビジネスリスクと市場リスクです。
不動産投資の判断時には、キャッシュ・フローの計画と実績、見込みを比較検証し、投資実行後は投資戦略とスケジュールのモニタリングを行い、当初見込みと乖離しそうな場合には、戦略の再検討も行っています。 なお、大規模物件または長期プロジェクトへの投資は一部パートナーとの共同事業にするなどリスクの分散を図っています。
開発・賃貸事業では、開発・保有スケジュール、NOI利回りなどをモニタリングしています。物件の稼働率の向上や売却にあたっては、グループのネットワークも活用しています。
施設運営事業では、各施設の稼働率や利益率などをモニタリングしています。また、マーケット分析を行い、リニューアル投資などによる施設の魅力向上に努めています。サービスの質を高めるために、お客様からのご意見をサービスや施設の改善に反映するとともに、研修による社員教育にも注力しています。
住宅分譲事業(新築・中古)では、市場環境、建築コスト、金利、不動産関連税制等を意識しつつ、個別事業の販売状況・収益性などのモニタリングを行っています。また、請負工事事業では、安全衛生管理に注力しつつ建築コストおよび工期のコントロール等を行っています。
(c) 事業投資・コンセッション
事業投資・コンセッションセグメントの主なリスクは、ビジネスリスク、市場リスク、およびオペレーショナルリスクです。
事業投資事業において企業等への投資判断をする際には、与信審査と同様に投資先の財務状況等の分析、キャッシュ・フローの評価を行うとともに、経理部門、法務部門などの管理部門も関与して、多面的に事業性や投資スキームの評価を行います。また、投資実行後は、当初のシナリオから乖離していないかどうかを個別案件ごとにモニタリングします。バリューアップ中は、キャッシュ・フローを重視するため財務状況等のモニタリングに重きを置き、投資回収の時期が近くなるにつれて、類似業種の市場価格などを参考に事業価値が測定されるため、市場リスクも注視します。事業環境の変化に応じてモニタリングの頻度を上げ、シナリオの妥当性の検証と同時に必要なアクションを講じています。また、グループ収益への影響が大きい投資先については、経営陣の派遣などマネジメントの強化に努めています。
コンセッション事業では、空港などの公共施設において、事業パートナーとの共同事業運営を行っています。事業の特徴として長期にわたることから事業の不確実性に対し、需要予測等に基づく運営収益のキャッシュ・フローに災害復旧費用、事業撤退コスト等を含めたストレステストなどを実施した上で、事業計画やオペレーションのモニタリングを定期的に、また必要に応じて随時実施しています。また、公共施設の運営に関する専門知識を持った職員の育成に努め、事業パートナーとの運営体制を確立し、ガバナンス強化を図ることで、オペレーショナルリスクの低減に努めています。
(d) 環境エネルギー
環境エネルギーセグメントの主なリスクは、ビジネスリスク、法的リスクおよびオペレーショナルリスクです。
環境エネルギー事業では、再生可能エネルギー、省エネルギー、電力小売、資源循環・廃棄物処理等、国内外で多岐にわたる事業を展開しています。社会潮流の変化、制度・法規制の変更や外部環境等の影響を受け易く、特に近年の資源価格上昇、電力市場の価格の高騰やボラティリティの上昇、サプライチェーンの混乱等は今後も脅威となり得ます。各事業の収益構造の変更を要する場合がありますが、環境変化の動向を早期に見極め、事業モデル転換・新規事業開拓・既存事業の売却等事業の入れ替えを実施することで新たな収益機会の創出を図ります。
発電・資源循環・廃棄物処理に関わる施設を多数運営し、M&Aを含む投資活動や各分野の事業パートナーとの協業も積極的に行っていますが、事業全体の内部統制機能の整備に注力し、ガバナンスを強化しています。また、各施設における安全性・適切性確保や自然災害・事故・感染症蔓延等に備えたBCP体制構築のため、技術的知見を有する専門部門を中心に人員・社内規程等の整備を行い、運営の適正化を図っています。
(e) 保険
保険セグメントの主なリスクは、ビジネスリスクと市場リスクです。
保険引受に関しては、経済情勢や保険事故の発生率等が、保険料設定時の予測に反して変動することにより損失を被るリスクがあります。これら損失の要因となる事象のモニタリングを通じ、引受基準等の見直しや新商品の開発・既存商品の改廃を行っています。また、保険金等の確実な支払や、会社経営の安定を図るための施策の一つとして、再保険を利用しています。再保険の利用にあたっては、移転するリスクの特性や再保険の効果に応じて、出再基準や保有基準などを定めています。なお、再保険会社の選定にあたっては、引受能力や財務内容の健全性等も踏まえて、再保険金等の回収の蓋然性が高い取引となるように留意しています。
市場リスクに関しては、保有する資産・負債の価値の変動に備え、一般勘定運用資産についてモニタリング諸項目を定め、リスクの測定・モニタリングを行っています。なお、ALMの観点から、超長期債券等の購入により金利変動リスクの抑制に努めています。
(f) 銀行・クレジット
銀行・クレジットセグメントの主なリスクは、信用リスクです。
投資用不動産ローン(投資用マンション、アパートなど)は、顧客との面談を通じ不動産投資への意思やスタンス、審査資料、返済能力の確認に加え、不動産関連のマーケット情報を収集し、不動産からもたらされるキャッシュ・フローや担保価値を勘案し総合的に判断するなど、長年のノウハウを生かした審査を行っています。法人向け融資については、個別の与信先の業況、事業計画、資金使途、返済原資、業界動向などを調査した上で与信判断を行い、特定の与信先やグループに対する過度の与信集中を抑制するなどのリスク軽減を図っています。カードローン等の消費性ローンは、独自に構築した与信モデルを活用し、顧客の属性、過去の返済状況など支払能力に影響を与える要素を分析することによって、信用リスクに見合った金利と融資限度額の条件を決定しています。また、定期的に途上審査を行うことで、常に顧客の信用状態をモニタリングしています。
(g) 輸送機器
輸送機器セグメントでは、航空機および船舶関連事業を展開しています。
航空機関連では、オペレーティング・リース事業、航空機のアセットマネジメント事業を展開しており、主なリスクはビジネスリスク、信用リスク、市場リスクおよびオペレーショナルリスクです。対象とする航空機は、原則として、再リース取組の可能性が高く、汎用性の高い機種に限定しており、市況変化に応じて売却を検討します。また、実行時は与信先の業績、保全状況を総合的に評価して取り組みます。関連会社のAvolonに関しては、事業計画やオペレーションのモニタリングを継続的に実施しています。また、株主としての権利行使ならびに取締役会を通じてAvolonの経営に関与することにより健全な経営を支援しています。
船舶関連ではオペレーティング・リース事業を含む投融資事業を展開しており、主なリスクは信用リスク、ビジネスリスク、市場リスクおよびオペレーショナルリスクです。信用リスクに関しては、実行時に投融資先の業績、保全状況を総合的に評価して取り組みます。実行後は投融資先のモニタリングを継続的に行い、注意すべき投融資先については、回収可能性を検証の上、信用損失引当金の繰入、減損の要否などの管理方針を決定します。対象とする船舶は、原則として、再リース取組の可能性が高く、汎用性の高い中小型船舶に限定しており、市況変化に応じて売却を検討します。オペレーショナルリスクは、主に保有船の管理リスクがありますが、管理委託先を実績豊富な優良先に限定し、かつ定期的にアセスメントする事で、予期せぬ事態が起こる可能性を大幅に軽減しています。
(h) ORIX USA
ORIX USAセグメントにおける法人向け融資や投資事業の主なリスクは、信用リスクと市場リスクです。
投資や融資の実行時には、信用状況、担保価値、企業価値などを勘案して案件ごとに社内格付を付与し、定期的に見直しを行いながら、継続的にモニタリングを行っています。注意すべき格付水準となった投融資先については、信用損失引当金の繰入、減損の要否などの管理方針を決定します。また、信用情報とも照らし合わせながら時価評価をモニタリングし、収益機会の確定や損失軽減のための早期売却などの管理を行っています。
ローン・サービシング事業の主なリスクはオペレーショナルリスクです。同事業では、組成したローンや不動産ローン担保証券を第三者に譲渡し、そのサービシングやアセットマネジメントを引き受けますが、これらのローンや不動産ローン担保証券の多くは政府機関のFHA(連邦住宅局)や政府支援機関のファニーメイ・フレディマックなどによって付保・保証されています。サービシング・アセットマネジメント業務は公的金融機関所定の業務手順に則って運営され、同業務手順への遵守状況に関する社内監査や公的金融機関による検査を通じて業務品質は維持されています。
アセットマネジメント事業の主なリスクは、オペレーショナルリスクです。同事業では、業務処理の標準化および業務に関する社内規程の制定を推進し、諸業務の遺漏を防ぎ、業務の効率化を図るとともに、業務の手続、管理者、監督者の権限や責任等を明確にすることで適正なリスク管理体制が確保できるよう取り組んでいます。
ORIX USAは、信用リスク、市場リスクおよびオペレーショナルリスクを適切に管理するためにモニタリングを行うほか、事業環境の変化や顧客ニーズの多様化に応じて、商品やサービスの内容を見直し、パフォーマンスやクオリティの改善を常に図っています。
(i) ORIX Europe
ORIX Europeセグメントではアセットマネジメント事業を行っており、その主なリスクは、オペレーショナルリスクとコンプライアンスリスクです。
特に、顧客および顧客の資産の受託者責任の職務を果たすことに関するリスクについては、透明性のあるリスクカルチャーおよび業務プロセス、規則、手続きの標準化を推進することにより、リスクの低減に努めています。オペレーショナルリスクのうち、事業を行う管轄区域における規制環境の変化から生じるものについては、直接的に、または業界団体等を通じて、規制の動向を早い段階から積極的に監視することにより、リスクの抑制に努めています。また、関連法規、顧客の要請および健全なリスク管理の慣行を遵守したリスク管理方針および体制を整備し、徹底しています。OCEは統括会社として、傘下の各社のリスク管理および内部統制の枠組みの監督とモニタリングを行っています。
(j) アジア・豪州
アジア・豪州セグメントの海外現地法人ではリース、融資、自動車リース、投資を中心に事業を展開しており、これらの事業の主なリスクは、信用リスク、ビジネスリスクおよび市場リスクです。
リース、融資事業に関しては、与信先の業績、保全状況を総合的に評価の上で取り組みます。現地法人単位では未収状況やポートフォリオに偏りが生じないかなどの視点から、定期的なモニタリングを行い、必要に応じて是正措置を取ります。自動車リースについては、国ごとに異なるリース税制や中古車市場の性格に応じてリスク管理を行っています。
投資事業においては、国内における事業投資と同様に、実行時の案件評価および実行後のモニタリングを行います。その過程では株主としての権利をもって、または取締役を派遣している場合は、取締役会を通じて投資先の経営に関与することにより、投資先の健全な経営を支援します。
6) 取締役の定数および取締役の選任・解任の決議要件
当社は、定款に、取締役の員数を3人以上と定め、またその選任・解任の決議要件につき、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行う旨規定しています。また、取締役の選任決議は、累積投票によらない旨規定しています。
7) 取締役会にて決議できる株主総会決議事項
① 剰余金の配当等
当社は、定款に、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に掲げる事項を取締役会が定めることができ、株主総会の決議によっては定めない旨規定しています。
これは、株主への利益還元を機動的に遂行できるようにすることを目的とするものです。
指名委員会等設置会社においては、社外取締役が過半数を占める指名委員会、監査委員会、報酬委員会により、それぞれ取締役候補者が選定され、職務執行が監査され、個々の取締役報酬が決定されること等を通じて、取締役会の監督機能が有効に機能するものであり、取締役会は剰余金の配当等についても適正な決定を行うことができるものと考えています。
② 取締役および執行役の責任免除
当社は、定款に、会社法第423条第1項の取締役(取締役であった者を含む。)および執行役(執行役であった者を含む。)の責任につき、取締役会の決議によって、法令の定める限度内で免除することができる旨規定しています。
これは、取締役および執行役が職務を行うにつき期待される役割を十分に発揮できるようにしたものです。
8) 株主総会の特別決議要件
当社は、定款に、会社法第309条第2項に定める株主総会の特別決議要件について、当該株主総会において議決権を行使することができる株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2以上をもって行う旨規定しています。
これは、株主総会における特別決議の定足数を緩和することにより、株主総会の円滑な運営を行うことを目的とするものです。
9) 社外取締役と締結した責任限定契約に関する事項
当社は、社外取締役との間で、会社法第427条第1項に基づき、同法第423条第1項の損害賠償責任を限定する趣旨の契約(いわゆる責任限定契約)を締結しています。当該契約に基づく損害賠償責任の限度額は、同法第425条第1項に定める最低責任限度額としています。なお、当該責任限定が認められるのは、当該社外取締役が責任の原因となった職務の遂行について善意でかつ重大な過失がない場合に限定しています。
10) 役員等賠償責任保険契約に関する事項
当社は、取締役および執行役の全員を被保険者として、会社法第430条の3第1項に規定する役員等賠償責任保険(D&O保険)契約を締結しています。当該保険契約は役員等が職務の執行に関し責任を負うこと、または当該責任の追及にかかわる請求を受けることによって生ずることのある損害を補償します。ただし、故意の詐欺行為、不正行為、不作為に起因する損害賠償請求あるいは違法に利益または便益を得たことに起因する損害賠償請求については保険金が支払われないなど、一定の免責事由があります。保険料は当社が全額負担しており、被保険者の保険料負担はありません。
11) 財務および事業の方針の決定を支配する者の在り方に関する基本方針
当社は、当連結会計年度末時点では、会社の経営を支配できる議決権を保有する株主の取り扱いについての基本的な対処方法は定めていません。また、当連結会計年度末時点では、買収防衛策は導入していません。なお、本事項については、法令改正や環境変化を踏まえ、今後とも慎重に検討を進め、必要があれば対処致します。