有価証券報告書-第31期(2025/04/01-2026/03/31)
(4) 戦略
当社グループは、“「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。”をミッションとしています。事業を通じて社会にポジティブなインパクトをもたらすと共に、地球環境や人権等を含めた社会課題に向き合い、未来世代に責任を持ったサステナビリティ経営を推進していくために、下記のサステナビリティ基本方針を定めています。
1.サステナビリティを社会、事業の両軸で捉え推進する
2.グループ各社の特性を活かしながら、一丸となってサステナビリティに取り組む
3.前例に捉われずにチャレンジし、イノベーションを継続的に生む努力をする
※2026年4月1日にMissionとValuesの刷新を行なっていますが、2025年度実績として旧Missionを掲載しています。
当社グループの主な事業は、国内最大級のユーザー基盤を有するプラットフォームを中核とし、データおよびAIを活用してサービス間の連携を強化することで、利用者の利便性向上とエンゲージメントの拡大を図り、メディア、コマース、決済金融関連サービスの提供を行う戦略事業等での複数の収益機会を創出しています。循環を通じて持続的な成長を実現するとともに、社会課題の解決と企業価値の向上の両立を目指しています。
一方で、当社グループの事業活動は、デジタル社会の進展、技術革新の加速、規制環境の変化、気候変動や人権問題を含む社会的要請の高まり等、様々なサステナビリティ関連のリスクおよび機会の影響を受けます。これらは、当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに中長期的な影響を及ぼす可能性があることから、経営上の重要な要素として認識しています。
上記を踏まえ、当社グループはサステナビリティを社会的責任としてのみではなく、事業戦略そのものに組み込み、企業価値創造の基盤と位置付けています。具体的には、データ・AIの利活用を主軸とした事業構築、信頼性の高いプラットフォーム運営を通じた安全・安心なデジタル社会の実現、人材の多様性と能力を最大限に引き出す人的資本経営の推進等を通じて、持続可能な社会の実現に貢献すると同時に、当社の競争優位性の強化を図っています。
このような事業環境および社会的要請の変化を踏まえ、当社グループの事業活動およびバリュー・チェーン全体を対象として、サステナビリティ関連のリスクおよび機会の洗い出しおよび重要性評価を実施しており、その結果、当社の戦略および価値創造にとって重要と判断した事項について、「重要なサステナビリティ関連のリスクおよび機会」として整理しています。
当社グループでは、重要と判断したサステナビリティ関連のリスクおよび機会を、以下6つのリスク・機会カテゴリに区分し、サステナビリティ関連のリスクおよび機会を管理する戦略を策定・推進しています。
カテゴリ1:データ/AIを活用した感動(WOW&!)の提供
カテゴリ2:安全・安心なデジタルプラットフォームの運営
カテゴリ3:災害およびデジタル格差への対応
カテゴリ4:持続的成長を支えるガバナンス体制の構築
カテゴリ5:人的資本価値の最大化
カテゴリ6:未来世代に向けた地球環境への責任
(注)カテゴリ1から5までは気候関連以外のサステナビリティ関連のリスクおよび機会のみが含まれています。カテゴリ6には気候関連と気候関連以外のサステナビリティ関連のリスクおよび機会の両方が含まれています。
(気候関連以外のリスクおよび機会)
① サステナビリティ関連のリスクおよび機会の識別
当社ではサステナビリティ関連のリスクおよび機会の管理プロセスに基づき特定した6つの重要なリスク・機会カテゴリ毎に、重要なリスクおよび機会の影響が生じると合理的に見込み得る時間軸を特定しています。時間軸の定義設定では、ERM(全社的リスクマネジメント)が設定している発生可能性(どのくらいの可能性/頻度で顕在化するか)の定義との整合性を考慮しており、全社的な意思決定とサステナビリティ関連のリスクおよび機会に関する戦略との一体的な運用につなげています。上記に基づき、「短期」、「中期」および「長期」の定義とリスク・機会カテゴリ毎の時間軸を以下のように定義しています。
〈時間軸の定義〉
短期:1年
中期:3年
長期:5~10年
〈影響が生じる時間軸〉
② サステナビリティ関連のリスクおよび機会への対応戦略
当社はサステナビリティ関連の重要なリスクおよび機会に対応するために様々な取り組みを実施しており、また今後も取り組みを続けていく計画です。対応策についてはKPIを設定し、その進捗をモニタリングしています。KPIの内容および実績については「(5) 指標と目標」を参照ください。
〈2025年度および今後の対応計画〉
なお、取り組みの詳細については、以下よりご覧ください。
https://www.lycorp.co.jp/ja/sustainability/management/#anc4
当社グループでは、特定された重要なリスク・機会カテゴリへの対応策を策定するプロセスにおいて、企業価値向上を目的とした資源配分の最適化を図るため、各施策が事業、社会、および財務状況に及ぼすトレードオフについて検討を行っています。具体的には、「データ/AIを活用した感動(WOW&!)の提供」や「人的資本価値の最大化」といった成長戦略(攻め)の観点と「安心・安全なデジタルプラットフォームの運営」や「持続的成長を支えるガバナンス体制の構築」といった基盤整備(守り)の観点における、トレードオフを認識し、相互影響を分析した上で最適な対応策を選択しています。
AIを活用した新サービスの創出や既存サービスの改善とともに、全社員のAI人材化に向けた育成を通じて組織全体の専門性を高めることは、当社の競争優位性を高めます。一方で、不適切な活用はAI倫理に関するリスクを増大させ、過度なスピード重視はサービスの停止等のリスクを誘発する側面があります。当社は透明・公正かつ迅速な意思決定を行うコーポレート・ガバナンス体制を構築しており、その体制のもとでライフインフラ提供者としての社会的責務を果たすために必要なシステム投資やコスト増加、開発期間を許容し、迅速かつ信頼性のあるサービスの開発・改善を推進する戦略を採用しています。また、AI倫理基本方針やAIに関する社内運用ルールを策定し社会的信頼に裏打ちされた事業成長を目指します。
③ レジリエンス
当社グループは、サステナビリティ関連のリスクから生じる不確実性に対応する能力を評価するため、レジリエンス評価プロセスを構築しており、重要なリスク・機会カテゴリの時間軸に沿った各戦略の有効性を確認しました。
評価プロセスでは、外部環境の変化を考慮した対応策の見直しの要否をサステナビリティ委員会にて取りまとめ、取締役会への報告を行うサイクルを確立しています。また、ERM(全社的リスクマネジメント)との連携により、トップリスクへの対応策に関する有効性評価の結果を活用した、一体的な運用を実施しています。評価結果を通じて、全ての重要なサステナビリティ関連のリスクにおいて予期せぬ社会・経済環境の変動に対しても事業活動を維持できる体制の構築に努めていることを確認しました。今後も環境変化に合わせ、適宜経営資源の追加投入や仕組みの刷新を行い、レジリエンスを基盤として持続的な企業価値の向上を図ります。特に、重要なリスク・機会カテゴリのうち、変化の大きい「安全・安心なデジタルプラットフォームの運営」および「人的資本価値の最大化」は下記の環境変化とそれに対応した調整能力を認識しています。
〈安心・安全なデジタルプラットフォームの運営〉
当社グループを取り巻く環境において、個人情報保護やサイバーセキュリティへの社会的要請が高まっており、国内外における法規制の強化も加速しています。一方でサイバー攻撃等の犯罪行為は高度化・巧妙化の一途を辿っており、昨今グループ会社においてもランサムウェア被害による事業停止事案が発生しました。発生した事案の徹底的な原因分析と、それに基づく防御・検知・復旧体制の再構築を迅速に実施しました。当社グループでは、NIST(米国国立標準技術研究所)等の国際的なフレームワークに基づいた多層防御体制を敷き、現行の包括的なセキュリティ対策が有効に機能していると評価しています。
〈人的資本価値の最大化〉
現在、生成AI技術の急速な進展に伴い、IT・AI分野における専門スキル要件は高度化・変化しています。当社グループが持続的な成長とイノベーションを実現するためには、事業戦略に合致した人材の確保・育成が不可欠です。当報告期間である2025年度では、全社員を対象とした生成AI活用推進施策を開始しました。具体的には、生成AI使用ルールの策定とともに、全社員が日常業務でAIを使いこなす「AI人材」へと進化するためのツール提供および学習機会の拡充を継続的に実施しています。今後、既存業務を効率化した上で、社員がより創造的な新しいチャレンジに集中できる環境を整備し、イノベーションの創出を目指しています。また、市場環境や技術動向の変化を常時モニタリングし、経営会議や取締役会において、人的資本を含む経営資源の配分を適宜見直す体制を構築しています。以上の取り組みにより、当社グループは急速な技術革新や労働市場の構造変化といった予期せぬ外部環境の変化が生じた場合においても、必要な人材能力を迅速に特定・再配置し、事業戦略を遂行できるよう努めています。
(気候関連)
① 気候関連のリスクおよび機会の識別
当社グループでは、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスクおよび機会として、次のものを識別しています。
リスク
a. 炭素税や排出量取引によるコスト増加、および電力とエネルギー需要の増加
(移行リスク、時間軸:短~中期)
b. 顧客の行動変化に伴う影響(移行リスク、時間軸:短~中期)
c. 異常気象の激甚化による影響(物理的リスク、時間軸:短~中期)
機会
a. 技術革新や環境配慮の進展(時間軸:長期)
b. ライフスタイルや行動変容に対応したサービスの提供(時間軸:短~中期)
当社グループは、気候関連のリスクおよび機会の影響が生じると合理的に見込み得る時間軸について、「短期」、「中期」および「長期」をそれぞれ以下のように定義しています。
〈時間軸の定義〉
短期:~2030年(GHG関連投資計画、カーボンニュートラル目標)
中期:~2035年(日本政府NDC目標)
長期:~2050年(ネットゼロ目標)
〈前提〉
・当社グループは、グループ全社の温室効果ガス「スコープ1」および「スコープ2」を2030年度までに実質ゼロにする「2030カーボンニュートラル宣言」における2030年度目標の達成に向けて「GHG関連投資計画」を策定の上、まずは2028年度までの5か年のGHG投資計画に関する戦略的意思決定を経営会議にて行っています。
・日本政府は、世界全体の1.5℃目標と整合する2050年ネットゼロの実現に向けた目標として、2035年度に温室効果ガスを2013年度比で60%削減すること等を掲げたNDCを国連に提出しています。
・当社グループは、取引先等で排出される温室効果ガス「スコープ3」も含めた事業活動に関わる全ての温室効果ガス排出量を2050年度までに実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現も目指しています。
なお、当社ではERM(全社的リスクマネジメント)活動において、気候関連リスクを含むリスクの見直しを年次サイクルで行っていることからも、特定したリスクおよび機会の影響が生じると合理的に見込み得る時間軸は、当社グループが戦略的意思決定に用いている計画期間と整合しているものと考えます。
② 気候関連のリスクおよび機会が集中している部分
当社グループでは、メディア事業、コマース事業および決済金融関連サービスの提供を行う戦略事業等、多様なインターネットサービスを展開しており、データセンター、オフィス、物流センター等において事業を運営するための大規模な電力を使用しています。特にデータセンターにおける電力使用量は、当社グループ全体の大部分を占めていることからも「① 気候関連のリスクおよび機会の識別」にて特定した気候関連のリスクおよび機会が集中している部分であるといえます。電力使用量の増加や排出量取引制度および化石燃料賦課金の導入は、税負担や運用コストの増加といった財務影響を及ぼすリスクがあるため、データセンター電力使用量の効率性向上と再生可能エネルギー化がそのリスク回避につながると考えています。一方で、データセンターの設備やサーバーを定期的に入れ替えることにより、高いエネルギー効率での運用が可能となり、電力使用量を削減する機会にもなります。また、事業継続性の確保および安定的なサービス提供の観点からも、データセンターの安定稼働は重要な経営基盤の一つです。異常気象の激甚化に伴う自然災害リスクを最小化し、データセンターの安定稼働を維持するために、拠点の分散化は重要な取り組みとして認識しています。
③ 気候関連のリスクおよび機会が現在与えている影響
当報告期間における「① 気候関連のリスクおよび機会の識別」にて特定した気候関連のリスクおよび機会に対する主な取り組みは以下のとおりです。
リスク
a. 炭素税や排出量取引によるコスト増加、および電力とエネルギー需要の増加
主にデータセンターにおける電力使用量に対しては、当社グループとして2030年度までにスコープ1,2を実質ゼロとする「2030カーボンニュートラル宣言」および当社として2025年度までにスコープ1,2を実質ゼロとする「2025カーボンニュートラル宣言」をそれぞれ目標として設定し、再生可能エネルギーの割合を増やすことによって炭素税等による運用費の増加に備えています。なお、当報告期間である2025年度には実質再生可能エネルギー100%化を実現し、「2025カーボンニュートラル宣言」の目標を達成しました。加えて、サーバー等から発生する熱の冷却に外気を活用した空調システムを採用する等、緩和策となる新規設備投資を継続的に行うことによるエネルギー効率の改善と電力使用量の低減にも取り組み、続く「2030カーボンニュートラル宣言」の達成を目指します。
b. 顧客の行動変化に伴う影響
気候変動が社会・経済へと広範囲に影響して被害が発生した場合には、当社グループの一部事業における売上収益減少がリスクとして考えられます。バリュー・チェーン観点においても、広告主のビジネス自粛や消費者心理の冷え込みによる影響が想定されます。そのため、利用者の維持拡大と共に、より多様な事業を展開するポートフォリオ経営や防災減災サービス等、社会にとって必要不可欠なライフラインサービスを適応策として継続的に提供していくことによりリスクを最小限に抑えることができると考えています。
c. 異常気象の激甚化による影響
気候変動による大規模な災害が発生した場合には、事業継続性の懸念がリスクとして考えられます。安定したサービスを提供できるよう、被害を低減させるためのデータセンターおよび物流センター機能の分散化や気候変動による海面上昇の影響を考慮した当社の高知センター移転等、適応策となる環境整備によってリスクを最小限に抑えることができるものと考えています。また、当社グループのバリュー・チェーンでは、物流センターへの調達寸断リスクを低減して安定的な商品供給体制の確保をするためにも、可能な限りサプライヤーの分散化を推進する必要があると認識しています。
機会
a. 技術革新や環境配慮の進展
当社グループにおける電力使用量の大部分は、データセンターの運営によるものです。このため、より効率的かつ省エネルギー型のデータセンターの設計および運用を推進することは、エネルギー効率の改善を通じた電力使用量の削減につながります。これにより、環境負荷の低減に加え、エネルギーコストの削減等の効果も期待できます。また、当社グループは、これらの取り組みを自社の事業活動にとどめることなく、バリュー・チェーン全体へと拡大していくことも重要であると認識しています。環境配慮型の資機材・サービスの選定やサプライヤーとの協働を通じて、調達段階における環境負荷の低減および供給体制の高度化を図ることで、緩和策としてのバリュー・チェーン全体における持続可能性の向上に努めていきます。
b. ライフスタイルや行動変容に対応したサービスの提供
社会の気候変動問題への関心の高まりは、当社グループにとって事業拡大につながる可能性があるものと認識しています。当社グループでは、各種事業活動を通じて、気候変動の緩和および適応に資する取り組みを推進しています。リユース事業では循環型社会への移行に貢献するとともに、「サストモ」をはじめとするサステナビリティ関連メディアや「Yahoo!ネット募金」等のサービスを通じて、気候関連を含む環境課題に対する社会的関心の喚起および行動変容の促進に努めています。また、バリュー・チェーンにおいても、気候変動への対応を積極的に進めるサプライヤーとの取引をより推進させることで、持続可能性に配慮した調達体制の構築を図っていきます。
他にも、以下のような気候関連のリスクおよび機会への対処を進めています。
・エネルギー調達モデルの変更(気候変動の「緩和」)
当報告期間である2025年度には実質再生可能エネルギー100%化を実現し、「2025カーボンニュートラル宣言」の目標を達成しました。続く「2030カーボンニュートラル宣言」の達成を実現するために、コーポレートPPAによる長期再生可能エネルギー由来の電力契約の開始と環境価値証書の活用等により、当社グループ全体の再生可能エネルギー導入率を100%に引き上げていきます。
・サプライチェーン向け方針の変更(気候変動の「緩和」)
サプライヤー調達方針に環境配慮内容の項目を組み込み、契約内容やエンゲージメントを通じてサプライヤーとともに更なるスコープ3の削減に取り組んでいきます。
当社グループが提供する多様なインターネットサービスの運営にあたっては、データセンターをはじめとする設備において大規模な電力を必要としています。そのため、事業拡大に伴う電力使用量の増加は、エネルギーコストの上昇および温室効果ガス排出量の増加につながる可能性があり、重要なリスクの一つとなります。一方で、技術革新の推進や設備運用の高度化によるエネルギー効率の改善は、電力使用量の抑制および温室効果ガス排出量の削減につながるものであり、重要な機会であると認識しています。当社グループでは、事業成長に伴う電力需要の増加と環境負荷低減とのトレードオフを踏まえつつ、効率的なエネルギー使用の実現に取り組んでいきます。
④ 気候関連のリスクおよび機会が将来与えると予想される影響
「① 気候関連のリスクおよび機会の識別」にて特定した気候関連のリスクおよび機会について、翌年次報告期間以降では以下の影響が想定されます。
リスク
a. 炭素税や排出量取引によるコスト増加、および電力とエネルギー需要の増加
短期的には、炭素税や排出量取引が導入された場合、電力使用に伴う追加的な支出が営業費用として発生しますが、大規模な新規投資は予定しておらず、資金計画上は手元流動資金や営業活動キャッシュ・フローの範囲内で対応する見込みです。また、炭素税や電力価格が上昇した場合に、営業費用が増加して営業活動キャッシュ・フローにマイナス影響が生じる可能性があります。しかしながら、エネルギー効率の改善により営業費用の増加は一定程度緩和される見込みです。
中期的には、炭素価格が段階的に上昇することを踏まえて、再生可能エネルギーの調達を拡大することに伴う追加的な営業費用が継続的に発生する見込みです。加えて、電力使用量の削減を目的とした設備投資を段階的に実施することで、総資産が増加する見込みです。調達に伴う継続的な支出については、資金計画上で安定的な支出として織り込みつつ、新規の大規模な投資は限定的として既存設備の維持・更新を中心とした対応を想定しています。これらの対応に必要な資金は内部資金を基本とし、不足する場合には借入やグリーンボンド等の活用をする見込みです。処分計画としては、バリュー・チェーンにおける炭素排出強度の高い電力契約を順次見直していく予定です。
長期的には、再生可能エネルギー100%化により炭素税負担の回避が見込まれます。一方で、再生可能エネルギー調達費用やエネルギー効率化投資の一部は継続的に発生することになりますが、エネルギー効率化の進展により電力使用量が減少し、費用構造およびキャッシュ・フローは中長期的に安定化することが期待できます。資金計画上は再生可能エネルギー調達コストを安定的な固定費として織り込む見込みです。処分計画としては、非効率な設備や契約を整理することで低炭素化されたポートフォリオに移行し、財政状態は安定化することが想定されます。
b. 顧客の行動変化に伴う影響
短期的には、顧客行動の変化により一部事業で売上収益が減少し、営業活動キャッシュ・フローにマイナス影響が生じる可能性があります。
中期的には、戦略事業への投資を拡大することにより総資産が増加するとともに、必要に応じて長期借入や社債による資金調達を行う見込みです。顧客行動の変化が継続した場合、既存事業の売上収益は減少圧力を受け、営業活動キャッシュ・フローへのマイナス影響が累積的に拡大する可能性があります。また、成長投資に伴い、投資活動キャッシュ・フローの支出が継続して増加する見込みです。
長期的には、投資が収益化し営業活動キャッシュ・フローが安定するとともに、借入金や社債の返済が進み、財政状態は安定化すると想定されます。
c. 異常気象の激甚化による影響
短期的には、自然災害によるデータセンターや物流センター拠点の機能停止に伴い、売上収益の減少および営業費用が発生し、営業活動キャッシュ・フローにマイナス影響が生じる可能性があります。災害時には当社グループが保有する附属設備の修繕・更新が必要となり、一時的な資金需要が発生しますが、主として手元資金の活用により対応する見込みです。
中期的には、事業継続性確保のため拠点分散化投資を実施し、使用権資産や有形固定資産が増加するとともに、リース負債が増加する可能性があります。投資資金については、営業キャッシュ・フローの範囲内でリース料を支払うことを基本とし、不足する場合には借入や社債による調達を行う可能性があります。長期的には、新規の大規模な支出は限定的であり、維持・更新投資を中心とした対応を行うことで、財政状態は安定的に推移する見込みです。
機会
a. 技術革新や環境配慮の進展
短期的には、エネルギー効率向上を目的とした設備改修や新規設備投資等を継続的に行うことにより、投資活動キャッシュ・フローの支出が増加する見込みです。同時に、電力使用量の削減により、営業活動キャッシュ・フローに一定のプラス影響が現れる見込みです。
中期的には、高効率サーバー等への設備投資を継続することでエネルギー効率化による営業費用の低減が進み、営業活動キャッシュ・フローは安定的に改善する見込みです。投資資金については内部資金を基本とし、不足する場合にはグリーンボンド等の外部資金の活用を検討しています。稼働台数圧縮と設置スペース削減が進み電力コスト低減効果が拡大することで、営業活動キャッシュ・フローは安定的に改善する見込みです。さらに建物増棟を抑制できるため、新たなリース契約による固定費負担を回避できる見込みです。一方で、省エネ設備やAI制御の導入に伴う投資活動キャッシュ・フローの支出は一定程度継続します。
長期的には、エネルギー効率化による営業費用の低減がより一層進むことで、電力のコスト削減が進み、キャッシュ・フロー全体として安定性が高まる見込みです。
b. ライフスタイルや行動変容に対応したサービスの提供
短期的には、リユース事業や環境関連広告サービス等の利用拡大により、売上収益および営業活動キャッシュ・フローが増加する見込みです。当該成長に伴う追加的な投資は限定的であり、資金計画上は営業キャッシュ・フローによる内部資金で対応可能となる見込みです。
中期的には、環境意識の高まりにより売上収益の増加効果が拡大し、営業活動キャッシュ・フローは安定的に増加する見込みです。収益増加に伴い総資産は増加しますが、大規模な設備投資や資産処分は想定していません。また、成長に伴う資金需要については、内部資金による対応を基本としており、外部調達は想定していません。
長期的には、バリュー・チェーンにおける循環型社会の進展や脱炭素需要の高まりを背景に、当該サービスの需要が持続的に拡大し、営業活動キャッシュ・フローは安定的に推移する見込みです。投資活動キャッシュ・フローも維持・更新投資に限定されるため、大規模な支出は発生しない見込みです。
⑤ 気候レジリエンス
2025年度に実施したシナリオ分析では、国際的な認知度や信頼性を考慮し、パリ協定に基づき国際的に求められている「産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑制する」ことと整合する、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)および気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が策定したシナリオを参照しています。これらのシナリオは、政府の政策設計や国際的な炭素価格制度、バリュー・チェーン全体の排出削減要請等の基礎となっているため、当社グループの事業戦略上不可欠と判断しました。
a. 1.5℃整合
・IEA NZE(Net Zero Emissions by 2050)、IPCC SSP1-1.9
・移行リスクが最も顕著(政策強化、炭素税、電力価格上昇)
b. 2℃相当
・IEA APS(Announced Pledges Scenario)、IPCC SSP1-2.6
・移行リスクおよび物理的リスクの双方が顕在化
c. 4℃超過
・IEA STEPS(Stated Policies Scenario)、IPCC SSP5-8.5
・物理的リスクが最も顕在化(豪雨・洪水・高温化の増加)
当社グループは、以下のような事業構造を持っており、移行リスクと物理的リスクの双方が事業継続性に影響します。
・大規模なデータセンターを有し電力依存度が高い
・コマースや決済サービス等社会インフラ的サービスの事業継続が極めて重要
・物流ネットワークの停止が売上維持に大きく影響
また、当社グループが掲げる以下の方針とも整合します。
・再生可能エネルギー比率の拡大
・データセンター運用の高効率化
・物流拠点の分散化とバックアップ体制の構築
更には、複数のシナリオを用いて分析を行うことでシナリオ間の差異を比較することができ、長期的な投資や設備計画の優先順位づけも行うことが可能となります。
以上のことから、当社の選択したシナリオが当社グループの気候レジリエンス評価に対して有効であると判断しました。
気候関連のリスクおよび機会は、長期間にわたって当社グループの事業活動に影響を与える可能性があるため、以下の時間軸・事業範囲および主要な前提条件に基づいて、複数の気候関連シナリオ分析を行っています。
〈時間軸・事業範囲〉
・分析に用いた時間軸:2030年~2050年
・分析に用いた事業範囲:当社グループの全事業が対象
〈主要な前提条件〉
a. 当社が事業を営む法域における気候関連の政策
・日本の2050年ネットゼロ目標
・日本の2030年温室効果ガス排出削減46%目標(2013年度比)
・日本の再生可能エネルギー比率36~38%(2030年目標)
・炭素価格制度(カーボンプライシング)の段階的強化
・省エネ法・再エネ促進法に基づく事業者規制の強化
・データセンター事業者への電力効率化要求(PUE改善)の強化
b. マクロ経済のトレンド
・GDP成長率の変動
・エネルギー価格の変動
・炭素価格の上昇
・物流網や労働市場における気候関連の影響
c. 国又は地域レベルの変数
・豪雨、洪水、台風の強度や頻度の増加
・人口動態の変化(都市集中の継続)
・物流インフラの脆弱性
・高温化による電力需要増と停電リスクの増加
・水害リスク
d. エネルギーの使用およびエネルギー構成
・データセンターにおける電力需要の増加
・再生可能エネルギー調達の拡大と比率の上昇
・電力価格の上昇
e. 技術の進展
・データセンター効率化技術(PUE改善)
・サーバー冷却技術の進展
・再生可能エネルギーの低コスト化と普及拡大
・蓄電池技術の進展による電力安定性向上
・物流ロボティクスと自動化技術の進展
・AIによる需要予測と災害対応最適化の高精度化
当社グループでは、気候関連のシナリオ分析結果に基づき、気候レジリエンスの評価を報告期間毎に実施しています。(WEO2025で保留となったAPSも継続利用)
財務的な影響度として開示する指標は、将来的な見込みや発生頻度が推測を伴うものであり、測定の不確実性の程度が高い情報となります。しかしながら、複数のシナリオ分析に基づく柔軟な対応方針の策定や、当報告期間である2025年度には実質再生可能エネルギー100%化を実現し「2025カーボンニュートラル宣言」の目標を達成する等、レジリエンスを踏まえたカーボンニュートラルへの取り組みが順調に推移していることを確認しています。今後も環境変化に合わせ、気候関連のリスクおよび機会における包括的な対処、気候関連の進展や不確実性への対処、短期、中期および長期にわたる戦略およびビジネスモデルの調整等に取り組んでいきます。
当社グループは、“「WOW」なライフプラットフォームを創り、日常に「!」を届ける。”をミッションとしています。事業を通じて社会にポジティブなインパクトをもたらすと共に、地球環境や人権等を含めた社会課題に向き合い、未来世代に責任を持ったサステナビリティ経営を推進していくために、下記のサステナビリティ基本方針を定めています。
1.サステナビリティを社会、事業の両軸で捉え推進する
2.グループ各社の特性を活かしながら、一丸となってサステナビリティに取り組む
3.前例に捉われずにチャレンジし、イノベーションを継続的に生む努力をする
※2026年4月1日にMissionとValuesの刷新を行なっていますが、2025年度実績として旧Missionを掲載しています。
当社グループの主な事業は、国内最大級のユーザー基盤を有するプラットフォームを中核とし、データおよびAIを活用してサービス間の連携を強化することで、利用者の利便性向上とエンゲージメントの拡大を図り、メディア、コマース、決済金融関連サービスの提供を行う戦略事業等での複数の収益機会を創出しています。循環を通じて持続的な成長を実現するとともに、社会課題の解決と企業価値の向上の両立を目指しています。
一方で、当社グループの事業活動は、デジタル社会の進展、技術革新の加速、規制環境の変化、気候変動や人権問題を含む社会的要請の高まり等、様々なサステナビリティ関連のリスクおよび機会の影響を受けます。これらは、当社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローに中長期的な影響を及ぼす可能性があることから、経営上の重要な要素として認識しています。
上記を踏まえ、当社グループはサステナビリティを社会的責任としてのみではなく、事業戦略そのものに組み込み、企業価値創造の基盤と位置付けています。具体的には、データ・AIの利活用を主軸とした事業構築、信頼性の高いプラットフォーム運営を通じた安全・安心なデジタル社会の実現、人材の多様性と能力を最大限に引き出す人的資本経営の推進等を通じて、持続可能な社会の実現に貢献すると同時に、当社の競争優位性の強化を図っています。
このような事業環境および社会的要請の変化を踏まえ、当社グループの事業活動およびバリュー・チェーン全体を対象として、サステナビリティ関連のリスクおよび機会の洗い出しおよび重要性評価を実施しており、その結果、当社の戦略および価値創造にとって重要と判断した事項について、「重要なサステナビリティ関連のリスクおよび機会」として整理しています。
当社グループでは、重要と判断したサステナビリティ関連のリスクおよび機会を、以下6つのリスク・機会カテゴリに区分し、サステナビリティ関連のリスクおよび機会を管理する戦略を策定・推進しています。
カテゴリ1:データ/AIを活用した感動(WOW&!)の提供
カテゴリ2:安全・安心なデジタルプラットフォームの運営
カテゴリ3:災害およびデジタル格差への対応
カテゴリ4:持続的成長を支えるガバナンス体制の構築
カテゴリ5:人的資本価値の最大化
カテゴリ6:未来世代に向けた地球環境への責任
(注)カテゴリ1から5までは気候関連以外のサステナビリティ関連のリスクおよび機会のみが含まれています。カテゴリ6には気候関連と気候関連以外のサステナビリティ関連のリスクおよび機会の両方が含まれています。
(気候関連以外のリスクおよび機会)
① サステナビリティ関連のリスクおよび機会の識別
当社ではサステナビリティ関連のリスクおよび機会の管理プロセスに基づき特定した6つの重要なリスク・機会カテゴリ毎に、重要なリスクおよび機会の影響が生じると合理的に見込み得る時間軸を特定しています。時間軸の定義設定では、ERM(全社的リスクマネジメント)が設定している発生可能性(どのくらいの可能性/頻度で顕在化するか)の定義との整合性を考慮しており、全社的な意思決定とサステナビリティ関連のリスクおよび機会に関する戦略との一体的な運用につなげています。上記に基づき、「短期」、「中期」および「長期」の定義とリスク・機会カテゴリ毎の時間軸を以下のように定義しています。
〈時間軸の定義〉
短期:1年
中期:3年
長期:5~10年
〈影響が生じる時間軸〉
| リスク・機会 カテゴリ | リスク/機会 | 内容 | 時間軸 |
| データ/AIを活用した感動(WOW&!)の提供 | リスク | データ/AIを活用した新サービスの開発遅延・品質不備や既存サービスの改善不足による、企業としての競争力・顧客満足度の維持向上が損なわれることに起因したユーザーの離反 | 短~中期 |
| 機会 | データ/AIを活用した新サービスの創出や既存サービスの高度化による、企業としての競争力・顧客満足度の維持向上に起因したユーザー獲得 | ||
| 安全・安心なデジタルプラットフォームの運営 | リスク | ライフインフラの提供者として対応すべきセキュリティガバナンス・AI倫理・透明性の確保等への対応不足による社会的信頼の低下、およびインシデントや障害発生時にかかる事業運営コストの増加や社会的信頼の低下 | 短~長期 |
| 機会 | セキュリティガバナンス・AI倫理・透明性の確保等、ライフインフラの提供者としての社会的責任を果たすことにより得られる信頼獲得に伴うブランド価値向上、競争優位性の確立、収益基盤の安定化 | ||
| 災害およびデジタル格差への対応 | リスク | 防災・災害・パンデミック発生時の対策、公共サービスの高度化、情報リテラシーの向上、地域活性化等社会全体の持続可能性に資する課題解決への貢献が十分でないことによる、社会的評価の低下 | 中~長期 |
| 機会 | 防災・災害・パンデミック対策の支援を通じて生まれる新サービスでの新規顧客の開拓や、公共サービスの高度化、情報リテラシーの向上、地域活性化等社会全体の持続可能性に資する課題解決への貢献による社会的評価の向上 | ||
| 持続的成長を支えるガバナンス体制の構築 | リスク | 実効性あるガバナンス体制を十分に構築できていないことによるリスクマネジメント・コンプライアンス・財務基盤確保・人権尊重への対応不足、ひいては事業継続性の毀損や社会的信頼・評価の低下 | 中~長期 |
| 機会 | 実効性ある強固なガバナンス体制を構築し、リスク対応力や高いコンプライアンス・人権尊重の意識を確保することによる事業継続性・財務安定性の向上、競争優位性の確立、新たな取引・資金調達機会の拡大および顧客・投資家・規制当局からの信頼獲得を通じた企業価値の向上 | ||
| 人的資本価値の最大化 | リスク | 多様な視点や価値観を持つ人材の確保・育成不足や、AI技術の進展に伴い、保有する人材のスキルと事業戦略との間に生じるミスマッチにより、人材の活躍・成果および生産性の低下、新規サービス・プロダクト開発の遅延等の事業運営への悪影響 | 短~長期 |
| 機会 | 多様性の理解と尊重の推進や全社員のAI人材化に向けた学習機会の提供を通じて、多様な視点や価値観を持つ人材の活躍を促進するとともに、AIスキルの獲得と定着を図ることで、組織全体の専門性と変革対応力を高め、AI技術の急速な進展に適応した業務変革を推進し、生産性の向上や新規サービス・プロダクト創出等を通じた事業成長の加速 | ||
| 未来世代に向けた地球環境への責任 (気候関連以外) | リスク | 水資源保全や廃棄物削減等の対応を十分に実施しないことによる、社会的信頼の低下とそれに伴う競争力の低下および追加コストの発生や事業停止リスク | 中~長期 |
| 機会 | リユース事業等の資源循環型サービスの創出による新たな事業機会の獲得や、水資源保全による企業レピュテーションの向上および水リスク回避による事業継続性の確保 |
② サステナビリティ関連のリスクおよび機会への対応戦略
当社はサステナビリティ関連の重要なリスクおよび機会に対応するために様々な取り組みを実施しており、また今後も取り組みを続けていく計画です。対応策についてはKPIを設定し、その進捗をモニタリングしています。KPIの内容および実績については「(5) 指標と目標」を参照ください。
〈2025年度および今後の対応計画〉
| リスク・機会 カテゴリ | 2025年度に実施した対応 | 今後の対応計画 |
| データ/AIを活用した感動(WOW&!)の提供 | ・生成AIを活用した新サービスや新機能の提供を開始。LINEアプリでは、LINEが人とAIを繋ぐプラットフォームとなるべく「LINE AIトークサジェスト」を提供開始。Yahoo! JAPANアプリでは、ニュース記事を深掘する「AIアシスタント」機能や、記事を要約する機能の提供を開始 | ・最新技術の動向を継続的に調査・把握し、生成AIやデータ分析を活用した新サービスを提供。変化し続けるユーザーニーズに即応するため、サービス利用率の向上・維持のための改善サイクルを強化 ・UI/UXの改善やソーシャル化等により「ユーザーの目的や意図を推測し、文脈に応じた提案を行い、これまでユーザーが行っていたことを、自律的に支援・代行する」ようなAIのエージェント化を目指す |
| 安全・安心なデジタルプラットフォームの運営 | ・強固な信頼性のあるインフラの提供の構築に向け、国際基準を踏まえた包括的なサイバーセキュリティ対策を徹底。インシデント再発防止策の実施および恒久化、ユーザーデータの保護・管理体制の整備、セキュリティロードマップの策定等を実施 ・AI倫理基本方針に基づき、方針の実効性や社内運用ルールの整備を進め適正なAI活用体制を構築・維持 | ・最新の脅威動向に即応するため、グループ会社も対象としたランサムウェア被害による事業停止リスクへの対策強化を検討・実行 ・信頼性のあるサービス提供のため、AI活用や広告運用における倫理・透明性を強化、委託先を含めたリスク管理を徹底 |
| 災害およびデジタル格差への対応 | ・平時および災害時に必要な情報を確実に届けるための自治体との連携やアプリ機能の改善を実施。過去の災害経験や、各自治体での活用実績をもとにした災害時に活用できるLINE公式アカウントの事例集の公開や実装の推進、現地中間支援団体と連携した人的支援の取り組みを実施 ・デジタル技術やLINE等のプラットフォームを活用し、地域活性化に向けた地方創生プロジェクトの実施や地域コミュニティにおけるLINE活用事例の公開、情報リテラシー向上のためのワークショップを開催 | ・最新の知見を取り入れ、平時および災害時問わず必要な情報を確実に届けるための自治体連携モデルを検討 ・災害対応アプリや通知機能を継続的に改善し、UI/UXの最適化を通じて、より多くの利用者に適切な災害/支援情報を迅速に届ける体制を構築 ・世代間・地域間の情報格差を解消するため、幅広い世代や地域住民が交流できるコミュニティ形成に向け、デジタル技術の活用・導入に向けたサポートを実施 |
| 持続的成長を支えるガバナンス体制の構築 | ・取締役会は、適正な経営体制の維持に向け、全取締役へのアンケート・インタビュー、ガバナンス委員会でのディスカッション等、多角的な手法を用いて取締役会の実効性を評価。また、実効性維持のため年度の取組課題を特定し、評価結果と合わせてこれを公表 ・コンプライアンスの浸透を目的として全従業員を対象に年2回のe-ラーニングを実施 | ・取締役会の実効性評価を通じて特定された課題に対して、次年度のアクションプランを策定・実行し、その実行結果を次の評価・改善へ繋げるPDCAサイクルにより、ガバナンスの運用を継続的に改善 ・今後も事業環境の変化や直面するリスク動向を反映した重点テーマを厳選してe-ラーニングを策定し、従業員への周知徹底を図ることで、組織的なコンプライアンス体制を一層強化 |
| リスク・機会 カテゴリ | 2025年度に実施した対応 | 今後の対応計画 |
| 人的資本価値の最大化 | ・生産性の向上とイノベーション創出のため生成AI活用を義務化 ・自律的な働き方の促進とコミュニケーションの質の強化のため、出社日を設定しリモートワークと対面コミュニケーションの両利点を活用 ・全社会議を通じた経営と社員の双方向の対話により、施策や取り組みの共有を促進 ・DE&Iに関する定期的な意識調査や啓発イベントを実施、社員の属性別人数比率を月次でモニタリングできる仕組みを展開 ・管理職層、将来の指導的役割を担う層へ向けた意識醸成施策や育成施策実施 | ・進化し続けるAI技術を戦略的に取り込み、生成AIを効果的に活用するための社員の継続的な成長に向けたツール提供と学習機会を強化。業務効率化を実現することで、人的資源をより高度で創造的な領域へ再配置し、イノベーションを創出 ・多様な人材の活躍を推進するため、女性管理職比率等の人的資本データの把握や現状の課題に基づいた継続的な啓発活動を通じ、企業文化のアップデートを実施 |
| 未来世代に向けた地球環境への責任 (気候関連以外) | ・データセンター設備の更新時には、大量の冷却水を必要としない空冷チラーや最新の省エネ・節水型の導入を推進。また、データセンターで使用する水資源の流域では、水源涵養を目的として、森林整備を通じた水資源保全の取り組みの協定を締結 | ・2025年度に協定を締結した、データセンターで使用する水資源の流域における水源涵養の取り組みを開始。また、循環型社会の実現を目指す各サービスにて、資源使用の効率化と最小化を通じて廃棄物の削減を推進 |
なお、取り組みの詳細については、以下よりご覧ください。
https://www.lycorp.co.jp/ja/sustainability/management/#anc4
当社グループでは、特定された重要なリスク・機会カテゴリへの対応策を策定するプロセスにおいて、企業価値向上を目的とした資源配分の最適化を図るため、各施策が事業、社会、および財務状況に及ぼすトレードオフについて検討を行っています。具体的には、「データ/AIを活用した感動(WOW&!)の提供」や「人的資本価値の最大化」といった成長戦略(攻め)の観点と「安心・安全なデジタルプラットフォームの運営」や「持続的成長を支えるガバナンス体制の構築」といった基盤整備(守り)の観点における、トレードオフを認識し、相互影響を分析した上で最適な対応策を選択しています。
AIを活用した新サービスの創出や既存サービスの改善とともに、全社員のAI人材化に向けた育成を通じて組織全体の専門性を高めることは、当社の競争優位性を高めます。一方で、不適切な活用はAI倫理に関するリスクを増大させ、過度なスピード重視はサービスの停止等のリスクを誘発する側面があります。当社は透明・公正かつ迅速な意思決定を行うコーポレート・ガバナンス体制を構築しており、その体制のもとでライフインフラ提供者としての社会的責務を果たすために必要なシステム投資やコスト増加、開発期間を許容し、迅速かつ信頼性のあるサービスの開発・改善を推進する戦略を採用しています。また、AI倫理基本方針やAIに関する社内運用ルールを策定し社会的信頼に裏打ちされた事業成長を目指します。
③ レジリエンス
当社グループは、サステナビリティ関連のリスクから生じる不確実性に対応する能力を評価するため、レジリエンス評価プロセスを構築しており、重要なリスク・機会カテゴリの時間軸に沿った各戦略の有効性を確認しました。
評価プロセスでは、外部環境の変化を考慮した対応策の見直しの要否をサステナビリティ委員会にて取りまとめ、取締役会への報告を行うサイクルを確立しています。また、ERM(全社的リスクマネジメント)との連携により、トップリスクへの対応策に関する有効性評価の結果を活用した、一体的な運用を実施しています。評価結果を通じて、全ての重要なサステナビリティ関連のリスクにおいて予期せぬ社会・経済環境の変動に対しても事業活動を維持できる体制の構築に努めていることを確認しました。今後も環境変化に合わせ、適宜経営資源の追加投入や仕組みの刷新を行い、レジリエンスを基盤として持続的な企業価値の向上を図ります。特に、重要なリスク・機会カテゴリのうち、変化の大きい「安全・安心なデジタルプラットフォームの運営」および「人的資本価値の最大化」は下記の環境変化とそれに対応した調整能力を認識しています。
〈安心・安全なデジタルプラットフォームの運営〉
当社グループを取り巻く環境において、個人情報保護やサイバーセキュリティへの社会的要請が高まっており、国内外における法規制の強化も加速しています。一方でサイバー攻撃等の犯罪行為は高度化・巧妙化の一途を辿っており、昨今グループ会社においてもランサムウェア被害による事業停止事案が発生しました。発生した事案の徹底的な原因分析と、それに基づく防御・検知・復旧体制の再構築を迅速に実施しました。当社グループでは、NIST(米国国立標準技術研究所)等の国際的なフレームワークに基づいた多層防御体制を敷き、現行の包括的なセキュリティ対策が有効に機能していると評価しています。
〈人的資本価値の最大化〉
現在、生成AI技術の急速な進展に伴い、IT・AI分野における専門スキル要件は高度化・変化しています。当社グループが持続的な成長とイノベーションを実現するためには、事業戦略に合致した人材の確保・育成が不可欠です。当報告期間である2025年度では、全社員を対象とした生成AI活用推進施策を開始しました。具体的には、生成AI使用ルールの策定とともに、全社員が日常業務でAIを使いこなす「AI人材」へと進化するためのツール提供および学習機会の拡充を継続的に実施しています。今後、既存業務を効率化した上で、社員がより創造的な新しいチャレンジに集中できる環境を整備し、イノベーションの創出を目指しています。また、市場環境や技術動向の変化を常時モニタリングし、経営会議や取締役会において、人的資本を含む経営資源の配分を適宜見直す体制を構築しています。以上の取り組みにより、当社グループは急速な技術革新や労働市場の構造変化といった予期せぬ外部環境の変化が生じた場合においても、必要な人材能力を迅速に特定・再配置し、事業戦略を遂行できるよう努めています。
(気候関連)
① 気候関連のリスクおよび機会の識別
当社グループでは、当社グループの見通しに影響を与えると合理的に見込み得る気候関連のリスクおよび機会として、次のものを識別しています。
リスク
a. 炭素税や排出量取引によるコスト増加、および電力とエネルギー需要の増加
(移行リスク、時間軸:短~中期)
b. 顧客の行動変化に伴う影響(移行リスク、時間軸:短~中期)
c. 異常気象の激甚化による影響(物理的リスク、時間軸:短~中期)
機会
a. 技術革新や環境配慮の進展(時間軸:長期)
b. ライフスタイルや行動変容に対応したサービスの提供(時間軸:短~中期)
当社グループは、気候関連のリスクおよび機会の影響が生じると合理的に見込み得る時間軸について、「短期」、「中期」および「長期」をそれぞれ以下のように定義しています。
〈時間軸の定義〉
短期:~2030年(GHG関連投資計画、カーボンニュートラル目標)
中期:~2035年(日本政府NDC目標)
長期:~2050年(ネットゼロ目標)
〈前提〉
・当社グループは、グループ全社の温室効果ガス「スコープ1」および「スコープ2」を2030年度までに実質ゼロにする「2030カーボンニュートラル宣言」における2030年度目標の達成に向けて「GHG関連投資計画」を策定の上、まずは2028年度までの5か年のGHG投資計画に関する戦略的意思決定を経営会議にて行っています。
・日本政府は、世界全体の1.5℃目標と整合する2050年ネットゼロの実現に向けた目標として、2035年度に温室効果ガスを2013年度比で60%削減すること等を掲げたNDCを国連に提出しています。
・当社グループは、取引先等で排出される温室効果ガス「スコープ3」も含めた事業活動に関わる全ての温室効果ガス排出量を2050年度までに実質ゼロにする「ネットゼロ」の実現も目指しています。
なお、当社ではERM(全社的リスクマネジメント)活動において、気候関連リスクを含むリスクの見直しを年次サイクルで行っていることからも、特定したリスクおよび機会の影響が生じると合理的に見込み得る時間軸は、当社グループが戦略的意思決定に用いている計画期間と整合しているものと考えます。
② 気候関連のリスクおよび機会が集中している部分
当社グループでは、メディア事業、コマース事業および決済金融関連サービスの提供を行う戦略事業等、多様なインターネットサービスを展開しており、データセンター、オフィス、物流センター等において事業を運営するための大規模な電力を使用しています。特にデータセンターにおける電力使用量は、当社グループ全体の大部分を占めていることからも「① 気候関連のリスクおよび機会の識別」にて特定した気候関連のリスクおよび機会が集中している部分であるといえます。電力使用量の増加や排出量取引制度および化石燃料賦課金の導入は、税負担や運用コストの増加といった財務影響を及ぼすリスクがあるため、データセンター電力使用量の効率性向上と再生可能エネルギー化がそのリスク回避につながると考えています。一方で、データセンターの設備やサーバーを定期的に入れ替えることにより、高いエネルギー効率での運用が可能となり、電力使用量を削減する機会にもなります。また、事業継続性の確保および安定的なサービス提供の観点からも、データセンターの安定稼働は重要な経営基盤の一つです。異常気象の激甚化に伴う自然災害リスクを最小化し、データセンターの安定稼働を維持するために、拠点の分散化は重要な取り組みとして認識しています。
③ 気候関連のリスクおよび機会が現在与えている影響
当報告期間における「① 気候関連のリスクおよび機会の識別」にて特定した気候関連のリスクおよび機会に対する主な取り組みは以下のとおりです。
リスク
a. 炭素税や排出量取引によるコスト増加、および電力とエネルギー需要の増加
主にデータセンターにおける電力使用量に対しては、当社グループとして2030年度までにスコープ1,2を実質ゼロとする「2030カーボンニュートラル宣言」および当社として2025年度までにスコープ1,2を実質ゼロとする「2025カーボンニュートラル宣言」をそれぞれ目標として設定し、再生可能エネルギーの割合を増やすことによって炭素税等による運用費の増加に備えています。なお、当報告期間である2025年度には実質再生可能エネルギー100%化を実現し、「2025カーボンニュートラル宣言」の目標を達成しました。加えて、サーバー等から発生する熱の冷却に外気を活用した空調システムを採用する等、緩和策となる新規設備投資を継続的に行うことによるエネルギー効率の改善と電力使用量の低減にも取り組み、続く「2030カーボンニュートラル宣言」の達成を目指します。
b. 顧客の行動変化に伴う影響
気候変動が社会・経済へと広範囲に影響して被害が発生した場合には、当社グループの一部事業における売上収益減少がリスクとして考えられます。バリュー・チェーン観点においても、広告主のビジネス自粛や消費者心理の冷え込みによる影響が想定されます。そのため、利用者の維持拡大と共に、より多様な事業を展開するポートフォリオ経営や防災減災サービス等、社会にとって必要不可欠なライフラインサービスを適応策として継続的に提供していくことによりリスクを最小限に抑えることができると考えています。
c. 異常気象の激甚化による影響
気候変動による大規模な災害が発生した場合には、事業継続性の懸念がリスクとして考えられます。安定したサービスを提供できるよう、被害を低減させるためのデータセンターおよび物流センター機能の分散化や気候変動による海面上昇の影響を考慮した当社の高知センター移転等、適応策となる環境整備によってリスクを最小限に抑えることができるものと考えています。また、当社グループのバリュー・チェーンでは、物流センターへの調達寸断リスクを低減して安定的な商品供給体制の確保をするためにも、可能な限りサプライヤーの分散化を推進する必要があると認識しています。
機会
a. 技術革新や環境配慮の進展
当社グループにおける電力使用量の大部分は、データセンターの運営によるものです。このため、より効率的かつ省エネルギー型のデータセンターの設計および運用を推進することは、エネルギー効率の改善を通じた電力使用量の削減につながります。これにより、環境負荷の低減に加え、エネルギーコストの削減等の効果も期待できます。また、当社グループは、これらの取り組みを自社の事業活動にとどめることなく、バリュー・チェーン全体へと拡大していくことも重要であると認識しています。環境配慮型の資機材・サービスの選定やサプライヤーとの協働を通じて、調達段階における環境負荷の低減および供給体制の高度化を図ることで、緩和策としてのバリュー・チェーン全体における持続可能性の向上に努めていきます。
b. ライフスタイルや行動変容に対応したサービスの提供
社会の気候変動問題への関心の高まりは、当社グループにとって事業拡大につながる可能性があるものと認識しています。当社グループでは、各種事業活動を通じて、気候変動の緩和および適応に資する取り組みを推進しています。リユース事業では循環型社会への移行に貢献するとともに、「サストモ」をはじめとするサステナビリティ関連メディアや「Yahoo!ネット募金」等のサービスを通じて、気候関連を含む環境課題に対する社会的関心の喚起および行動変容の促進に努めています。また、バリュー・チェーンにおいても、気候変動への対応を積極的に進めるサプライヤーとの取引をより推進させることで、持続可能性に配慮した調達体制の構築を図っていきます。
他にも、以下のような気候関連のリスクおよび機会への対処を進めています。
・エネルギー調達モデルの変更(気候変動の「緩和」)
当報告期間である2025年度には実質再生可能エネルギー100%化を実現し、「2025カーボンニュートラル宣言」の目標を達成しました。続く「2030カーボンニュートラル宣言」の達成を実現するために、コーポレートPPAによる長期再生可能エネルギー由来の電力契約の開始と環境価値証書の活用等により、当社グループ全体の再生可能エネルギー導入率を100%に引き上げていきます。
・サプライチェーン向け方針の変更(気候変動の「緩和」)
サプライヤー調達方針に環境配慮内容の項目を組み込み、契約内容やエンゲージメントを通じてサプライヤーとともに更なるスコープ3の削減に取り組んでいきます。
当社グループが提供する多様なインターネットサービスの運営にあたっては、データセンターをはじめとする設備において大規模な電力を必要としています。そのため、事業拡大に伴う電力使用量の増加は、エネルギーコストの上昇および温室効果ガス排出量の増加につながる可能性があり、重要なリスクの一つとなります。一方で、技術革新の推進や設備運用の高度化によるエネルギー効率の改善は、電力使用量の抑制および温室効果ガス排出量の削減につながるものであり、重要な機会であると認識しています。当社グループでは、事業成長に伴う電力需要の増加と環境負荷低減とのトレードオフを踏まえつつ、効率的なエネルギー使用の実現に取り組んでいきます。
④ 気候関連のリスクおよび機会が将来与えると予想される影響
「① 気候関連のリスクおよび機会の識別」にて特定した気候関連のリスクおよび機会について、翌年次報告期間以降では以下の影響が想定されます。
リスク
a. 炭素税や排出量取引によるコスト増加、および電力とエネルギー需要の増加
短期的には、炭素税や排出量取引が導入された場合、電力使用に伴う追加的な支出が営業費用として発生しますが、大規模な新規投資は予定しておらず、資金計画上は手元流動資金や営業活動キャッシュ・フローの範囲内で対応する見込みです。また、炭素税や電力価格が上昇した場合に、営業費用が増加して営業活動キャッシュ・フローにマイナス影響が生じる可能性があります。しかしながら、エネルギー効率の改善により営業費用の増加は一定程度緩和される見込みです。
中期的には、炭素価格が段階的に上昇することを踏まえて、再生可能エネルギーの調達を拡大することに伴う追加的な営業費用が継続的に発生する見込みです。加えて、電力使用量の削減を目的とした設備投資を段階的に実施することで、総資産が増加する見込みです。調達に伴う継続的な支出については、資金計画上で安定的な支出として織り込みつつ、新規の大規模な投資は限定的として既存設備の維持・更新を中心とした対応を想定しています。これらの対応に必要な資金は内部資金を基本とし、不足する場合には借入やグリーンボンド等の活用をする見込みです。処分計画としては、バリュー・チェーンにおける炭素排出強度の高い電力契約を順次見直していく予定です。
長期的には、再生可能エネルギー100%化により炭素税負担の回避が見込まれます。一方で、再生可能エネルギー調達費用やエネルギー効率化投資の一部は継続的に発生することになりますが、エネルギー効率化の進展により電力使用量が減少し、費用構造およびキャッシュ・フローは中長期的に安定化することが期待できます。資金計画上は再生可能エネルギー調達コストを安定的な固定費として織り込む見込みです。処分計画としては、非効率な設備や契約を整理することで低炭素化されたポートフォリオに移行し、財政状態は安定化することが想定されます。
b. 顧客の行動変化に伴う影響
短期的には、顧客行動の変化により一部事業で売上収益が減少し、営業活動キャッシュ・フローにマイナス影響が生じる可能性があります。
中期的には、戦略事業への投資を拡大することにより総資産が増加するとともに、必要に応じて長期借入や社債による資金調達を行う見込みです。顧客行動の変化が継続した場合、既存事業の売上収益は減少圧力を受け、営業活動キャッシュ・フローへのマイナス影響が累積的に拡大する可能性があります。また、成長投資に伴い、投資活動キャッシュ・フローの支出が継続して増加する見込みです。
長期的には、投資が収益化し営業活動キャッシュ・フローが安定するとともに、借入金や社債の返済が進み、財政状態は安定化すると想定されます。
c. 異常気象の激甚化による影響
短期的には、自然災害によるデータセンターや物流センター拠点の機能停止に伴い、売上収益の減少および営業費用が発生し、営業活動キャッシュ・フローにマイナス影響が生じる可能性があります。災害時には当社グループが保有する附属設備の修繕・更新が必要となり、一時的な資金需要が発生しますが、主として手元資金の活用により対応する見込みです。
中期的には、事業継続性確保のため拠点分散化投資を実施し、使用権資産や有形固定資産が増加するとともに、リース負債が増加する可能性があります。投資資金については、営業キャッシュ・フローの範囲内でリース料を支払うことを基本とし、不足する場合には借入や社債による調達を行う可能性があります。長期的には、新規の大規模な支出は限定的であり、維持・更新投資を中心とした対応を行うことで、財政状態は安定的に推移する見込みです。
機会
a. 技術革新や環境配慮の進展
短期的には、エネルギー効率向上を目的とした設備改修や新規設備投資等を継続的に行うことにより、投資活動キャッシュ・フローの支出が増加する見込みです。同時に、電力使用量の削減により、営業活動キャッシュ・フローに一定のプラス影響が現れる見込みです。
中期的には、高効率サーバー等への設備投資を継続することでエネルギー効率化による営業費用の低減が進み、営業活動キャッシュ・フローは安定的に改善する見込みです。投資資金については内部資金を基本とし、不足する場合にはグリーンボンド等の外部資金の活用を検討しています。稼働台数圧縮と設置スペース削減が進み電力コスト低減効果が拡大することで、営業活動キャッシュ・フローは安定的に改善する見込みです。さらに建物増棟を抑制できるため、新たなリース契約による固定費負担を回避できる見込みです。一方で、省エネ設備やAI制御の導入に伴う投資活動キャッシュ・フローの支出は一定程度継続します。
長期的には、エネルギー効率化による営業費用の低減がより一層進むことで、電力のコスト削減が進み、キャッシュ・フロー全体として安定性が高まる見込みです。
b. ライフスタイルや行動変容に対応したサービスの提供
短期的には、リユース事業や環境関連広告サービス等の利用拡大により、売上収益および営業活動キャッシュ・フローが増加する見込みです。当該成長に伴う追加的な投資は限定的であり、資金計画上は営業キャッシュ・フローによる内部資金で対応可能となる見込みです。
中期的には、環境意識の高まりにより売上収益の増加効果が拡大し、営業活動キャッシュ・フローは安定的に増加する見込みです。収益増加に伴い総資産は増加しますが、大規模な設備投資や資産処分は想定していません。また、成長に伴う資金需要については、内部資金による対応を基本としており、外部調達は想定していません。
長期的には、バリュー・チェーンにおける循環型社会の進展や脱炭素需要の高まりを背景に、当該サービスの需要が持続的に拡大し、営業活動キャッシュ・フローは安定的に推移する見込みです。投資活動キャッシュ・フローも維持・更新投資に限定されるため、大規模な支出は発生しない見込みです。
⑤ 気候レジリエンス
2025年度に実施したシナリオ分析では、国際的な認知度や信頼性を考慮し、パリ協定に基づき国際的に求められている「産業革命前からの気温上昇を1.5℃以内に抑制する」ことと整合する、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)および気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)が策定したシナリオを参照しています。これらのシナリオは、政府の政策設計や国際的な炭素価格制度、バリュー・チェーン全体の排出削減要請等の基礎となっているため、当社グループの事業戦略上不可欠と判断しました。
a. 1.5℃整合
・IEA NZE(Net Zero Emissions by 2050)、IPCC SSP1-1.9
・移行リスクが最も顕著(政策強化、炭素税、電力価格上昇)
b. 2℃相当
・IEA APS(Announced Pledges Scenario)、IPCC SSP1-2.6
・移行リスクおよび物理的リスクの双方が顕在化
c. 4℃超過
・IEA STEPS(Stated Policies Scenario)、IPCC SSP5-8.5
・物理的リスクが最も顕在化(豪雨・洪水・高温化の増加)
当社グループは、以下のような事業構造を持っており、移行リスクと物理的リスクの双方が事業継続性に影響します。
・大規模なデータセンターを有し電力依存度が高い
・コマースや決済サービス等社会インフラ的サービスの事業継続が極めて重要
・物流ネットワークの停止が売上維持に大きく影響
また、当社グループが掲げる以下の方針とも整合します。
・再生可能エネルギー比率の拡大
・データセンター運用の高効率化
・物流拠点の分散化とバックアップ体制の構築
更には、複数のシナリオを用いて分析を行うことでシナリオ間の差異を比較することができ、長期的な投資や設備計画の優先順位づけも行うことが可能となります。
以上のことから、当社の選択したシナリオが当社グループの気候レジリエンス評価に対して有効であると判断しました。
気候関連のリスクおよび機会は、長期間にわたって当社グループの事業活動に影響を与える可能性があるため、以下の時間軸・事業範囲および主要な前提条件に基づいて、複数の気候関連シナリオ分析を行っています。
〈時間軸・事業範囲〉
・分析に用いた時間軸:2030年~2050年
・分析に用いた事業範囲:当社グループの全事業が対象
〈主要な前提条件〉
a. 当社が事業を営む法域における気候関連の政策
・日本の2050年ネットゼロ目標
・日本の2030年温室効果ガス排出削減46%目標(2013年度比)
・日本の再生可能エネルギー比率36~38%(2030年目標)
・炭素価格制度(カーボンプライシング)の段階的強化
・省エネ法・再エネ促進法に基づく事業者規制の強化
・データセンター事業者への電力効率化要求(PUE改善)の強化
b. マクロ経済のトレンド
・GDP成長率の変動
・エネルギー価格の変動
・炭素価格の上昇
・物流網や労働市場における気候関連の影響
c. 国又は地域レベルの変数
・豪雨、洪水、台風の強度や頻度の増加
・人口動態の変化(都市集中の継続)
・物流インフラの脆弱性
・高温化による電力需要増と停電リスクの増加
・水害リスク
d. エネルギーの使用およびエネルギー構成
・データセンターにおける電力需要の増加
・再生可能エネルギー調達の拡大と比率の上昇
・電力価格の上昇
e. 技術の進展
・データセンター効率化技術(PUE改善)
・サーバー冷却技術の進展
・再生可能エネルギーの低コスト化と普及拡大
・蓄電池技術の進展による電力安定性向上
・物流ロボティクスと自動化技術の進展
・AIによる需要予測と災害対応最適化の高精度化
当社グループでは、気候関連のシナリオ分析結果に基づき、気候レジリエンスの評価を報告期間毎に実施しています。(WEO2025で保留となったAPSも継続利用)
財務的な影響度として開示する指標は、将来的な見込みや発生頻度が推測を伴うものであり、測定の不確実性の程度が高い情報となります。しかしながら、複数のシナリオ分析に基づく柔軟な対応方針の策定や、当報告期間である2025年度には実質再生可能エネルギー100%化を実現し「2025カーボンニュートラル宣言」の目標を達成する等、レジリエンスを踏まえたカーボンニュートラルへの取り組みが順調に推移していることを確認しています。今後も環境変化に合わせ、気候関連のリスクおよび機会における包括的な対処、気候関連の進展や不確実性への対処、短期、中期および長期にわたる戦略およびビジネスモデルの調整等に取り組んでいきます。