有価証券報告書-第7期(令和1年7月1日-令和2年6月30日)
有報資料
(1) 経営の基本方針
当社は、日本において他社に先駆けてオンライン・マーケティング・リサーチを開始し、日本のオンライン・マーケティング・リサーチ市場においてNo.1の市場シェア(注1)を有しています。加えて、当社グループは現在、世界20ヶ国に50の拠点を展開し、世界的な規模でマーケティング・リサーチ業務を提供しています。今後は、日本におけるNo.1の市場ポジショニングをより強化しつつ、グローバルな事業展開を加速させていくことにより、企業価値を安定的に増大させていきたいと考えています。
(注)
1. オンライン・マーケティング・リサーチ市場シェア=当社単体、株式会社電通マクロミルインサイト、株式会社H.M.マーケティングリサーチのオンライン・マーケティング・リサーチに係る売上高 (2020年6月期)÷一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)によって推計された日本のMR業界市場規模・アドホック調査のうちインターネット調査分(2018年分) (出典:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA) 2019年7月1日付 第44回経営業務実態調査)
(2) 経営環境及び当社グループの取り組み
当連結会計年度(2019年7月1日~2020年6月30日)における世界経済は、米国と中国との貿易摩擦をはじめとする海外経済の不確実性が払拭されず、さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大による世界的な経済活動の減速が明らかで、その先行きは予断を許さない状況にあります。また、日本経済においても、本年2月までは雇用や所得環境が引き続き改善し、緩やかな回復の継続が期待されていましたが、3月以降は新型コロナウイルス感染症の拡大による外出自粛、消費活動の低下及び企業収益の悪化等から、国内景気の先行きは極めて厳しい状況となり、足許でようやく下げ止まりつつあります。
こうした中で、グローバルなマーケティング・リサーチ市場は473億米ドル、そのうち当社グループが主に手掛けるオンライン・マーケティング・リサーチ市場は194億米ドルに達し(注1)、日本のマーケティング・リサーチ市場は2,190億円、そのうちオンライン・マーケティング・リサーチ市場は705億円に達する(注2)規模になったと認識しています。新型コロナウイルス感染症の拡大による顧客の企業活動の自粛等の影響から、この先、市場規模が縮小するなどの悪影響が生じる懸念があります。しかし、中期的にはマーケティング・リサーチのオンライン化が一段と進むなど、想定される悪影響が軽減される可能性もあると考えています。
このような経済・市場環境の下で、足許では当社の業績も新型コロナウイルス感染症の拡大によるマイナスの影響を受けています。具体的には、国内外で実施されている外出自粛や入国規制により、経済活動や消費活動が停滞しており、顧客企業のマーケティング活動のスケジュールや内容が急に変更されることで、予定されていたリサーチ案件の延期、規模の縮小、中止等といった影響が出ています。当社グループでは、顧客、消費者パネル、社員をはじめとするステークホルダーの皆さまの安全・健康を守ることを第一に考え、各地域における政府の指針に沿って感染拡大防止に向けた対応策を実施しています。また、当社グループの強みであるオンライン・マーケティング・リサーチの活用機会を増加させるべく、顧客企業への新たな提案活動、及びリモートワークを通じたリサーチ体制の強化など、環境変化に対応した施策を積極的に推進しています。
さらに、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響以外でも、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しています。具体的には、消費者接点(タッチ・ポイント)の増加や、様々なビッグ・データやAI、マーケティング・ツールの利活用が進展し、顧客企業のマーケティング課題の高度化、多様化が進んでいます。特に、デジタル関連領域においては、事業環境が急速に変化することも多く、欧州における個人情報保護規制(GDPR)の施行に端を発し、大手プラットフォーマーが個人情報の取扱いをより慎重に行う傾向にあり、その流れは今後も継続することが見込まれます。このため、特に顧客企業におけるデジタル広告の配信や運営に影響が出ている事例も見られます。
短期的にはこうした事業環境の変化が、当社グループの業績に向かい風となるような状況を作り出しています。しかし、顧客企業にとってマーケティング活動は必要不可欠なもので、足許では新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた消費者の意識や行動の変化を的確に捉えることが求められるようになっており、その影響が終息に向かう中で、マーケティング・リサーチの需要は徐々に回復すると考えています。加えて、中長期的な視点で見れば、顧客企業におけるマーケティング活動のデジタル化の推進は止まることのない大きな潮流であり、引き続きその流れが当社グループの成長を牽引すると考えています。
当社グループは、顧客企業のマーケティング活動のデジタル化を積極的に支援しており、当社が独自に保有する消費者パネルとの強固な関係性は、デジタル化の流れの中でも引き続き高い付加価値を生む源泉になると考えています。当社グループは、消費者パネルから得られる多種多様で膨大なデータ(属性、消費・購買、行動、意識、生体情報等)を統合的に扱い、そこで得られる新しい消費者インサイトを独自のサービスとして積極的に顧客企業に提供することで、こうした事業環境の変化への対応を進めています。
(注)
1. 2019年9月にESOMAR(European Society for Opinion and Marketing Research) が発表した「ESOMAR Global Market Research 2019」による。
2. 2019年7月に一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が発表した「第44回 経営業務実態調査」による。
(3) 中長期的な経営目標
当社グループは、以下の通り、2024年までにオンライン・マーケティング・リサーチ市場に留まらず、マーケティング・リサーチ市場全体の中で、“グローバルTOP10”及び“日本及びアジアNo.1”を目指すという目標を掲げています。
また、その中で、市場を上回る売上成長の維持、及び売上成長に応じた利益成長の実現を目指すとともに、レバレッジに関しては純有利子負債/EBITDA倍率2.5倍-2倍を目標指数とし、また、キャピタルアロケーションに関しては株主還元の強化を掲げています。
さらに、上記の目標を実現するため、以下を重点施策として定めております。
①「パートナー」としての関係性の構築
当社グループは、顧客のマーケティング課題に顧客と共に取り組む「パートナー」となることを目指しています。具体的には、a) 当社の保有する様々なデータを、顧客企業のビッグ・データと同期させるなど、両者を統合的に扱うことで、顧客のマーケティング活動の向上を支援するデジタル・マーケティング事業の展開を加速させること、b) 従来から強みを持つオンライン・リサーチ領域に加え、仮説の構築等を導くオフライン・リサーチ領域での取り組みを強化すること、c) 顧客のマーケティング課題の解決に向けて、リサーチに限らず様々なデータを駆使して適切な方法を示唆できるデータ・コンサルティング領域でのサービスを拡大すること、などの取り組みを積極的に推進していく方針です。
②「自社パネル」の拡大と強化
当社グループは、自社で保有する大規模かつ良質な消費者パネルとの間で、長年に亘り良好な信頼関係を築いており、消費者パネルに対して一定の対価を支払うことで、そのデータの取得、及びそのデータを顧客企業のマーケティング活動のために使用する許諾を得ています。従って、当社の顧客企業は、当社と消費者パネルとのやり取りを通じて蓄積された「意識データ(認知・選好など)」、「行動データ(広告接触履歴・購買動向など)」、「属性データ(性別・年齢・居住地など)」に代表される各種データをマーケティング活動に活用することができ、今後、データプライバシー規制が強化される場合には、その付加価値がますます増大すると考えています。このため、当社の強みである自社パネルを今後も引き続き拡大し強化していく方針です。
③ 様々なDATAを「統合的」に活用
スマートフォンに代表されるデジタル・モバイル端末の普及などにより、当社グループの顧客企業と消費者との接点(タッチポイント)が増加しており、マーケティング施策を考える上で検討が必要な事項は多様化・複雑化しています。また、消費者のデータプライバシー規制のあり方に脚光があたっており、消費者データの取得・加工・提供には、より一層の配慮が求められています。このため、当社の顧客企業は、データの出所やデータの使用許諾の状況を確認しつつ、様々なデータを統合して分析し、マーケティング施策の立案・実行を行う必要性にせまられています。
当社グループでは、②に記載のように、多種多様なデータを取得・蓄積しており、加えて、特に注力しているデジタル・マーケティング事業では、消費者パネルによるオンライン・サーベイへの回答結果(意識データ)に、その消費者パネルの実行動データ(広告接触履歴などの実行動(非意識)データ)を併せて参照することで、より高度な分析や検証を行うことを可能とするサービスを提供しています。その結果、顧客企業にとって、マーケティング施策の具体的なアクションに繋がる、より付加価値の高い示唆やデータ活用を実現しています。このように、多様なデータの取得及び統合的な活用を加速していく方針です。
④“テクノロジー”と“イノベーション”の積極活用
拡大するオンライン・マーケティング・リサーチ市場において、競合他社との競争は年々激化しており、当社の比較優位性を維持するためには、事業基盤の強化を継続する必要があると考えています。
こうした考えのもと、当社グループは、最新のテクノロジーの動向や、新たなデバイスの登場、その他技術革新の方向性に幅広く着目し、AIやRPAを通じた生産性の向上に努めるとともに、顧客ニーズの変化にいち早く対応できるようデジタル・マーケティング事業のサービスラインナップの拡充や新サービスの開発に積極的に取り組んでいます。
今後も引き続き、これらに対する投資を継続し、売上と利益双方の伸長をバランス良く実現することで、当社の更なる成長に向けた事業基盤を強化していく方針です。
当社グループは、上記①~④の実現を追及することを通じて、当社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)(注1)の実現に向けたコミットメントを継続します。また、顧客に対してはニーズの変化を先取りした「的確な消費者インサイト」を提供することで、顧客企業がより消費者のニーズに沿った製品やサービスを提供できるようになることを通じて、SDGsの達成(持続可能な社会の実現)にも貢献していきます。
今期においては、新型コロナウイルスの終息時期が不透明であるため、慎重かつ難しい経営の舵取りが求められておりますが、中長期的に見れば、コロナウイルスの影響の終息後はマーケティング・リサーチ需要が回復し、加えて、マーケティング活動のデジタル化の加速なども後押しされる可能性があると考えており、現時点では、中期経営計画に変更はありません。
(注)
1. 当社グループは、右記をグループのミッション:「マクロミルグループはグローバルなマーケティング・リサーチ企業です。私たちの使命は、お客様のより良い意志決定を支援するために、お客様が心から満足し、感動するサービスを提供することです。そして、利益を追求し、企業価値を高めながら、社員がそれぞれの可能性に挑戦できる場所をつくっていきます。」、右記をグループのビジョン:「私たちは、世界に誇れる実行力と、時代を変革するテクノロジーを統合し、唯一無二のグローバル・デジタル・リサーチ・カンパニーを目指します。」、右記をグループのバリュー:「Think New, Think Deep / Act Now, Act Together / Be True, Be Open / Own It, Enjoy It」としています。
(4) 2021年度 業績予想について
当社グループの2021年6月期通期の業績予想は以下のとおりです。
| 連結業績予想 (単位:百万円、別記ある場合を除く) | 2020年6月期 (当期) | 2021年6月期 (来期予想) | 増減額 | 増減率 |
| 売上収益 | 41,270 | 40,000 | △1,270 | △3.1% |
| EBITDA | 8,651 | 6,500 | △2,151 | △24.9% |
| 営業利益 | 396 | 3,400 | 3,004 | 756.5% |
| 税引前利益 | 8 | 3,000 | 2,992 | - |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益又は損失(△) | △2,131 | 1,600 | 3,731 | - |
上記「(2)経営環境及び当社グループの取り組み」にも記載のとおり、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が世界的な規模で継続しており、顧客企業においてマーケティング活動が見直され、リサーチ案件の中止や延期が発生しています。終息に向けた道筋が未だ明確に見えない中、2021年6月期の業績予想では、当面の間、その影響が継続することを想定しました。具体的には、上期にはその影響が大きく残り、リサーチ案件の全体的な減少が続くことを想定しています。下期からは、主力であるオンライン・リサーチを中心に復調に転じる想定ですが、オフライン・リサーチやグローバル・リサーチ案件においては、その影響が続くと見込んでいます。
一方、新型コロナウイルス感染症の拡大を受けて、顧客企業では構造的な変化が起きていると考えています。具体的には、リモートワークが常態化し、リサーチのオンライン化がより一層進展しています。また、コロナ禍において、変わりつつある消費者の意識や行動をスピーディに把握したいという新しいニーズが生まれています。さらに顧客企業のDX化が加速する中、マーケティング領域もその対象となり、様々なデータの利活用が加速しています。こうした変化は、中長期的にはオンラインやデジタル領域に強みを持つ当社の業績にプラスの影響を与えると考えています。足許ではマイナスの影響が大きく出ていますが、こうした構造変化に迅速に対応することで、プラスの影響を享受し、今後の成長を実現していきたいと考えています。
このような状況のもと、日本事業においては、引き続き中期経営計画で掲げる「リサーチ」×「DATA」の会社への進化を目指します。7月から分業制(機能別組織)を一部廃し、顧客企業に伴走できる体制(事業別組織)に変更しました。併せてマクロミル・コンソーシアム(MC)など外部企業との更なる連携や、BPRやデータ・コンサルティング領域への対応力の向上など、顧客企業のマーケティング課題の解決に共に取組むパートナーとなることを目指した取組みを強化しています。また、デジタル関連の新サービスや、コロナ禍における新たな生活様式を取り入れた新サービスなど、顧客ニーズに柔軟に対応したサービスの開発・提供を進めています。
韓国事業においては、日本で既に実施しているパネル購買データの取得等、多様なパネルビッグデータを整備し、デジタル関連サービスの拡大を目指します。
その他の海外事業においては、国や地域を跨いだグローバル・リサーチ案件が多く、これらのリサーチが新型コロナウイルスの影響を強く受けることから、日本及び韓国事業と比較して、新型コロナウイルスの影響が長期化する可能性があります。このため、各地域の状況を見極めつつ、必要に応じてサービスの選択と集中も検討する方針です。
以上の取り組みにより、2021年6月期の売上収益は、40,000百万円(前期比3.1%減)を見込んでいます。
費用については、売上収益の減少に伴い、変動費要素の高い外注費やパネル費の減少を見込んでいます。さらに、固定費要素の高い人件費やその他の費用等についても抑制を継続します。しかし、固定費の割合が高いため、減収を補うには至らず、また、システム関連費用が増加することもあり、営業費用全体としては増加する見込みです。
一方で、2020年6月期に、その他の海外事業セグメントに紐づくのれんについて、減損損失5,280百万円を計上しているため、その反動により、2021年6月期の営業利益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益などは、2020年6月期に比べ大きく改善する見込みです。
なお、上記業績見通しの前提となる為替レートは1ユーロ120.00円、1ウォン0.0900円を想定しております。
また、当該業績予想は、作成日現在において入手可能な情報に基づき作成しており、実際の業績は今後様々な要因によって予想数値と異なる場合があります。