有価証券報告書-第8期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)
有報資料
(1) 経営の基本方針
当社は、日本において他社に先駆けてオンライン・マーケティング・リサーチを開始し、日本のオンライン・マー
ケティング・リサーチ市場においてNo.1の市場シェア(注1)を有しています。加えて、当社グループは現在、世界
20ヶ国に50の拠点を展開し、世界的な規模でマーケティング・リサーチ業務を提供しています。今後は、日本におけるNo.1の市場ポジショニングをより強化しつつ、グローバルな事業展開を加速させていくことにより、企業価値を安定的に増大させていきたいと考えています。
(注)
1. オンライン・マーケティング・リサーチ市場シェア=当社単体、株式会社電通マクロミルインサイト、株式会社H.M.マーケティングリサーチのオンライン・マーケティング・リサーチに係る売上高 (2021年6月期)÷一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)によって推計された日本のMR業界市場規模・アドホック調査のうちインターネット調査分(2020年分) (出典:一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA) 2021年6月24日付 第46回経営業務実態調査)
(2) 経営環境及び当社グループの取り組み
当連結会計年度(2020年7月1日~2021年6月30日)における世界経済は、一部の国や地域で新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種など、その影響の縮小を目指した動きが見られるものの、その状況は地域により異なり、再び経済活動を規制する動きもあるなど、引き続き先行きが不透明な状況が継続しています。日本経済においても、新型コロナウイルス感染症の再拡大を受け、感染症拡大地域において緊急事態宣言が発出され経済活動が制限されるなど未だ終息時期の見通しが立っておらず、マイナス影響の長期化が懸念されています。
こうした中で、グローバルなマーケティング・リサーチ市場は464億米ドル、そのうち当社グループが主に手掛けるオンライン・マーケティング・リサーチ市場は205億米ドルに達し(注1)、日本のマーケティング・リサーチ市場は2,202億円、そのうちオンライン・マーケティング・リサーチ市場は807億円に達する(注2)規模になったと認識しています。新型コロナウイルス感染症の拡大による影響から、短期的には再び市場規模が縮小する懸念もありますが、中期的にはマーケティング・リサーチ市場のオンライン化が一段と進むなど、想定される悪影響が軽減される可能性もあると考えています。
このような経済・市場環境の下で、当社グループの業績も、新型コロナウイルス感染症の拡大によるマイナスの影響を受ける状況が継続してきましたが、その影響は徐々に縮小しており、当連結会計年度の売上収益は前期を上回って着地するなど、その回復傾向が強まっています。当社グループでは、顧客、消費者パネル、社員をはじめとするステークホルダーの皆さまの安全・健康を守ることを第一に考え、各地域における政府の指針に沿って感染拡大防止に向けた対応策を実施しています。一方で、当社グループの強みであるオンライン・マーケティング・リサーチの活用機会を増加させるべく、顧客企業への新たな提案活動、及びリモートワークを通じたリサーチ体制の強化など、環境変化に対応した施策を積極的に推進しています。
また、新型コロナウイルス感染症の拡大による影響以外でも、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しています。具体的には、消費者接点(タッチ・ポイント)の増加や、様々なビッグデータやAI、マーケティング・ツールの利活用が進展し、顧客企業のマーケティング課題の高度化、多様化が進んでいます。特に、デジタル関連領域においては、世界的に個人情報の取扱いに関する規制強化が進んでおり、日本でも改正個人情報保護法の施行が予定されているなど、事業環境の変化が加速しています。これにより、大手プラットフォーマーが個人情報の取扱いをより慎重に行う傾向にあり、その流れは今後も継続することが見込まれます。このため、特に顧客企業におけるデジタル広告の配信や運営に影響が出ている事例も見られます。
短期的にこうした事業環境の変化は、当社グループの業績に向かい風となるような状況を作り出すことがあります。しかし、顧客企業にとってマーケティング活動は必要不可欠であり、足許では新型コロナウイルス感染症の拡大を受けた消費者の意識や行動の変化を把握したいという新しいニーズも生まれています。加えて、中長期的な視点でみれば、顧客企業におけるマーケティング活動のデジタル化は止まることのない潮流であり、顧客企業におけるDX化の推進の動きなどを含め、新型コロナウイルス感染症の拡大がもたらす「ニュー・ノーマル」な世界は、それをより推し進めるものだと考えています。
当社グループは、顧客企業のマーケティング活動のデジタル化を積極的に支援しており、当社が独自に保有する消費者パネルとの強固な関係性は、デジタル化の流れの中でも引き続き高い付加価値を生む源泉になると考えています。当社グループは、消費者パネルから得られる多種多様で膨大なデータ(属性、消費・購買、行動、意識、生体情報等)を統合的に扱い、そこで得られる新しい消費者インサイトを独自のサービスとして積極的に顧客企業に提供することで、こうした事業環境の変化への対応を進めています。
(注)
(1) 2020年9月にESOMAR(European Society for Opinion and Marketing Research) が発表した「ESOMAR Global Market Research 2020」による。なお、同2020年版レポートに示された2019年のグローバルなマーケティング・リサーチ市場の規模は、業界定義の拡大により昨年対比で1.6倍程度に拡大した数値(シナリオ1)や、同1.9倍程度に拡大した数値(シナリオ3)も提示されているが、ここでは従来の市場規模に最も近い数値(シナリオ2)に基づいた記載を行っている。
(2) 2021年6月に一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が発表した「第46回 経営業務実態調査」による。
(3) 中長期的な経営目標
①中期的な見通し
当社グループでは2019年8月に公表した中期経営計画(3ヵ年)に沿った企業運営を行ってきましたが、当該計画の策定・公表時には、コロナ禍の発生は予見していませんでした。このため、当社ではその計画期間の終了を待たずに、その内容をこれまでの業績推移と現在の経営環境を踏まえて更新し、新たに2024年6月期までの計画(3ヵ年)を策定しました。また、この中期経営計画の更新に先立って、今後の経営環境の将来像を見据え、当社グループのビジョンを以下の通り刷新しました。
当社グループの新ビジョンは、上図にある通り「Build your Data Culture ~ 私たちは、データネイティブな発想でお客様のマーケティング課題を解決し、ビジネスに成功をもたらすData Culture構築の原動力となることを目指します。」としました。当社はこの新ビジョンの下で、特に日本事業においては、顧客企業のリサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援するため、「総合マーケティング支援企業」へと事業モデルの変革を進めます。今後も、当社が保有する消費者パネルから得られる様々なデータを活用した革新的なサービスを提供し、マーケティングビジネス領域全体にイノベーションを拡げることを目指す方針です。上記新ビジョンで示された世界観の実現に向けて、また、これまでの中期経営計画でも掲げてきた「グローバルTOP10及び日本及びアジアNO.1」を目指す方針の下で、新たな中期経営計画では下図に示す通り、2024年6月期の連結売上高570億円、連結営業利益率15%、連結ROE10%以上を目標に、過去最高の利益額の更新を目指します。また、財務レバレッジの目標水準は従来目標を引き継ぎ、既存の信用格付を維持しながら、純有利子負債/EBITDA倍率を2.5倍から2.0倍の範囲に収めることを目指します。また、株主還元を強化する方針も同様に引き継ぎ、当社の再上場以来掲げてきた、20%-30%の連結配当性向の長期目標を堅持しつつ、必要に応じた機動的な自己株式取得の実施を継続します。

具体的には、以下に示す4つの事業区分のそれぞれにおいて今後の事業成長を実現する方針です。
まず日本では、市場シェアNo.1 (30%超) の市場ポジショニングを確立しており、今後も安定的な成長が見込まれるオンライン・リサーチを中核とした「リサーチ事業」(2021/6期の連結売上収益に占める構成比: 56%)において、この3ヵ年で年平均6%の成長を目指します。加えて、従来から高成長を続けているデジタル領域、新たに本格的な参入を行ったデータ利活用支援(データ・コンサルティング)事業、マーケティング施策支援(広告配信など)事業、ライフサイエンス事業などを集約した「デジタル及びその他の新規事業」(同構成比: 13%)においては、この3ヵ年で年平均20%の成長を目指します。
次に海外では、「韓国事業」(同構成比: 10%)において、韓国のオンライン・リサーチでNo.1の市場ポジショニングと、韓国の大手リサーチ企業の中で唯一自社パネルを保有する強みを活かし、この3ヵ年で年平均16%の成長を目指します。また、「その他の海外事業」(同構成比: 21%)においては、新興勢力でありながらもグローバルに事業を展開し、オンライン/デジタル領域の強みがもたらす早さ・安さ・柔軟さを訴求することで、主にグローバル顧客企業におけるシェアを拡大し、この3ヵ年で年平均9%の成長を目指します。
上記の売上成長を実現するため、足許では積極的に人材投資を実施しています。これにより、リサーチ受注案件の内製対応キャパシティを拡充するとともに、必要に応じて外注を拡大して追加的な受注体制を構築することで、足許にかけて想定を上回るペースで回復が進む顧客需要の確実な獲得を目指します。また、データ利活用支援(データ・コンサルティング)事業、マーケティング施策支援(広告配信など)事業などの新規注力事業に関しても、それらのスキルを持つ人材の採用・育成を進めます。このように、中期経営計画の前半には人材への投資が先行しますが、後半には拡充された内製キャパシティを活用することで、外注費の削減を見込みます。また同時に、中期経営計画期間をかけて、業務の自動化やAI、RPAの導入にも積極的に取り組むことで、人件費の上昇ペースを抑え、収益と費用のバランスを図る方針です。
また、当社は上記4つの事業区分におけるそれぞれの事業成長を通じて、連結ベースでは2024年6月期に売上収益570億円の達成、この3ヵ年で年平均約9.7%の成長を目指します。この増収率は固定費の増加ペースを上回る伸長であるため、営業レバレッジ効果が発揮され、利益率の向上に繋がる見込みです。当社はその効果と、上記の固定費マネジメント施策(内製キャパの拡大を通じた外注費の削減、業務の自動化やAI、RPAの積極的な導入による人件費上昇ペースの抑制など)を通じ、2024年6月期における営業利益率15%の達成と、過去最高の利益額の更新を目指します。
こうした中、新中期経営計画の1年目にあたる当社グループの2022年6月期通期の業績予想は、以下のとおりです。
② 2022年6月期の見通し
当社グループの2022年6月期通期の業績予想は以下のとおりです。
| 連結業績予想 (単位:百万円、別記ある場合を除く) | 2021年6月期 (当期) | 2022年6月期 (来期予想) | 増減額 | 増減率 |
| 売上収益 | 43,175 | 47,400 | +4,225 | +9.8% |
| EBITDA | 8,680 | 7,900 | △780 | △9.0% |
| 営業利益 | 5,362 | 5,100 | △263 | △4.9% |
| 税引前利益 | 4,887 | 4,700 | △188 | △3.8% |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 2,822 | 2,700 | △122 | △4.3% |
上記「(2)経営環境及び当社グループの取り組み」にも記載の通り、新型コロナウイルス感染症拡大の影響の終息時期の見通しは未だ明確に見えない中、2022年6月期の業績予想の策定にあたっては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響が依然として残るものの、ワクチン接種の進展などにより経済環境の回復は続き、その正常化が進むことを想定しています。日本においては、足許で緊急事態宣言が再発令されていることに伴い、一部のオフライン・リサーチサービスの提供を中止しており、海外においても、一部の業界には依然としてコロナ禍の影響が残るなど、上期においてその影響は残ると見込んでいます。しかし、足許で既に顧客企業のマーケティング・リサーチ需要は新型コロナウイルス感染症拡大以前の水準まで回復しており、下期にかけてその回復傾向が強まると想定しています。
日本及び韓国事業、その他の海外事業ともに、2022年6月期は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響からの回復から成長フェーズへの転換期となると考えています。想定を上回るペースで進む顧客企業のマーケティング・リサーチ需要に対応できるよう、人材投資を加速し、受注体制を強化することで、サステイナブルな労働環境の構築に努めます。また、顧客企業のDX化が加速する中、様々なデータの利活用が加速しており、データ関連の新たな需要を捉えたサービス開発・提供を強化します。
具体的には、日本事業において、繁忙期である第3四半期に向けて人員数の拡充を続け、受注体制の強化に努め、内製化キャパシティの増大を図ることで、機動的な受注体制の構築及びサービス品質の向上に取り組みます。また、成長が見込まれるデジタル領域においては、好調に推移しているプラットフォームの広告効果測定等のサービスの拡販に注力するとともに、新たなデータの取得を通じた新規サービスの開発を進めます。日本事業では、顧客企業のリサーチ課題に留まらず、より上流からマーケティング課題全体の解決を支援するため、「マーケティング・リサーチ企業」から、「総合マーケティング支援企業」への事業モデルの変革を掲げています。こうした方針を受けて、新たにデータ利活用支援(データコンサルティング)事業やマーケティング施策支援事業の開始などを通じ、その取り組みを推進します。
韓国事業においては、日本で既に実施しているパネル購買データの取得等、多様なパネルビッグデータを整備し、デジタル関連サービスの拡大を目指します。
その他の海外事業においては、引き続き、戦略的意義の高い顧客企業からの案件の獲得に注力することに加え、コロナ禍からの回復ペースが進む過程で、新規顧客の獲得にも再び注力する方針です。
以上の取り組みにより、2022年6月期の売上収益は、47,400百万円(前期比9.8%増)を見込んでいます。
費用については、オフィス賃貸スペースの削減により減価償却費の減少を見込んでいますが、人件費及びその他費用に含まれるシステム関連費用が増加し、営業費用全体としては増加する見込みです。
このため、営業利益は5,100百万円(前期比4.9%減、調整後前期比※1.6%増)、税引前利益は4,700百万円(前期比3.8%減、調整後前期比※3.4%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,700百万円(前期比4.3%減、調整後前期比※8.2%増)を見込んでいます。
※2021年6月期にコロナ禍による雇用調整助成金収入341百万円を計上しており、その影響を除いた前期比を調整後前期比として記載しています。
なお、上記業績見通しの前提となる為替レートは1ユーロ130.00円、1ウォン0.0960円を想定しています。
また、当該業績予想は、本資料の作成日現在において入手可能な情報に基づき作成しており、実際の業績は今後様々な要因によって予想数値と異なる場合があります。