有価証券報告書-第16期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/20 16:42
【資料】
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【項目】
105項目
(業績等の概要)
(1) 業績
当社が開発を手掛けるがん免疫治療薬の分野では、京都大学の本庶佑特別教授が、近年のがん治療に革新をもたらした免疫チェックポイント阻害抗体の開発につながる分子PD-1の発見によりノーベル生理学・医学賞を受賞したことが大きな話題となりました。また、キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法(CAR-T)が、米国、欧州に続き日本国内においても承認され、新たな形態としてがん免疫療法に加わり、同分野は引き続き進展を見せております。今後も、より高い治療効果、より高い治療効果予測精度の医療、そして患者一人ひとりに合わせた個別化医療の実現を目指して、免疫チェックポイント阻害抗体を中心に複数のがん免疫治療薬を組み合わせる複合的免疫療法や、CAR-Tに代表される遺伝子改変T細胞療法、ネオアンチゲンを標的とする完全個別化ワクチンなど、がん免疫の力を最大限に引き出すことを狙った様々な取り組みが進められる見通しです。
このような環境下で、当社は、新しいがん治療の時代に適応すべく、創業以来の開発テーマで現在臨床試験段階にあるがんペプチドワクチンの開発と、その枠を越えた新規形態の創薬研究を進めてまいりました。
米国で開発中のがんペプチドワクチンGRN-1201については、単剤での治療効果に関する評価が確立された免疫チェックポイント阻害抗体の次のテーマとして、併用パートナー薬との複合的がん免疫療法が志向される中で、非小細胞肺がんを対象に、免疫チェックポイント阻害抗体と当該ワクチン併用の第二相臨床試験を推進しています。
当社にとって新規形態となる細胞医薬については、iPS細胞技術をがん免疫療法へ応用し固形がん対象の他家細胞医薬品の創製を目指し、2018年3月に理化学研究所と「iPS-NKT細胞療法」の共同研究を開始しました。今後、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が2019年度中に開始される予定です。
また、近年がんゲノム医療として注目を集める、遺伝子レベルで個人差に対応する完全個別化ネオアンチゲンワクチン療法を開発するべく、国立がん研究センター、東京大学及び神奈川県立がんセンター並びに三重大学との共同研究を引き続き継続してまいります。2018年12月には、東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター長である宮野悟教授や、ゲノム解析における統計数理モデリングを専門とする井元清哉教授を中心とした研究グループとネオアンチゲン予測アルゴリズムの高精度化を目的とした共同研究を開始しております。
これらに加え、新しい世代のがん免疫を亢進する抗体医薬シーズを複数創製しており、川崎創薬研究所においてこれらの研究を加速してまいります。
なお、第三相臨床試験を完了したがんペプチドワクチンITK-1につきましては、2018年5月の開鍵(キーオープン)の結果、主要評価項目を達成することが出来なかったため、導出先の富士フイルム株式会社の決定を踏まえて開発を中止いたしました。また、iPS細胞由来再生T細胞療法の開発のために実施した東京大学及び順天堂大学との共同研究は、細胞医薬開発をより積極的に推し進めるための選択と集中において中止いたしました。分子標的薬耐性変異を標的とするがんワクチンGRN-1301についても、標的を同じくする競合の上市分子標的薬の市場動向を踏まえて、こちらもパイプラインの選択と集中を図るべく開発中止を決定いたしました。
これらの結果、当事業年度の売上高につきましては、富士フイルム株式会社からITK-1の第三相臨床試験にかかる業務の終了に伴うマイルストンの受領等及びブリストル・マイヤーズ スクイブ株式会社から抗体測定系構築の受託業務収入を得たことにより、155,808千円(前年同期比198,601千円減、56.0%減)となりました。また、研究開発活動の拡大により、経常損失は1,678,084千円(前年同期の経常損失は1,569,648千円)、当期純損失は1,884,318千円(前年同期の当期純損失は1,577,142千円)となりました。
なお、当社は、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。
(2) 財政状態の状況
① 流動資産
当事業年度末における流動資産は前事業年度末より1,751,208千円減少し5,161,647千円となりました。これは、現金及び預金が研究開発等に関連する支出により1,626,876千円減少したこと、ITK-1第三相臨床試験の終了により治験受託関連業務に関する売掛金が76,171千円減少したことが主な要因であります。
② 固定資産
当事業年度末における固定資産は前事業年度末より181,762千円減少し142,815千円となりました。これは、事業・研究開発用資産を減損したことに伴い185,285千円減少したことが主な要因であります。
③ 流動負債
当事業年度末における流動負債は前事業年度末より81,821千円減少し148,816千円となりました。これは、富士フイルム株式会社から収受したマイルストン収入に対する久留米大学への包括的業務契約に基づくロイヤリティ支払が発生していることにより買掛金が19,564千円増加したこと、前事業年度末と比べて研究開発機器の取得が減少したことにより未払金が91,478千円減少したことがが主な要因であります。
④ 固定負債
当事業年度末における固定負債は前事業年度末より3,348千円増加し59,574千円となりました。これは、社員数の増加により退職給付引当金が1,677千円増加したことが主な要因であります。
⑤ 純資産
当事業年度末における純資産は前事業年度末より1,854,498千円減少し、5,096,072千円となりました。これは、当期純損失1,884,318千円を計上したことが主な要因であります。以上の結果、自己資本比率は前事業年度末の95.2%から94.7%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4,901,177千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,457,571千円となりました。これは主に税引前当期純損失1,880,529千円を計上したこと、減損損失194,829千円を計上したこと、減価償却費82,770千円を計上したこと、関係会社貸倒引当金繰入額28,614千円を計上したこと、売上債権の減少76,171千円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は185,115千円となりました。これは主に研究開発機器等の有形固定資産の取得による支出173,164千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は15,810千円となりました。これは、新株予約権の行使による株式の発行による収入15,810千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称生産高(千円)前年同期比(%)
医薬品開発事業66,712△78.7
合計66,712△78.7

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ246,302千円減少しております。
(2) 受注実績
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称受注高
(千円)
前年同期比
(%)
受注残高
(千円)
前年同期比
(%)
医薬品開発事業128,768△60.5--
合計128,768△60.5--

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ197,428千円減少しております。
(3) 販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
セグメントの名称販売高(千円)前年同期比(%)
医薬品開発事業155,808△56.0
合計155,808△56.0

(注)1.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ198,601千円減少しております。
2.最近事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2017年4月1日
至 2018年3月31日)
当事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
販売高(千円)割合(%)販売高(千円)割合(%)
富士フイルム株式会社318,52289.9121,42077.9

3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4.ITK-1第三相臨床試験が終了したため、前年同期と比べ197,102千円減少しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は下記のとおりであります。なお、当社は、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社が判断したものであります。
(経営指標について)
当社は、創薬ベンチャーであり、研究開発活動という投資期間が長く、その研究開発活動の成果として、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストン収入等などを獲得するビジネスモデルであります。
中長期的視点からの経営の安定化、企業価値の向上を目指して、また著しい技術革新がなされ、大きな期待を受けているがん免疫治療薬分野における大きな事業機会を逃さないために、既存のパイプラインの推進のみならず、新規のパイプラインを積極的に導入していく方針であります。
従いまして、売上高や当期純損益の推移やROE、ROAといった経営指標を目的とすることはせずに、現預金残高の推移、研究開発活動の効率化、パイプライン数の拡大・充実について、財務状況を勘案しながら、早期のライセンスアウト及び黒字化の実現に向けて、事業を進めてまいります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。この見積りに関しては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づいて合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。
(2) 当事業年度末の財政状態の分析
① 資産の状況
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末より1,932,970千円減少し5,304,463千円となりました。
研究開発等に関連する支出により1,626,876千円現金及び預金が減少したこと、ITK-1第三相臨床試験の終了により治験受託関連業務が終了したため76,171千円売掛金が減少したこと、事業・研究開発用資産を減損したことに伴い185,285千円事業・研究開発用固定資産が減少したことが主な理由であります。
当事業年度末における資産の内訳としましては、現金及び預金が4,901,177千円であり、資産の合計に占める割合は92.4%となっております。研究開発を推進していくにあたり、当面の資金は確保している状況にあります。
今後の現金及び預金の残高推移については、株式市場等からの資金調達やライセンスアウトによる契約一時金収入・マイルストン収入の獲得が実施されるまでの期間において、主に研究開発費用及び研究機器等の購入に伴う支出により減少する傾向にあります。現金及び預金の残高推移を注視しつつ、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進してまいります。
② 負債の状況
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末より78,472千円減少し208,390千円となりました。
富士フイルム株式会社から収受したマイルストン収入に対する久留米大学への包括的業務契約に基づくロイヤリティ支払が発生していることにより19,564千円買掛金が増加しました。一方で前事業年度末と比べて研究開発機器の取得が減少したことにより91,478千円未払金が減少しました。
当事業年度末における総資産に占める負債の割合は、3.9%であります。
創薬研究及び細胞医薬における研究開発の推進に伴い、未払金は増加する傾向にあります。
当事業年度末における現金及び預金の残高に対する負債の割合は非常に小さいと考えており、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。
③ 純資産の状況
当事業年度末における純資産は、前事業年度末より1,854,498千円減少し5,096,072千円となりました。
当期純損失1,884,318千円を計上したことが主な要因であります。
自己資本比率は前事業年度末の95.2%から94.7%となりました。
(3) 当事業年度の経営成績の分析
① 売上高の状況
当事業年度の売上高につきましては、前事業年度と比べ198,601千円減少(56.0%減)し、155,808千円となりました。
当事業年度の売上高の77.9%(121,420千円)が富士フイルム株式会社からのITK-1第三相臨床試験にかかる業務終了に伴うマイルストンの受領等でありますが、ITK-1の開発中止に伴い治験受託業務が終了したため、前事業年度と比べ、198,601千円の減収となりました。
② 営業損益の状況
当事業年度における営業損失は、前事業年度と比べ213,192千円損失が増加し1,665,548千円となりました。
当事業年度の研究開発費は、現在臨床試験段階にあるがんペプチドワクチンの開発とがん免疫治療薬分野の研究開発領域を拡大していくという方針のもと、川崎創薬研究所における創薬研究の研究が進捗したこと、細胞医薬の研究が進捗したこと、複数の大学・研究機関との共同研究契約を推進したことなどにより、前事業年度と比べ241,089千円増加し、1,387,674千円となりました。
当社の販管費に占める研究開発費の割合は約79%であり、事業運営費用が約21%となっております。このため、研究開発費の計上額の推移が営業損益の金額に直接影響を与える構造となっております。
2020年3月期において、研究開発費は当事業年度よりも増額となる2,079,000千円、そして営業損益も研究開発費の増額により2,417,000千円の損失と当事業年度よりも損失増加を想定しております。
各パイプラインの推進に加え、日進月歩でサイエンスが進む環境に迅速に適合していくためにも、新規シーズの導入は今後も引き続き積極的に行っていく方針であるとともに、さらには川崎創薬研究所において創出している新規医薬品候補の開発を順次進めてまいります。
完全個別化がん免疫療法の開発を目指した共同研究では、既存の研究開発ネットワークを深化させることで、より強固な共同研究基盤に発展させるとともに、最先端のサイエンスの知見・ノウハウの獲得を通して、次世代がん免疫治療のターゲットの探索と臨床試験へ向けた開発を進めてまいります。
以上から、当事業年度よりも研究開発費が増加することを想定しております。
③ 当期純損益の状況
当事業年度における当期純損益は、前事業年度と比べ307,175千円損失が増加し1,884,318千円となりました。
当事業年度の研究開発費が前事業年度と比べ241,089千円増加したこと、旧連結子会社への債権に関する貸倒引当金繰入額が123,630千円減少したこと、減損損失が固定資産の減損に係る会計基準の適用により、194,829千円増加したことが主な要因であります。
2020年3月期において、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進していく方針のもと、当期純損失は、主に研究開発の積極的な推進による販管費の増加により、当事業年度よりも損失増加となる2,417,000千円を想定しております。
(4) 当事業年度のキャッシュ・フローの分析
① 営業活動によるキャッシュ・フローの状況
現在臨床試験段階にあるがんペプチドワクチンの開発とがん免疫治療薬分野の研究開発領域を拡大していくという方針のもと、主に川崎創薬研究所における創薬研究及び細胞医薬の研究の推進により、営業活動によるキャッシュ・フローは1,457,571千円の支出となりました。
今後においても、がん免疫治療分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針を継続していきますので、当事業年度よりも支出額は増加する可能性があります。
② 投資活動によるキャッシュ・フローの状況
主に川崎創薬研究所における創薬研究及び細胞医薬研究の研究機器の購入による研究環境の整備を図ったことにより投資活動によるキャッシュ・フローは185,115千円の支出となりました。
今後においても、がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針を継続し、研究開発環境の向上を図ってまいりますので、当事業年度よりも支出額は増加する可能性があります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フローの状況
新株予約権の権利行使による株式の発行により15,810千円の収入となりました。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、当社が推進する研究開発を遅延又は中止させる事象でありますが、詳細については「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
(6) 資金の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要は、研究開発にかかる人件費、試薬等材料費、消耗品費、外部委託費及び研究機器の購入等及び事業運営・上場維持にかかる人件費、外部委託費及び特許関連費用等であります。これらの費用及び研究機器の購入等については、自己資金により支出していく予定であります。自己資金については、すべて銀行預金としておりますので、すべての支出について迅速かつ確実に対応できるよう資金の流動性を確保しております。
2020年3月期のキャッシュ・フローについては、2020年3月期の当期純損失が研究開発費の増加を主要因として当事業年度よりも損失が増加することから、営業活動によるキャッシュ・フローは当事業年度よりも支出が上回る見込みであります。

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