有価証券報告書-第26期(2022/04/01-2023/03/31)

【提出】
2023/06/28 14:00
【資料】
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【項目】
159項目
<戦略>当社グループは、「これからの食卓、これからの畑」という企業理念のもと、食に関する社会課題を、ビジネスの手法で解決することで、持続可能な社会の実現を目指しております。主要セグメントである国内宅配事業「Oisix」「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」をはじめ、「とくし丸」「Purple Carrot」等子会社も含めたあらゆる事業を通じ、食の社会課題を解決することを事業成長の糧としております。
気候変動は、食に関する社会課題の中でも世界的に年々大きなリスクとなっており、私たちにとっても農作物の生育状況の変化、自然災害の甚大化による調達、配達物流への影響等のリスクがあります。
(シナリオ分析)
当社グループは、気候変動の異なるシナリオ下でのリスクと機会を特定するため、TCFDの提言を踏まえ、シナリオ分析を実施しました。
2100年に産業革命前から1.5℃気温が上昇するシナリオ(1.5℃シナリオ)と、4℃上昇するシナリオ(4℃シナリオ)における2030年時点での気候変動による影響をリスク・機会それぞれに関して検討しています。そのためにまず、各部署の代表者と具体的なリスクと機会を洗い出し、当社グループおよびバリューチェーン全体への影響を踏まえ、より影響の大きいものを抽出しました。抽出したリスクと機会に対して、定性・定量的な方法で評価を実施し、財務的な影響度を確認しております。
・シナリオ分析による影響度評価(財務影響評価)
前提としている主なシナリオ
シナリオ主に参照したシナリオ
1.5℃シナリオSSP1-1.9シナリオ(IPCC,2021)
Net Zero Emissions by 2050シナリオ(IEA,2021)
4℃シナリオSSP5-8.5(IPCC,2021)
Stated Policyシナリオ(IEA,2021)


a. 抽出されたリスクと2030年時点での影響
財務影響度の金額イメージ(大:10億円以上、中:1~10億円、小:1億円未満)
(移行リスク)
分類時間軸財務影響領域可能性のある事業インパクト影響度
1.5℃4℃
政策と法
炭素税の導入中~長期コスト‐農作物・水産品・畜産品等の原材料・仕入れコストが上昇する。
‐工場及び物流・配送のエネルギーコストが上昇する。
プラスチック規制の強化中~長期コスト‐プラスチック規制が強化されることで、包装材における代替素材の開発・導入が求められコストが上昇する。
その他環境規制の導入・強化短期コスト/資産‐環境関連規制強化への対応による設備投資の増加や、食品安全基準等の見直しへの対応コストが上昇する。

業界/市場
消費者の環境志向の変化中~長期収益‐環境への取組みや非財務情報の開示が不十分な場合、消費者からの支持が低下し、ブランド力の下落や顧客離れによる減収が発生する。
エネルギー需給の変化中期コスト‐化石燃料を用いたエネルギー調達コストが上昇し、原材料・仕入れの生産コストやガソリン車(現車両)の利用による配送コストが上昇する。
‐再エネ調達需要の高まりにより、再エネ価格や再エネ対応切り替え設備の稼働価格が上昇する。
投資家の評判変化中~長期資本‐気候変動への取組みや非財務情報の開示が不十分な場合、優遇金利が適用されず、企業評価が低下する。
テクノロジー
農・水産業における生産イノベーション中~長期コスト/資産‐農・水産業がスマート農業等脱炭素モデルに移行するために最新設備等を導入することでコスト負担が上昇する。
物流・配送におけるイノベーション中期コスト/資産‐配送車両の電気自動車へ置き換えに伴い、コスト負担が上昇する。

(物理リスク)
分類時間軸財務影響領域可能性のある事業インパクト影響度
1.5℃4℃
急性
異常気象の激甚化短~長期コスト‐集中豪雨や台風によって生産地域の浸水被害や、物流網の混乱が発生し、商品の調達ができなくなる。
慢性
調達・供給体制への影響長期コスト/収益‐気候変動による直接的・間接的な収穫量の低下により、調達必要量の確保が難しくなる。
‐需給バランスの調整が難しくなり、欠品や廃棄処理の増加が懸念される。‐高温により農作業効率が低下し収穫量が減少する。
品質への影響長期コスト/収益‐当社グループが設定する水準の品質確保が難しくなる。
‐顧客への配送時に、冷凍食品を中心に品質担保が困難になる。
コスト構造への影響長期コスト‐原材料・資材等の仕入れコストが上昇する。
‐人材不足や操業可能設備不足等からコスト負担が上昇する。
消費者の食ニーズ全般の変化長期収益‐消費者の生活における気候変動への適応負担が増加し、食費支出そのものが減少する。

※影響度は、当連結会計年度末現在において取得可能な情報をもとに算定しうる範囲で記載
※定量評価は、2030年時点まで2023年3月期と同様の事業規模拡大が続いていることを前提に評価
b. シナリオ分析を踏まえたリスクへの対応と、対応から生まれる機会
分類対応機会
炭素税の導入‐カーボンニュートラルの達成‐省エネの積極的な導入によりコスト削減ができる。
‐カーボンニュートラル達成により、炭素税の負担を減らせる。
プラスチック規制の強化‐商品パッケージのさらなるグリーン化‐代替プラスチックの新包装材の先行導入により差異化をはかる。
その他環境規制の導入・強化‐食品安全基準の強化
‐特定フロン排出抑制
‐カーボンフットプリント開示規制の強化により、自社の優位性の訴求や、その他環境配慮に対する補助金導入による金銭的なメリットを享受する。
消費者の環境志向の変化‐アップサイクル食品の販売推進‐商品パッケージのさらなるグリーン化‐環境志向・ニーズの高まりに的確に対応し、顧客との関係性を構築・向上させることで、ブランド力や既存顧客との関係性が強化されるだけでなく、新たな顧客開拓・既存顧客のロイヤリティ向上へも繋がる。
エネルギー需給の変化‐省電力化‐オフィス・全物流拠点電力に再生エネルギーを導入‐グリーン配送や、省エネ設備の早期導入等によりコスト負担を抑えられる。
農・水産業における生産イノベーション‐「サステナブルリテール」の強化‐環境負荷が少ない食材の製造等、フードテックの活用・開発促進によりニューフードの市場を活性化する。
‐冷凍食品、加工生産、可食化技術も含めたイノベーティブな生産、安定供給体制を先行して構築し差異化をはかる。

分類対応機会
物流・配送におけるイノベーション‐配送車の省エネルギー配送とEV化の実証実験‐自動運転技術やドローン技術等を用いて、気候変動に影響を受けにくく、顧客の利便性の高い物流・配送体制を先行して構築する。
異常気象の激甚化‐「サステナブルリテール」の強化
‐良質なサプライの拡大‐ローコストオペレーション、マーケティングノウハウ共有による収益力改善
‐生産地の多様な地理的ポートフォリオにより、局所的な収穫不良時でも商品の安定供給が図れる。
調達・供給体制への影響‐トレーサビリティのデータを有効活用し、需給調整を綿密に実施し、安定供給が図れる。
‐国内外での収穫可能性の拡大を想定し、安定生産できる栽培、生産方法の確立を後押しする。
品質への影響‐従来の小売流通基準に満たない原材料(B級品等)の活用機会を増加させ、顧客にもその価値を理解してもらうことで、新たな訴求要素を確立する。
消費者の食ニーズ全般の変化‐熱中症予防や備蓄可能な食品に対するニーズが高まる。
‐外出の困難化から宅配そのもののニーズが増加する。