有価証券報告書-第10期(平成29年1月1日-平成29年12月31日)

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2018/03/30 10:03
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95項目

事業内容

当社グループ(当社及び当社の子会社)は、単一セグメントであるため、セグメントの情報は記載しておりません。
(1)事業の概要
当社グループは、当社(ラクオリア創薬株式会社)及び子会社(テムリック株式会社)により構成されております。
当社グループは、先端科学技術を活用し、医療分野においてニーズの高い疾患領域に対する新たな医薬品を生み出すことを目指す研究開発型の創薬企業であり、独自に創出した開発候補化合物(*)(低分子化合物医薬)の知的財産権を製薬会社等に対して導出(使用許諾契約によりライセンスアウト)することにより収益を獲得することを事業展開の基本としております。
① 当社グループの事業の背景
製薬産業は、中国を始めとする新興国市場の需要拡大や多様化する医療ニーズへの対応等により、今後も更なる成長が見込まれております。その一方で、既存医薬品の特許切れによるジェネリック医薬品の参入、医療保険の適用基準の厳格化の影響等により、今後、医薬品販売高の成長率は鈍化するといった指摘もあります。
しかしながら、大手製薬会社の大型医薬品の特許切れが続いていることから、特許切れに伴う収益減少を補完するため、これらの製薬会社にとって、新たな医薬品の開発が重要な課題となっております。近年臨床試験の厳格化等により、臨床試験の規模の拡大に伴う開発期間の長期化により、製薬会社の研究開発費が増加する傾向にある一方で、新薬の承認取得数は減少傾向にあるため、新薬開発の効率化が製薬会社の課題となっております。
このような状況の中、製薬会社は、医薬品として成功する可能性の高い高品質な開発候補化合物を外部から導入して、パイプラインを充実させる傾向にあります。
当社グループは研究開発型の創薬企業としてこうした製薬会社の期待に応えるべく、前身であるファイザー株式会社中央研究所(以下、「ファイザー社中央研究所」)にて蓄積した創薬研究に係る経験及びノウハウを活用し、事業を展開しております。
② 医薬品研究開発の一般的進行(*)及び当社グループの事業領域
一般的に新薬の開発は、探索研究、前臨床試験、臨床試験、厚生労働省(あるいは米国食品医薬品局(FDA:Food and Drug Administration)等の各国の医薬品許認可審査機関)への製造販売承認申請、医薬品としての承認取得、薬価基準収載(*)を経て行われます。その後、初めて新薬として販売が開始され、病院・医師・患者へ提供することが可能となります。
0101010_001.jpg(注)医薬品の研究開発における標準的な各段階の所要年数は、あくまでも標準的な想定期間を表示したものであり、各プロジェクトがこの想定期間どおりに進捗するとは限りません。各プロジェクトが経過した、あるいは現在進行中の各段階の幅についても、実際の所要期間あるいは想定所要期間を示すものではありません。
当社グループは、医薬品の研究開発段階のうち、探索研究段階、前臨床試験段階及び初期臨床試験段階(うち一部)を主たる事業分野としております。臨床試験段階においては多額の研究開発費が必要となるため、当社グループにおける研究開発に係る費用及びリスク負担を低減する目的から、安全性及び有効性が概ね評価可能となる段階(必要に応じて前期第Ⅱ相臨床試験)までを当社グループにて行い、その後製薬会社等へ開発化合物を導出することを基本としております。
③ 低分子化合物医薬への特化
当社グループは、主に低分子化合物に係る研究開発を行っております。近年、医薬品業界においては、抗体医薬やワクチン等のいわゆるバイオ医薬の研究開発が盛んに行われておりますが、低分子化合物は依然として医薬品開発の大きな柱であります。当社グループにおいては、低分子化合物において高い専門性を有していることから、当面は低分子化合物を中心とした研究開発を推進していく方針であります。
④ 研究開発活動
(A)研究開発の概要
当社グループの研究開発部門が行っている研究開発の概要とその流れは、以下のとおりであります。当社グループでは、創薬標的分子(*)の探索から初期臨床試験(主として第Ⅰ相臨床試験、必要に応じて前期第Ⅱ相臨床試験)まで、博士・修士号を有した研究者を中心にこの業務を推進しております。
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(B)当社グループの研究開発体制
当社グループは、前身であるファイザー社中央研究所の創薬研究に係る主要な機能及び研究設備を引き継いでおります。当社グループは、研究領域において豊富な知識、経験及びノウハウを有する従業員が在籍しており、国内外の研究機関に引けを取らない創薬研究開発環境が構築されています。
a)プロジェクトを中心とした研究開発体制
当社グループの研究開発体制は、組織横断的なプロジェクトを単位として運営されており、迅速な意思決定及び業務の遂行を可能にしております。実際の業務は、プロジェクト単位で協議し決定され、特に重要な方針に関わる場合は、プロジェクトから経営戦略委員会へ提案が行われ、その決定は速やかにプロジェクト活動に反映されます。
b)研究・開発・営業活動の一体化
当社グループにおいては、探索研究から開発そして導出に至るまで、プロジェクトチームが一貫して主体性を持ち、組織横断的に業務を実施しております。これにより、一貫した研究・開発、導出計画の下、必要な情報を随時共有し、適切な情報をタイムリーに導出先企業に提供することを可能としております。
(C)研究開発ポートフォリオ(*)による展開
当社グループの研究開発は、創薬の初期段階を担うものであり、少数の限られたプロジェクトを選択して経営資源を集中することにより、研究開発ポートフォリオを拡充し、製薬会社等へ開発候補化合物を導出していくことに重点を置いたものであります。
医薬品開発は、研究開発のいずれの段階においても、安全性、有効性及び薬物動態(*)並びにその他の開発上の問題から中止される可能性があります。当社グループにおいては、探索段階から海外市場において上市済みのものまで、各段階のプロジェクトを保有しており、さらに、自社の探索研究から新たな開発化合物を継続して創出する能力を備えていることから、複数のプロジェクトからなる研究開発ポートフォリオを拡充するとともに、開発リスクを低減し、より安定した事業の遂行を図りたいと考えております。
⑤ 導出活動
当社グループの導出活動は、前臨床試験及び臨床試験を通じて、ヒトにおける安全性及び有効性が評価可能となった段階にて、開発化合物を製薬会社へ導出することを基本としてきました。しかしながら、近年の各製薬会社等の動向は、医薬品として成功する可能性の高い高品質な化合物を、研究開発の段階を問わず、創薬ベンチャー企業や大学などの研究機関等に求めるケースが増加していることから、当社グループは、初期探索段階から臨床開発段階までの各段階において保有する研究開発ポートフォリオのすべてを導出対象とし、機動的かつ柔軟な営業活動を展開しております。
また、当社グループの研究開発ポートフォリオは、その研究開発戦略の特性から、全世界を対象とする開発、販売及び製造に関する権利の導出を最優先の目標としておりますが、一方では、それに捉われることなく、各プロジェクトの特性と導出先である製薬会社等のニーズに応じて、日本・東アジア・米国・欧州等の地域ごとの導出、あるいは剤形(経口剤、注射剤、局所用剤)ごとの導出、さらには動物用医薬品用途での導出等、収益の最大化を図るべく様々な形態で導出を図る方針であります。
⑥ 当社グループの収益
当社グループの収益は、探索研究、前臨床試験及び初期臨床試験の成果として創出した開発化合物を製薬会社等に導出することにより獲得するものであり、その概要は以下のとおりであります。
収 益内 容
契約一時金収入契約締結時に、当社グループが提供するそれまでの研究成果の対価等として受け取る収入
マイルストン収入契約相手先の研究開発の進捗(契約書に規定された研究開発段階の達成)または売上の進捗(契約書に規定された売上高の達成)に応じて受け取る収入
ロイヤルティ収入医薬品の上市後に販売額の一定料率を受け取る収入
研究協力金収入共同研究で設定された条件に従って、共同研究の開始に伴い当社グループのそれまでの研究成果を提供する対価等として受け取る収入及び共同研究の期間中に提供する役務等の対価等として受け取る収入

⑦ 事業系統図
当社グループの事業の系統図は、以下のとおりであります。
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(2)当社グループの研究開発対象領域及び研究開発ポートフォリオ
① 当社グループの研究開発対象領域
当社グループは、前身であるファイザー社中央研究所から引き続き、主として疼痛疾患領域及び消化管疾患領域を研究開発の中核として位置付けており、当該領域における豊富なノウハウを蓄積しております。当該2つの事業領域に関して、医薬品としての全世界の市場規模は拡大傾向にあり、今後も市場成長が見込まれるものと想定しており、これらの領域を柱として研究開発を推進していく方針であります。
一方、平成26年から平成27年にかけて研究拠点を名古屋大学のキャンパス内に移転したことにより、名古屋大学を中心としたアカデミアからあらゆる疾患領域における魅力ある創薬テーマの提供を受けており、今後はこれまでの2つ疾患領域に加えて医療ニーズの高い疾患に対する創薬研究も推進していく方針であります。
② 当社グループのポートフォリオ及び研究開発の状況
一般的に医薬品の研究開発は長期に渡って多額の資金を必要とされています。当社グループは、自社の強みを最大限に活かすべく、当社グループ保有の開発化合物について「選択と集中」を図っております。
具体的には、当社グループが強みを持つ探索段階から第Ⅰ相臨床試験を中心に自社単独で開発化合物の研究開発に注力して導出に向けて推進するプログラムを「導出準備プログラム」、第Ⅱ~Ⅲ相臨床試験を中心に導出先が主軸となって開発を進めるプログラムを「導出済みプログラム」と定義しております。また、探索ステージを基本に当社グループと製薬会社、双方が強みを持ち寄りイノベーティブな開発化合物の創出を目指す共同研究プログラムを「共同研究プログラム」と定義しております。
当連結会計年度末現在の主な「導出準備プログラム」及び「導出済みプログラム」、「共同研究プログラム」の状況は、以下のとおりであります。
(A)導出準備プログラム
当連結会計年度末現在、「導出準備プログラム」は以下のとおりであります。当社グループは、これらのプロジェクトに関して一部導出済みの契約を除き、全世界を対象とする開発、販売及び製造に関する権利を有しております。
プログラム化合物コード
(注)
想定適応症研究開発段階
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー
(P-CAB)
RQ-00000004
(tegoprazan)
胃食道逆流症第Ⅰ相臨床試験終了(日本、米国)
5-HT4部分作動薬RQ-00000010胃不全麻痺
機能性胃腸症
慢性便秘
第Ⅰ相臨床試験終了(英国)
5-HT2B拮抗薬RQ-00310941下痢型過敏性腸症候群(*)第Ⅰ相臨床試験実施中(英国)
モチリン受容体作動薬RQ-00201894胃不全麻痺
機能性胃腸症
術後イレウス
前臨床試験終了
TRPM8遮断薬RQ-00434739神経障害性疼痛前臨床試験準備中
グレリン受容体作動薬RQ-00433412がんに伴う食欲不振・悪液質前臨床試験準備中
選択的ナトリウムチャネル遮断薬-炎症性・神経障害性疼痛探索段階実施中

(注)化合物コードは、RQ-で始まるコードで表記されており、当社グループで研究・開発・評価に使用するすべての化合物に対して付与しております。
(B)導出済みプログラム
当連結会計年度末現在、当社グループの導出済みのプログラムの状況は、以下のとおりであります。なお、契約内容の詳細については、後述の「第2 事業の状況 5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。
[ヒト領域]
プロジェクト化合物コード
(注)1
想定適応症研究開発段階権利地域導出先
D2および5-HT2A拮抗薬RQ-00000003
(ziprasidone)
統合失調症第Ⅲ相臨床試験
実施中(日本)
日本Meiji Seika
ファルマ株式会社
カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)RQ-00000004
(tegoprazan)
胃食道逆流症他NDA申請中(韓国)
第Ⅰ相臨床試験
実施中(中国)
韓国他
(注)2
CJ HealthCare Corporation
(韓国)
EP4拮抗薬RQ-00000007
(grapiprant)
変形性関節症第Ⅰ相試験
準備中(中国)
(注)3
全世界株式会社AskAt
自己免疫疾患、アレルギー、がん第Ⅱ相臨床研究
準備中(米国、がん)(注)3
RQ-00000008変形性関節症、自己免疫疾患、アレルギー、がん前臨床試験
終了
5-HT4部分作動薬RQ-00000009アルツハイマー病第Ⅰ相臨床試験
(注)3
全世界
シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害薬RQ-00317076急性痛第Ⅱ相臨床試験
(注)5
全世界株式会社AskAt
選択的ナトリウムチャネル遮断薬-鎮痛・鎮痒前臨床試験
準備中
全世界マルホ株式会社

(注)1.化合物コードは、RQ-で始まるコードで表記されており、当社グループで研究・開発・評価に使用するすべての化合物に対して付与しております。
2.韓国、中国(香港を含む)、台湾及び東南アジア、中南米、中東、ロシアを含む東欧圏諸国
3.米国ファイザー社において、第Ⅰ相臨床試験を実施しております。
4.韓国、中国(香港を含む)、台湾、インド及び東南アジア
5.米国ファイザー社において、前期第Ⅱ相臨床試験を実施しております。
[動物領域]
プロジェクト化合物コード
(注)1
想定適応症研究開発段階権利地域導出先
グレリン受容体作動薬RQ-00000005
(capromorelin)
体重減少、
食欲不振
販売中
(米国)
全世界Aratana Therapeutics, Inc.(米国)
EP4拮抗薬RQ-00000007
(grapiprant)
変形性関節症販売中(米国)
承認申請(欧州)
全世界
(注)2

(注)1.化合物コードは、RQ-で始まるコードで表記されており、当社グループで研究・開発・評価に使用するすべての化合物に対して付与しております。
2.注射剤については日本、中国、韓国、台湾を除きます。
(C)共同研究プログラム
当連結会計年度末現在、製薬会社等との共同研究プログラムは、以下のとおりであります。なお、契約内容の詳細については、後述の「第2 事業の状況 5経営上の重要な契約等」をご参照ください。
プロジェクト化合物
コード
共同研究先研究開発段階
疼痛領域における特定の蛋白質間相互作用を標的とした共同研究インタープロテイン株式会社探索研究を実施中
疼痛領域における特定のイオンチャネルを標的とした共同研究XuanZhu Pharma Co., Ltd探索研究を実施中
疼痛領域における特定のイオンチャネルを標的とした共同研究旭化成ファーマ株式会社探索研究を実施中