有価証券報告書-第17期(平成28年4月1日-平成29年3月31日)

【提出】
2017/06/30 15:13
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69項目

業績等の概要

(1)業績
当事業年度(平成28年4月1日から平成29年3月31日まで)におけるわが国経済は、政府の経済政策や日銀による金融政策による雇用情勢の改善から全体的に緩やかな回復基調が続いており、個人消費は総じてみれば持ち直しの動きが続いております。
しかしながら、当社が属する出版業界におきましては、厳しい状況が続いております。出版科学研究所によると、平成28年の出版物の推定販売金額は、前年比3.4%減となる1兆4,709億円となりました。その内訳は、紙の「書籍」が同0.7%減となる7,370億円、「雑誌」は同5.9%減の7,339億円となっており、「雑誌」が特に厳しく、「雑誌」は「書籍」の売り上げを41年ぶりに下回る結果となりました。一方、電子出版物については、平成28年の電子出版市場は1,909億円となり、前年比27.1%増となる大幅な成長を遂げております。
こうした環境の中、インターネット発の出版の先駆者である当社は、「これまでのやり方や常識に全くとらわれず」、「良いもの面白いもの望まれるものを徹底的に追求していく」というミッションの下、インターネット時代の新しいエンターテインメントを創造することを目的とし、インターネット上で話題となっている小説・漫画等のコンテンツを書籍化する事業に取り組んでまいりました。また、出版事業を通して蓄積した自社IP(小説、漫画、キャラクターなど)を活かしたオリジナルゲームを開発・運用する事業等にも積極的に取り組んでまいりました。
当事業年度におけるセグメント別の業績は、次のとおりであります。
なお、当事業年度より、報告セグメントの区分を変更しており、以下の前事業年度比較は、前事業年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しております。
① 出版事業
出版事業におきましては、編集部員の増強及び当社ビジネスモデルの基幹となる当社Webサイトの強化により、当事業年度における、出版点数は469点(前期比56点増)となり、着実に成果を上げることが出来ました。また、当社コンテンツ閲覧アプリでの新サービス「レンタル」を含む、電子書籍専用端末やスマートフォン向けの電子書籍販売に対しても積極的に取り組むことで、新たな収益源の獲得にも努めてまいりました。
しかしながら、第1四半期会計期間及び第2四半期会計期間において当初想定以上の『ゲート』関連書籍の返本が発生し、収益を圧迫いたしました。加えて、ライトノベル市場への新規参入が活発化し、競争が激しくなってきたことなどにより、1タイトル当たりの発行部数が減少し、収益性が低下いたしました。
以上により、当事業の売上高は2,800,153千円(前期比15.2%減)、セグメント利益は772,078千円(同39.7%減)となりました。
書籍のジャンル別概況は次のとおりであります。
(ライトノベル)
当社の主力であるライトノベル市場は、書籍市場が縮小傾向にあるにも関わらず、拡大傾向にあります。しかしながら、昨今では新規参入が活発化し、他社から刊行される点数やレーベルともに増加傾向にあり、競争が激しくなってきました。
その結果、当事業年度において、刊行点数は236点と前期比21点増となりましたが、発行部数2万部を超える作品は16作品とやや軟調となり、売上高は前事業年度を下回る結果となりました。一方で、当社Webサイトへの投稿作品の中から『素材採取家の異世界旅行記』や『転生王子はダラけたい』に代表されるヒット作を刊行するという将来の成長に向けた礎を築くことも出来ました。
(漫画)
第1四半期会計期間及び第2四半期会計期間において当初想定以上の『ゲート』関連書籍の返本が発生し、収益を圧迫いたしました。しかしながら、第3四半期会計期間以降は、本書籍の返本が収束したことに加え、同作以外の漫画の売行きが好調であったことから、出版事業の売上を牽引いたしました。
将来において書籍刊行の元となるWeb連載漫画は堅調に連載数を拡大しており、当事業年度では、新たに31本のWeb連載を開始し、当事業年度末のWeb連載漫画本数は49本となりました。中でも、これまで当社刊行小説のコミカライズが主であったWeb連載漫画において、当社サイトへの投稿作品の中から3作のオリジナル漫画(『柳生烈堂地獄旅』、『ぼくらのめいきゅー』及び『IRON CRY』)を公式Web連載漫画として連載できたことは、今後の更なる成長の足掛かりとなる実績であるといえます。
(文庫)
啓文堂書店様で実施されておりました、「2016年 雑学文庫大賞」にてアルファポリス文庫『考えすぎない』(初版:平成23年5月刊行)が大賞を受賞いたしました。その結果、本書籍は、本書提出日現在において22刷、発行部数11.8万部となるロングセラーヒット作に成長いたしました。一方で、漫画と同様、第1四半期会計期間及び第2四半期会計期間において当初想定以上の『ゲート』関連書籍の返本が発生し、収益を圧迫いたしました。加えて、ライトノベル市場では相次ぐ新規参入により競争が激化していることから、単行本の廉価版として販売している文庫においても1タイトル当たりの発行部数が減少する傾向となりました。
これらの結果、文庫全体の売上高は、前事業年度を下回る結果となりました。
(その他)
当事業年度では、戦略的に強化を行っている「ビジネス」ジャンルからの刊行点数は、5点となりました。加えて、一般文芸『居酒屋ぼったくり』は巻を重ねても依然として人気は衰えず、各種メディアに取り上げられたことも追い風となり、シリーズ発行部数累計は48万部を突破いたしました。一方で、ライトノベルと同様、競争環境は厳しくなってきていることから、全体的に収益性は低下いたしました。
これらの結果、その他全体の売上高は、前事業年度を下回る結果となりました。
② ゲーム事業
スマホアプリ『リ・モンスター(Re:Monster)』は、平成29年2月に実施したリリース1周年記念キャンペーンが好評となり、同2月は単月では過去最高の売上高となりました。その他、平成29年1月には株式会社ディー・エヌ・エーが運営する“スマホアプリをPCで遊べるプラットフォーム”『AndApp』への配信を開始し、販路拡大に向けた取り組みも行ってまいりました。また、『Re:Monster』は翻訳出版などの効果により、米国や台湾などを筆頭に海外でも人気が高いことから、平成29年2月には、アプリ内に、英語、中国語・繁体字の言語オプションを追加し、ユーザー及び売上高の拡大に大きく貢献いたしました。
一方で、平成28年10月にリリースいたしましたスマホアプリ『THE NEW GATE』は、リリース直後のサーバー不具合により急速に売上が減少し、様々な施策を講ずるものの売上は厳しい結果となりました。今後は、データ分析結果等を通じてユーザーにとって魅力的な機能実装・イベント開催を行うことにより、売上の回復を図る計画です。
また、平成29年3月には、シリーズ発行部数累計37万部を超える人気作『異世界でカフェを開店しました。』のIPを活用した新作スマホアプリ『異世界でカフェを開店しました。』の事前登録を開始いたしました。
平成28年4月に正式サービスを開始いたしましたPCブラウザゲーム『ワンモア・フリーライフ・オンライン』については、年末商戦等のイベントにより一時的に売上高が回復する場面もありましたが、全体的にはユーザー数や滞留率が徐々に低下してきており、売上は厳しいものとなりました。
これらの結果、当事業の売上高は385,383千円(前期比760.6%増)、セグメント損失は208,163千円(前事業年度は46,170千円のセグメント損失)となりました。
以上の活動の結果、当事業年度の売上高は3,185,536千円(前期比4.8%減)、営業利益は174,101千円(同80.8%減)、経常利益は175,242千円(同80.6%減)、当期純利益は101,098千円(同82.3%減)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は前事業年度末より94,429千円減少し、2,478,034千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは26,202千円の収入(前事業年度は379,747千円の収入)となりました。この主な要因は、税引前当期純利益が175,242千円、減価償却費が176,943千円、売上債権の減少が184,631千円、及び法人税等の支払額が431,756千円発生したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは87,404千円の支出(前事業年度は251,628千円の支出)となりました。この主な要因は、スマホアプリ等のソフトウェアの制作費等による無形固定資産の取得による支出が94,240千円、及び『ゲート』のTVアニメ製作委員会に対する出資金の回収による収入が26,432千円発生したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは33,228千円の支出(前事業年度は31,038千円の支出)となりました。これは、長期借入金の借入れによる50,000千円の収入がある一方で、長期借入金の返済による83,228千円の支出が発生したことによるものであります。