有価証券報告書-第86期(令和1年6月1日-令和2年5月31日)

【提出】
2020/08/28 14:16
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【項目】
145項目
経営成績等の概要
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
(1)経営成績
当連結会計年度におけるわが国経済は、世界経済の緩やかな回復基調の下、日銀の金融緩和や財政政策による景気の下支えにより、雇用・所得環境の改善が進み、緩やかな回復基調が続きましたが、後半においては、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う経済環境悪化が懸念される状況となりました。
建設コンサルタント業界においては、防災・減災、老朽化した社会インフラの維持・管理、国土強靭化への対応など、公共投資が堅調に推移する中、受注環境はおおむね好調を維持しました。
このような状況の中、当社グループでは、「まちづくり業務」の豊富な経験と実績を活かし、「まちづくりのソリューション企業」として、国土強靭化や防災・減災など「安全と安心で持続可能なまちづくり」、都市再生・地方創生業務、公共施設マネジメント業務、まちづくり事業をパッケージで支援する事業推進サポート業務などを重点分野と位置づけ、積極的な営業活動を展開してまいりました。
東日本大震災の復興関連業務では、宮城県石巻・女川地区の復興支援の完遂に努めるとともに、福島県の復興支援を行いました。また、発災直後から担当している熊本地震や九州北部豪雨、西日本豪雨で被災した地域(熊本県益城町、福岡県朝倉市、広島県東広島市等)の復興支援に加えて、令和元年台風第19号等による宮城県丸森町等の災害支援に取り組んでいます。
さらに、区画整理事業での当社のコンサルタントとしての経験・知見や保留地の処分能力を活かして、調査設計業務に加え業務代行者としての参画を企図し、デベロッパー業務や生産緑地対策など「まちづくり業務」の収益性の向上を図るとともに、土木管財業務、個人向け相続・不動産コンサル事業、PM(プロジェクトマネジメント)/CM(コンストラクションマネジメント)・PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)事業、システム開発など、「まちづくり業務」の高付加価値提案型サービスの展開により、事業領域を拡大してまいりました。
当連結会計年度の概況は以下のとおりであります。
東日本大震災の復興需要はピークアウトしたものの、福島県・熊本県益城町・福岡県朝倉市・広島県東広島市・宮城県丸森町等の復興需要に応えるとともに、その他の官庁受注及び民間受注の伸張に注力した結果、受注高につきましては15,751百万円(前年同期は15,377百万円)となり、手持受注残高は10,141百万円(前年同期は9,592百万円)を確保することができました。
売上高につきましては、15,202百万円(前年同期は15,581百万円)となりました。
営業利益は1,144百万円(前年同期は1,104百万円)、経常利益は1,176百万円(前年同期は1,151百万円)となり、親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、823百万円(前年同期は1,715百万円)となりました。
なお、前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益1,715百万円には、本社・東京支店ビル土地建物(事業用不動産)の譲渡による特別利益(固定資産売却益)1,409百万円が含まれております。
(2)財政状態
前中期経営計画において、技術力の向上や財務体質の強化等により経営基盤の強化に取り組んだ結果、資格保有者数の増大や無借金体質の確立、自己資本比率の向上等を実現することができました。
(資産の部)
資産合計は、現金及び預金の増加329百万円を主な要因として、前期末より647百万円増加し、12,978百万円となりました。
(負債の部)
負債合計は、前期末より253百万円増加し、4,692百万円となりました。借入金については、返済が進み、当期末の有利子負債残高は、前期末より192百万円減少し、120百万円となりました。有利子負債残高120百万円に対し、現金及び預金の期末残高は2,336百万円であり、実質無借金となっています。
(純資産の部)
純資産合計は、利益剰余金が504百万円増加する一方、株主還元に伴い、控除(マイナス)項目である自己株式が取得・消却等による27百万円減少した結果、前期末より393百万円増加し、8,286百万円となりました。
(3)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比較して329百万円増加し2,336百万円(前年同期は2,007百万円)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは1,259百万円の収入(前年同期は1,499百万円の収入)であり、主なものは、税金等調整前当期純利益1,167百万円と減価償却費253百万円の計上、未成業務受入金の増加に伴う収入299百万円、法人税等の支払額442百万円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは212百万円の支出(前年同期は38百万円の収入)であり、有形固定資産の取得による支出140百万円、無形固定資産の取得による支出121百万円等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは718百万円の支出(前年同期は1,134百万円の支出)であり、長期借入金の返済による支出192百万円、自己株式の取得による支出207百万円及び配当金の支払いによる支出317百万円等によるものであります。
(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グル-プの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって会計上の見積りが必要なものについては期末時点において把握できる最善の方法により会計上の見積を行っております。他の会計上の見積りについては、「第5経理の状況 1.連結財務諸表等注記 3会計方針」に記載のとおりであります。
①固定資産の減損
固定資産の減損については、期末における不動産鑑定評価及び翌期以降の事業計画を基礎とし、内閣府公表の国内総生産等の客観的な企業統計数値により補正して将来キャッシュ・フロ-を見積り、国債の利子率で割引いた価額と期末帳簿価額を比較して減損処理を行っております。なお、当期に減損の兆候は認識しておらず、当期における固定資産の減損損失の計上はございません。
②有価証券の減損
有価証券の減損については、市場価格のあるものについては、四半期末日の時価が、簿価の30%以上下落しているときには、減損処理を行っております(事業年度末まで洗替法)。市場価格の無いものについては、決算期末日までに入手し得る発行会社の財務諸表を基礎に、1株当たり純資産額に所有株式数を乗じた金額を実質価額として評価し、当該実質価額が決算期末日の帳簿価額の50%以上下落しているときには、当該実質価額まで減損処理を行っております(関係会社株式は除く)。
③繰延税金資産(税効果会計)
繰延税金資産の計上については、期末における将来減算一時差異を十分に上回る課税所得は無いものの、過去3年及び当期のすべての事業年度において臨時的な原因を除いた課税所得が安定的に発生しているため、翌期以降のタックスプランニングに基づく範囲内で回収可能性があるものと判定して処理しております。
④資産除去債務
資産除去債務の計上については、事業用、賃貸用、福利厚生用にかかわらず物件ごとに外部業者の除去費用見積額を基礎とし、履行時期までの期間に応じた国債の利子率で割引いた金額を原則としております。賃借事務所で敷金を計上しており、当該有形固定資産の除去費用と敷金を相殺できない記載が無く、かつ、除去費用が敷金を上回ることが無いと思われる場合には、過去の除去費用の敷金に対する実績率による金額によっております。
(新型コロナウイルス感染症の影響の考え方)
新型コロナウイルス感染症の拡大は不確実性が高い事象であるものの、会計上の見積りへの影響は限定的であるとの前提の上で行っております。今後、新型コロナウイルス感染症が一層拡大ないし収束が長期化し、国内の建設コンサルタント需要に影響を与える場合には、当社グル-プの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
生産、受注及び販売の実績
(1)生産高実績
当社グループは、単一セグメントであるため、業務の区分別の生産高を記載しております。
業務の区分等生産高(千円)構成比(%)前年同期比(%)
建設コンサルタント業務
地理空間情報業務
3,475,90622.5119.3
環境業務554,7473.670.8
まちづくり業務5,899,44738.186.5
設計業務4,433,20028.7104.9
事業ソリューション業務1,098,5717.1156.0
合計15,461,871100.0100.1

(注)1.価格の基準は販売価格であります。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)受注高実績
当社グループは、単一セグメントであるため、業務の区分別の受注高を記載しております。
業務の区分等受注高(千円)構成比(%)前年同期比(%)
建設コンサルタント業務
地理空間情報業務
4,047,66725.7136.7
環境業務535,0803.490.3
まちづくり業務5,757,56136.589.1
設計業務4,076,96725.989.4
事業ソリューション業務1,334,4758.5166.0
合計15,751,750100.0102.4

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.前期以前に受注した業務で、契約額の増減があるものについては、変更の行われた期の受注高にその増減額を含んでおります。
(3)完成高実績
当社グループは、単一セグメントであるため、業務の区分別の完成高を記載しております。
業務の区分等完成高(千円)構成比(%)前年同期比(%)
建設コンサルタント業務
地理空間情報業務
3,138,18720.6108.3
環境業務657,1084.386.7
まちづくり業務5,908,20338.985.5
設計業務4,419,74029.1101.2
事業ソリューション業務1,079,4717.1167.3
合計15,202,709100.097.6

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(4)手持受注高
当社グループは、単一セグメントであるため、業務の区分別の手持受注高を記載しております。
業務の区分等手持受注高(千円)構成比(%)前年同期比(%)
建設コンサルタント業務
地理空間情報業務
2,691,05626.5151.0
環境業務460,2544.579.0
まちづくり業務3,975,32239.296.3
設計業務2,075,10620.585.8
事業ソリューション業務940,0599.3137.2
合計10,141,797100.0105.7

(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度の経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は、以下のとおりであります。
また、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、将来に関する事項には不確実性、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。
なお、当社グループは、まちづくりのソリューション企業として、地理空間情報業務、環境業務、まちづくり業務、設計業務及び事業ソリューション業務を総合的に営む単一の事業の企業集団であるため、セグメント情報は記載しておりません。
当社グループを取り巻く経営環境は、コロナウイルス感染症拡大による影響はあるものの、建設コンサルタント官庁需要においては、防災・減災、老朽化した社会インフラの維持・管理、国土強靭化への対応など公共投資が堅調に推移し、当連結会計年度の受注高は15,751百万円(前年同期は15,377百万円)となりました。前連結会計年度に比べ374百万円増加いたしました。
(1)経営成績
① 売上高
売上高は15,202百万円(前年同期は15,581百万円)となりました。前連結会計年度に比べ378百万円減少いたしました。
② 売上総利益
売上総利益は4,190百万円(前年同期は4,061百万円)となりました。売上高に対する売上総利益率は27.6%となり、前連結会計年度に比べ、それぞれ129百万円、1.5ポイント増加いたしました。
③ 販売費及び一般管理費
販売費及び一般管理費は3,046百万円(前年同期は2,957百万円)となりました。名古屋支店および大阪支店事務所のリニューアル費用や新基幹システム導入費用等により売上高に対する販売費及び一般管理費率は20.0%となり、前連結会計年度に比べ、それぞれ88百万円、1.0ポイント増加いたしました。
④ 営業利益
営業利益は1,144百万円(前年同期は1,104百万円)を計上し、9期連続の増益となりました。売上高に対する営業利益率は7.5%となり、前連結会計年度に比べ、それぞれ40百万円、0.4ポイント増加いたしました。
⑤ 営業外損益
営業外損益は32百万円の利益(前年同期は46百万円の利益)となり、前連結会計年度に比べ14百万円減少いたしました。営業外収益は59百万円となり、その主な要因は受取配当金によるものであり、前連結会計年度に比べ6百万円減少いたしました。営業外費用は26百万円(前年同期は18百万円)となり、その主な要因は有価証券売却損によるものであり、前連結会計年度に比べ8百万円増加いたしました。
⑥ 経常利益
経常利益は1,176百万円(前年同期は1,151百万円)となりました。売上高に対する経常利益率は7.7%となり、前連結会計年度に比べ、それぞれ25百万円、0.3ポイント増加いたしました。
⑦ 特別損益
特別損益は8百万円の損失(前年同期は1,274百万円の利益)となり、本社・東京支店ビル土地建物の譲渡等による特別利益1,409百万円を計上した前連結会計年度に比べ1,283百万円減少いたしました。その主な要因は固定資産除却損によるものであります。
⑧ 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は823百万円(前年同期は1,715百万円)となり、前連結会計年度に比べ891百万円減少いたしました。
(2)財政状態
① 資産、負債及び純資産
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末から647百万円増加して12,978百万円となりました。流動資産は現金及び預金と未成業務支出金の増加を主な要因として596百万円増加し、固定資産はソフトウエア仮勘定の増加と投資有価証券と破産更生債権等の減少を主な要因として50百万円増加いたしました。
当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末から253百万円増加して4,692百万円となりました。流動負債は未成業務受入金の増加、1年内返済予定の長期借入金と未払法人税等の減少を主な要因として451百万円増加し、固定負債は長期借入金と退職給付に係る負債の減少と資産除去債務と繰延税金負債の増加を主な要因として198百万円減少いたしました。
当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末から393百万円増加して8,286百万円となりました。利益剰余金は親会社株主に帰属する当期純利益の計上による増加と剰余金の配当による減少により504百万円増加し、自己株式は取得・消却等により27百万円減少いたしました。
② キャッシュ・フロー
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の概要 (3)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
③ 資金需要
当社グループは、地理空間情報業務、環境業務、まちづくり業務、設計業務及び事業ソリューション業務を総合的に営む単一事業(建設コンサルタント業)の企業集団であり、当社グループの運転資金需要の主なものは、建設コンサルタント業務の受注業務遂行のための人件費、業務委託費、材料費等その他経費のほか、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。営業費用の主なものは給与手当、福利厚生費などの人件費、営業活動に伴う交通費等であります。当社グループの研究開発費用は様々な営業費用として計上されておりますが、研究開発に携わる従業員の人件費が研究費用の主要な部分を占めております。
④ 契約債務
2020年5月31日現在の契約債務の概要は以下のとおりであります。
区分合計(千円)年度別要支払額(千円)
1年内1年超2年内2年超3年内3年超4年内4年超5年内
長期借入金(1年内返済予定を含む)120,00060,00060,000---

⑤ 財政政策
当社グループは、運転資金及び設備投資資金につきましては、内部資金又は借入により資金調達することとしております。資金調達の方針につきましては、運転資金は返済期限が1年以内の短期借入金で調達し、設備投資資金及び事業規模が1年を超える不動産開発業務資金につきましては、原則として固定金利の長期借入金及び社債で調達しております。
2020年5月31日現在、1年内返済予定の長期借入金を除く短期借入金の残高はありません。また、1年内返済予定の長期借入金を含む長期借入金の残高は120百万円であります。
当社グループは、引き続き営業活動によるキャッシュ・フローを借入金の返済に充当し、有利子負債の圧縮に努める所存であります。
(3)中期経営計画の達成状況
中期経営計画(2020年5月期~2023年5月期)の初年度である2020年度5月期の達成状況は以下のとおりです。
東日本大震災復興業務の終息により売上高は計画比797百万円減(5.0%減)となり、営業利益は計画比55百万円減(4.6%減)となりました。
指標2020年度5月期
(計画)
2020年度5月期
(実績)
2020年度5月期
(計画比)
売上高16,000百万円15,202百万円△797百万円 (5.0%減)
営業利益1,200百万円1,144百万円△55百万円 (4.6%減)

(4)これまでの10年の振り返りと今後の展望
当社のこれまでの10年を振り返ってみますと、業績は堅調に推移してきており、受注高は10年前の10,916百万円から15,751百万円まで伸長しました。期末の手持受注残高は10,141百万円に達しています。また、営業利益は1,144百万円を計上し、9期連続の増益となりました。安定した業績を背景に営業キャッシュフローは改善し、借入金の返済を進めてきた結果、有利子負債は10年前の4,175百万円から120百万円まで減少しました。
長期借入金は、期末残高120百万円となり、2022年5月期に完済予定です。
短期借入金は、期末残高0(ゼロ)で、期中のつなぎ運転資金のみであり、ここ数期、期末残高は0で推移しています。
以上のとおり、実質的に借入はなく、自己資本比率も向上しており、財務基盤は着実に強化されています。
業績面においては、震災復興関連業務がピークアウトした後も、国土強靭化や無電柱化等を背景とした官公庁業務や、当社の強みである民間業務の伸長により、堅調に推移しており、当面は、このトレンドを維持していくことができるものと、現状、判断しております。
この先、コロナウイルスの長期化や、不動産市場の動向如何によっては不安材料もありますが、現在の受注レベルを維持し、営業キャッシュフローの確保により、経営基盤の更なる強化を図っていく計画です。
こうした取り組みが、当社の持続的成長と企業価値向上を実現していく最善の方法であると考えております。