有価証券報告書-第18期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/29 11:22
【資料】
PDFをみる
【項目】
105項目

対処すべき課題

(1)会社の経営の基本方針
当社は、「私たちは、地域社会における在宅医療サービスを通じて、安全・安心・快適な生活環境を創造し、人々のライフプランに貢献します。」を経営理念としております。当事業年度におきましては、経営理念を具現化し、看護師、精神保健福祉士、作業療法士などの多職種を有機的に連携し、より質の高いサービスを提供するとともに、精神疾患及び精神科在宅医療に対する社会の認知度向上を実現するべく、企業理念に基づく目標及び目標達成のための方向性を定めております。それらに基づく行動指針を掲げ、事業の発展及び株主利益の拡大と同時に地域社会へ貢献していくことを目指しています。企業理念に基づく目標、目標達成のための方向性及び行動指針は、次の通りです。
(経営理念に基づく目標)
精神保健分野におけるプロ集団として、すべての人々が寄り添い・共に支え合う地域社会を実現する。
(目標達成のための方向性)
① 精神保健分野全体の観点
・精神的健康に対する普及・啓発
・「知る」機会の創出
② 予防・未病の観点
・相談、スクリーニング及び受診体制の整備
・行政及び専門職の連携
③ 治療・リハビリテーションの観点
・関係機関及び多職種との連携によるQOL向上
・一人ひとりの「自立」に向けた医療の提供
(行動指針)
いついかなる時も人として良識と倫理観を持ち責任ある行動をとります。
①利用者様最優先:常に利用者様を第一に考え、迅速に対応いたします。
②地域密着:地域社会と連携できるよう、自分の目と耳で確かめます。
③プロ意識:すべてのサービスにおいて最高水準を目指します。
④チャレンジ:新しいことに積極的に挑戦し、自己改革に取り組みます。
⑤社会奉仕:社会奉仕の精神をもって、地域と良好な関係を築きます。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標等
当社は中期経営計画において、社会的課題の解決に向けた次世代の医療サービス提供を可能とする企業を目指しております。その結果として2025年12月期までのPHASE3において営業利益率10%以上を実現することとしておりますが、営業利益率10%以上は目標としているものではなく、目指す企業像の達成の結果として実現するものととらえております。
なお当社は、その業態から労務費が費用の構成の主要な項目となります。今後も積極的な事業所及び営業所の開設を実施していく中、看護師採用も通年で行ってまいります。このように拠点開設・人員採用により費用負担が増加するため、売上の確保が企業業績に大きな影響を及ぼします。このため当社では、訪問における移動効率及び稼働率の向上を図り、売上を継続的に伸長させることを重視しております。この稼働効率を測定する業績指標として看護師一人当たりの月間訪問件数(以下、稼働と表記)を採用しており、当事業年度における稼働は90件(前事業年度比3件、3.4%増加)となりました。
(3)中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社は、日本国内における団塊の世代が75歳を超え、後期高齢者となり、国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上となるいわゆる「2025年問題」を迎えるにあたり、精神科訪問看護サービスにおけるこれまでの企業運営方法や職場環境を見直し、社会的課題の解決に向けた次世代の医療サービス提供を可能とする企業を目指し、中期経営計画「NEXT FIELD 2025」を策定しております。
引き続き、中期経営計画を実行し、前述した企業理念に基づく目標の実現に向けて進んでまいりますが、当社は、以下の項目を重要課題として認識し、取り組んで参ります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末において当社が判断したものであります。
① 収益性改善の継続と多職種連携の強化
当社では、当事業年度において、収益性の改善を最重要課題として掲げ、看護師等の負荷に配慮しつつ、当社の主要業績指標である稼働の改善に取り組んで参りました。その結果、稼働は前事業年度比で大幅に改善し、東京証券取引所第一部に上場して以降低下し続けていた営業利益率の改善を図ることができました。引き続き、稼働の改善を通じて収益性の改善に取り組んでまいります。
一方で、企業理念及び当事業年度に定めた「企業理念に基づく目標」を実現するため、職種の垣根を超え、看護師・作業療法士・精神保健福祉士・住宅支援の営業など多職種が有機的に連携するとともに、外部の関係機関との連携も強化することで、より質の高いサービスを提供することが課題であると認識しております。
その一環として、新たな住宅支援事業と相談支援事業の営業所を開設することで、地域での窓口を拡大するとともに、より多職種が連携しやすい環境作りに取り組んで参ります。
② 採用ルートの多様化
当事業年度では収益性の改善を図るため、採用費用の抑制にも取り組んで参りました。
紹介エージェント企業に対する人材紹介手数料は、単価の適正化が進んだものの、紹介エージェント企業を経由した採用割合は依然として高く、採用ルートの多様化が課題であると認識しております。
今後は、従業員紹介や当社HPでの直接応募による採用以外に、広告媒体を活用した新たな採用ルートの構築に取り組む予定です。採用ルートの多様化を図ることで、より安定した採用を実現するとともに、採用費用の抑制を図って参ります。
③ 精神医療及び当社事業の社会的認知度の向上
当社では創業以来、精神科に特化した訪問看護事業を主たる事業として運営しておりますが、未だに精神疾患及び精神科在宅医療に対する社会の認知度は低く、そのため適切な治療を受けることができず苦しんでおられる方が多くいらっしゃいます。ご本人やご家族、さらにはその方たちを取り囲む地域の人々にとって憂慮すべき状況であると認識しております。
当社では、この課題に対処すべく、当事業年度に立ち上げた広報戦略室を本格的に稼働させ、「目標達成のための方向性」で定めました「精神的健康に対する普及・啓発」や「知る機会の創出」に関わる施策を実施し、精神医療及び当社事業の社会的な認知度の向上に取り組んで参ります。
当社は、2021年2月5日開催の取締役会において、株式会社CHCP-HNによる当社の普通株式(以下、当社株式という)及び本新株予約権に対する公開買付け(以下、本公開買付けという)へ賛同する旨の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対し、本公開買付けへの応募を推奨すること、及び本新株予約権の所有者(以下、新株予約権者という)の皆様に対しては、本公開買付けに応募するか否かについて新株予約権者の皆様の判断に委ねることを決議いたしました。
なお、当該取締役会決議は、公開買付者が本公開買付け及びその後の一連の手続を実施することにより、当社を公開買付者の完全子会社とすることを企図していること、並びに当社株式が上場廃止となる予定であることを前提として行われたものです。
当社は株式会社CHCP-HNの完全子会社となることを通じてユニゾン・キャピタル株式会社の投資先である株式会社地域ヘルスケア連携基盤(以下、CHCPという)のグループ傘下に入ることで、ユニゾン・キャピタル株式会社及びその投資先並びにCHCPグループがヘルスケア領域において蓄積してきたノウハウや人材ネットワークの活用により、①看護師等の人材確保、CHCPグループ内での連携による人材流出防止、②より質の高い訪問看護サービスの提供ができる人材の育成、③CHCPグループの支援先病院との連携による医療分野への進出、④資金調達力や財務基盤の強化といった効果が期待できることから、当社の発展及び企業価値の更なる向上が可能と判断しております。
また、引き続き内部統制システムの構築を推し進め、ガバナンスを強化するととともに情報セキュリティ、労務管理を始めとしたコンプライアンス体制の構築に取り組んで参ります。