有価証券報告書-第14期(令和3年1月1日-令和3年12月31日)

【提出】
2022/03/28 15:03
【資料】
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【項目】
127項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
(1) 経営方針
① 会社の経営の基本方針
当社グループは、先端科学技術を活用し、医療分野においてニーズの高い疾患領域に対する新たな医薬品を生み出すことを目指す研究開発型の創薬企業であり、独自に創出した新薬の開発化合物(*)を製薬会社等に対して導出することにより契約一時金収入、マイルストン収入、ロイヤルティ収入を獲得することを事業展開の基本としております。当社グループの基本方針は、以下のとおりであります。
(A)探索研究から初期開発さらに導出までを一体化して進める創薬ビジネスモデルを確立し、体制の整備及び効率化を図る。
(B)産学官連携を含む外部提携先との提携によって革新的な開発化合物(*)の創出を目指す。
(C)事業パートナーとの信頼関係を構築し、確実なビジネス成果に結びつける。
② 目標とする経営指標
当社グループは、医薬品の研究開発を推進し、探索研究、前臨床試験及び初期の臨床試験の成果として創出した開発化合物(*)の導出、さらには導出先での上市・販売によって収益を確保することにより、持続的な成長を図ってまいります。研究開発プロジェクトを一層充実させ、各開発候補化合物(*)及び開発化合物(*)の研究開発をすることにより、各研究開発プロジェクトの価値を高めることを目標として事業活動を推進しております。
③ 中長期的な会社の経営戦略
一般的に医薬品の研究開発は長期かつ多額の費用を要するものであります。また、研究開発の各段階においては、有効性、安全性やその他の問題により研究開発の中止や遅延等の事態が生じる等、開発化合物(*)が上市に至るまでには様々なリスクがあり、その成功確率は高いものではありません。
こうした中、当社グループは、以下のような戦略をもって事業を展開しております。
(A)導出及びアライアンスマネジメント戦略
当社グループの営業活動は、初期探索段階から開発段階までの各段階において保有する研究開発ポートフォリオ(*)のすべてを導出対象とすることにより、機動的かつ柔軟な導出活動を展開しております。当社グループの研究開発ポートフォリオ(*)は、その研究開発戦略の特性から、全世界を対象とする開発、販売及び製造に関する権利の導出を最優先の目標としておりますが、各プロジェクトの特性と顧客である製薬会社等のニーズに応じて、地域ごとの導出、あるいは剤形ごとの導出、さらには動物用医薬品用途での導出等、収益の最大化を図るべく様々な形態で導出を図る方針であります。
また、当社グループは、既に導出されている開発候補化合物(*)及び開発化合物(*)等に対し、各導出先企業との協力体制のもと、順調な開発の推進を支援し、収益獲得を可能な限り早期に実現させること、更には長期的かつ安定的な収益を獲得することを目的として、アライアンスマネジメントを遂行しております。
(B)研究開発戦略
a)継続的な研究開発ポートフォリオ(*)の強化
当社グループは、創業時より疼痛疾患領域及び消化管疾患領域を研究開発の重点領域として開発化合物(*)の創出に取り組んできました。2014年度及び2021年度においては、それぞれ名古屋大学及び岐阜薬科大学に産学連携にかかる講座を設置し、アカデミアにおける最先端の研究成果に基づく創薬研究に取り組んでおります。また、現在、国内外の製薬会社やスタートアップ企業との連携を推し進め、研究開発ポートフォリオ(*)を継続的に強化してまいります。
b)開発プロジェクトの価値向上と早期の収益化の実現
臨床試験段階においては、多額の研究開発費が必要となるため、当社グループにおける研究開発に係る費用及びリスク負担を軽減することを目的とし、当社グループ保有の開発化合物(*)について「選択と集中」を図ってまいりました。今後は、この戦略をさらに発展させるものとして、成長ドライバーとなる品目への戦略的投資を進めてまいります。選択したプログラムへの内部リソースの集中に加え、必要に応じて、外部プロジェクト・ファイナンス等を活用して開発を加速化し、プロジェクト価値の向上による将来的な収益の積み上げを目指します。
(2) 経営環境
医薬品市場は、先進国においては高齢化によって、途上国においては医療の発展による市場拡大が続いており、医療費をはじめとする社会保障費用も増加の一途を辿っています。このため、先進国においては、医療費の抑制と効率化が急務となっておりますが、各国において法規制は年々厳しくなっていることから新薬の開発難易度とコストは高騰しております。
日本においては、医薬品産業の競争力強化に向けた緊急的・集中実施的な総合戦略として、研究・医療の環境の整備や産学官の連携に加え、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度が導入されるなど、革新的新薬創出のためのイノベーションを促す諸策が講じられております。
このような経営環境の中で、当社グループは創薬ベンチャーとして新薬を研究開発・上市するためには、次の「(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に掲げた6点が重要課題であると認識しております。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、以下の点を主要な経営課題として取り組んでまいります。
① 研究開発ポートフォリオ(*)の強化
当社グループは、探索研究から初期臨床開発までの研究開発段階を手掛けるパイプライン型創薬ベンチャー企業であり、当社グループが創製する開発候補化合物(*)や開発化合物(*)等の新規医薬品候補物質及びプログラムを提携先企業に導出して収益を得ることをビジネスモデルとしております。創薬ベンチャー企業として企業価値を高めていくためには、いまだ満たされていない医療ニーズが存在する疾患に対する画期的な新薬候補の創製に取り組み、研究開発ポートフォリオ(*)を強化していく必要があります。
当社グループは、新規医薬品候補物質のパイプラインの充実、及びその基盤となる探索研究プログラム並びにテクノロジーの強化のため、以下の方策を採ってまいります。
・独自性の高い開発候補化合物(*)の継続的かつ効率的な創出
・イオンチャネル(*)領域における創薬力の維持・発展(評価系、電気生理試験、デザイン・合成)
・当社グループの単独実施又は戦略的な提携(産学医連携を含む)による創薬標的・疾患領域・対象モダリティ(*)の拡充、及び新たな創薬技術の導入
② パイプライン及びプログラムの価値の向上
当社グループは、資金や人的リソースを効率的に活用して研究開発を進めるために、以下に示すプログラム分類にあわせた対応を取っております。
・導出準備プログラム:当社グループが強みを持つ探索段階から初期臨床開段階(第Ⅰ~第Ⅱ臨床試験)を中心に自社単独で開発候補化合物(*)及び開発化合物(*)の研究開発に注力して導出に向けて推進するプログラム
・導出済みプログラム:第Ⅱ~Ⅲ相臨床試験を中心に導出先が主軸となって進める臨床開発について当社グループがサポートをメインに行うプログラム
・共同研究プログラム:探索研究段階から当社グループと製薬会社等の提携先企業の双方が持つ強みを持ち寄り画期的な開発候補化合物(*)の創出を目指す共同研究プログラム
導出準備プログラム及び共同研究プログラムにおいては、それぞれ当社グループの単独実施及び提携先企業との協業によって、保有するパイプライン及びプログラムの価値の向上をはかるため、上記①の経営課題で述べた方策に加え、以下の方策を採ってまいります。
・探索研究、前臨床開発及び初期臨床開発の各段階における製薬企業・バイオ企業との有望な新規提携の実現
・厳選したプログラムの自社開発の実施(前臨床開発段階及び初期臨床開発段階)
・適応疾患の拡大機会の探索
・独占的地位の確保及び製品ライフサイクルの延長に資する知的財産権の確立と強化
③ 導出活動とアライアンスマネジメントの強化
当社グループが有する開発化合物(*)を製品化して上市し医療現場に届けるには、臨床開発を経て各国の承認を得る必要があります。リスクを最小化しつつ臨床開発を推進するためには、臨床開発及び製造販売を担う製薬会社と提携し導出を行う必要があります。現在、当社グループはこれを最重要課題として様々なチャネルを通じてグローバルな導出活動に取り組んでおります。導出後は、一日も早い製品上市を目指して導出先企業へのデータ提供や定期的なコミュニケーションを図ることで開発の推進を積極的に支援してまいります。
④ 財務基盤の強化
当社グループのような創薬ベンチャー企業は、製品が上市するまでの間、パイプラインの開発進展、開発化合物(*)の増加等に伴い、事業活動に合わせて資金調達を確実に行っていく必要があります。そのため、当社グループは、資金調達手段の確保・拡充に向けて、株式市場からの必要な資金の獲得や銀行からの融資を受けるなど、資金調達の多様化を図ってまいります。また、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図ることで財務基盤の更なる強化に努めてまいります。
⑤ 人材の獲得
当社グループの経営資源の第一は、人であると考えています。今後、新規医薬品候補物質の探索並びに開発及び提携を進捗させるために、適切な人材を適宜、確保していく予定であります。
⑥ 新型コロナウイルス感染症への対応
当社グループへの新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響を最小限にするためには、従業員の感染防止に努めるとともに、提携先企業との連携を含めた事業活動の継続が可能となる体制を構築する必要があります。当社グループは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の状況を注視し、あらゆる感染防止策を講じて従業員の健康と安全を守ることを最優先に、創薬研究を中心とした事業活動を継続するとともに、提携先パートナーとの協業を図ってまいります。
また、このようなリスクを踏まえ、当社グループでは十分な手元資金を確保するようにしております。