有価証券報告書-第31期(平成31年4月1日-令和2年3月31日)
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営方針
当社グループは、「世界で最も信頼、尊敬されるインベストメント・カンパニー」になることで「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」というミッションの実現を目指す、独立系の資産運用グループであります。また、資産運用サービスを中核事業とする企業グループとしては、日本で初の公開/上場会社であります。
私どもの経営の基本方針の第一は、投資家の皆様に真に役立つ投資インテリジェンスを運用商品として提供し、ご満足いただける運用成果をお届けすることであります。そのために、創業以来の「マクロはミクロの集積である。」との投資哲学に基づく徹底したボトムアップ・アプローチを基軸として、常に革新的な投資手法の開発に努めております。さらに、日本株のスペシャリストとしての経験と知識を株式以外の不動産や発電事業等のインフラ資産への投資スキームにも展開すると共に、韓国・香港の子会社が培った力を統合することで、アジアに関心を寄せる世界中の投資家の期待に応え得る投資インテリジェンスと優れた運用成果の提供に努めてまいります。
方針の第二は、お客様の期待に応えたビジネス拡大を通して、株主の皆様に満足いただける収益を産み出すと共に、企業としての存続と成長の礎となる適切なガバナンスとコンプライアンスの態勢を維持・強化することであります。更なる運用成績の向上への取り組みに加え、新たな投資商品の開発と提供によって収益の拡大を目指す際に、積極的な事業展開と効率性の追求が、コンプライアンスの弛緩に決して繋がることのないように、ガバナンスの実効性を絶えず検証してまいります。
方針の第三は、お客様と株主の皆様の期待に応える事業展開を支えるための有為な人材の保持、獲得と育成であります。高度な専門性と柔軟な創造力、そして強い自己規律の精神を持った人材がチームとして取組んでこそ、私共が目指す資産運用サービスの提供が可能になると考えております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの収益の大半を占める投信・投資顧問料収入は、運用資産の残高と報酬料率に応じて生じる残高報酬と、運用成績の良否等によって変動する成功報酬に大別されます。後者の成功報酬は、当社グループの全ての運用資産から発生するものではありません。
従って、当社グループにとって最も重要な経営指標は、収益の源泉である運用資産の残高及び残高報酬料率であります。運用資産残高の推移は適時に把握するのみならず、その変動がお客様からの新規設定や解約によって生じたものか、市場の一般的動向によるものか、運用成績の良否によるものか等を分析し、当社グループの事業競争力の客観的な把握に努めております。また、より付加価値の高い投資戦略を開発・提供することによって、より高い残高報酬料率の実現に努めております。
次に重要な経営指標は、残高報酬の金額から経常的経費を差引いた金額として認識される基礎収益力の水準であります。基礎収益力は持続的かつ安定的な事業運営の基盤でありますから、それが赤字となる状況が生じた場合には、運用報酬の増加を目指すのは当然でありますが、経費削減も含めたあらゆる施策により早期に黒字を回復させる必要があります。一方、基礎収益力が十分な黒字を維持している場合には、成長に向けた投資余力があるとの判断も可能です。
さらに、成功報酬の金額も当然に重要な経営指標の一つであります。当社の営業成績は、基礎収益力と成功報酬によって大半が決定し、その結果に基づき賞与等の支払も決定されますから、成功報酬の多寡が年度毎の営業利益の水準に大きく影響します。全運用資産の内で成功報酬が発生し得る資産の割合、成功報酬の発生状況等、業績への影響度合いを把握するだけでなく、より付加価値の高い投資戦略を開発・提供することによって、成功報酬が発生しうる運用資産残高の増加に努めております。
(3)経営戦略等
当社グループは、着実に利益成長を実現する強い体質の構築を目指しております。その達成のため、以下4つの投資戦略が柱であると考えております。
1本目の柱は、日本株式投資戦略です。
子会社であるスパークス・アセット・マネジメント株式会社が運用するファンドは、運用評価機関から継続して高い評価を受けております。また、私どもの投資哲学や運用スタイルへの関心も引き続き高いことから、日本の個人投資家の皆様に「日本株ならスパークス」とのSPARXブランドをさらに幅広く認知いただくよう努めております。海外の国家ファンドや年金を始めとする機関投資家様のニーズにも応えられる商品をさらに充実させてまいります。
2本目の柱は、OneAsia投資戦略(アジア株式を対象とする運用戦略)です。
運用、マーケティング両部門で3拠点(東京、香港、韓国)を一体化した取り組みを、さらに積極化してまいりました。朝鮮半島情勢が大きな転換期を迎えた今、韓国をはじめとするアジアに大きな投資機会が訪れていると確信しており、日本の投資家様向けに新たな商品の組成したほか、さらに欧米の投資家様向けの商品の組成も検討してまいります。
3本目の柱は、実物資産投資戦略です。
再生可能エネルギー発電事業のインフラ資産や不動産を投資対象とする実物資産の運用戦略は、全国の発電施設への投資を27件実行しており、再生可能エネルギー投資戦略の運用資産残高は1,903億円の規模となっております。太陽光のみでなく、バイオマス発電所、風力発電所も安定稼動させており、投資対象は広がっております。また、発電事業等の開発段階から運転開始までのフェーズにおける投資(グリーン・フィールド投資)に加えて、運転開始後のフェーズにおける投資(ブラウン・フィールド投資)にフォーカスした、長期的に安定したキャッシュ・フローを源泉としたファンドも運用しております。ブラウン・フィールドのファンドでは、自ら開発した発電設備のみならず外部からの発電設備の取得も行うことができます。今後も引き続き再生可能エネルギーファンドのパイオニアとして皆様のご期待にお応えすべく、魅力的な投資商品の提供を行ってまいります。
4本目の柱は、未来創生投資戦略です。
次世代の成長に資する投資を長期的な視点から実践し、投資会社として未来を創造する新たな領域を開拓するため設立した未来創生ファンドは、1号ファンドの投資が完了し、2号ファンドを立ち上げ、当戦略の運用資産残高は2020年3月末で1,132億円まで規模が拡大しております。国内外のベンチャー企業等への投資を着実に実行し、投資実績を積み上げ、質の高い投資を通じて、革新的な技術やビジネスモデルで世界をリードする企業を発掘・育成することで未来社会に貢献することを目指してまいります。
また、上記に加え、スパークスのこれまでのファンドビジネスを強化するため、新たな成長領域への投資を始動いたしました。AI(人工知能)の利用が前提となった新しい時代の成長領域は、エネルギー、医療・介護、そして量子コンピュータなどの領域と考えており、次のスパークスのビジネスの柱にしようと一歩一歩確実に前進しております。量子コンピュータ分野への投資は、東北大学及び量子アニーリングコンピュータの世界的権威である大関真之准教授からのご理解を得て、この分野に特化した新会社シグマアイに昨年4月設立とともに参画しております。医療・介護についても、小さな一歩を踏み出しました。具体的には医療法人社団五葉会のご理解を得て、コンサルティング業務を提供させていただいております。医療領域の効率的な成長は社会的な使命であり、私達投資会社として参画し貢献すべき領域であると考えております。単に目先の短期的な収益を追うのではなく、時代の要請をしっかり受け止めて、これまでのスパークスでやってきた良い投資を、金融投資家として、立派な医療機関とそれを支える優秀な医療の専門家の方々とともに、実践していきたいと思います。
スパークスでは、1989年創業以来、企業を一社一社徹底的に調べ、現場に赴いて実際に目で見て判断する“現地現物”による調査活動を徹底してまいりました。新型コロナウイルス発生以降は、5G(第5世代移動通信システム)、AIなどの技術を活用して、教育、医療、自動運転など世界はあらゆる分野で非接触型に移行していくものと思われます。この非接触型社会への移行の中で、当社グループが大切にしてきた“現地現物”やコミュニケーションの重要性といった価値観を、どのようにして維持・強化していくのか、この変化に立ち向かっていきたいと考えております。また、これからも創業時より続けている投資の勉強会「バフェットクラブ」などを通じて、高い知見・見識を備え、人格的にも優れた次世代を担う経営者を育成することが、私が経営者として負うべき最も大切な仕事だと思っています。企業文化や変わらない投資哲学を若い次の世代に継承しながら、新しい成長領域への投資に取り組み続けることのできる強い組織の創造に向けて努力精進してまいります。
(4)経営環境
直近の経営環境については、第一部 企業情報、第2 事業の状況、3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要に含めて記載しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上課題
当年度のグループ運用資産残高(AUM)は平均で前期比2.3%増、また平均の運用報酬料率は同2bps(ベーシスポイント)増となり、残高報酬は同5.0%増加しましたが、新規ビジネスへの先行投資など経常的経費(※1)も同10.1%増加したことから、基礎収益力(※2)は同1.9%の微減となりました。一方成功報酬は、再生可能エネルギー発電所への投資が進んだこと等により同79.0%増となったことから、営業利益は44億79百万円との同14.8%増となりました。
この数年間は、新しいビジネスへの布石と打つと同時に、「安定的に稼ぐ力」を着実に強化してまいりましたが、来年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済への悪影響が予想されます。このような厳しい状況下でも、引き続き安定して高い運用実績を維持するとともに、費用面についてはこれまで以上に厳しく精査し、当社グループのミッションである「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」を実現するため、ESG(※3)への取り組みを通じて継続的な企業価値向上を実現すべく、主として来年度は、以下の課題に取り組んでまいります。
課題の第一として、市場に影響されない安定的な投資戦略と収益性の高い投資戦略によるハイブリッドのビジネスモデルを、引き続き強化・拡大してまいります。
成長実現のための4本柱(「日本株式」「ワンアジア株式」「実物資産」「未来創生」)という、従来からの高収益な上場株式の投資戦略と、安定性の高い実物資産/未来創生の投資戦略を、それぞれ引き続き強化することに加え、今後とも当社グループならではの革新的な投資戦略を継続的に構築し、ビジネスモデルをさらに多様化・安定化してまいります。またその過程で、「日本/アジアへの投資ならスパークス」という圧倒的なご支持をいただけるブランドを構築してまいります。
日本株式投資戦略については、当年度も引き続き複数の評価機関から、高いご評価を頂きました。この優れた運用実績を背景として、ロングショート投資戦略では、野村証券様での国内公募投信の取り扱いが本年2月に始まっている他、サステナブル投資戦略では、欧州などを中心としていわゆるESG投資への需要が高まる中、欧州の公的機関投資家から本年3月に新たに約190億円の資金をお預かりしました。来年度は、当年度の実績をさらに具体的なAUMの拡大につなげていくと同時に、ポスト・コロナの時代に日本の相対的な競争優位性が際立つ、という投資仮説を軸に、本年5月からエンゲージメント投資戦略の新しいファンドを再度ローンチし、株主として他のステークホルダーとともに投資先企業の価値向上プロセスに参加する投資を、社長の阿部が自ら実践してまいります。
ワンアジア株式投資戦略については、昨年10月より大和証券様で国内公募投信の取り扱いが始まっている他、昨年12月には、欧州の公的機関投資家より、韓国中小型株式に投資する資金として新たに約330億円をお預かりしました。来年度は、これらファンドを中心にさらなるAUMの拡大につなげていくとともに、中長期的には、本投資戦略を日本株式投資戦略と同規模以上に成長させるべく、引き続き日本・韓国・香港の3拠点が一丸となって運用力を強化し、時間を掛けて重層的で高品質な運用体制を構築してまいります。
実物資産投資戦略や未来創生投資戦略は、この5年ほどの間にゼロから立ち上げた投資戦略ですが、合計するとAUMベースでは既にグループ全体の約3割を占め、収益力を支える柱へと成長しました。来年度は、厳しい経済環境の下で、これまでは自社のバランスシートで投資し保有してきた再生可能エネルギー発電所を、売却し流動化する動きが出てくると仮説のもと、当社グループは、その中から質の良い発電所を見極めた上で、ファンドを通じて積極的に投資していくことで、この投資戦略をさらに拡大・強化してまいります。
さらに上記の4本柱に加えて、エネルギー、量子コンピュータ、医療・介護といった複数の成長領域への投資についても、株式会社シグマアイへの出資、医療法人社団五葉会の社員持分の取得など、具体的なケースで取り組みを開始しております。来年度は、当年度よりもさらに保守的な財務運営方針のもと、一定の自己資金やグループ内リソースの範囲で、当社らしいアプローチをさらに進めてまいります。またこのような成長領域への投資を通じて、新しいビジネスをゼロから生み出す企業文化と起業家精神を活性化し、これまでのファンドビジネスをさらに強化するとともに、企業文化や変わらない投資哲学を次世代に継承しながら、新しい取り組みを自律的に続けることのできる強い組織を創造してまいります。
課題の第二として、次世代のマネジメントを育成、登用し、合わせてガバナンス体制を最適化してまいります。
当社にとって次世代のCEO選任は、引き続き非常に大きな経営課題であることから、取締役会は、客観性・適時性・透明性ある手続きを確立し、十分な時間と資源をかけて、CEOの後継者計画の策定・運用を具体化し、後継者候補を育成してまいります。
次世代を担うマネジメントの必要条件としては、当社グループにおいては1989年の創業来、投資先候補企業を一社一社徹底的に調べ、現場に赴いて実際に目で見て判断する“現地現物”による調査活動、いわゆるボトムアップ・アプローチを徹底しておりますが、こうした日々の地道な活動の積み重ねによって、グループ役職員が自然と共有している価値観の他、高い知見・見識を備え、人格的にも優れていることです。このような要件を充たした人材に対して、より高い課題を与えて自覚を促していく他、社外から採用した優秀な人材をある程度の時間を掛けて育成し、これらを競わせ、衆目が認める結果を残した人材を、次世代のCEOとして登用してまいります。
当社は、本年6月の第31回定時株主総会における決議により、監査等委員会設置会社へガバナンス体制を移行しております。経営の監督と執行の分離を明確にして取締役会の監督機能を強化するとともに、取締役会から業務執行権限を大幅に委譲することによって業務執行の迅速化を実践する過程で、優れた人材を育成してまいります。
課題の第三として、ポスト・コロナの時代に適応した新しいビジネスの進め方、働き方を構築してまいります。
本年4月の日本政府による新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を受け、当社グループの中心である東京オフィスは、原則在宅勤務での業務継続体制に移行しました(海外拠点も概ね同様)。主要な業務は安定的に継続できていますが、一部の業務にはまだ紙ベースのものが残っている他、本来業務を行う場所として最適化されていない家庭での業務は、職員の負担増と一定程度の効率低下を招いています。来年度は、現状の課題を確認した上で、子供が小さい家庭、共働きの世帯など、職員の置かれた様々な状況も加味し、リモートワークのさらなる効率化に取り組んでまいります。
来年度以降は、5G(第5世代移動通信システム)、AI(人工知能)などの技術を活用して、教育、医療、自動運転など世界はあらゆる分野で非接触型に移行していくものと思われます。この非接触型社会への移行の中で、当社グループが大切にしてきた“現地現物”やコミュニケーションの重要性といった価値観を、どのようにして維持・強化していくのか。また、経営者との直接対話など、ボトムアップ・アプローチによる調査活動、投資哲学など当社グループの特徴を丁寧にご説明することを重視した営業活動など、ビジネスの根幹をなす様々な活動において、これまで同様、あるいはこれまで以上に、説得力のある新しいご説明の仕方、コミュニケーション方法などに創意工夫を凝らしてまいります。
さらに、当社グループの最も重要な経営資源である人材への影響についても分析し、対応してまいります。
当社グループのビジネスは「人が全て」と言っても過言でないことから、その採用については、人事部門、採用希望部門、関係部門やマネジメントが、多角的な視点から丁寧に何度も面談していますが、現在のテレビ会議システムを通した面談には限界があります。また人事評価は、短期的な成果のみを重視するのではなく、中長期的な視点からその過程をより大切にしておりますが、リモートワークの下では、ややもすると目に見える成果のみで評価される傾向が強まります。来年度は、これらの問題意識を踏まえ、引き続き当社グループが、優秀な人材が互いに切磋琢磨し、成長の機会が与えられて自らの成長を実感できる場であり続けられるよう、試行錯誤しながら、最適解を見つけ出してまいります。
※1.「基礎収益」とは事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す経営指標であり、その算定方法は以下のとおりです。
基礎収益=残高報酬(手数料控除後)-経常的経費
※2.「経常的経費」とは①支払手数料全額、②実績賞与等(賞与引当金繰入、賞与に係る法定福利費及びESOP費用を含む)、③役職員に対する退職金等の一時的支払の合計を、営業費用・一般管理費の合計から控除した費用の合計を指しています。
※3.ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものであり、企業が中長期的な成長を目指すために、これら3つの視点が重要であるとされています。
(1)経営方針
当社グループは、「世界で最も信頼、尊敬されるインベストメント・カンパニー」になることで「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」というミッションの実現を目指す、独立系の資産運用グループであります。また、資産運用サービスを中核事業とする企業グループとしては、日本で初の公開/上場会社であります。
私どもの経営の基本方針の第一は、投資家の皆様に真に役立つ投資インテリジェンスを運用商品として提供し、ご満足いただける運用成果をお届けすることであります。そのために、創業以来の「マクロはミクロの集積である。」との投資哲学に基づく徹底したボトムアップ・アプローチを基軸として、常に革新的な投資手法の開発に努めております。さらに、日本株のスペシャリストとしての経験と知識を株式以外の不動産や発電事業等のインフラ資産への投資スキームにも展開すると共に、韓国・香港の子会社が培った力を統合することで、アジアに関心を寄せる世界中の投資家の期待に応え得る投資インテリジェンスと優れた運用成果の提供に努めてまいります。
方針の第二は、お客様の期待に応えたビジネス拡大を通して、株主の皆様に満足いただける収益を産み出すと共に、企業としての存続と成長の礎となる適切なガバナンスとコンプライアンスの態勢を維持・強化することであります。更なる運用成績の向上への取り組みに加え、新たな投資商品の開発と提供によって収益の拡大を目指す際に、積極的な事業展開と効率性の追求が、コンプライアンスの弛緩に決して繋がることのないように、ガバナンスの実効性を絶えず検証してまいります。
方針の第三は、お客様と株主の皆様の期待に応える事業展開を支えるための有為な人材の保持、獲得と育成であります。高度な専門性と柔軟な創造力、そして強い自己規律の精神を持った人材がチームとして取組んでこそ、私共が目指す資産運用サービスの提供が可能になると考えております。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの収益の大半を占める投信・投資顧問料収入は、運用資産の残高と報酬料率に応じて生じる残高報酬と、運用成績の良否等によって変動する成功報酬に大別されます。後者の成功報酬は、当社グループの全ての運用資産から発生するものではありません。
従って、当社グループにとって最も重要な経営指標は、収益の源泉である運用資産の残高及び残高報酬料率であります。運用資産残高の推移は適時に把握するのみならず、その変動がお客様からの新規設定や解約によって生じたものか、市場の一般的動向によるものか、運用成績の良否によるものか等を分析し、当社グループの事業競争力の客観的な把握に努めております。また、より付加価値の高い投資戦略を開発・提供することによって、より高い残高報酬料率の実現に努めております。
次に重要な経営指標は、残高報酬の金額から経常的経費を差引いた金額として認識される基礎収益力の水準であります。基礎収益力は持続的かつ安定的な事業運営の基盤でありますから、それが赤字となる状況が生じた場合には、運用報酬の増加を目指すのは当然でありますが、経費削減も含めたあらゆる施策により早期に黒字を回復させる必要があります。一方、基礎収益力が十分な黒字を維持している場合には、成長に向けた投資余力があるとの判断も可能です。
さらに、成功報酬の金額も当然に重要な経営指標の一つであります。当社の営業成績は、基礎収益力と成功報酬によって大半が決定し、その結果に基づき賞与等の支払も決定されますから、成功報酬の多寡が年度毎の営業利益の水準に大きく影響します。全運用資産の内で成功報酬が発生し得る資産の割合、成功報酬の発生状況等、業績への影響度合いを把握するだけでなく、より付加価値の高い投資戦略を開発・提供することによって、成功報酬が発生しうる運用資産残高の増加に努めております。
(3)経営戦略等
当社グループは、着実に利益成長を実現する強い体質の構築を目指しております。その達成のため、以下4つの投資戦略が柱であると考えております。
1本目の柱は、日本株式投資戦略です。
子会社であるスパークス・アセット・マネジメント株式会社が運用するファンドは、運用評価機関から継続して高い評価を受けております。また、私どもの投資哲学や運用スタイルへの関心も引き続き高いことから、日本の個人投資家の皆様に「日本株ならスパークス」とのSPARXブランドをさらに幅広く認知いただくよう努めております。海外の国家ファンドや年金を始めとする機関投資家様のニーズにも応えられる商品をさらに充実させてまいります。
2本目の柱は、OneAsia投資戦略(アジア株式を対象とする運用戦略)です。
運用、マーケティング両部門で3拠点(東京、香港、韓国)を一体化した取り組みを、さらに積極化してまいりました。朝鮮半島情勢が大きな転換期を迎えた今、韓国をはじめとするアジアに大きな投資機会が訪れていると確信しており、日本の投資家様向けに新たな商品の組成したほか、さらに欧米の投資家様向けの商品の組成も検討してまいります。
3本目の柱は、実物資産投資戦略です。
再生可能エネルギー発電事業のインフラ資産や不動産を投資対象とする実物資産の運用戦略は、全国の発電施設への投資を27件実行しており、再生可能エネルギー投資戦略の運用資産残高は1,903億円の規模となっております。太陽光のみでなく、バイオマス発電所、風力発電所も安定稼動させており、投資対象は広がっております。また、発電事業等の開発段階から運転開始までのフェーズにおける投資(グリーン・フィールド投資)に加えて、運転開始後のフェーズにおける投資(ブラウン・フィールド投資)にフォーカスした、長期的に安定したキャッシュ・フローを源泉としたファンドも運用しております。ブラウン・フィールドのファンドでは、自ら開発した発電設備のみならず外部からの発電設備の取得も行うことができます。今後も引き続き再生可能エネルギーファンドのパイオニアとして皆様のご期待にお応えすべく、魅力的な投資商品の提供を行ってまいります。
4本目の柱は、未来創生投資戦略です。
次世代の成長に資する投資を長期的な視点から実践し、投資会社として未来を創造する新たな領域を開拓するため設立した未来創生ファンドは、1号ファンドの投資が完了し、2号ファンドを立ち上げ、当戦略の運用資産残高は2020年3月末で1,132億円まで規模が拡大しております。国内外のベンチャー企業等への投資を着実に実行し、投資実績を積み上げ、質の高い投資を通じて、革新的な技術やビジネスモデルで世界をリードする企業を発掘・育成することで未来社会に貢献することを目指してまいります。
また、上記に加え、スパークスのこれまでのファンドビジネスを強化するため、新たな成長領域への投資を始動いたしました。AI(人工知能)の利用が前提となった新しい時代の成長領域は、エネルギー、医療・介護、そして量子コンピュータなどの領域と考えており、次のスパークスのビジネスの柱にしようと一歩一歩確実に前進しております。量子コンピュータ分野への投資は、東北大学及び量子アニーリングコンピュータの世界的権威である大関真之准教授からのご理解を得て、この分野に特化した新会社シグマアイに昨年4月設立とともに参画しております。医療・介護についても、小さな一歩を踏み出しました。具体的には医療法人社団五葉会のご理解を得て、コンサルティング業務を提供させていただいております。医療領域の効率的な成長は社会的な使命であり、私達投資会社として参画し貢献すべき領域であると考えております。単に目先の短期的な収益を追うのではなく、時代の要請をしっかり受け止めて、これまでのスパークスでやってきた良い投資を、金融投資家として、立派な医療機関とそれを支える優秀な医療の専門家の方々とともに、実践していきたいと思います。
スパークスでは、1989年創業以来、企業を一社一社徹底的に調べ、現場に赴いて実際に目で見て判断する“現地現物”による調査活動を徹底してまいりました。新型コロナウイルス発生以降は、5G(第5世代移動通信システム)、AIなどの技術を活用して、教育、医療、自動運転など世界はあらゆる分野で非接触型に移行していくものと思われます。この非接触型社会への移行の中で、当社グループが大切にしてきた“現地現物”やコミュニケーションの重要性といった価値観を、どのようにして維持・強化していくのか、この変化に立ち向かっていきたいと考えております。また、これからも創業時より続けている投資の勉強会「バフェットクラブ」などを通じて、高い知見・見識を備え、人格的にも優れた次世代を担う経営者を育成することが、私が経営者として負うべき最も大切な仕事だと思っています。企業文化や変わらない投資哲学を若い次の世代に継承しながら、新しい成長領域への投資に取り組み続けることのできる強い組織の創造に向けて努力精進してまいります。
(4)経営環境
直近の経営環境については、第一部 企業情報、第2 事業の状況、3.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要に含めて記載しております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上課題
当年度のグループ運用資産残高(AUM)は平均で前期比2.3%増、また平均の運用報酬料率は同2bps(ベーシスポイント)増となり、残高報酬は同5.0%増加しましたが、新規ビジネスへの先行投資など経常的経費(※1)も同10.1%増加したことから、基礎収益力(※2)は同1.9%の微減となりました。一方成功報酬は、再生可能エネルギー発電所への投資が進んだこと等により同79.0%増となったことから、営業利益は44億79百万円との同14.8%増となりました。
この数年間は、新しいビジネスへの布石と打つと同時に、「安定的に稼ぐ力」を着実に強化してまいりましたが、来年度は、新型コロナウイルス感染拡大に伴う世界経済への悪影響が予想されます。このような厳しい状況下でも、引き続き安定して高い運用実績を維持するとともに、費用面についてはこれまで以上に厳しく精査し、当社グループのミッションである「世界を豊かに、健康に、そして幸せにする」を実現するため、ESG(※3)への取り組みを通じて継続的な企業価値向上を実現すべく、主として来年度は、以下の課題に取り組んでまいります。
課題の第一として、市場に影響されない安定的な投資戦略と収益性の高い投資戦略によるハイブリッドのビジネスモデルを、引き続き強化・拡大してまいります。
成長実現のための4本柱(「日本株式」「ワンアジア株式」「実物資産」「未来創生」)という、従来からの高収益な上場株式の投資戦略と、安定性の高い実物資産/未来創生の投資戦略を、それぞれ引き続き強化することに加え、今後とも当社グループならではの革新的な投資戦略を継続的に構築し、ビジネスモデルをさらに多様化・安定化してまいります。またその過程で、「日本/アジアへの投資ならスパークス」という圧倒的なご支持をいただけるブランドを構築してまいります。
日本株式投資戦略については、当年度も引き続き複数の評価機関から、高いご評価を頂きました。この優れた運用実績を背景として、ロングショート投資戦略では、野村証券様での国内公募投信の取り扱いが本年2月に始まっている他、サステナブル投資戦略では、欧州などを中心としていわゆるESG投資への需要が高まる中、欧州の公的機関投資家から本年3月に新たに約190億円の資金をお預かりしました。来年度は、当年度の実績をさらに具体的なAUMの拡大につなげていくと同時に、ポスト・コロナの時代に日本の相対的な競争優位性が際立つ、という投資仮説を軸に、本年5月からエンゲージメント投資戦略の新しいファンドを再度ローンチし、株主として他のステークホルダーとともに投資先企業の価値向上プロセスに参加する投資を、社長の阿部が自ら実践してまいります。
ワンアジア株式投資戦略については、昨年10月より大和証券様で国内公募投信の取り扱いが始まっている他、昨年12月には、欧州の公的機関投資家より、韓国中小型株式に投資する資金として新たに約330億円をお預かりしました。来年度は、これらファンドを中心にさらなるAUMの拡大につなげていくとともに、中長期的には、本投資戦略を日本株式投資戦略と同規模以上に成長させるべく、引き続き日本・韓国・香港の3拠点が一丸となって運用力を強化し、時間を掛けて重層的で高品質な運用体制を構築してまいります。
実物資産投資戦略や未来創生投資戦略は、この5年ほどの間にゼロから立ち上げた投資戦略ですが、合計するとAUMベースでは既にグループ全体の約3割を占め、収益力を支える柱へと成長しました。来年度は、厳しい経済環境の下で、これまでは自社のバランスシートで投資し保有してきた再生可能エネルギー発電所を、売却し流動化する動きが出てくると仮説のもと、当社グループは、その中から質の良い発電所を見極めた上で、ファンドを通じて積極的に投資していくことで、この投資戦略をさらに拡大・強化してまいります。
さらに上記の4本柱に加えて、エネルギー、量子コンピュータ、医療・介護といった複数の成長領域への投資についても、株式会社シグマアイへの出資、医療法人社団五葉会の社員持分の取得など、具体的なケースで取り組みを開始しております。来年度は、当年度よりもさらに保守的な財務運営方針のもと、一定の自己資金やグループ内リソースの範囲で、当社らしいアプローチをさらに進めてまいります。またこのような成長領域への投資を通じて、新しいビジネスをゼロから生み出す企業文化と起業家精神を活性化し、これまでのファンドビジネスをさらに強化するとともに、企業文化や変わらない投資哲学を次世代に継承しながら、新しい取り組みを自律的に続けることのできる強い組織を創造してまいります。
課題の第二として、次世代のマネジメントを育成、登用し、合わせてガバナンス体制を最適化してまいります。
当社にとって次世代のCEO選任は、引き続き非常に大きな経営課題であることから、取締役会は、客観性・適時性・透明性ある手続きを確立し、十分な時間と資源をかけて、CEOの後継者計画の策定・運用を具体化し、後継者候補を育成してまいります。
次世代を担うマネジメントの必要条件としては、当社グループにおいては1989年の創業来、投資先候補企業を一社一社徹底的に調べ、現場に赴いて実際に目で見て判断する“現地現物”による調査活動、いわゆるボトムアップ・アプローチを徹底しておりますが、こうした日々の地道な活動の積み重ねによって、グループ役職員が自然と共有している価値観の他、高い知見・見識を備え、人格的にも優れていることです。このような要件を充たした人材に対して、より高い課題を与えて自覚を促していく他、社外から採用した優秀な人材をある程度の時間を掛けて育成し、これらを競わせ、衆目が認める結果を残した人材を、次世代のCEOとして登用してまいります。
当社は、本年6月の第31回定時株主総会における決議により、監査等委員会設置会社へガバナンス体制を移行しております。経営の監督と執行の分離を明確にして取締役会の監督機能を強化するとともに、取締役会から業務執行権限を大幅に委譲することによって業務執行の迅速化を実践する過程で、優れた人材を育成してまいります。
課題の第三として、ポスト・コロナの時代に適応した新しいビジネスの進め方、働き方を構築してまいります。
本年4月の日本政府による新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を受け、当社グループの中心である東京オフィスは、原則在宅勤務での業務継続体制に移行しました(海外拠点も概ね同様)。主要な業務は安定的に継続できていますが、一部の業務にはまだ紙ベースのものが残っている他、本来業務を行う場所として最適化されていない家庭での業務は、職員の負担増と一定程度の効率低下を招いています。来年度は、現状の課題を確認した上で、子供が小さい家庭、共働きの世帯など、職員の置かれた様々な状況も加味し、リモートワークのさらなる効率化に取り組んでまいります。
来年度以降は、5G(第5世代移動通信システム)、AI(人工知能)などの技術を活用して、教育、医療、自動運転など世界はあらゆる分野で非接触型に移行していくものと思われます。この非接触型社会への移行の中で、当社グループが大切にしてきた“現地現物”やコミュニケーションの重要性といった価値観を、どのようにして維持・強化していくのか。また、経営者との直接対話など、ボトムアップ・アプローチによる調査活動、投資哲学など当社グループの特徴を丁寧にご説明することを重視した営業活動など、ビジネスの根幹をなす様々な活動において、これまで同様、あるいはこれまで以上に、説得力のある新しいご説明の仕方、コミュニケーション方法などに創意工夫を凝らしてまいります。
さらに、当社グループの最も重要な経営資源である人材への影響についても分析し、対応してまいります。
当社グループのビジネスは「人が全て」と言っても過言でないことから、その採用については、人事部門、採用希望部門、関係部門やマネジメントが、多角的な視点から丁寧に何度も面談していますが、現在のテレビ会議システムを通した面談には限界があります。また人事評価は、短期的な成果のみを重視するのではなく、中長期的な視点からその過程をより大切にしておりますが、リモートワークの下では、ややもすると目に見える成果のみで評価される傾向が強まります。来年度は、これらの問題意識を踏まえ、引き続き当社グループが、優秀な人材が互いに切磋琢磨し、成長の機会が与えられて自らの成長を実感できる場であり続けられるよう、試行錯誤しながら、最適解を見つけ出してまいります。
※1.「基礎収益」とは事業の持続的かつ安定的な基盤となる収益力を示す経営指標であり、その算定方法は以下のとおりです。
基礎収益=残高報酬(手数料控除後)-経常的経費
※2.「経常的経費」とは①支払手数料全額、②実績賞与等(賞与引当金繰入、賞与に係る法定福利費及びESOP費用を含む)、③役職員に対する退職金等の一時的支払の合計を、営業費用・一般管理費の合計から控除した費用の合計を指しています。
※3.ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものであり、企業が中長期的な成長を目指すために、これら3つの視点が重要であるとされています。