訂正有価証券報告書-第13期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2024/04/17 11:19
【資料】
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【項目】
178項目
(3)リスク管理
当社は、グループの経営理念・パーパスおよび経営計画における目指す姿の実現に向けて、その達成確度を高めるためにリスクアペタイトフレームワークを構築し、「取るリスク」、「回避するリスク」を明確にしております。
自然災害リスクについても、リスクアペタイトを明確化するとともに、自然災害が発生した場合に想定される保険金支払を気象学等の科学的知見や当社商品特性を踏まえて定量的に把握したうえで、財務健全性や収益性、利益安定性への影響、再保険マーケットの動向等をふまえて、再保険方針およびグループ全体のリスク保有戦略を策定し、管理しております。
気候変動リスクは、戦略的リスク経営(ERM)のリスクコントロールシステムの重大リスク管理、自己資本管理、ストレステスト、リミット管理、流動性リスク管理の枠組みにおいて、多角的なアプローチでコントロールしております。詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (2)主要なリスク」をご参照ください。
「SOMPOのパーパス」実現に向けた重点課題として挙げたマテリアリティの1つである「経済・社会・環境が調和したグリーンな社会づくりへの貢献」の実現に向け、「SOMPO気候アクション」の実践として気候変動リスクフレームワークを通じた中期・長期の気候関連のリスクと機会の評価、これらに基づくシナリオ分析(物理的リスク・移行リスク)を実施するとともに、これらのリスク機会へのレジリエンス向上を高めるための各種の取組みを行っております。
① 気候変動リスクフレームワーク(気候変動リスクの特定、評価および管理)
自然災害リスクを含む気候変動リスクに関しては、気候変動が保険事業以外を含めた当社グループの事業の様々な面に影響を及ぼすこと、その影響が長期にわたり、不確実性が高いことを踏まえて、既存のリスクコントロールシステムを補完し、長期的な気候変動が様々な波及経路を通じて当社グループに影響を及ぼすシナリオを深く考察してリスクを特定・評価および管理するための気候変動リスクフレームワークを構築しております。
気候変動リスクフレームワークでは、気候変動の複雑な影響を捕捉するために、以下の3ステップで評価を行い、「(2)戦略 ① 気候関連のリスクと機会」で述べたリスクと機会を整理しております。

リスク評価にあたり、平均気温の変化を示すIPCCのシナリオと政策移行を示すNGFSのシナリオを組み合わせた「低位」「中位」「高位」の3つの環境変化のパターン(下表「環境変化のパターン」)を選定しました。また、当社に及ぼす影響の波及経路・内容をシナリオで想定したうえで(下図「リスクの波及経路と影響内容のシナリオ(例)」、パターンごとにリスクを評価しております。
<表:環境変化のパターン(低位・中位・高位)>
IPCCNGFS
低位SSP1-1.9Orderly / Net Zero 2050
中位SSP-2-4.5Disorderly/Delayed Transition
高位SSP5-8.5Hot House World/ Current Policy

<リスクの波及経路と影響内容のシナリオ(例)>
アセスメント結果を踏まえて継続的なモニタリングが必要なリスクは「気候変動リスクマップ」として可視化し、主に保険引受および資産運用に影響を与えるリスクの影響度、可能性、発現時期、傾向などを俯瞰することで、取締役会および執行の諸機関における気候変動に関する議論の活発化を図っております。
<アセスメント結果を踏まえたリスクマップ>
② その他のリスク
アセスメントに用いたシナリオは保険引受と資産運用について実施しましたが、「訴訟等の法的な影響」については保険引受・資産運用以外の当社事業活動に影響を与える可能性があると考えております。リスク評価における影響度・可能性はそれぞれ中程度相当と想定しており、引き続き情報収集および分析を行い、リスクの把握に努めてまいります。
発生の原因当社への影響
訴訟等のリスク気候変動に対する取組みの遅れや不適切な情報開示当社自身に対して賠償請求訴訟が起こされる、など

表:保険引受・資産運用以外の当社事業へのリスク。なお、保険引受や資産運用への影響についてはアセスメントを実施。
③ 既存のリスク管理フレームワークとの統合
気候変動リスクフレームワークで捉えたリスクの認識は、重大リスクの「主な想定シナリオ」に反映して管理を行い、また、気候変動との間で相互に影響を与える事象である「生物多様性の喪失」はエマージングリスクとして調査研究を行っております。(下表)
気候変動に関連する重大リスク等と主な想定シナリオ
重大リスク・エマージングリスク気候変動に関連する主な想定シナリオ
気候変動リスク(物理的リスク)台風・ハリケーンの激甚化または頻度増加による火災保険等の保険金支払、再保険コストの増大。
気候変動リスク(移行リスク)脱炭素に向けた政策・法規制の強化、技術革新の進展による株式・債券の価格変動など。
事業中断リスク想定シナリオを超える大規模自然災害等の発生に伴う重要業務停止の長期化、人命被害など。
パンデミック森林減少や永久凍土の融解による重大な新興感染症パンデミックの発生増加。
生物多様性リスク気候変動に伴う生態系の破壊などにより生物多様性が毀損、農作物の生育などに悪影響が及ぶ。

また、気候変動リスクフレームワークを通じて得られた知見を、既存のリスクコントロールシステムの枠組みである自己資本管理、ストレステスト、リミット管理、流動性リスク管理に反映させていくことで、リスク管理全体の高度化を図ってまいります。