有価証券報告書-第16期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
有報資料
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社はiPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。
当社グループでは当連結会計年度より、事業の進捗管理及び資源配分を適切に行う事を目的として、報告セグメントを「研究支援事業」及び「メディカル事業」に再編いたしました。短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。
また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現在は米国、欧州、日本が医療分野の大きな市場を形成しており、当社もこの3地域を活動拠点としておりますが、将来的には、中国、インド、アジアなどにも広く事業を展開していく予定です。
また、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。
(2)目標とする経営指標
iPS細胞を用いた研究及び再生医療の市場は今後長期的な成長が見込まれています。その中で当社はトッププレーヤーとしての地位を確立し、市場とともに大きく成長するために「攻め」の経営で競合他社に先行する方針です。したがって、当面は、研究開発、新規事業の立ち上げ、新しい地域への進出など、先行投資を伴う事業規模の拡大に注力してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
iPS細胞は、培養器内で大量に増やすことが可能であり、体の様々な細胞に分化する能力を持っていることから、これまでに無い次世代のライフサイエンス事業を生みだす分野として、大きく注目を集めています。
当社グループでは、iPS細胞を事業の中核に据え、事業領域を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つに分けて事業を推進しています。短中期的な事業の柱として研究支援事業を推進し、中長期的な成長ドライバーとしてメディカル事業を拡大する事により、当分野のマーケットリーダーになることを目指します。
「研究支援事業」は、大学・公的研究機関及び製薬企業を対象顧客としたビジネスであり、現在、当社グループ売上高の94.2%を占めております。iPS細胞の研究に必要な培養液や抗体などの各種研究試薬の販売、及び新薬候補化合物の薬効・毒性試験などの受託サービスを実施しております。
「メディカル事業」ではiPS細胞及びその他の細胞を活用した再生医療製品の開発を行っており、日本における早期承認取得を目指しております。日本では2014年に治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる再生医療関連法案が施行されました。当社では本制度を活用し、日本における早期承認及び商業化を推進してまいります。
また、基盤技術は、「研究支援事業」と「メディカル事業」ともに共通しております。iPS細胞に関連する最先端の技術プラットフォームとしてiPS細胞の基幹技術であるリプログラミング技術(iPS細胞を作製すること)を中心に、iPS細胞から神経、心筋、肝臓など各種の細胞に分化させる技術、iPS細胞に関連する培養試薬の技術、さらに、様々なヒト細胞を調達するためのインフラなどを保有しております。この技術プラットフォームを今後とも強化し続けることで、競争優位性を確保し、「研究支援事業」と「メディカル事業」の両方で事業を積極的に推進してまいります。
① 研究支援事業
iPS細胞ビジネスの市場はグローバルで成長しており、日本、米国、欧州が世界の主力市場となっており、最近では中国、インドなどでも市場が拡大しております。
当社では、既に日米欧の3拠点を保有しており、それぞれの市場で営業を展開しております。対象顧客は、大学・公的研究機関などのアカデミアと、製薬企業、バイオテック企業などの法人に大きく分けられます。最近は特に、iPS細胞の研究及び再生医療に取り組む企業が増えており、当社としても製薬企業、バイオテック企業の営業を中心に強化してまいります。これらの企業は、日米欧の3拠点にほぼ局在しているため、今後も、当社グループの3拠点の営業網の強化を行ってまいります。また、これらの企業では各種の研究試薬を購入して自社で専門性の高い研究を実施するよりも、研究の一部を外注する受託サービスを依頼する傾向があります。そのため、当社の3拠点のラボでそれぞれの地域の顧客と密接にコミュニケーションを取りながらカスタムサービスを提供できることは、当社の大きな強みと言えます。現在、各拠点で、iPS細胞の作製及び最先端の培養技術を用いた人工皮膚組織や三次元臓器モデルの作製など、様々な最先端の技術を組み合わせたサービスを提供しております。
さらに、今後大きな市場成長が見込めるインドでも積極的に事業を推進してまいります。当連結会計年度では、アメリカのがんセンター「Fox Chace Cancer Center」(以下、FCCC)とインドにおける戦略的業務提携を行い、今後インドに合弁会社を新たに設立する予定です。経済成長著しいインドに拠点を置くことにより、日米欧に続く新たな拠点としてビジネスを展開してまいります。
また、技術的にはiPS細胞の技術プラットフォームの強化を積極的に継続してまいります。当社では、iPS細胞の基幹技術となるリプログラミング技術において、世界最先端の「第3世代RNAリプログラミング技術」を保有しております。本技術では、皮膚や血液だけでなく、尿からもiPS細胞が作製できるため、誰からも容易にiPS細胞が高効率で作製可能になっております。また、作製されたiPS細胞に関しても、遺伝子変異や残存因子のない高品質な細胞となっており、神経細胞、肝臓細胞、心筋細胞など、様々な細胞に効率よく分化することが確認されております。さらに、本技術に加え、iPS細胞の元となるドナー細胞の調達能力を大幅に拡大することで、様々な細胞を用いたサービスラインナップの拡充に取り組んでまいります。例えば、多くのアルツハイマー病患者から採取した検体からiPS細胞を作製することで、数多くのアルツハイマー病疾患iPS細胞の提供が可能になります。細胞の調達に関しては、米国、欧州だけでなく、前述のインドの合弁会社を通じても行う予定であり、世界第2位の人口を誇るインドを加えることで、圧倒的な優位性を確保してまいります。
また、新たな技術の流れとして、基礎研究、創薬研究だけでなく、再生医療の研究を開始する大学及び企業が増加しております。再生医療研究においては、使用する試薬が規制当局のガイドラインに沿っている必要があるため、これまでの基礎研究用試薬がそのまま使用できるとは限りません。このため、当社では再生医療に適した新たな臨床研究用試薬の開発にも取り組んでおります。新たに販売を開始した、iPS細胞培養液「ReproMed iPSC Medium」や、細胞凍結保存液「ReproCryo RM」は、科学的に安全性の高い成分のみで構成されており、厚生労働省の薬事審査機関である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)により、生物由来原料基準のクリア及び再生医療への使用の適格性が確認されております。今後、このような臨床研究用の試薬のラインナップを拡充することで、急激に成長する再生医療分野において事業の拡大を目指します。
② メディカル事業
メディカル事業では、当社の基幹技術であるiPS細胞技術及び細胞培養技術を用いて、会社の中長期的な成長ドライバーとして、再生医療製品の研究開発及び早期承認・商業化を目指して事業を推進してまいります。
現在、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」とiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の2つのパイプラインの開発を実施しておりますが、日本における再生医療の早期承認制度を活用し、早期の承認・商業化を目指します。さらに、将来的には、同一の再生医療製品を用いた他の疾患への適用拡大及びライセンスアウトを通じ更に事業を拡大してまいります。
1つ目のパイプラインは、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」です。ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した、健常者ドナー由来の体性幹細胞を用いた再生医療製品で、脊髄小脳変性症の早期承認取得を目指してまいります。当社はステミネント社と日本における共同開発及び販売に関する独占契約を締結しています。
2つ目のパイプラインは、中枢神経系疾患を対象としたiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)です。具体的には、当社と米国Q Therapeutics Inc.で、合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(以下、MQ社)を設立して共同開発を実施しております。日本における筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)の2つの中枢神経系疾患に関して、MQ社と当社で独占的ライセンス契約を締結しており、当社が治験及び商業化を進めてまいります。
当社の保有する第3世代RNAリプログラミング技術を用いて作製したiPS細胞は、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に最適な細胞となっております。iGRPに関しても、本iPS細胞を利用することで、がん化リスクの問題を克服し早期の承認取得につなげてまいります。また、本iPS細胞から作製したiGRP細胞は、その他様々な中枢神経系疾患への適用が見込まれており、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または横断性脊髄炎(TM)で安全性が確認された後、他の疾患への適用拡大を迅速に進めてまいります。さらに、本iPS細胞を、心臓、肝臓、網膜など様々な再生医療製品のセルソースとしても事業を拡大してまいります。
(4)会社の対処すべき課題
当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために対処すべき課題を以下のように考えております。
① 全社的課題
1)人材の確保・育成
当社の事業は新しい領域であり、技術及びビジネスの両面で、新しい取り組みが必要とされます。また、変化が非常に大きく、ビジネスもグローバル化しており、様々な局面への対応が求められます。企業の強さは最終的には「人材」であり「チーム」であると考えます。このため、当社ではポテンシャルの高い人材を確保し、当分野を牽引できるような優秀な人材に育成し、長期的に活躍できる場を提供してまいります。
2)技術革新への対応
iPS細胞は世界中で熾烈な研究競争が行われており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。革新的な技術が開発された場合、既存技術は陳腐化し競争力を失います。このため、当社グループとしては、今後とも積極的に技術開発を推進し当分野のマーケットリーダーとなることを目指します。
技術開発については自社開発だけでなく、これまでと同様、大学、公的研究機関、民間企業との連携及び共同開発を中心に進めてまいります。さらに、当社グループは非常に幅広いiPS細胞及び体細胞の技術プラットフォームを保有しており、これが競合との差別化要因となっています。今後、さらにグループ内での技術シナジーを追求し、新規製品・サービスの提供を進めてまいります。
この他、国内外のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーとの協力関係の構築及び資金提供を目的として株式会社新生銀行と共同でベンチャーキャピタルファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」を運営しております。本活動を通じて、世界最先端の再生医療技術に幅広くアクセスし連携を強化してまいります。
今後とも当社グループは再生医療の実現と競争力の強化に向け、外部の大学・研究機関や技術シーズとの連携を当社グループの事業展開に積極的に取り入れ、技術革新への対応として意欲的、多角的に取り組んでまいります。
② セグメント別課題
1)研究支援事業
(a) 多様化する顧客ニーズへの対応
iPS細胞を扱う研究者はこれまで大学・公的研究機関が中心でしたが、近年、製薬企業やバイオテック企業にも拡大しております。また、創薬研究だけでなく再生医療研究も増加しており、顧客の技術ニーズも多様化しております。このため、限られた地域で既製品のみを提供しているだけでは、顧客ニーズに対応できず競争力を失う可能性が高いと言えます。
当社グループでは、iPS細胞の研究機関及び製薬企業が多く存在する日本、米国、欧州の3拠点にそれぞれラボを構え、各地域の顧客ニーズに対応した製品及びサービスを提供しております。特に、製薬企業やバイオテック企業では、受託サービスのニーズが高く、各地域のラボで顧客とコミュニケーションしながら付加価値の高いサービスを提供しております。
さらに、研究支援事業の基盤となる各種のヒト細胞及び組織の調達能力の向上にも積極的に取り組んでおります。これにより、アルツハイマー病患者由来iPS細胞やガンなど様々な疾患モデル細胞の提供及びサービスを提供してまいります。具体的には、米国のがんセンター「Fox Chace Cancer Center」と連携し、世界人口第2位のインドにおいて細胞を調達することで、様々なヒト細胞の調達能力を強化しております。
当社グループでは、今後も顧客の近くでニーズに合わせてカスタマイズできる製品やサービスの提供を推進し、競争力を高めてまいります。
2)メディカル事業
(a) 再生医療製品ステムカイマルの早期承認
当社グループでは、台湾のステミネント社より再生医療製品ステムカイマルを脊髄小脳変性症の治療薬として導入しています。ステムカイマルは、既に台湾において第Ⅰ/Ⅱa相の試験が終了しており、投与に伴う有害事象は無く、通常悪化する一途の症状が維持されたことが報告されております。
日本では、2014年11月25日に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が施行されました。これにより、日本では治験において一定の安全性や効能が認められた場合に、治験を実施しながらも条件付きで販売を行う事が出来る「条件・期限付き承認」を得る事が可能となり、再生医療に関連した医薬品の開発を加速化する事が可能となっております。
当社では、台湾での治験データや日本独自の制度を活用し、ステムカイマルの承認を早期に取得することを目指します。
(b) iPS細胞を用いた再生医療の早期実現
現在、iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題として安全性の確保があげられており、皮膚や血液からiPS細胞を作製する際に起こる遺伝子変異及び外来因子の残存によるがん化のリスク等が言われています。これに対し、当社グループでは独自技術である次世代RNAリプログラミング技術を用い、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない高品質なiPS細胞の作製を可能にする技術の開発に成功しています。
現在、当社と米国Q Therapeutics Inc.(Qセラ社)の合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(MQ社)において、iPS細胞を用いた筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)の治療法及び再生医療製品の開発を行っております。本研究開発においても、前述の次世代RNAリプログラミング技術を用いることで、がん化のリスクの克服をし、早期の実用化を目指します。
(5)株式会社の支配に関する基本方針について
当社は、財務及び事業の方針の決定を支配する者は、安定的な成長を目指し、企業価値を高め、株主の利益の増強に経営資源の集中を図るべきと考えております。
現時点では特別な買収防衛策は導入しておりませんが、今後も引き続き社会情勢等の変化を注視しつつ弾力的な検討を行ってまいります。
(1)会社の経営の基本方針
当社はiPS細胞及び体細胞に関する世界最先端の研究成果を広く一般的に利用できる形で事業化することで、研究開発をより促進し、さらに、再生医療など次世代医療を通じて人々の健康福祉に貢献することを目指しています。
当社グループでは当連結会計年度より、事業の進捗管理及び資源配分を適切に行う事を目的として、報告セグメントを「研究支援事業」及び「メディカル事業」に再編いたしました。短中期的な事業の柱としてiPS細胞に関連した研究試薬や創薬支援サービスを提供する「研究支援事業」を推進し、中長期的な成長戦略として巨大市場が見込める「メディカル事業」へ積極的に投資することにより、当分野のマーケットリーダーを目指します。
また、真のグローバル企業として成長していくことも当社の大きな基本方針としています。病気や医療ニーズに国境はなく、再生医療を含む次世代医療は全世界中の人々から求められています。現在は米国、欧州、日本が医療分野の大きな市場を形成しており、当社もこの3地域を活動拠点としておりますが、将来的には、中国、インド、アジアなどにも広く事業を展開していく予定です。
また、再生医療分野において持続的な成長を可能にするために顧客、社員、事業パートナー、株主といった重要なステークホルダーのバランスの取れた関係を重視し、これらのステークホルダーと長期的にWin-Winの関係となれる体制を構築してまいります。また、我々は社会の一員であるという自覚を持ち、社会全体への貢献についても重視してまいります。
(2)目標とする経営指標
iPS細胞を用いた研究及び再生医療の市場は今後長期的な成長が見込まれています。その中で当社はトッププレーヤーとしての地位を確立し、市場とともに大きく成長するために「攻め」の経営で競合他社に先行する方針です。したがって、当面は、研究開発、新規事業の立ち上げ、新しい地域への進出など、先行投資を伴う事業規模の拡大に注力してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
iPS細胞は、培養器内で大量に増やすことが可能であり、体の様々な細胞に分化する能力を持っていることから、これまでに無い次世代のライフサイエンス事業を生みだす分野として、大きく注目を集めています。
当社グループでは、iPS細胞を事業の中核に据え、事業領域を「研究支援事業」と「メディカル事業」の2つに分けて事業を推進しています。短中期的な事業の柱として研究支援事業を推進し、中長期的な成長ドライバーとしてメディカル事業を拡大する事により、当分野のマーケットリーダーになることを目指します。
「研究支援事業」は、大学・公的研究機関及び製薬企業を対象顧客としたビジネスであり、現在、当社グループ売上高の94.2%を占めております。iPS細胞の研究に必要な培養液や抗体などの各種研究試薬の販売、及び新薬候補化合物の薬効・毒性試験などの受託サービスを実施しております。
「メディカル事業」ではiPS細胞及びその他の細胞を活用した再生医療製品の開発を行っており、日本における早期承認取得を目指しております。日本では2014年に治験期間の短縮や治験費用の削減が期待できる再生医療関連法案が施行されました。当社では本制度を活用し、日本における早期承認及び商業化を推進してまいります。
また、基盤技術は、「研究支援事業」と「メディカル事業」ともに共通しております。iPS細胞に関連する最先端の技術プラットフォームとしてiPS細胞の基幹技術であるリプログラミング技術(iPS細胞を作製すること)を中心に、iPS細胞から神経、心筋、肝臓など各種の細胞に分化させる技術、iPS細胞に関連する培養試薬の技術、さらに、様々なヒト細胞を調達するためのインフラなどを保有しております。この技術プラットフォームを今後とも強化し続けることで、競争優位性を確保し、「研究支援事業」と「メディカル事業」の両方で事業を積極的に推進してまいります。
① 研究支援事業
iPS細胞ビジネスの市場はグローバルで成長しており、日本、米国、欧州が世界の主力市場となっており、最近では中国、インドなどでも市場が拡大しております。
当社では、既に日米欧の3拠点を保有しており、それぞれの市場で営業を展開しております。対象顧客は、大学・公的研究機関などのアカデミアと、製薬企業、バイオテック企業などの法人に大きく分けられます。最近は特に、iPS細胞の研究及び再生医療に取り組む企業が増えており、当社としても製薬企業、バイオテック企業の営業を中心に強化してまいります。これらの企業は、日米欧の3拠点にほぼ局在しているため、今後も、当社グループの3拠点の営業網の強化を行ってまいります。また、これらの企業では各種の研究試薬を購入して自社で専門性の高い研究を実施するよりも、研究の一部を外注する受託サービスを依頼する傾向があります。そのため、当社の3拠点のラボでそれぞれの地域の顧客と密接にコミュニケーションを取りながらカスタムサービスを提供できることは、当社の大きな強みと言えます。現在、各拠点で、iPS細胞の作製及び最先端の培養技術を用いた人工皮膚組織や三次元臓器モデルの作製など、様々な最先端の技術を組み合わせたサービスを提供しております。
さらに、今後大きな市場成長が見込めるインドでも積極的に事業を推進してまいります。当連結会計年度では、アメリカのがんセンター「Fox Chace Cancer Center」(以下、FCCC)とインドにおける戦略的業務提携を行い、今後インドに合弁会社を新たに設立する予定です。経済成長著しいインドに拠点を置くことにより、日米欧に続く新たな拠点としてビジネスを展開してまいります。
また、技術的にはiPS細胞の技術プラットフォームの強化を積極的に継続してまいります。当社では、iPS細胞の基幹技術となるリプログラミング技術において、世界最先端の「第3世代RNAリプログラミング技術」を保有しております。本技術では、皮膚や血液だけでなく、尿からもiPS細胞が作製できるため、誰からも容易にiPS細胞が高効率で作製可能になっております。また、作製されたiPS細胞に関しても、遺伝子変異や残存因子のない高品質な細胞となっており、神経細胞、肝臓細胞、心筋細胞など、様々な細胞に効率よく分化することが確認されております。さらに、本技術に加え、iPS細胞の元となるドナー細胞の調達能力を大幅に拡大することで、様々な細胞を用いたサービスラインナップの拡充に取り組んでまいります。例えば、多くのアルツハイマー病患者から採取した検体からiPS細胞を作製することで、数多くのアルツハイマー病疾患iPS細胞の提供が可能になります。細胞の調達に関しては、米国、欧州だけでなく、前述のインドの合弁会社を通じても行う予定であり、世界第2位の人口を誇るインドを加えることで、圧倒的な優位性を確保してまいります。
また、新たな技術の流れとして、基礎研究、創薬研究だけでなく、再生医療の研究を開始する大学及び企業が増加しております。再生医療研究においては、使用する試薬が規制当局のガイドラインに沿っている必要があるため、これまでの基礎研究用試薬がそのまま使用できるとは限りません。このため、当社では再生医療に適した新たな臨床研究用試薬の開発にも取り組んでおります。新たに販売を開始した、iPS細胞培養液「ReproMed iPSC Medium」や、細胞凍結保存液「ReproCryo RM」は、科学的に安全性の高い成分のみで構成されており、厚生労働省の薬事審査機関である独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)により、生物由来原料基準のクリア及び再生医療への使用の適格性が確認されております。今後、このような臨床研究用の試薬のラインナップを拡充することで、急激に成長する再生医療分野において事業の拡大を目指します。
② メディカル事業
メディカル事業では、当社の基幹技術であるiPS細胞技術及び細胞培養技術を用いて、会社の中長期的な成長ドライバーとして、再生医療製品の研究開発及び早期承認・商業化を目指して事業を推進してまいります。
現在、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」とiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)の2つのパイプラインの開発を実施しておりますが、日本における再生医療の早期承認制度を活用し、早期の承認・商業化を目指します。さらに、将来的には、同一の再生医療製品を用いた他の疾患への適用拡大及びライセンスアウトを通じ更に事業を拡大してまいります。
1つ目のパイプラインは、ヒト体性幹細胞を用いた再生医療製品「ステムカイマル」です。ステムカイマルは台湾のSteminent Biotherapeutics Inc.(以下、ステミネント社)が開発した、健常者ドナー由来の体性幹細胞を用いた再生医療製品で、脊髄小脳変性症の早期承認取得を目指してまいります。当社はステミネント社と日本における共同開発及び販売に関する独占契約を締結しています。
2つ目のパイプラインは、中枢神経系疾患を対象としたiPS細胞由来神経グリア細胞(iGRP)です。具体的には、当社と米国Q Therapeutics Inc.で、合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(以下、MQ社)を設立して共同開発を実施しております。日本における筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)の2つの中枢神経系疾患に関して、MQ社と当社で独占的ライセンス契約を締結しており、当社が治験及び商業化を進めてまいります。
当社の保有する第3世代RNAリプログラミング技術を用いて作製したiPS細胞は、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない、高品質で臨床応用に最適な細胞となっております。iGRPに関しても、本iPS細胞を利用することで、がん化リスクの問題を克服し早期の承認取得につなげてまいります。また、本iPS細胞から作製したiGRP細胞は、その他様々な中枢神経系疾患への適用が見込まれており、筋萎縮性側索硬化症(ALS)または横断性脊髄炎(TM)で安全性が確認された後、他の疾患への適用拡大を迅速に進めてまいります。さらに、本iPS細胞を、心臓、肝臓、網膜など様々な再生医療製品のセルソースとしても事業を拡大してまいります。
(4)会社の対処すべき課題
当社が持続的に成長して企業価値を高めるとともに、我々のビジョンやミッションを達成するために対処すべき課題を以下のように考えております。
① 全社的課題
1)人材の確保・育成
当社の事業は新しい領域であり、技術及びビジネスの両面で、新しい取り組みが必要とされます。また、変化が非常に大きく、ビジネスもグローバル化しており、様々な局面への対応が求められます。企業の強さは最終的には「人材」であり「チーム」であると考えます。このため、当社ではポテンシャルの高い人材を確保し、当分野を牽引できるような優秀な人材に育成し、長期的に活躍できる場を提供してまいります。
2)技術革新への対応
iPS細胞は世界中で熾烈な研究競争が行われており、短期間で飛躍的な技術革新が進んでいます。革新的な技術が開発された場合、既存技術は陳腐化し競争力を失います。このため、当社グループとしては、今後とも積極的に技術開発を推進し当分野のマーケットリーダーとなることを目指します。
技術開発については自社開発だけでなく、これまでと同様、大学、公的研究機関、民間企業との連携及び共同開発を中心に進めてまいります。さらに、当社グループは非常に幅広いiPS細胞及び体細胞の技術プラットフォームを保有しており、これが競合との差別化要因となっています。今後、さらにグループ内での技術シナジーを追求し、新規製品・サービスの提供を進めてまいります。
この他、国内外のiPS細胞・再生医療関連のバイオベンチャーとの協力関係の構築及び資金提供を目的として株式会社新生銀行と共同でベンチャーキャピタルファンド「Cell Innovation Partners, L.P.」を運営しております。本活動を通じて、世界最先端の再生医療技術に幅広くアクセスし連携を強化してまいります。
今後とも当社グループは再生医療の実現と競争力の強化に向け、外部の大学・研究機関や技術シーズとの連携を当社グループの事業展開に積極的に取り入れ、技術革新への対応として意欲的、多角的に取り組んでまいります。
② セグメント別課題
1)研究支援事業
(a) 多様化する顧客ニーズへの対応
iPS細胞を扱う研究者はこれまで大学・公的研究機関が中心でしたが、近年、製薬企業やバイオテック企業にも拡大しております。また、創薬研究だけでなく再生医療研究も増加しており、顧客の技術ニーズも多様化しております。このため、限られた地域で既製品のみを提供しているだけでは、顧客ニーズに対応できず競争力を失う可能性が高いと言えます。
当社グループでは、iPS細胞の研究機関及び製薬企業が多く存在する日本、米国、欧州の3拠点にそれぞれラボを構え、各地域の顧客ニーズに対応した製品及びサービスを提供しております。特に、製薬企業やバイオテック企業では、受託サービスのニーズが高く、各地域のラボで顧客とコミュニケーションしながら付加価値の高いサービスを提供しております。
さらに、研究支援事業の基盤となる各種のヒト細胞及び組織の調達能力の向上にも積極的に取り組んでおります。これにより、アルツハイマー病患者由来iPS細胞やガンなど様々な疾患モデル細胞の提供及びサービスを提供してまいります。具体的には、米国のがんセンター「Fox Chace Cancer Center」と連携し、世界人口第2位のインドにおいて細胞を調達することで、様々なヒト細胞の調達能力を強化しております。
当社グループでは、今後も顧客の近くでニーズに合わせてカスタマイズできる製品やサービスの提供を推進し、競争力を高めてまいります。
2)メディカル事業
(a) 再生医療製品ステムカイマルの早期承認
当社グループでは、台湾のステミネント社より再生医療製品ステムカイマルを脊髄小脳変性症の治療薬として導入しています。ステムカイマルは、既に台湾において第Ⅰ/Ⅱa相の試験が終了しており、投与に伴う有害事象は無く、通常悪化する一途の症状が維持されたことが報告されております。
日本では、2014年11月25日に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」並びに「薬事法等の一部を改正する法律」が施行されました。これにより、日本では治験において一定の安全性や効能が認められた場合に、治験を実施しながらも条件付きで販売を行う事が出来る「条件・期限付き承認」を得る事が可能となり、再生医療に関連した医薬品の開発を加速化する事が可能となっております。
当社では、台湾での治験データや日本独自の制度を活用し、ステムカイマルの承認を早期に取得することを目指します。
(b) iPS細胞を用いた再生医療の早期実現
現在、iPS細胞の臨床応用における最大の技術課題として安全性の確保があげられており、皮膚や血液からiPS細胞を作製する際に起こる遺伝子変異及び外来因子の残存によるがん化のリスク等が言われています。これに対し、当社グループでは独自技術である次世代RNAリプログラミング技術を用い、遺伝子変異リスクを最小化し、外来遺伝子やウイルス残存リスクのない高品質なiPS細胞の作製を可能にする技術の開発に成功しています。
現在、当社と米国Q Therapeutics Inc.(Qセラ社)の合弁会社「株式会社MAGiQセラピューティクス」(MQ社)において、iPS細胞を用いた筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び横断性脊髄炎(TM)の治療法及び再生医療製品の開発を行っております。本研究開発においても、前述の次世代RNAリプログラミング技術を用いることで、がん化のリスクの克服をし、早期の実用化を目指します。
(5)株式会社の支配に関する基本方針について
当社は、財務及び事業の方針の決定を支配する者は、安定的な成長を目指し、企業価値を高め、株主の利益の増強に経営資源の集中を図るべきと考えております。
現時点では特別な買収防衛策は導入しておりませんが、今後も引き続き社会情勢等の変化を注視しつつ弾力的な検討を行ってまいります。