有価証券報告書-第23期(平成31年1月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/26 15:32
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【項目】
87項目

事業等のリスク

当社グループの事業その他に関するリスクとして、投資判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項には以下のようなものがあります。当社グループでは、これらのリスクを把握し、発生の可能性を認識したうえで、可能な限り発生の防止に努め、また、発生した場合の的確な対応に努めていく方針であります。
なお、本項目に含まれる現在及び将来に関するこれらのリスクは、当連結会計年度末現在において判断、予想したものであります。
(1)自然災害等による影響
当社グループは、地震、台風、火災、洪水等の災害、地球温暖化等の気候変動の進行による影響を受けた場合、戦争、テロ行為、コンピュータウイルスによる攻撃等が起こった場合や、それにより情報システム及び通信ネットワークの停止または誤作動が発生した場合、また、強力な新型インフルエンザ等の感染症が流行した場合、当社グループの事業活動が制限され、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)法的規制及びその変更の可能性について
当社グループが行う国内の各アウトソーシング事業は、労働基準法・労働者派遣法及びその他関係法令により規制を受けております。
各アウトソーシング事業のうち、請負については、現時点では請負自体を規制する法律はありませんが、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(以下、「告示37号」という。)等により、派遣と請負については明確に区分されております。当社グループでは、安定雇用にフォーカスした「告示37号の独自の解釈基準」を作成し、活用することにより、偽装請負のリスクを回避し、コンプライアンスを保った請負を推進しております。
契約社員や期間従業員等、雇用契約に期限がある有期雇用につきましては、2013年4月に改正労働契約法が施行され、施行日以降において有期雇用契約が反復更新され通算5年を超えた場合は、労働者の申し込みにより、契約の期限を定めない無期雇用契約に転換する仕組みが導入されました。
また、2015年9月には改正労働者派遣法が施行され、派遣活用側の利便性が高まる一方、派遣事業者の責任は強化されました。
このような労働関係法令のほかにも、個人情報保護法や内部統制に関する規制、東京証券取引所市場第一部に上場する企業としての諸規則等の規制も受けております。当社グループでは、法令遵守を第一義に考えており、法務関連部門や内部統制関連部門を中心に、関係法令の教育・指導・管理・監督体制の強化を積極的に推進しております。
同様に海外の各アウトソーシング事業においても、進出国の労働関係法をはじめとする各法令によって規制を受けておりますが、各国の大手法律事務所を活用して法令遵守を第一に運営しております。加えて、グローバルガバナンス・プロジェクト活動にも注力し、当期はとりわけ海外グループ会社に対するガバナンスを強化しております。
しかしながら、今後、国内外の社会情勢の変化等に応じて新たな法の制定・改正または解釈の変更等が生じた場合や、当社グループと規制当局との間で見解の相違等が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)取引先業種の景況等による影響について
当社グループが行う製造系アウトソーシング事業は、メーカーの量産工程における生産変動部分を請け負う性質から、すべての業種において景気の悪化をあらかじめ想定しており、取引先業種をバランスよく分散させることによって、景況による影響を受けにくくしております。
また、当社グループでは、自動車産業や医薬医療産業等の各種産業に特化して専門性を高めていく戦略であり、メーカーの研究・開発部門を請け負う技術系アウトソーシング事業も展開しております。このため、その特化した業種の景況に左右されることが想定されますが、業種を超えてグループ会社間を技術者が異動することにより、景況による影響を受けにくくしております。
しかし、進出した国が大きな不況に陥り、当該国の生産量や研究開発全体が落ち込むような場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、IoT、AIに代表される技術革新に伴いデータの活用領域が拡大することで、様々な産業分野、ビジネスモデルに変化がもたらされることが想定されます。これらの変化に充分に対応できない場合、将来にわたり市場での地位を喪失する等、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)必要な人材の確保について
近年、日本国内においては、リーマンショックのような経済危機、大震災や洪水といった天災等の影響により、生産が低迷して人材の余剰感が高まる時期や、その後の景気回復等によって一転増産となる等、人材の不足感が高まる時期が繰り返されております。
このように、様々な外部環境により変化するメーカーニーズに対して、当社グループでは、個々のメーカーのニーズにあった外部人員活用の提案をしており、また、提案を実現するための人材確保を重視しております。
人材派遣のビジネスモデルは労働者供給であり、他方、メーカーが直接雇用を行うことに対する採用代行のビジネスモデルは労働者紹介であることから、供給及び紹介する人材の採用数を増加することが重要になります。
そこで当社グループは、グループのグローバルな採用ネットワークに加え、現地の大学との提携等の様々な取組によりブランディングを強化することで、同業他社との差別化と募集数の拡大を同時に図っております。
技術系については、新卒者の採用を拡大すると同時に、未経験者の雇用を促進し、当社グループ内のKENスクールで教育研修を行って配属するスキームを展開することにより、採用の拡大を図っております。
一方、請負のビジネスモデルは、労働者の供給や紹介である派遣や採用代行とは異なり、生産効率を向上させるために、請負現場における個々の人材のスキルアップが不可欠となります。そのため、メーカーから招聘した人材育成の体制構築に必要となる技術やノウハウを持ったキーパーソンを中心とし、キャリアパス・キャリアアップ制度、事業所ごとに設定した適切な教育制度や評価報酬制度等の人材育成体制を充実させ、人材の育成に注力しております。この体制整備は、請負体制の構築に必要なコアとなるリーダーの人材を安定的に確保することも目的としております。
現場管理者の確保においても、労働者にとって魅力的なキャリアパス制度を提示することにより、同業他社との差別化を図っております。
また、採用過程において、募集広告に関する地域・メディア分析によって広告の効率的な投下を目指すとともに、リアルタイム面接予約システムやマッチングシステムの導入、さらには採用担当者への定期的な研修を行い、応募から採用に至る過程での取りこぼしを減少させ、必要な人材の確保に努めております。
さらに、メーカーの直接雇用の期間工を正社員で受け入れるPEOスキームにより、作業に習熟した人材を安価に採用することで、同業他社に比べて優位に採用活動を行います。
海外においても、進出した各国でM&Aも活用して有数のプレーヤーに成長しており、グループ内の連携等によって、同業他社に比べて優位に採用活動を行っています。
しかし、景気の回復によるニーズの高まりが想定を遥かに上回るペースであった場合のほか、同業他社が当社グループ以上に広告宣伝費を投下してより効果的な採用活動を行った場合や、今後AI等の技術革新やSNS等の代替手段が台頭し当社グループがそれらに対応できなかった場合には、需要に対応する人数の人材が確保できず、受注機会の損失や再募集によるコスト等が上昇し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)海外事業展開に関するリスク
中長期的な経済環境は、国内市場においては、人口減少による購買力の低下が懸念される一方、海外市場においては、人口増加及び各種産業の成長によって新興国を中心に消費拡大が見込まれております。
現在、当社グループの事業活動の約半数は日本国内で行われていますが、グループ全体の持続的な成長を実現するためにも海外事業拡大を重要戦略に位置付けております。
しかし、これまでのアジア・オセアニア中心の事業展開に加えて、欧州や南米にも進出を果たし、グローバルに事業展開を加速させる過程においては、為替リスクに加え、テロ・誘拐を含む政情不安、経済活動の不確実性、宗教及び文化の相違、現地における労使関係等のリスクに直面する可能性があります。
また、売掛金の回収や、取引相手との関係構築・拡大等の点において、海外の商習慣に関する障害に直面する可能性があります。さらに、投資規制、収益の本国送金に関する規制、現地産業の国有化、輸出入の規制や外国為替の規制の変更、税制または税率の変更等といった様々な政治的、法的あるいはその他の障害に遭う可能性があります。
このほか、海外事業の拡大においては、投資利益の実現までに長い期間と多額の資金を要することがあり、投資による費用の増加が収益の増加を上回る可能性もあります。
(6)M&A、資本提携等に関するリスク
当社グループでは、通常の営業活動によるシェア拡大に加え、事業拡大への経営資源を取得するために、M&Aによる企業買収や資本提携等も積極的に推進しておりますが、それらを実施する場合には、対象となる企業の財務内容や事業についてデューデリジェンスを行い、事前にリスクを把握するとともに、収益性や投資回収の可能性について検討しています。
しかしながら、国内外の経済環境の変化等の理由から、当社グループがM&Aや資本提携等を行った企業の経営、事業、資産等に対して、十分なコントロールを行えない可能性があります。また、買収した企業の顧客基盤や人材が流出する可能性もあり、当初に期待したシナジーを得られない可能性もあります。これらの場合、当社グループが既に行った投資額を十分に回収できないリスクが存在し、当初の期待どおりに事業を展開できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、当社グループが、ビジネスパートナーと合弁会社の設立や事業提携を行う場合において、当社グループが投資先を実質的に支配することや、重要な意思決定を行うことが難しい場合があるというリスクが存在し、当初の期待どおりに事業を展開できない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)情報管理について
当社グループでは、メーカーの技術部門である研究・開発工程から製造部門における量産工程までの幅広い分野において受注を獲得しており、メーカーの新技術の研究や新製品の開発、生産計画等、機密性の高い情報を知りうる立場にあります。また、主力事業であるアウトソーシング事業の特性上、数多くの顧客関係者、採用応募者、役員及び従業員等の個人情報を有するため、個人情報取扱事業者に該当し、個人情報の保護に関する法律の適用を受けます。顧客情報、個人情報をはじめとした情報の取扱に関する重要性、危険性を十分に認識し、その管理にあたっては、情報漏洩及び不正アクセス等を重大なリスクと認識し、情報セキュリティに最善の対策を講じるとともに、アウトソーシンググループ企業倫理行動規範、個人情報保護指針及び社内規程を策定し社内に周知徹底する等、情報保護体制の確立を図り、厳重な管理を行っております。
しかし万一、重要な情報の漏洩・流出が発生した場合には、結果として損害賠償責任を負うことがあり、さらに信用の失墜により当社グループの経営成績に重大な悪影響が及ぶ可能性があります。また、将来的に通信の秘密を保障するためのシステム投資及び顧客情報保護体制の整備のため、コストが増加する可能性があります。
(8)中期経営計画に関するリスク
当社グループは、2016年7月に2020年度を最終年度とする中期経営計画「VISION 2020:新フロンティア創出への挑戦~いかなる事業環境にも打ち克つ企業体への進化~」を発表し(2016年12月に一部改定。なお、2020年2月にローリングし、2024年度を最終年度とする新中期経営計画「VISION 2024:Change the GAME」を発表しております。)、中長期的なビジョンや戦略、事業セグメントごとの注力施策及び計画数値等を公表しております。
挑戦的な計画値にもかかわらず、当期までの進捗状況は順調に推移しておりますが、これらの計画や数値は、公表時点で入手可能な情報に基づき当社が計画、予想したものであり、実際の業績等は、本「事業等のリスク」に記載のリスクをはじめとする様々な要因により、結果として未達となる可能性があります。
(9)のれんの減損に関するリスク
当社グループは、2016年12月期有価証券報告書から、連結財務諸表についてIFRSを適用していますが、IFRSにおいては、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準と異なり、のれんの定額償却は不要となります。他方、のれんの対象会社における経営成績悪化等により減損の兆候が生じ、その効果である回収可能価額がのれんの帳簿価額を下回る場合には、のれんの減損処理を行う必要が生じる可能性があり、かかる場合には当社グループの経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(10)有利子負債について
当社グループは、事業基盤と収益力の拡充による中長期的な企業価値の向上のため、M&Aを中心とした投資を実施しております。今後、借入金等が増加した場合、当社グループの財政状態が変動する可能性があります。
(11)資金調達について
当社グループは、M&Aによる企業買収や資本提携等を積極的に推進しており、これらの実施を含めた必要な事業資金の一部は、金融機関からの借入等により調達しております。
今後、当社グループの経営成績、財政状態の悪化や金融情勢の変化等により、思うように必要な資金調達ができない場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの金融機関からの借入などには一部で財務制限条項が付されているものがあります。いずれかの財務制限条項に抵触する可能性が発生し、抵触を回避することができない場合、当該債務について期限の利益を喪失する可能性があるほか、これに伴い、その他の債務についても一括返済を求められる可能性があります。その結果、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12)金利の変動リスクについて
当社グループは、金融機関等から資金調達をしており、その一部を変動金利で調達しております。今後、急激かつ大幅な金利変動が生じた場合、金利負担が増加し、当社グループの財政状態に影響を与える可能性があります。
(13)為替リスクについて
当社グループが積極的に行っているM&Aによる海外事業への投資は、為替の変動により、為替換算調整勘定を通じて株主資本が増減するリスク、期間損益の円貨換算額が増減するリスクが存在します。これらの為替変動リスクは、将来の当社グループの財政状態や業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。
(14)訴訟等に関するリスク
当社グループは、法令その他諸規則等を遵守すべく、コンプライアンス体制及び内部統制システムの強化を経営上の重要課題のひとつとして位置付け、グループ各社の従業員等に対して適切な指示、指導を実施し、反社会的勢力との関係遮断や不正行為の防止・発見のために必要な予防策を講じています。
しかしながら、当社グループ及び役員、従業員等の法令違反等の有無にかかわらず、ユーザ、取引先、従業員その他第三者との予期せぬトラブルないし訴訟等が発生する可能性があります。また、特許権等の知的財産権による訴訟についても訴訟のリスクがあるものと考えております。
かかる訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、多大な訴訟対応費用の発生やブランドイメージの悪化等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(15)情報システムについて
当社グループの事業活動において、情報システムの重要性が増大しております。当社グループでは、情報システムの安定的運用に努めておりますが、自然災害、事故、コンピュータウイルスや不正アクセス等のサイバー攻撃、その他の要因により情報システムに重大な障害が発生した場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。