有価証券報告書-第17期(2025/04/01-2026/03/31)
(2) 戦略
当社グループは、気候変動によるリスクおよび機会を重要な経営課題の一つであると認識しており、短・中期的には「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」、長期的には、明治グループ長期環境ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」に基づき「気候変動」や「資源循環」などのマテリアリティとKPIを設定し、将来にわたって自然と共生していくための取り組みを推進しております。
〈当社グループの気候変動における戦略の全体像〉
当社グループは、1.5℃シナリオ、4℃シナリオそれぞれについてシナリオ分析を行っております。それぞれのリスクの低減と機会の獲得に向け、対応策に取り組んでおります。
※1 当該影響額については、当社グループだけでなくサプライチェーン全体で負担するものと考えております。
※2 △は費用低減を意味します。
※3 国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」に基づき、洪水被害における財務インパクトを算出しております。年間リスク増分とは、2050年までの時間軸で想定される将来リスクの増分を一年間に換算した金額です。詳細は、後続の「<4℃シナリオ>・洪水被害による操業停止などの機会損失」の項目をご覧ください。
※4 未対策の場合と比較したコスト削減額を記載しております。
1)リスクの財務インパクト評価
当社グループを取り巻く気候関連リスク・機会の財務的影響を評価するため、シナリオ分析を実施しました。2つのシナリオ(1.5℃・4℃シナリオ)での分析結果のうち、影響の大きい主要インパクトの分析結果は以下のとおりです。2025年度に財務インパクト評価を再実施したため、各インパクトの数値を更新しました。
〈分析対象範囲〉当社グループ全体
〈分析方法および結果の詳細〉
□ 主要インパクトと具体的影響
<1.5℃シナリオ>・カーボンプライシング導入による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などにより19億円の削減を見込めるものの、47億円のコスト増加を想定しております。2050年は、新たな技術や次世代エネルギーの積極的導入など移行計画(トランジションプラン)に基づき、28億円の削減を見込んでおります。しかし、現在の技術では2050年にCO₂排出量を正味ゼロにするには、23億円分の追加対策と23億円分のカーボンクレジットの購入が必要となり、92億円のコスト増加を想定しております。
(単位:億円)
・カーボンプライシング導入による影響額(主要原材料)
主要原材料を調達する各国のカーボンプライスを基にした影響額は、各原材料とも上昇が想定されますが、GHG削減策の推進により最終的には2030年は604億円の増加、2050年は同様に153億円の増加を想定しております。
※1.5℃シナリオにおけるカーボンプライシング導入による影響額については、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook (WEO) 2025で公表されているNZEシナリオのカーボンプライス(2030年、2050年)を基に算出しております。
・電力購入金額による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動や創エネ活動などにより43億円の削減を見込んでおりますが、電力価格の上昇や再エネ由来電力のプレミアム価格によるコスト増加があり、123億円のコスト増加を想定しております。一方、2050年は、技術の革新により電力価格は現状並みに下がり、省エネ活動などによる電力使用量削減が影響し、40億円の減少を想定しております。
(単位:億円)
※ 1.5℃シナリオにおける電力購入金額による影響額は、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク
(NGFS)のNet Zero2050シナリオの情報を基に算出しております。
<4℃シナリオ>・洪水被害による操業停止などの機会損失
洪水による被害額は、国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」に基づき、財務インパクトを算出しました。国内外の生産拠点51拠点を対象としてリスク評価を実施した結果、国内13拠点、海外2拠点で浸水リスクが想定されました。財務インパクトは、各拠点で想定される浸水深などを元に、資産の被害額や操業停止による機会損失額を、年間のリスク増分として算出しております。2050年において、100年に1度の洪水規模での15拠点合計の年間リスク増分は、8.3億円/年を想定しております。
・主要原材料調達への影響
原材料の生産地においても、気候変動による気温上昇や水リスクによって農作物の収量減少に伴う原材料単価の上昇が想定されます。主要原材料の生産地における収量変化や水リスクの分析を実施し、その結果の概要は以下のとおりです。
~想定される収量変化~
・カカオ豆や砂糖の調達国では、将来的に収量が減少すると予測されます。
・乳原料への影響は、2030年、2050年においても数%の減少に留まると予測されております。
~想定される水リスク~
・洪水リスクは、将来的にほとんどの地域でリスクが高くなると想定されるため、各生産地の洪水リスクを確認した上で、改善策の検討が必要であると考えております。
※4℃シナリオにおける主要原材料調達への影響については、FAOが公表しているGAEZv4データベース(RCP8.5)や文献調査に基づいた将来の収量予測情報を基に算出しております。
2)リスク低減に向けた取り組み
当社グループは、気候変動の移行リスク・物理的リスクへの対応策として、GHG排出量削減の緩和策と、物理的リスクに対する備えである適応策を推進しております。
緩和策については、IEMA(Institute of Environmental Management and Assessment)のGHG管理ヒエラルキーに基づき、GHG排出量削減への取り組みを推進しております。
ⅰ Eliminate(回避) :ビジネスモデルや事業ポートフォリオの変更等を通じライフサイクルを通じてGHGを排出しない事業構造へ転換
ⅱ Reduce(削減) :製造工程や輸送の効率化等を通じ、エネルギー使用量やGHG排出量を削減
ⅲ Substitute(代替) :再生可能エネルギーの活用、低炭素素材の調達等を通じ、よりGHG排出量の少ないエネルギー・調達物品への変更
ⅳ Compensate(補償・相殺) :削減しきれなかったGHG排出量に対し、カーボンクレジット購入等のオフセットによって相殺
・自社拠点の緩和策(GHG排出量削減に向けた取り組み)
自社におけるGHG排出量を削減するため、現在実施している省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などに加え、新たな技術や次世代エネルギーの積極的な導入などを織り込んだ移行計画(トランジションプラン)を策定しました。概要は以下のとおりです。
※ Scope1 事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴うGHGの間接排出
緩和策については、当社工場等に太陽光発電設備や省エネ設備の導入をはじめ、RE100対応の再生可能エネルギー由来電力の購入等、様々な取り組みを行っております。移行計画を基に各取り組みを推進し、その結果、2025年度において、総使用電力に占める再生可能エネルギー比率が28.6%となりました。引き続き、2050年の100%達成を目指して取り組みを推進していきます。
緩和策の例〈群馬工場における太陽光パネルの導入〉
群馬工場において、太陽光パネルを導入しました。2025年4月より稼働し、2025年度末までに年間約597tの
CO₂を削減できました。
・サプライチェーンの緩和策(GHG排出量削減に向けた取り組み)
主要原材料におけるGHG排出量については、CO₂だけでなく酪農業由来のメタンなどGHG全般での排出量削減が重要な課題と捉えております。GHG排出量削減に向けて、酪農を中心としたScope3における移行計画を策定しました。GHG排出量削減を効果的に行うために、サプライチェーンにおけるGHG排出量の多いプロセスを特定すべく、まずは牛乳のカーボンフットプリント(CFP)を算定し、次にそのプロセスでの排出量削減策を策定し取り組みを開始しました。さらに、その他の原材料における対応策も検討すると同時に、GHG排出量削減に向けたサプライヤーとのエンゲージメント(対話)を実施することで、サプライヤーの排出量削減、ひいてはサプライチェーン全体の排出量削減を促進していきます。
Scope3削減の移行計画(トランジションプラン)の概要は以下のとおりです。
図中の1~5については、以下に対応策詳細を記載しております。
※ Scope3 Scope1、2以外のGHG間接排出(購入した原料・包材等の生産・製造・輸送から、それらを加工した製品の販売・輸送・使用・廃棄に至るまでの企業活動におけるサプライチェーン上で発生するGHG排出)のこと。
対応策1 乳牛由来のGHG削減施策 (乳牛の呼気メタン削減に向けた実証実験)
スイス・オランダに本拠を置く飼料・食品添加物大手のdsm-firmenich社の協力のもと、酪農に伴うGHGの中でも最大の課題である、牛のゲップに含まれるメタンの削減プロジェクトに取り組んでおります。同社が開発した「ボベアー®」を牛に投与することで牛の消化管由来のメタンの排出を平均約30%削減できると見込んでおります。2025年度には、Jクレジット制度における方法論として「ボベアー®」の投与によるGHG削減を登録しました。
対応策2 カーボンファーミング(炭素貯留農業)に関する取り組み
カーボンファーミングは、大気中のCO₂を土壌に取り込むことで、農地土壌の質を向上させると同時に、GHG排出量削減を目指す農法です。2023年8月、酪農家や別海町と共に道東カーボンファーミング研究会を立ち上げ、別海町の土壌のCO₂貯留量を測定しました。2025年度は、推肥・敷布の散布や、土壌を草で被覆するカバークロップを実施し、土壌変化を検証しました。その結果、推肥散布圃場では土壌団粒構造の形成が確認され、炭素吸収量向上の可能性が示唆されました。また、カバークロップの導入により土壌表層の硬度が低下し、保水性の向上や植物の生育環境改善への寄与が確認されました。
対応策3 カカオに関する取り組み
気候変動への対応として、ガーナにおいて気候変動に適応する栽培法の指導や、アグロフォレストリーを通じ森林伐採地に多品種の作物を植えて森林の再生に取り組んでおります。また、気候変動に伴い生産量の減少が想定されるため、その対策として、カカオ細胞培養スタートアップ(California Cultured Inc.)に出資し、持続可能なカカオの調達を推進します。
対応策4 プラスチック資源循環の取り組み
容器包装材料の主たる原料である石油由来のプラスチックを削減することはGHG排出量の削減にも繋がります。「R-1ドリンクタイプ」のボトルに形状変更を伴う軽量化を行いました。軽量化によって、プラスチック使用量は1本あたり43%削減となります。また、石油由来原料のプラスチックの削減策として、きのこの山手作りキットのトレーにカカオハスク由来のバイオマスプラスチックを95%以上採用しました。
プラスチック使用量推移、目標
対応策5 サプライヤーエンゲージメントの実施
サプライチェーンにおけるCO₂排出量削減努力をScope3に反映させるために、サプライヤーとのエンゲージメント(対話)を通じて、サプライヤーの実際の排出量に基づく1次データの取得に取り組んでおります。
・適応策(洪水リスクの低減に向けた取り組み)
洪水リスクへの対応策として次の取り組みを実施しております。
・リスクの高い拠点において、現地と連携しリスク評価結果のギャップ分析を行い、実態を把握しております。
・特に優先度の高い事業所に対しては、詳細な調査を行い、浸水エリアや浸水深を想定したハード面での対策を検討し、実施しております。例えば、ボックスウォール(仮設止水板)や防水壁の設置などがあります。
3)事業機会の創出
気候変動は、社会や生活に変化をもたらし、新たなニーズや機会創出に繋がると考えております。また、気候変動の緩和に取り組むことがコスト削減などの機会に繋がると認識しております。当社グループでは、現在の事業基盤を活かし、新たな資源を取り入れることで以下のような機会獲得の可能性を想定しております。
<緩和策による事業コスト(電力購入金額・カーボンプライスなど)の低減>1.5℃シナリオの分析において示すとおり、今後CO₂排出量に応じて事業コストが見込まれる一方、緩和策に取り組むことはそれらのコストの削減につながります。
(単位:億円)
<気候変動の影響による製品・市場のニーズの高まり>次のプロセスを通じて事業への影響を検討しました。
・グループTCFD会議の事務局メンバーが、機会検討に関係する組織に個別にヒアリングを実施しました。
・グループTCFD会議にて、「機会の方向性」を審議しました。
・既存事業との関係、現状の自社アセットでの対応可否、実現可能性等の観点から、定性的に整理しました。
・機会獲得のポイントを実現可能性の高いものに絞り込み、事業機会を特定しました。
さらに、これら8つの事業機会を、現在既に手掛けているものから、中長期的に仕掛けていくものへと時間軸で優先順位付けを行いました。
事業機会①⑤ 「環境負荷低減商品の拡大」や「持続可能な原料活用商品の提供」の事例
「meiji サステナブルプロダクツ社内認定制度」の取組強化による事業機会の創出
バリューチェーンの各プロセス(開発、調達、生産、物流、消費)において、サステナビリティ活動に積極的に取り組み、社会課題解決型商品としてお客様に訴求することで、新たな価値の創造を目指しております。従来の食品セグメントの商品に対する認定制度に加え、2025年度からは医薬品セグメントの評価制度としても運用を開始しております。
<食品セグメント商品における認定基準の例>
事業機会③ 「感染症トータルケアビジネス」の事例
<新規モダリティの獲得>当社グループでは、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン「コスタイベ筋注用(2人用)」の国内製造販売承認を取得しました。「コスタイベ筋注用(2人用)」は、日常診療において使用しやすい2人用のバイアル製剤(従来:16人用)です。本ワクチンは、新規の sa‐mRNA技術を使用しており、少量の mRNAで高い免疫応答が期待できます。当社グループは、先進的なモダリティ技術を獲得し、将来に向けた新たなワクチン開発の技術基盤を築いてまいります。
(ⅰ)デングウイルス感染症に対する新規ワクチンの開発
気候変動による温暖化や降水量の変化に伴い、病原体の媒介生物の生息地や生活環境が変化しつつあります。この結果、デングウイルス感染症の流行地域が拡大しております。
デングウイルスは、ヒトにデング熱、デング出血熱およびデングショック症候群をおこす蚊媒介ウイルスの一種で、WHO報告によると熱帯・亜熱帯地域の100カ国以上で、世界人口の約50%に相当する39億人が感染リスクにさらされ、毎年1~4億人が感染するとされております。年間3.9億人が感染し、9,600万人が発症したとする推計も報告されております。世界経済フォーラムによると今世紀末には、84億人がデングウイルス感染症などの蚊媒介感染症に感染する可能性があるとの調査結果もあります。
弱毒生4価デング熱ワクチン「KD-382」は、非臨床試験および健康成人を対象として非流行国で実施した第Ⅰ相臨床試験において良好な安全性と免疫原性・防御効果を示すことが確認されております。デングウイルス感染症は小児の重症化リスクが高いことから、現在、小児における安全性と免疫原性を検討するため、先進的研究開発戦略センター(SCARDA)の支援のもと、第Ⅱ相臨床試験を進めており、さらに、厚生労働省が実施する「ワクチン大規模臨床試験等事業」にも採択され、本事業による助成金を活用し、第Ⅲ相臨床試験を実施していく計画であり、デングウイルス感染症の予防に向けた新たな選択肢として期待されております。
(ⅱ)既承認ワクチンによるエムポックス(急性発疹性疾患)流行制圧への国際貢献
地球規模の気候変動が干ばつなどを通じて各地の気象条件を急激に変化させた結果、動物間の感染にとどまっていたエムポックスなどのウイルスが人に伝播する傾向が強まっており、感染症の拡大がより持続的で頻繁になっているとの見解がWHOにより示されております。
現在、コンゴ民主共和国を中心にアフリカ諸国では、エムポックスの流行が継続しており、多くの感染者数・死亡者数が報告されております。当社グループの『乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」』は、2022年8月に「エムポックスの予防」の効能追加承認を得ており、2024年11月にWHO緊急使用リストに登録されております。1回接種で予防効果を発揮でき、乳幼児を含むすべての年齢層に使用可能な弱毒生ワクチンです。アフリカCDCの報告によると、日本政府よりコンゴ民主共和国へ無償供与されたLC16「KMB」が現地で約160万名へ接種されております(2026年3月末時点)。今後、当社グループは、WHO事前認証の取得を目指します。また、引き続きWHOや厚生労働省などの関係機関と協力しながら、コンゴ民主共和国を中心とするアフリカ諸国でのエムポックスの深刻な流行の制圧に繋がることを目指し、本ワクチンの流行地域での接種拡大を通じて国際的な公衆衛生上の緊急事態への対応に貢献してまいります。
当社グループは、気候変動によるリスクおよび機会を重要な経営課題の一つであると認識しており、短・中期的には「明治グループサステナビリティ2026ビジョン」、長期的には、明治グループ長期環境ビジョン「Meiji Green Engagement for 2050」に基づき「気候変動」や「資源循環」などのマテリアリティとKPIを設定し、将来にわたって自然と共生していくための取り組みを推進しております。
〈当社グループの気候変動における戦略の全体像〉
当社グループは、1.5℃シナリオ、4℃シナリオそれぞれについてシナリオ分析を行っております。それぞれのリスクの低減と機会の獲得に向け、対応策に取り組んでおります。
| リスク/機会の要因 | 当社グループに生じうるインパクト | 主な対応策 | |
| リスク | 1.5℃シナリオ 政府によるカーボンプライシング規制の強化 | 当社自社操業におけるカーボンプライス負担(売上原価、販売費及び一般管理費の増加) 2030年:47億円、2050年:92億円 | 緩和策 省エネの推進や再生可能エネルギーの導入促進によるGHG排出量の削減 |
| サプライチェーンにおける負担に伴う調達価格高騰(売上原価の増加) ※1 2030年:604億円、2050年:153億円 | 緩和策 サプライチェーンエンゲージメントによるGHG排出量の削減 | ||
| 1.5℃シナリオ 再生可能エネルギーの普及拡大に伴う電力価格の高騰と導入コストの増加 | 電力購入金額の増加(売上原価、販売費及び一般管理費の増加) 2030年:123億円、2050年:△40億円※2 | 緩和策 電力使用量の削減と再生可能エネルギー発電設備の導入推進 | |
| 4℃シナリオ 台風・豪雨などの激甚化や発生頻度増加 | 洪水被害による資産損害、操業停止による機会損失(売上高の減少、商品および製品・仕掛品・有形固定資産の減耗) 2050年:国内外15拠点で浸水リスクあり。年間リスク増分8.3億円※3 | 適応策 工場における洪水対策の推進(重要設備のかさ上げ、止水板の設置) | |
| 4℃シナリオ 気温上昇や水リスクなどによる原材料の成育環境変化 | 原材料調達コストの増加(売上原価の増加) | 適応策 原材料のトレーサビリティ確保と多様な調達ルートの確保 | |
| 機会 | 1.5℃シナリオ エネルギーの転換や省エネ施策などの緩和策の推進 | 自社の事業コスト(電気料金・カーボンプライスなど)の低減(売上原価、販売費及び一般管理費の減少) ※4 2030年度:62億円、2050年度:86億円 | 緩和策 省エネの推進や再生可能エネルギーの導入促進によるGHG排出量の削減 |
| 1.5℃/4℃シナリオ 気候変動の直接的影響による社会や生活の変化 | 下記のような製品・市場へのニーズが拡大(売上高の増加) ・生活様式の変化による巣ごもりなどへの対応 ・環境意識の高まりへの対応 ・新興・再興感染症への対応 | 緩和策・適応策 ・「meiji サステナブルプロダクツ社内認定制度」などの活用による事業機会の創出 ・新規モダリティの獲得推進 | |
※1 当該影響額については、当社グループだけでなくサプライチェーン全体で負担するものと考えております。
※2 △は費用低減を意味します。
※3 国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」に基づき、洪水被害における財務インパクトを算出しております。年間リスク増分とは、2050年までの時間軸で想定される将来リスクの増分を一年間に換算した金額です。詳細は、後続の「<4℃シナリオ>・洪水被害による操業停止などの機会損失」の項目をご覧ください。
※4 未対策の場合と比較したコスト削減額を記載しております。
1)リスクの財務インパクト評価
当社グループを取り巻く気候関連リスク・機会の財務的影響を評価するため、シナリオ分析を実施しました。2つのシナリオ(1.5℃・4℃シナリオ)での分析結果のうち、影響の大きい主要インパクトの分析結果は以下のとおりです。2025年度に財務インパクト評価を再実施したため、各インパクトの数値を更新しました。
〈分析対象範囲〉当社グループ全体
| 対象事業セグメント | 食品、医薬品 |
| 対象原材料 | 主要原材料[乳原料、カカオ豆、パーム油、砂糖、木材(紙)] |
| 分析基準年 | 現状、2030年(中期)、2050年(長期) |
〈分析方法および結果の詳細〉
□ 主要インパクトと具体的影響
<1.5℃シナリオ>・カーボンプライシング導入による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などにより19億円の削減を見込めるものの、47億円のコスト増加を想定しております。2050年は、新たな技術や次世代エネルギーの積極的導入など移行計画(トランジションプラン)に基づき、28億円の削減を見込んでおります。しかし、現在の技術では2050年にCO₂排出量を正味ゼロにするには、23億円分の追加対策と23億円分のカーボンクレジットの購入が必要となり、92億円のコスト増加を想定しております。
(単位:億円)
| 影響の内容 | 2030年 | 2050年 |
| 対応策未実施のカーボンプライシング負担額 | 66 | 74 |
| 対応策によるカーボンプライシング削減額 | △19 | △28 |
| 追加対応策に必要なコスト/投資 | - | 23 |
| カーボンクレジット購入金額 | - | 23 |
| 合 計 | 47 | 92 |
・カーボンプライシング導入による影響額(主要原材料)
主要原材料を調達する各国のカーボンプライスを基にした影響額は、各原材料とも上昇が想定されますが、GHG削減策の推進により最終的には2030年は604億円の増加、2050年は同様に153億円の増加を想定しております。
※1.5℃シナリオにおけるカーボンプライシング導入による影響額については、国際エネルギー機関(IEA)のWorld Energy Outlook (WEO) 2025で公表されているNZEシナリオのカーボンプライス(2030年、2050年)を基に算出しております。
・電力購入金額による影響額(自社)
2030年は、省エネ活動や創エネ活動などにより43億円の削減を見込んでおりますが、電力価格の上昇や再エネ由来電力のプレミアム価格によるコスト増加があり、123億円のコスト増加を想定しております。一方、2050年は、技術の革新により電力価格は現状並みに下がり、省エネ活動などによる電力使用量削減が影響し、40億円の減少を想定しております。
(単位:億円)
| 影響の内容 | 2030年 | 2050年 |
| 電力単価上昇に伴う増加額 | 155 | 1 |
| 省エネ活動、創エネ活動等による電力使用削減額 | △43 | △58 |
| 再エネ由来電力購入に伴う増加額 | 11 | 16 |
| 合 計 | 123 | △40 |
※ 1.5℃シナリオにおける電力購入金額による影響額は、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク
(NGFS)のNet Zero2050シナリオの情報を基に算出しております。
<4℃シナリオ>・洪水被害による操業停止などの機会損失
洪水による被害額は、国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」に基づき、財務インパクトを算出しました。国内外の生産拠点51拠点を対象としてリスク評価を実施した結果、国内13拠点、海外2拠点で浸水リスクが想定されました。財務インパクトは、各拠点で想定される浸水深などを元に、資産の被害額や操業停止による機会損失額を、年間のリスク増分として算出しております。2050年において、100年に1度の洪水規模での15拠点合計の年間リスク増分は、8.3億円/年を想定しております。
| 年間リスク増分(億円) | |||||
| 物件被害額 | 営業停止 損失額 | 償却資産 被害額 | 在庫資産 被害額 | 合計 | |
| 国内 | 0.8 | 2.6 | 3.7 | 1.1 | 8.2 |
| 海外 | 0.1未満 | 0.1未満 | 0.1 | 0.1未満 | 0.1 |
| 合計 | 0.8 | 2.6 | 3.8 | 1.1 | 8.3 |
・主要原材料調達への影響
原材料の生産地においても、気候変動による気温上昇や水リスクによって農作物の収量減少に伴う原材料単価の上昇が想定されます。主要原材料の生産地における収量変化や水リスクの分析を実施し、その結果の概要は以下のとおりです。
~想定される収量変化~
・カカオ豆や砂糖の調達国では、将来的に収量が減少すると予測されます。
・乳原料への影響は、2030年、2050年においても数%の減少に留まると予測されております。
~想定される水リスク~
・洪水リスクは、将来的にほとんどの地域でリスクが高くなると想定されるため、各生産地の洪水リスクを確認した上で、改善策の検討が必要であると考えております。
※4℃シナリオにおける主要原材料調達への影響については、FAOが公表しているGAEZv4データベース(RCP8.5)や文献調査に基づいた将来の収量予測情報を基に算出しております。
2)リスク低減に向けた取り組み
当社グループは、気候変動の移行リスク・物理的リスクへの対応策として、GHG排出量削減の緩和策と、物理的リスクに対する備えである適応策を推進しております。
緩和策については、IEMA(Institute of Environmental Management and Assessment)のGHG管理ヒエラルキーに基づき、GHG排出量削減への取り組みを推進しております。
ⅰ Eliminate(回避) :ビジネスモデルや事業ポートフォリオの変更等を通じライフサイクルを通じてGHGを排出しない事業構造へ転換
ⅱ Reduce(削減) :製造工程や輸送の効率化等を通じ、エネルギー使用量やGHG排出量を削減
ⅲ Substitute(代替) :再生可能エネルギーの活用、低炭素素材の調達等を通じ、よりGHG排出量の少ないエネルギー・調達物品への変更
ⅳ Compensate(補償・相殺) :削減しきれなかったGHG排出量に対し、カーボンクレジット購入等のオフセットによって相殺
・自社拠点の緩和策(GHG排出量削減に向けた取り組み)
自社におけるGHG排出量を削減するため、現在実施している省エネ活動、創エネ活動、再エネ由来電力の購入などに加え、新たな技術や次世代エネルギーの積極的な導入などを織り込んだ移行計画(トランジションプラン)を策定しました。概要は以下のとおりです。
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※ Scope1 事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope2 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴うGHGの間接排出
緩和策については、当社工場等に太陽光発電設備や省エネ設備の導入をはじめ、RE100対応の再生可能エネルギー由来電力の購入等、様々な取り組みを行っております。移行計画を基に各取り組みを推進し、その結果、2025年度において、総使用電力に占める再生可能エネルギー比率が28.6%となりました。引き続き、2050年の100%達成を目指して取り組みを推進していきます。
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緩和策の例〈群馬工場における太陽光パネルの導入〉
群馬工場において、太陽光パネルを導入しました。2025年4月より稼働し、2025年度末までに年間約597tの
CO₂を削減できました。
・サプライチェーンの緩和策(GHG排出量削減に向けた取り組み)
主要原材料におけるGHG排出量については、CO₂だけでなく酪農業由来のメタンなどGHG全般での排出量削減が重要な課題と捉えております。GHG排出量削減に向けて、酪農を中心としたScope3における移行計画を策定しました。GHG排出量削減を効果的に行うために、サプライチェーンにおけるGHG排出量の多いプロセスを特定すべく、まずは牛乳のカーボンフットプリント(CFP)を算定し、次にそのプロセスでの排出量削減策を策定し取り組みを開始しました。さらに、その他の原材料における対応策も検討すると同時に、GHG排出量削減に向けたサプライヤーとのエンゲージメント(対話)を実施することで、サプライヤーの排出量削減、ひいてはサプライチェーン全体の排出量削減を促進していきます。
Scope3削減の移行計画(トランジションプラン)の概要は以下のとおりです。
図中の1~5については、以下に対応策詳細を記載しております。
![]() |
※ Scope3 Scope1、2以外のGHG間接排出(購入した原料・包材等の生産・製造・輸送から、それらを加工した製品の販売・輸送・使用・廃棄に至るまでの企業活動におけるサプライチェーン上で発生するGHG排出)のこと。
対応策1 乳牛由来のGHG削減施策 (乳牛の呼気メタン削減に向けた実証実験)
スイス・オランダに本拠を置く飼料・食品添加物大手のdsm-firmenich社の協力のもと、酪農に伴うGHGの中でも最大の課題である、牛のゲップに含まれるメタンの削減プロジェクトに取り組んでおります。同社が開発した「ボベアー®」を牛に投与することで牛の消化管由来のメタンの排出を平均約30%削減できると見込んでおります。2025年度には、Jクレジット制度における方法論として「ボベアー®」の投与によるGHG削減を登録しました。
対応策2 カーボンファーミング(炭素貯留農業)に関する取り組み
カーボンファーミングは、大気中のCO₂を土壌に取り込むことで、農地土壌の質を向上させると同時に、GHG排出量削減を目指す農法です。2023年8月、酪農家や別海町と共に道東カーボンファーミング研究会を立ち上げ、別海町の土壌のCO₂貯留量を測定しました。2025年度は、推肥・敷布の散布や、土壌を草で被覆するカバークロップを実施し、土壌変化を検証しました。その結果、推肥散布圃場では土壌団粒構造の形成が確認され、炭素吸収量向上の可能性が示唆されました。また、カバークロップの導入により土壌表層の硬度が低下し、保水性の向上や植物の生育環境改善への寄与が確認されました。
対応策3 カカオに関する取り組み
気候変動への対応として、ガーナにおいて気候変動に適応する栽培法の指導や、アグロフォレストリーを通じ森林伐採地に多品種の作物を植えて森林の再生に取り組んでおります。また、気候変動に伴い生産量の減少が想定されるため、その対策として、カカオ細胞培養スタートアップ(California Cultured Inc.)に出資し、持続可能なカカオの調達を推進します。
対応策4 プラスチック資源循環の取り組み
容器包装材料の主たる原料である石油由来のプラスチックを削減することはGHG排出量の削減にも繋がります。「R-1ドリンクタイプ」のボトルに形状変更を伴う軽量化を行いました。軽量化によって、プラスチック使用量は1本あたり43%削減となります。また、石油由来原料のプラスチックの削減策として、きのこの山手作りキットのトレーにカカオハスク由来のバイオマスプラスチックを95%以上採用しました。
プラスチック使用量推移、目標
| 年度 | 2017年度 (基準) | 2024年度 (実績) | 2030年度 (目標) |
| 実績 (t) | 30,807 | 23,549 | 21,567 |
| (うち、再生プラスチック・バイオマスプラスチックの使用量(t)) | - | 2,185 | - |
| 削減量(t) | - | 7,258 | 9,240 |
| 削減率(%) | - | 23.6 | 30.0 |
対応策5 サプライヤーエンゲージメントの実施
サプライチェーンにおけるCO₂排出量削減努力をScope3に反映させるために、サプライヤーとのエンゲージメント(対話)を通じて、サプライヤーの実際の排出量に基づく1次データの取得に取り組んでおります。
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| 対象サプライヤー | エンゲージメント内容 |
| 2025年度実績 GHG排出量が多いサプライヤー22社に加え、コンシューマーグッズフォーラムでの協働エンゲージメントを推進 | 依頼事項 ・当社グループが調達する原材料ごとの排出量の算出 ・GHG排出量の実績算出、削減目標の設定 課題事項 サプライヤーから入手した排出量データのScope3への反映 |
・適応策(洪水リスクの低減に向けた取り組み)
洪水リスクへの対応策として次の取り組みを実施しております。
・リスクの高い拠点において、現地と連携しリスク評価結果のギャップ分析を行い、実態を把握しております。
・特に優先度の高い事業所に対しては、詳細な調査を行い、浸水エリアや浸水深を想定したハード面での対策を検討し、実施しております。例えば、ボックスウォール(仮設止水板)や防水壁の設置などがあります。
3)事業機会の創出
気候変動は、社会や生活に変化をもたらし、新たなニーズや機会創出に繋がると考えております。また、気候変動の緩和に取り組むことがコスト削減などの機会に繋がると認識しております。当社グループでは、現在の事業基盤を活かし、新たな資源を取り入れることで以下のような機会獲得の可能性を想定しております。
<緩和策による事業コスト(電力購入金額・カーボンプライスなど)の低減>1.5℃シナリオの分析において示すとおり、今後CO₂排出量に応じて事業コストが見込まれる一方、緩和策に取り組むことはそれらのコストの削減につながります。
(単位:億円)
| 影響の内容 | 2030年 | 2050年 |
| 緩和策によるカーボンプライス削減額 | 19 | 28 |
| 省エネ活動、創エネ活動等による電力購入金額削減額 | 43 | 58 |
| 合 計 | 62 | 86 |
<気候変動の影響による製品・市場のニーズの高まり>次のプロセスを通じて事業への影響を検討しました。
・グループTCFD会議の事務局メンバーが、機会検討に関係する組織に個別にヒアリングを実施しました。
・グループTCFD会議にて、「機会の方向性」を審議しました。
・既存事業との関係、現状の自社アセットでの対応可否、実現可能性等の観点から、定性的に整理しました。
・機会獲得のポイントを実現可能性の高いものに絞り込み、事業機会を特定しました。
| 気候変動の直接的影響 | 気候変動による社会や生活への影響 |
| ・平均気温の上昇 ・災害の激甚化 ・降水パターンの変化 ・生物多様性毀損 ・農産物の収量減少 ・海面の上昇 ・永久凍土の溶解 など | ・気温上昇での生活様式変化(外出・移動自粛、巣ごもり、止渇・熱中症など) ・食品・エネルギー価格の上昇、生産者の支出の変化 ・GHG排出規制の強化や水リスク(渇水、水質悪化)顕在化 ・環境負荷を低減させる生活の推進(ロスや廃棄削減、省エネ、エシカル消費など) ・医療ひっ迫の恒久化や感染症予防意識の高まり ・災害対策の意識の高まり ・開発途上国の栄養不足深刻化 |
| 機会獲得のポイント | 高まることが想定されるニーズ | 明治グループにおける機会 |
| 生活様式の変化による 巣ごもりなどへの対応 | ・気温上昇による止渇、熱中症対策 ・家庭内で生活を完結できる商品や仕組み ・栄養バランスの改善による健康維持 | ・暑さ対策商品の拡大(下図④) ・カスタマイズ型栄養支援ビジネス (下図②) |
| 環境意識の高まりへの対応 | ・環境負荷の小さい商品 (植物由来、細胞培養、循環型農業など) ・廃棄ロスやエネルギー使用を低減した商 品や生活様式 ・原材料の持続可能な調達 | ・環境負荷低減型商品の拡大 (下図①) ・環境配慮、支援型ビジネス (下図⑥) ・持続可能な原料活用商品の拡大 (下図⑤) |
| 新興・再興感染症への対応 | ・感染症予防のための行動の習慣化 (うがい、手洗いの励行、マスク着用、免 疫力強化など) ・感染症に対するセルフメディケーション ・開発途上国における感染症対策 | ・グローバルでの抗感染症薬、免疫 力強化商品の拡大 (下図⑦) ・自然免疫、獲得免疫、治療薬など 感染症トータルケアビジネス (下図③) ・開発途上国、原料生産国への感染 症対策商品の提供や支援 (下図⑧) |
さらに、これら8つの事業機会を、現在既に手掛けているものから、中長期的に仕掛けていくものへと時間軸で優先順位付けを行いました。
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事業機会①⑤ 「環境負荷低減商品の拡大」や「持続可能な原料活用商品の提供」の事例
「meiji サステナブルプロダクツ社内認定制度」の取組強化による事業機会の創出
バリューチェーンの各プロセス(開発、調達、生産、物流、消費)において、サステナビリティ活動に積極的に取り組み、社会課題解決型商品としてお客様に訴求することで、新たな価値の創造を目指しております。従来の食品セグメントの商品に対する認定制度に加え、2025年度からは医薬品セグメントの評価制度としても運用を開始しております。
<食品セグメント商品における認定基準の例>
| 事業機会 | 認定基準 | 主な要件事項 |
| 機会① 環境負荷低減商品の拡大 | 人権、環境に配慮した 容器包装 | プラスチック使用量削減、 再生プラスチック・バイオマス素材使用、リサイクルしやすい設計など |
| 機会⑤ 持続可能な原料活用商品の提供 | 人権、環境に配慮した 原料調達 | 認証原料の使用、 環境配慮農法により生産された原料の使用など |
事業機会③ 「感染症トータルケアビジネス」の事例
<新規モダリティの獲得>当社グループでは、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン「コスタイベ筋注用(2人用)」の国内製造販売承認を取得しました。「コスタイベ筋注用(2人用)」は、日常診療において使用しやすい2人用のバイアル製剤(従来:16人用)です。本ワクチンは、新規の sa‐mRNA技術を使用しており、少量の mRNAで高い免疫応答が期待できます。当社グループは、先進的なモダリティ技術を獲得し、将来に向けた新たなワクチン開発の技術基盤を築いてまいります。
(ⅰ)デングウイルス感染症に対する新規ワクチンの開発
気候変動による温暖化や降水量の変化に伴い、病原体の媒介生物の生息地や生活環境が変化しつつあります。この結果、デングウイルス感染症の流行地域が拡大しております。
デングウイルスは、ヒトにデング熱、デング出血熱およびデングショック症候群をおこす蚊媒介ウイルスの一種で、WHO報告によると熱帯・亜熱帯地域の100カ国以上で、世界人口の約50%に相当する39億人が感染リスクにさらされ、毎年1~4億人が感染するとされております。年間3.9億人が感染し、9,600万人が発症したとする推計も報告されております。世界経済フォーラムによると今世紀末には、84億人がデングウイルス感染症などの蚊媒介感染症に感染する可能性があるとの調査結果もあります。
弱毒生4価デング熱ワクチン「KD-382」は、非臨床試験および健康成人を対象として非流行国で実施した第Ⅰ相臨床試験において良好な安全性と免疫原性・防御効果を示すことが確認されております。デングウイルス感染症は小児の重症化リスクが高いことから、現在、小児における安全性と免疫原性を検討するため、先進的研究開発戦略センター(SCARDA)の支援のもと、第Ⅱ相臨床試験を進めており、さらに、厚生労働省が実施する「ワクチン大規模臨床試験等事業」にも採択され、本事業による助成金を活用し、第Ⅲ相臨床試験を実施していく計画であり、デングウイルス感染症の予防に向けた新たな選択肢として期待されております。
(ⅱ)既承認ワクチンによるエムポックス(急性発疹性疾患)流行制圧への国際貢献
地球規模の気候変動が干ばつなどを通じて各地の気象条件を急激に変化させた結果、動物間の感染にとどまっていたエムポックスなどのウイルスが人に伝播する傾向が強まっており、感染症の拡大がより持続的で頻繁になっているとの見解がWHOにより示されております。
現在、コンゴ民主共和国を中心にアフリカ諸国では、エムポックスの流行が継続しており、多くの感染者数・死亡者数が報告されております。当社グループの『乾燥細胞培養痘そうワクチンLC16「KMB」』は、2022年8月に「エムポックスの予防」の効能追加承認を得ており、2024年11月にWHO緊急使用リストに登録されております。1回接種で予防効果を発揮でき、乳幼児を含むすべての年齢層に使用可能な弱毒生ワクチンです。アフリカCDCの報告によると、日本政府よりコンゴ民主共和国へ無償供与されたLC16「KMB」が現地で約160万名へ接種されております(2026年3月末時点)。今後、当社グループは、WHO事前認証の取得を目指します。また、引き続きWHOや厚生労働省などの関係機関と協力しながら、コンゴ民主共和国を中心とするアフリカ諸国でのエムポックスの深刻な流行の制圧に繋がることを目指し、本ワクチンの流行地域での接種拡大を通じて国際的な公衆衛生上の緊急事態への対応に貢献してまいります。




