訂正有価証券報告書-第15期(2023/04/01-2024/03/31)
(2) 戦略
当社グループは、気候変動によるリスクと機会を重要な経営課題の一つであると認識しており、短・中期的には「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」、長期的には、明治グループ長期環境ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」に基づき「CO₂排出量の削減」や「水資源の確保」などのマテリアリティとKPIを設定し、将来にわたって自然と共生していくための取り組みを推進しております。
<2023年度の取り組み及び開示内容のポイント>・当社グループにおけるサプライチェーン全体での分析と、最新のパラメータを活用した財務インパクトの再算出
・1.5℃シナリオおよび4℃シナリオに基づき、現状、2030年(中期)、2050年(長期)を基準年として中長期の
気候変動によるリスク・機会の分析と対応策の検討
・「Meiji Green Engagement for 2050」の達成に向けて、太陽光発電設備の導入など移行計画(トランジション
プラン)に基づく対応策の強化
・2021年時点で策定した対応策への具体的な取り組みの推進
・前回特定した気候変動における事業機会に対する具体的取り組み事項の例示
1)リスクの財務インパクト評価
当社グループを取り巻く気候関連リスク・機会の財務的影響を評価するため、シナリオ分析を実施しました。2つのシナリオ(1.5℃・4℃シナリオ)での分析結果のうち、影響の大きい主要インパクトの分析結果は次のとおりであります。
〈分析対象範囲〉
〈分析結果の概要〉
<1.5℃シナリオ(移行リスク)における当社グループへの影響>
(注)当影響額については、当社グループだけでなくサプライチェーン全体で負担するものと考えております。
<4℃シナリオ(物理的リスク)における当社グループへの影響>
(注)当連結会計年度より、国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」に基づき、洪水被害における財務インパクトを算出しています。年間リスク増分とは、2050年までの時間軸で想定される将来リスクの増分を一年間に換算した金額です。詳細は、後続の「<4℃シナリオ>・洪水被害による操業停止などの機会損失」の項目をご覧ください。
〈分析方法および結果の詳細〉
□ 主要インパクトと具体的影響
<1.5℃シナリオ>・カーボンプライシング導入による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などにより16億円の削減を見込めるものの、44億円のコスト増加を想定しています。2050年は、新たな技術や次世代エネルギーの積極的導入など移行計画(トランジションプラン)に基づき、24億円の削減を見込んでいます。しかし、現在の技術では2050年にCO₂排出量をゼロにすることが困難なため、50億円のカーボンクレジットの購入が必要となり、100億円のコスト増加を想定しています。
単位:億円
・カーボンプライシング導入による影響額(主要原材料)
主要原材料を調達する各国のカーボンプライスを基にした影響額は、原材料ごとに上昇するも、各種対応策の実施により、最終的には2030年は465億円の増加、2050年は同様に475億円の増加を想定しています。
※ 1.5度シナリオにおけるカーボンプライシング導入による影響額については、国際エネルギー機関
(IEA)のWorld Energy Outlook (WEO) 2023で公表されているNZEシナリオのカーボンプライス(2030年、2050年)を基に算出しています。
・電力購入金額による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動や創エネ活動などにより44億円の削減を見込んでいますが、電力価格の上昇や再エネ由来電力のプレミアム価格によるコスト増加があり、105億円のコスト増加を想定しています。一方、2050年は、技術の革新により電力価格は現状並みに下がり、省エネ活動などによる電力使用量削減が影響し、48億円の減少を想定しています。
単位:億円
※ 1.5度シナリオにおける電力購入金額による影響額は、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク
(NGFS)のNet Zero2050シナリオの情報を基に算出しています。
<4℃シナリオ>・洪水被害による操業停止などの機会損失
洪水による被害額は、国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」に基づき、財務インパクトを算出しました。国内外の生産拠点51拠点を対象としてリスク評価を実施した結果、国内13拠点、海外2拠点で浸水リスクが想定されました。財務インパクトは、各拠点で想定される浸水深などを元に、資産の被害額や操業停止による機会損失額を、年間のリスク増分として算出しています。2050年において、100年に1度の洪水規模での15拠点合計の年間リスク増分は、8.3億円/年を想定しています。
・主要原材料調達への影響
原材料の生産地においても、気候変動による気温上昇や水リスクによって農作物の収量減少に伴う原材料単価の上昇が想定されます。主要原材料の生産地における収量変化や水リスクの分析を実施し、その結果の概要は以下のとおりです。
~想定される収量変化~
・カカオ豆や砂糖の調達国では、将来的に収量が減少すると予測されています。
・乳原料への影響は、2030年、2050年においても数%の減少に留まると予測されています。
~想定される水リスク~
・洪水リスクは、将来的にほとんどの地域でリスクが高くなると想定されるため、各生産地の洪水リスクを確認した上で、改善策の検討が必要であると考えています。
※ 4℃シナリオにおける主要原材料調達への影響については、FAOが公表しているGAEZv4データベ
ース(RCP8.5)や文献調査に基づいた将来の収量予測情報を基に算出しています。
なお、原材料として調達する農作物は気候変動のみならず、自然資本・生物多様性の保全と密接に関係しています。自然関連財務情報の開示フレームワーク(TNFD)のLEAPアプローチを活用し、当社グループの重要原材料であるカカオ豆と乳原料の自然への依存と影響を分析しました。
~カカオ豆や乳原料の生産地での自然関連リスク分析~
・カカオ豆や乳原料の生産活動は、自然への依存度が高いため、主要な生産拠点における依存・影響状況を把握するための調査を行いました。
<カカオ豆>「土地利用転換、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、土壌浸食の抑制、自然災害の影響緩和」という6項目について、特に重要度が高いということが分かり、そのうち、「土地利用転換・大気汚染」の2項目については、リスクが特に高い拠点数が多い結果となりました。
・土地利用転換のリスクが非常に高い拠点数 :12ヵ所
・大気汚染(焼き畑など)のリスクが非常に高い拠点数:11ヵ所
<乳原料>「水ストレスの脅威、水質汚濁、土壌肥沃度の維持、地下水・地表の利用」という5項目について、特に重要度が高いということが分かり、そのうち、「水質汚濁」については、リスクが特に高い拠点数が多い結果となりました。
・水質汚濁のリスクが非常に高い拠点数 :26カ所
カカオ豆および乳原料ともに、今後は生産地でのGAP分析等を行う中で収量減少の回避に向けた取り組みを推進してまいります。
2)リスク低減に向けた取り組み
当社グループはIEMAのGHG管理ヒエラルキーに基づきGHG排出量削減への取り組みを推進しています。
ⅰ Eliminate(回避) :ビジネスモデルや事業ポートフォリオの変更等を通じライフサイクルを通じてGHGを排出しない事業構造へ転換
ⅱ Reduce(削減) :製造工程や輸送の効率化等を通じ、エネルギー使用量やGHG排出量を削減
ⅲ Substitute(代替) :再生可能エネルギーの活用、低炭素素材の調達等を通じ、よりGHG排出量の少ないエネルギー・調達物品への変更
ⅳ Compensate(補償・相殺) :削減しきれなかったGHG排出量に対し、カーボンクレジット購入等のオフセットによって相殺
・自社拠点のGHG排出量削減に向けた取り組み
自社におけるGHG排出量を削減するため、現在実施している省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などに加え、新たな技術や次世代エネルギーの積極的な導入などを織り込んだ移行計画(トランジションプラン)を策定しました。概要は以下のとおりです。
※Scope1 事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴うGHGの間接排出
対応策については、当社工場等に太陽光発電設備や省エネ設備の導入をはじめ、RE100対応の再生可能エネルギー由来電力の購入等、様々な取り組みを行っています。移行計画を基に各取り組みを推進し、その結果、2023年度において、総使用電力に占める再生可能エネルギー比率が17.4%となりました。引き続き、2050年の100%達成を目指して取り組みを推進していきます。
対応策の例〈十勝工場におけるメタンバイオガスの利用〉
十勝工場において、ホエイ残渣をメタン発酵させ、排水処理を行う設備を導入しました。2024年4月より稼働し、この設備により、年間の産業廃棄物量の54%、CO₂排出量の5.9%を削減する見込みです。
・サプライチェーンのGHG排出量削減に向けた取り組み
主要原材料におけるCO₂排出量については、CO₂だけでなく酪農業由来のメタンなどGHG全般での排出量削減が重要な課題と捉えています。GHG排出量削減に向けて、酪農を中心としたScope3における移行計画を策定しました。GHG排出量削減を効果的に行うために、ライフサイクルにおけるGHG排出量の多いプロセスを特定すべく、まずは牛乳のカーボンフットプリント(CFP)を算定し、次にそのプロセスでの排出量削減策を策定し取り組みを開始しました。さらに、その他の原材料における対応策も検討すると同時に、GHG排出量削減に向けたサプライヤーとのエンゲージメント(対話)を実施することで、サプライヤーの排出量削減、ひいてはサプライチェーン全体の排出量削減を促進していきます。
Scope3削減の移行計画(トランジションプラン)の概要は次のとおりです。
図中の1~6については、以下に対応策詳細を記載しております。
※Scope3 Scope1、2以外のCO₂間接排出(購入した原料・包材等の生産・製造・輸送から、それらを加工した製品の販売・輸送・使用・廃棄に至るまでの企業活動におけるサプライチェーン上で発生するCO₂排出)のこと。
対応策1 牛乳のカーボンフットプリント(CFP)の算定の拡大
数軒の酪農家から収集した実データなどに基づき、2022年に「明治オーガニック牛乳」、2023年に「明治おいしい牛乳(九州工場生産品)」のライフサイクル全体(原料調達~製造~消費・廃棄)におけるGHG排出量を算定しました。その結果、上流部分が90%以上を占めることが分かりましたので、生産者との排出量削減の取り組みを強化していきます。
対応策2 糞尿由来のN₂O削減のビジネスモデル構築と拡大
酪農家、味の素株式会社、当社グループの3者が中心となり、ビジネスモデルを構築しました。
味の素株式会社製品の「AjiPro®-L」を使用し、飼料中のアミノ酸バランスを改善することで乳量を維持しつつ、飼料中の余剰な窒素を抑え、糞尿由来のN₂O排出量を削減することができます。削減されたN₂Oは、酪農家と味の素株式会社がJ-クレジット制度を活用してクレジット化し、そのクレジットを当社が購入することで酪農家を経済的に支援するモデルとなります。開始後1年が経ち、5事例、約3,000頭もの乳牛を対象に給与しており、今後さらに拡大していきます。
対応策3 カーボンファーミング(CF)に関する取り組み
カーボンファーミングは、大気中のCO₂を土壌に取り込むことで、農地土壌の質を向上させると同時に、GHG排出量削減を目指す農法です。2023年8月、酪農家や別海町と共に道東カーボンファーミング研究会を立ち上げ、別海町の土壌のCO₂貯留量を測定しました。次年度は、その結果を基に不耕起栽培やカバークロップ、堆肥の有効利用など、CO₂貯留量を増加させる農法の確立を目指し検証していきます。
対応策4 カカオに関する取り組み
気候変動への対応として、ガーナにおいて気候変動に適応する栽培法を指導したり、アグロフォレストリーを通じて森林伐採地に多品種の作物を植え、森を再生したりしています。また、気候変動に伴い生産量の減少が想定されるため、その対策として、カカオ細胞培養スタートアップ(California Cultured Inc.)に出資し、持続可能なカカオの調達を推進します。
対応策5 プラスチック資源循環の取り組み
容器包装材料の主たる原料である石油由来のプラスチックを削減することはGHG排出量の削減にも繋がります。石油由来原料のプラスチックの削減策として、「明治おいしい牛乳」のキャップや注ぎ口にバイオマスプラスチックを使用しています。また、リデュースを推進する取り組みとして、「明治エッセルスーパーカップミニ」
カップの紙容器化、「明治北海道十勝ミルクきわだつヨーグルト」カップの軽量化などを行っております。
プラスチック使用量推移、目標
対応策6 サプライヤーエンゲージメントの実施
サプライヤーにおけるCO₂排出量削減は、当社のScope3の削減に繋がります。原材料サプライヤーとのエンゲージメント(対話)を通じて、環境負荷に関する目標と実績を相互に共有し、環境課題の取り組み状況を確認することで、GHG排出量の削減などの社会課題の解決を推進します。
・主要原材料の調達リスクの低減に向けた取り組み
原材料の調達リスク低減のために、調達国/地域/サプライヤーの最適化や認証原材料の調達強化を行うとともに、商品面でも健康価値・栄養価値の強化、サステナビリティによる社会価値創出などによる商品の高付加価値化を推進しています。
・洪水リスクの低減に向けた取り組み
洪水リスクへの対応策として次の取り組みを実施しています。
・リスクの高い拠点において、現地と連携しリスク評価結果のGAP分析を行い、実態を把握しています。
・特に優先度の高い事業所に対しては、詳細な調査を行い、浸水エリアや浸水深を想定したハード面での対策
を検討し、実施しています。例えば、ボックスウォール(仮設止水版)や防水壁の設置などがあります。
3)事業機会の創出
気候変動は社会や生活に変化をもたらし、新たなニーズや機会創出に繋がると考えております。当社グループでは現在の事業基盤を活かし、新たな資源を取り入れることで以下のような機会獲得の可能性を想定しております。
機会を抽出するまでのプロセスは次のとおりです。
・グループTCFD会議の事務局メンバーが、機会検討に関係する組織に個別にヒアリングを実施しました。
・グループTCFD会議にて、「機会の方向性」を審議しました。
・既存事業との関係、現状の自社アセットでの対応可否、実現可能性等の観点から、定性的に整理しました。
・機会獲得のポイントを実現可能性の高いものに絞り込み、事業機会を特定しました。
今後、当社グループ全体でそれぞれ実現可能性を探り、実現に向けて具体的な取り組みを推進してまいります。
さらに、これら8つの事業機会を、現在既に手掛けているものから、中長期的に仕掛けていくものへと時間軸で優先順位付けを行いました。
当社グループは、気候変動によるリスクと機会を重要な経営課題の一つであると認識しており、短・中期的には「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」、長期的には、明治グループ長期環境ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」に基づき「CO₂排出量の削減」や「水資源の確保」などのマテリアリティとKPIを設定し、将来にわたって自然と共生していくための取り組みを推進しております。
<2023年度の取り組み及び開示内容のポイント>・当社グループにおけるサプライチェーン全体での分析と、最新のパラメータを活用した財務インパクトの再算出
・1.5℃シナリオおよび4℃シナリオに基づき、現状、2030年(中期)、2050年(長期)を基準年として中長期の
気候変動によるリスク・機会の分析と対応策の検討
・「Meiji Green Engagement for 2050」の達成に向けて、太陽光発電設備の導入など移行計画(トランジション
プラン)に基づく対応策の強化
・2021年時点で策定した対応策への具体的な取り組みの推進
・前回特定した気候変動における事業機会に対する具体的取り組み事項の例示
1)リスクの財務インパクト評価
当社グループを取り巻く気候関連リスク・機会の財務的影響を評価するため、シナリオ分析を実施しました。2つのシナリオ(1.5℃・4℃シナリオ)での分析結果のうち、影響の大きい主要インパクトの分析結果は次のとおりであります。
〈分析対象範囲〉
| 事業セグメント | 食品 | 医薬品 |
| 財務インパクト算出範囲 | 当社グループ全体 | |
| 対象原材料 | 主要原材料[乳原料、カカオ豆、パーム油、砂糖、木材(紙)] | |
| 分析基準年 | 現状、2030年(中期)、2050年(長期) | |
〈分析結果の概要〉
<1.5℃シナリオ(移行リスク)における当社グループへの影響>
| 気候変動に関わる変化 | 主要インパクトと具体的な影響 | 当社グループへの影響 | ||
| 関係するサプライチェーン | 影響額(億円) | |||
| 2030年 | 2050年 | |||
| 政府の環境規制の強化 | カーボンプライシング導入による影響額 | 製造 | 44 | 100 |
| 調達 物流 | 465※ | 475※ | ||
| 再生可能エネルギー普及に向けた設備投資の拡大 | 電力購入金額による影響額 | 製造 | 105 | △48 |
(注)当影響額については、当社グループだけでなくサプライチェーン全体で負担するものと考えております。
<4℃シナリオ(物理的リスク)における当社グループへの影響>
| 気候変動に関わる変化 | 主要インパクトと具体的な影響 | 当社グループへの影響 | ||
| 関係するサプライチェーン | 影響額 | |||
| 2050年 | ||||
| 台風・豪雨などの激甚化や発生頻度増加 | 洪水被害による機会損失 | 製造 物流 | 国内外15拠点浸水リスクあり 年間リスク増分8.3億円※ | |
| 気温上昇や水リスクなどによる原材料の生育環境変化 | 原材料調達コストの増加 | 調達 | - | - |
(注)当連結会計年度より、国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」に基づき、洪水被害における財務インパクトを算出しています。年間リスク増分とは、2050年までの時間軸で想定される将来リスクの増分を一年間に換算した金額です。詳細は、後続の「<4℃シナリオ>・洪水被害による操業停止などの機会損失」の項目をご覧ください。
〈分析方法および結果の詳細〉
□ 主要インパクトと具体的影響
<1.5℃シナリオ>・カーボンプライシング導入による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などにより16億円の削減を見込めるものの、44億円のコスト増加を想定しています。2050年は、新たな技術や次世代エネルギーの積極的導入など移行計画(トランジションプラン)に基づき、24億円の削減を見込んでいます。しかし、現在の技術では2050年にCO₂排出量をゼロにすることが困難なため、50億円のカーボンクレジットの購入が必要となり、100億円のコスト増加を想定しています。
単位:億円
| 取り組み内容 | 2030年 | 2050年 |
| 対応策未実施のカーボンプライシング負担額 | 60 | 74 |
| 対応策によるカーボンプライシング削減額 | △16 | △24 |
| カーボンクレジット購入金額 | - | 50 |
| 合 計 | 44 | 100 |
・カーボンプライシング導入による影響額(主要原材料)
主要原材料を調達する各国のカーボンプライスを基にした影響額は、原材料ごとに上昇するも、各種対応策の実施により、最終的には2030年は465億円の増加、2050年は同様に475億円の増加を想定しています。
※ 1.5度シナリオにおけるカーボンプライシング導入による影響額については、国際エネルギー機関
(IEA)のWorld Energy Outlook (WEO) 2023で公表されているNZEシナリオのカーボンプライス(2030年、2050年)を基に算出しています。
・電力購入金額による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動や創エネ活動などにより44億円の削減を見込んでいますが、電力価格の上昇や再エネ由来電力のプレミアム価格によるコスト増加があり、105億円のコスト増加を想定しています。一方、2050年は、技術の革新により電力価格は現状並みに下がり、省エネ活動などによる電力使用量削減が影響し、48億円の減少を想定しています。
単位:億円
| 取り組み内容 | 2030年 | 2050年 |
| 電力単価上昇に伴う増加額 | 140 | 1 |
| 省エネ活動、創エネ活動等による電力使用削減額 | △44 | △64 |
| 再エネ由来電力購入に伴う増加額 | 10 | 14 |
| 合 計 | 105 | △48 |
※ 1.5度シナリオにおける電力購入金額による影響額は、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク
(NGFS)のNet Zero2050シナリオの情報を基に算出しています。
<4℃シナリオ>・洪水被害による操業停止などの機会損失
洪水による被害額は、国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」に基づき、財務インパクトを算出しました。国内外の生産拠点51拠点を対象としてリスク評価を実施した結果、国内13拠点、海外2拠点で浸水リスクが想定されました。財務インパクトは、各拠点で想定される浸水深などを元に、資産の被害額や操業停止による機会損失額を、年間のリスク増分として算出しています。2050年において、100年に1度の洪水規模での15拠点合計の年間リスク増分は、8.3億円/年を想定しています。
| 国内/海外 | 年間リスク増分(億円) | ||||
| 物件被害額 | 営業停止 損失額 | 償却資産 被害額 | 在庫資産 被害額 | 合計 | |
| 国内 | 0.8 | 2.6 | 3.7 | 1.1 | 8.2 |
| 海外 | 0.1> | 0.1> | 0.1 | 0.1> | 0.1 |
| 合計 | 0.8 | 2.6 | 3.8 | 1.1 | 8.3 |
・主要原材料調達への影響
原材料の生産地においても、気候変動による気温上昇や水リスクによって農作物の収量減少に伴う原材料単価の上昇が想定されます。主要原材料の生産地における収量変化や水リスクの分析を実施し、その結果の概要は以下のとおりです。
~想定される収量変化~
・カカオ豆や砂糖の調達国では、将来的に収量が減少すると予測されています。
・乳原料への影響は、2030年、2050年においても数%の減少に留まると予測されています。
~想定される水リスク~
・洪水リスクは、将来的にほとんどの地域でリスクが高くなると想定されるため、各生産地の洪水リスクを確認した上で、改善策の検討が必要であると考えています。
※ 4℃シナリオにおける主要原材料調達への影響については、FAOが公表しているGAEZv4データベ
ース(RCP8.5)や文献調査に基づいた将来の収量予測情報を基に算出しています。
なお、原材料として調達する農作物は気候変動のみならず、自然資本・生物多様性の保全と密接に関係しています。自然関連財務情報の開示フレームワーク(TNFD)のLEAPアプローチを活用し、当社グループの重要原材料であるカカオ豆と乳原料の自然への依存と影響を分析しました。
~カカオ豆や乳原料の生産地での自然関連リスク分析~
・カカオ豆や乳原料の生産活動は、自然への依存度が高いため、主要な生産拠点における依存・影響状況を把握するための調査を行いました。
<カカオ豆>「土地利用転換、大気汚染、水質汚濁、土壌汚染、土壌浸食の抑制、自然災害の影響緩和」という6項目について、特に重要度が高いということが分かり、そのうち、「土地利用転換・大気汚染」の2項目については、リスクが特に高い拠点数が多い結果となりました。
・土地利用転換のリスクが非常に高い拠点数 :12ヵ所
・大気汚染(焼き畑など)のリスクが非常に高い拠点数:11ヵ所
<乳原料>「水ストレスの脅威、水質汚濁、土壌肥沃度の維持、地下水・地表の利用」という5項目について、特に重要度が高いということが分かり、そのうち、「水質汚濁」については、リスクが特に高い拠点数が多い結果となりました。
・水質汚濁のリスクが非常に高い拠点数 :26カ所
カカオ豆および乳原料ともに、今後は生産地でのGAP分析等を行う中で収量減少の回避に向けた取り組みを推進してまいります。
2)リスク低減に向けた取り組み
当社グループはIEMAのGHG管理ヒエラルキーに基づきGHG排出量削減への取り組みを推進しています。
ⅰ Eliminate(回避) :ビジネスモデルや事業ポートフォリオの変更等を通じライフサイクルを通じてGHGを排出しない事業構造へ転換
ⅱ Reduce(削減) :製造工程や輸送の効率化等を通じ、エネルギー使用量やGHG排出量を削減
ⅲ Substitute(代替) :再生可能エネルギーの活用、低炭素素材の調達等を通じ、よりGHG排出量の少ないエネルギー・調達物品への変更
ⅳ Compensate(補償・相殺) :削減しきれなかったGHG排出量に対し、カーボンクレジット購入等のオフセットによって相殺
・自社拠点のGHG排出量削減に向けた取り組み
自社におけるGHG排出量を削減するため、現在実施している省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などに加え、新たな技術や次世代エネルギーの積極的な導入などを織り込んだ移行計画(トランジションプラン)を策定しました。概要は以下のとおりです。
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※Scope1 事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴うGHGの間接排出
対応策については、当社工場等に太陽光発電設備や省エネ設備の導入をはじめ、RE100対応の再生可能エネルギー由来電力の購入等、様々な取り組みを行っています。移行計画を基に各取り組みを推進し、その結果、2023年度において、総使用電力に占める再生可能エネルギー比率が17.4%となりました。引き続き、2050年の100%達成を目指して取り組みを推進していきます。
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対応策の例〈十勝工場におけるメタンバイオガスの利用〉
十勝工場において、ホエイ残渣をメタン発酵させ、排水処理を行う設備を導入しました。2024年4月より稼働し、この設備により、年間の産業廃棄物量の54%、CO₂排出量の5.9%を削減する見込みです。
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・サプライチェーンのGHG排出量削減に向けた取り組み
主要原材料におけるCO₂排出量については、CO₂だけでなく酪農業由来のメタンなどGHG全般での排出量削減が重要な課題と捉えています。GHG排出量削減に向けて、酪農を中心としたScope3における移行計画を策定しました。GHG排出量削減を効果的に行うために、ライフサイクルにおけるGHG排出量の多いプロセスを特定すべく、まずは牛乳のカーボンフットプリント(CFP)を算定し、次にそのプロセスでの排出量削減策を策定し取り組みを開始しました。さらに、その他の原材料における対応策も検討すると同時に、GHG排出量削減に向けたサプライヤーとのエンゲージメント(対話)を実施することで、サプライヤーの排出量削減、ひいてはサプライチェーン全体の排出量削減を促進していきます。
Scope3削減の移行計画(トランジションプラン)の概要は次のとおりです。
図中の1~6については、以下に対応策詳細を記載しております。
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※Scope3 Scope1、2以外のCO₂間接排出(購入した原料・包材等の生産・製造・輸送から、それらを加工した製品の販売・輸送・使用・廃棄に至るまでの企業活動におけるサプライチェーン上で発生するCO₂排出)のこと。
対応策1 牛乳のカーボンフットプリント(CFP)の算定の拡大
数軒の酪農家から収集した実データなどに基づき、2022年に「明治オーガニック牛乳」、2023年に「明治おいしい牛乳(九州工場生産品)」のライフサイクル全体(原料調達~製造~消費・廃棄)におけるGHG排出量を算定しました。その結果、上流部分が90%以上を占めることが分かりましたので、生産者との排出量削減の取り組みを強化していきます。
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| 商品名 | 上流 (原材料調達) | 中流 (生産) | 下流 (消費・廃棄) | 合計 (g-CO₂) |
| 明治オーガニック牛乳 | 90.7% | 5.9% | 3.4% | 100% |
| 明治おいしい牛乳 | 91.0% | 5.6% | 3.4% | 100% |
対応策2 糞尿由来のN₂O削減のビジネスモデル構築と拡大
酪農家、味の素株式会社、当社グループの3者が中心となり、ビジネスモデルを構築しました。
味の素株式会社製品の「AjiPro®-L」を使用し、飼料中のアミノ酸バランスを改善することで乳量を維持しつつ、飼料中の余剰な窒素を抑え、糞尿由来のN₂O排出量を削減することができます。削減されたN₂Oは、酪農家と味の素株式会社がJ-クレジット制度を活用してクレジット化し、そのクレジットを当社が購入することで酪農家を経済的に支援するモデルとなります。開始後1年が経ち、5事例、約3,000頭もの乳牛を対象に給与しており、今後さらに拡大していきます。
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対応策3 カーボンファーミング(CF)に関する取り組み
カーボンファーミングは、大気中のCO₂を土壌に取り込むことで、農地土壌の質を向上させると同時に、GHG排出量削減を目指す農法です。2023年8月、酪農家や別海町と共に道東カーボンファーミング研究会を立ち上げ、別海町の土壌のCO₂貯留量を測定しました。次年度は、その結果を基に不耕起栽培やカバークロップ、堆肥の有効利用など、CO₂貯留量を増加させる農法の確立を目指し検証していきます。
![]() | ![]() |
対応策4 カカオに関する取り組み
気候変動への対応として、ガーナにおいて気候変動に適応する栽培法を指導したり、アグロフォレストリーを通じて森林伐採地に多品種の作物を植え、森を再生したりしています。また、気候変動に伴い生産量の減少が想定されるため、その対策として、カカオ細胞培養スタートアップ(California Cultured Inc.)に出資し、持続可能なカカオの調達を推進します。
![]() | 間もなくチョコレートになるカカオ細胞 |
対応策5 プラスチック資源循環の取り組み
容器包装材料の主たる原料である石油由来のプラスチックを削減することはGHG排出量の削減にも繋がります。石油由来原料のプラスチックの削減策として、「明治おいしい牛乳」のキャップや注ぎ口にバイオマスプラスチックを使用しています。また、リデュースを推進する取り組みとして、「明治エッセルスーパーカップミニ」
カップの紙容器化、「明治北海道十勝ミルクきわだつヨーグルト」カップの軽量化などを行っております。
プラスチック使用量推移、目標
| 年度 | 2017年度 (基準) | 2020年度 (実績) | 2021年度 (実績) | 2022年度 (実績) | 2030年度 (目標) |
| 実績 (t) | 30,807 | 27,265 | 25,878 | 25,155 | 21,567 |
| 削減量(t) | - | 3,542 | 4,929 | 5,652 | 9,240 |
| 削減率(%) | - | 11.5 | 16.0 | 18.3 | 30.0 |
対応策6 サプライヤーエンゲージメントの実施
サプライヤーにおけるCO₂排出量削減は、当社のScope3の削減に繋がります。原材料サプライヤーとのエンゲージメント(対話)を通じて、環境負荷に関する目標と実績を相互に共有し、環境課題の取り組み状況を確認することで、GHG排出量の削減などの社会課題の解決を推進します。
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・主要原材料の調達リスクの低減に向けた取り組み
原材料の調達リスク低減のために、調達国/地域/サプライヤーの最適化や認証原材料の調達強化を行うとともに、商品面でも健康価値・栄養価値の強化、サステナビリティによる社会価値創出などによる商品の高付加価値化を推進しています。
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・洪水リスクの低減に向けた取り組み
洪水リスクへの対応策として次の取り組みを実施しています。
・リスクの高い拠点において、現地と連携しリスク評価結果のGAP分析を行い、実態を把握しています。
・特に優先度の高い事業所に対しては、詳細な調査を行い、浸水エリアや浸水深を想定したハード面での対策
を検討し、実施しています。例えば、ボックスウォール(仮設止水版)や防水壁の設置などがあります。
3)事業機会の創出
気候変動は社会や生活に変化をもたらし、新たなニーズや機会創出に繋がると考えております。当社グループでは現在の事業基盤を活かし、新たな資源を取り入れることで以下のような機会獲得の可能性を想定しております。
機会を抽出するまでのプロセスは次のとおりです。
・グループTCFD会議の事務局メンバーが、機会検討に関係する組織に個別にヒアリングを実施しました。
・グループTCFD会議にて、「機会の方向性」を審議しました。
・既存事業との関係、現状の自社アセットでの対応可否、実現可能性等の観点から、定性的に整理しました。
・機会獲得のポイントを実現可能性の高いものに絞り込み、事業機会を特定しました。
今後、当社グループ全体でそれぞれ実現可能性を探り、実現に向けて具体的な取り組みを推進してまいります。
| 気候変動の直接的影響 | 気候変動による社会や生活への影響 |
| ・平均気温の上昇 ・災害の激甚化 ・降水パターンの変化 ・生物多様性毀損 ・農産物の収量減少 ・海面の上昇 ・永久凍土の溶解 など | ・気温上昇での生活様式変化(外出・移動自粛、巣ごもり、止渇・熱中症など) ・食品・エネルギー価格の上昇、生産者の支出の変化 ・GHG排出規制の強化や水リスク(渇水、水質悪化)顕在化 ・環境負荷を低減させる生活の推進(ロスや廃棄削減、省エネ、エシカル消費など) ・医療ひっ迫の恒久化や感染症予防意識の高まり ・災害対策の意識の高まり ・開発途上国の栄養不足深刻化 |
| 機会獲得のポイント | 高まることが想定されるニーズ | 明治グループにおける機会 |
| 生活様式の変化による 巣ごもりなどへの対応 | ・気温上昇による止渇、熱中症対策 ・家庭内で生活を完結できる商品や仕組み ・栄養バランスの改善による健康維持 | ・暑さ対策商品の拡大 ・カスタマイズ型栄養支援ビジネス |
| 環境意識の高まりへの対応 | ・環境負荷の小さい商品 (植物由来、細胞培養、循環型農業など) ・廃棄ロスやエネルギー使用を低減した商 品や生活様式 ・原材料の持続可能な調達 | ・環境負荷低減型商品の拡大 ・環境配慮、支援型ビジネス ・持続可能な原料活用商品の拡大 |
| 新興・再興感染症への対応 | ・感染症予防のための行動の習慣化 (うがい、手洗いの励行、マスク着用、免 疫力強化など) ・感染症に対するセルフメディケーション ・開発途上国における感染症対策 | ・グローバルでの抗感染症薬、免疫 力強化商品の拡大 ・自然免疫、獲得免疫、治療薬など 感染症トータルケアビジネス ・開発途上国、原料生産国への感染 症対策商品の提供や支援 |
さらに、これら8つの事業機会を、現在既に手掛けているものから、中長期的に仕掛けていくものへと時間軸で優先順位付けを行いました。
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間もなくチョコレートになるカカオ細胞

