有価証券報告書-第15期(平成29年4月1日-平成30年3月31日)
(業績等の概要)
(1) 業績
当社及び当社子会社(以下「当社グループ」といいます。)が医薬品開発を手掛けるがん免疫療法は、免疫チェ
ックポイント阻害剤と呼ばれるがん免疫治療薬の効果が広く認知され、世界のがん治療にパラダイムシフトを起こしています。当分野における開発の波は、より高い治療効果、より治療効果予測精度の高い医療、患者一人ひとりに合わせた個別化医療の実現を目指して、さらに拡がりを見せています。新たな方向性として、免疫チェックポイント阻害剤を中心に複数のがん免疫治療薬を組み合わせる併用療法や、CAR-Tに代表される遺伝子改変T細胞療法、ネオアンチゲンを用いた完全個別化ワクチンなど、それぞれの効果を最大限に引き出すことを狙った様々な取り組みが進められております。
このような環境下で、当社グループは、新しいがん治療の時代に適応すべく、創業以来の開発テーマで現在臨床試験段階にある2つのがんペプチドワクチンの開発と、その枠を超えた新規モダリティの創薬研究を進めてまいりました。
ITK-1につきましては、平成25年6月以降、ライセンス・アウト先の富士フイルム株式会社とともに、国内において去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とする第Ⅲ相臨床試験を引き続き経過観察期間として実施し、最終解析に向けた準備を進めておりました。しかしながら、平成30年5月に第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)を行った結果、主要評価項目を達成することはできませんでした。今後の方針につきましては、富士フイルム株式会社が検討してまいります。
米国で開発中のペプチドワクチンGRN-1201については、単剤での治療効果に関する評価が確立された免疫チェックポイント阻害剤の次のテーマとして、併用パートナー薬との複合的がん免疫療法が志向される中で、非小細胞肺がんを対象に、免疫チェックポイント阻害剤と当該ワクチン併用の第Ⅱ相臨床試験を推進しています。
新規モダリティについては、iPS細胞技術をがん免疫療法へ応用する細胞医薬の開発を開始しており、前連結会計年度中に開始したiPS細胞由来再生T細胞療法(iPS-T)に続き、平成30年3月に国立研究開発法人理化学研究所と「iPS-NKT細胞療法」の共同研究を開始しました。今後、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が平成31年度中に開始される予定です。
また、これまでITK-1で実現しようとしてきたテーラーメイドがんワクチン療法をさらに推し進めた、遺伝子レベ
ルで個人差に対応する完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン療法を開発するべく、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立大学法人東京大学及び地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター、並びに国立大学法人三重大学とそれぞれ共同研究を開始しております。
上記のとおり研究開発を拡大している中、新しい治療法を含めたさらなる研究開発活動を推進すべく、平成29年12月にクレディ・スイス証券株式会社を割当先とする行使価額修正条項付第12回及び第13回新株予約権を発行し、当連結会計年度中に合計3,277百万円の調達を完了させて財務基盤の強化を図りました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高につきましては、主に富士フイルム株式会社からの開発協力金を受領したことにより、354,410千円(前年同期比175,202千円減、33.1%減)となりました。また、研究開発活動の拡大により、経常損失は1,573,292千円(前年同期の経常損失は1,116,556千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,577,142千円(前年同期の親会社株主に帰属する当期純損失は1,113,661千円)となりました。
なお、当社グループは、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。
(2) 財政状態の状況
① 流動資産
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末より1,660,657千円増加し6,900,127千円となりました。これは、主に研究開発に関連する支出の一方で資金調達の実施により現金及び預金が1,578,189千円増加したこと、及び治験薬開発等の前払いの支出により前払金が57,672千円増加したことが主な要因であります。
② 固定資産
当連結会計年度末における固定資産は前連結会計年度末より166,944千円増加し335,775千円となりました。これは、研究機器の購入により工具、器具及び備品が130,839千円増加したことが主な要因であります。
③ 流動負債
当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末より67,838千円増加し229,107千円となりました。これは、研究開発費及び研究機器の購入などの増加により未払金が74,549千円増加したことが主な要因であります。
④ 固定負債
当連結会計年度末における固定負債は前連結会計年度末より10,342千円増加し56,225千円となりました。これは、社員数の増加により退職給付に係る債務が6,246千円増加したこと及び川崎創薬研究所の増床により資産除去債務が3,506千円増加したことが主な要因であります。
⑤ 純資産
当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末より1,749,421千円増加し6,950,570千円となりました。これは、資金調達等において新株式を発行したことにより資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,645,517千円増加したこと及び親会社株主に帰属する当期純損失1,577,142千円を計上したことが主な要因であります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の95.8%から95.3%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より1,578,189千円増加し6,528,759千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、1,591,336千円(前連結会計年度は1,067,512千円の支出)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失1,573,292千円を計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は111,556千円(前連結会計年度は96,564千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出108,218千円及び無形固定資産の取得による支出3,337千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は3,281,082千円(前連結会計年度は3,559,188千円の収入)となりました。これは、新株予約権の発行による収入12,174千円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入3,268,908千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第Ⅲ相臨床試験が通期に亘って観察期間となり治験受託業務量が減少したため、前年同期と比べ 199,412千円減少しております。
(2) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第Ⅲ相臨床試験が通期に亘って観察期間となり治験受託業務量が減少したため、前年同期と比べ 199,390千円減少しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.ITK-1第Ⅲ相臨床試験が通期に亘って観察期間となり治験受託業務量が減少したため、前年同期と比べ 175,202千円減少しております。
2.最近連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4.ITK-1第Ⅲ相臨床試験が通期に亘って観察期間となり治験受託業務量が減少したため、前年同期と比べ 196,848千円減少しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は下記のとおりであります。なお、当社グループは、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社が判断したものであります。
(経営指標について)
当社グループは、創薬ベンチャーであり、研究開発活動という投資期間が長く、その研究開発活動の成果として、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストン収入等などを獲得するビジネスモデルであります。
中長期的視点からの経営の安定化、企業価値の向上を目指して、また著しい技術革新がなされ、大きな期待を受けているがん免疫治療薬分野における大きな事業機会を逃さないために、既存のパイプラインの推進のみならず、新規パイプラインを積極的に導入していく方針であります。
従いまして、売上高や親会社株主に帰属する当期純損益の推移やROE、ROAといった経営指標を目的とすることはせずに、現預金残高の推移、研究開発活動の効率化、パイプライン数の拡大・充実について、財務状況を勘案しながら、早期のライセンスアウト及び黒字化の実現に向けて、事業を進めてまいります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。この見積りに関しては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づいて合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。
(2) 当連結会計年度末の財政状態の分析
① 資産の状況
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末より1,827,602千円増加し7,235,902千円となりました。
研究開発等に関連する支出の一方で資金調達の実施にかかる新株式の発行に伴う入金3,277,335千円により現金及び預金が1,578,189千円増加したこと、GRN-1201にかかる安定性試験や治験薬開発等の支出の増加により前払金が57,672千円増加したこと、また、主に川崎創薬研究所における研究の本格稼働及び研究の進捗に伴う研究環境の整備に伴う研究機器の購入により工具器具備品が130,839千円増加したことが主な理由であります。
当連結会計年度末における資産の内訳としましては、現金及び預金が6,528,759千円であり、資産の合計に占める割合は90.2%となっております。研究開発を推進していくにあたり、当面の資金は確保している状況にあります。
今後の現金及び預金の残高推移については、株式市場等からの資金調達やライセンス・アウトによる契約一時金収入・マイルストン収入の獲得が実施されるまでの期間において、主に研究開発費用及び研究機器等の購入に伴う支出により減少する傾向にあります。現金及び預金の残高推移を注視しつつ、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進してまいります。
② 負債の状況
当連結会計年度末における負債の合計は、前連結会計年度末より78,180千円増加し285,332千円となりました。
主に創薬研究にかかる研究開発費等の増加により未払金が74,549千円増加、資金調達により資本金が増加したことに伴う税金の増加により未払法人税等が10,352千円増加しました。一方で、ITK-1の第Ⅲ相臨床試験の業務が最終段階に進捗したことにより治験施設への支出等が減少したことにより、買掛金は13,785千円減少しました。
当連結会計年度末における総資産に占める負債の割合は、3.94%であります。
ITK-1の第Ⅲ相臨床試験の業務終了に伴い、ITK-1の今後の方向性は富士フイルム株式会社が検討してまいりますので、今後買掛金はその結果により増減いたします。一方で創薬研究等における研究開発費用の増加に伴い、未払金は増加する傾向にあります。
当連結会計年度末における現金及び預金の残高に対する負債の割合は非常に小さいと考えており、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。
③ 純資産の状況
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末より1,749,421千円増加し6,950,570千円となりました。
資金調達において新株式を発行したことにより資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,645,517千円増加したこと及び親会社株主に帰属する当期純損失1,577,142千円を計上したことが主な要因であります。
自己資本比率は前連結会計年度末の95.8%から95.3%となりました。
引き続き、自己資本比率については高水準を維持してまいります。
(3) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 売上高の状況
当連結会計年度の売上高につきましては、前連結会計年度と比べ175,202千円減少(33.1%減)し、354,410千円となりました。
当連結会計年度の売上高の89.9%(318,522千円)が富士フイルム株式会社からの開発協力金でありますが、ITK-1の第Ⅲ相臨床試験の業務が最終段階に進捗したことにより治験受託業務量が減少したため、前連結会計年度と比べ、196,848千円の減収となりました。
平成31年3月期において、ITK-1の第Ⅲ相臨床試験にかかる業務の終了に伴うマイルストン収入100,000千円を富士フイルム株式会社から得ております。このマイルストン収入100,000千円及び既に締結している契約に基づく取引を見込み、平成31年3月期の売上高を150,000千円と想定しております。
② 営業損益の状況
当連結会計年度における営業損失は、前連結会計年度と比べ448,182千円損失が増加し1,561,732千円となりました。
当連結会計年度の研究開発費は、がん免疫治療薬分野の研究開発領域を拡大していくという方針のもと、川崎創薬研究所における創薬研究(ネオアンチゲンや抗体医薬)の本格稼働により研究が進捗したこと、細胞医薬の研究が進捗したこと、複数の大学・研究機関との共同研究契約を推進したことなどにより、前連結会計年度と比べ437,036千円増加し、1,253,819千円となりました。
当社グループの販管費に占める研究開発費の割合は約78%であり、事業運営費用が約22%となっております。このため、研究開発費の計上額の推移が営業損益の金額に直接影響を与える構造となっております。
平成31年3月期において、研究開発費は当連結会計年度よりも増額となる1,900,000千円、そして営業損益も研究開発費の増額により2,200,000千円の損失と当連結会計年度よりも損失増加を想定しております。
各パイプライン(GRN-1201、ネオアンチゲン、細胞医薬等)において、GRN-1201は第Ⅱ相臨床試験がさらに進捗していき、ネオアンチゲン及び細胞医薬については、共同研究先との研究が本格化していきます。各パイプラインの研究開発がそれぞれ進捗していくこと、また、がん免疫治療薬分野における「複合化」と「完全個別化」といった現在のトレンドのみならず、外部環境の状況を常に把握・アップデートしつつ新たなシーズ及びパイプライン候補にかかる研究も推進していくことから、当連結会計年度よりも研究開発費が増加することを想定しております。
③ 親会社株主に帰属する当期純損益の状況
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度と比べ463,481千円損失が増加し1,577,142千円となりました。
当連結会計年度の研究開発費が前連結会計年度と比べ437,036千円増加したこと、補助金収入が前連結会計年度と比べ12,628千円減少したことが主な要因であります。
平成31年3月期において、がん治療における期待の大きいがん免疫治療薬分野の研究開発を積極的に推進していく方針のもと、親会社株主に帰属する当期純損失は、主に研究開発の積極的な推進による販管費の増加により、当連結会計年度よりも損失増加となる2,200,000千円を想定しております。
(4) 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析
① 営業活動によるキャッシュ・フローの状況
がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針のもと、主に川崎創薬研究所における創薬研究(ネオアンチゲン及び抗体医薬)及び細胞医薬の研究の推進により、税金等調整前当期純損失が前連結会計年度と比べ456,364千円を損失が増加したため、営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度と比べ523,823千円支出が増加し、1,591,336千円の支出となりました。
今後においても、がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針を継続していきますので、当連結会計年度よりも支出額は増加する可能性があります。
② 投資活動によるキャッシュ・フローの状況
主に川崎創薬研究所における創薬研究及び細胞医薬研究の本格稼働に伴い研究機器の購入による研究環境の整備を図ったことにより有形固定資産の取得による支出が、前連結会計年度に対して微増の108,218千円となりました。その結果、投資活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度と比べ14,992千円支出増加の111,556千円の支出となりました。
今後においても、がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針を継続し、研究開発環境の向上を図ってまいりますので、当連結会計年度よりも支出額は増加する可能性があります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フローの状況
がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進していくにあたり、新規パイプラインの創製を資金使途とした資金調達が必要となるため、前連結会計年度に引き続き、当連結会計年度において新株予約権を活用した第12回新株予約権の発行による資金調達を実施しました。新株発行費用等を控除した手取り金額は3,281,082千円となりました。
第13回新株予約権につきましては、行使条件を満たしておりませんので、行使がなされる予定はありません。
前連結会計年度及び当連結会計年度における資金調達の実施により、当連結会計年度末における現金及び預金の残高は6,528,759千円となり、当面の研究開発及び事業運営にかかる経費を確保しております。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、当社が推進する研究開発を遅延又は中止させる事象でありますが、詳細については「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
(6) 資金の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要は、研究開発にかかる人件費、試薬等材料費、消耗品費、外部委託費及び研究機器の購入等、及び事業運営・上場維持にかかる人件費、外部委託費及び特許関連費用等であります。これらの費用及び研究機器の購入等については、自己資金により支出していく予定であります。自己資金については、すべて銀行預金としておりますので、すべての支出について迅速かつ確実に対応できるよう資金の流動性を確保しております。
平成31年3月期のキャッシュ・フローについては、平成31年3月期の親会社株主に帰属する当期純損失が研究開発費の増加を主要因として当連結会計年度よりも損失が増加すること、また創薬研究及び細胞医薬研究における研究機器の購入も当連結会計年度よりも増加する見込みであることから、営業活動によるキャッシュ・フロー及び投資活動によるキャッシュ・フローは当連結会計年度よりも支出が上回る見込みであります。
(1) 業績
当社及び当社子会社(以下「当社グループ」といいます。)が医薬品開発を手掛けるがん免疫療法は、免疫チェ
ックポイント阻害剤と呼ばれるがん免疫治療薬の効果が広く認知され、世界のがん治療にパラダイムシフトを起こしています。当分野における開発の波は、より高い治療効果、より治療効果予測精度の高い医療、患者一人ひとりに合わせた個別化医療の実現を目指して、さらに拡がりを見せています。新たな方向性として、免疫チェックポイント阻害剤を中心に複数のがん免疫治療薬を組み合わせる併用療法や、CAR-Tに代表される遺伝子改変T細胞療法、ネオアンチゲンを用いた完全個別化ワクチンなど、それぞれの効果を最大限に引き出すことを狙った様々な取り組みが進められております。
このような環境下で、当社グループは、新しいがん治療の時代に適応すべく、創業以来の開発テーマで現在臨床試験段階にある2つのがんペプチドワクチンの開発と、その枠を超えた新規モダリティの創薬研究を進めてまいりました。
ITK-1につきましては、平成25年6月以降、ライセンス・アウト先の富士フイルム株式会社とともに、国内において去勢抵抗性前立腺がん患者を対象とする第Ⅲ相臨床試験を引き続き経過観察期間として実施し、最終解析に向けた準備を進めておりました。しかしながら、平成30年5月に第Ⅲ相臨床試験の開鍵(キーオープン)を行った結果、主要評価項目を達成することはできませんでした。今後の方針につきましては、富士フイルム株式会社が検討してまいります。
米国で開発中のペプチドワクチンGRN-1201については、単剤での治療効果に関する評価が確立された免疫チェックポイント阻害剤の次のテーマとして、併用パートナー薬との複合的がん免疫療法が志向される中で、非小細胞肺がんを対象に、免疫チェックポイント阻害剤と当該ワクチン併用の第Ⅱ相臨床試験を推進しています。
新規モダリティについては、iPS細胞技術をがん免疫療法へ応用する細胞医薬の開発を開始しており、前連結会計年度中に開始したiPS細胞由来再生T細胞療法(iPS-T)に続き、平成30年3月に国立研究開発法人理化学研究所と「iPS-NKT細胞療法」の共同研究を開始しました。今後、頭頸部がんを対象とする医師主導治験が平成31年度中に開始される予定です。
また、これまでITK-1で実現しようとしてきたテーラーメイドがんワクチン療法をさらに推し進めた、遺伝子レベ
ルで個人差に対応する完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン療法を開発するべく、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立大学法人東京大学及び地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター、並びに国立大学法人三重大学とそれぞれ共同研究を開始しております。
上記のとおり研究開発を拡大している中、新しい治療法を含めたさらなる研究開発活動を推進すべく、平成29年12月にクレディ・スイス証券株式会社を割当先とする行使価額修正条項付第12回及び第13回新株予約権を発行し、当連結会計年度中に合計3,277百万円の調達を完了させて財務基盤の強化を図りました。
これらの結果、当連結会計年度の売上高につきましては、主に富士フイルム株式会社からの開発協力金を受領したことにより、354,410千円(前年同期比175,202千円減、33.1%減)となりました。また、研究開発活動の拡大により、経常損失は1,573,292千円(前年同期の経常損失は1,116,556千円)、親会社株主に帰属する当期純損失は1,577,142千円(前年同期の親会社株主に帰属する当期純損失は1,113,661千円)となりました。
なお、当社グループは、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。
(2) 財政状態の状況
① 流動資産
当連結会計年度末における流動資産は前連結会計年度末より1,660,657千円増加し6,900,127千円となりました。これは、主に研究開発に関連する支出の一方で資金調達の実施により現金及び預金が1,578,189千円増加したこと、及び治験薬開発等の前払いの支出により前払金が57,672千円増加したことが主な要因であります。
② 固定資産
当連結会計年度末における固定資産は前連結会計年度末より166,944千円増加し335,775千円となりました。これは、研究機器の購入により工具、器具及び備品が130,839千円増加したことが主な要因であります。
③ 流動負債
当連結会計年度末における流動負債は前連結会計年度末より67,838千円増加し229,107千円となりました。これは、研究開発費及び研究機器の購入などの増加により未払金が74,549千円増加したことが主な要因であります。
④ 固定負債
当連結会計年度末における固定負債は前連結会計年度末より10,342千円増加し56,225千円となりました。これは、社員数の増加により退職給付に係る債務が6,246千円増加したこと及び川崎創薬研究所の増床により資産除去債務が3,506千円増加したことが主な要因であります。
⑤ 純資産
当連結会計年度末における純資産は前連結会計年度末より1,749,421千円増加し6,950,570千円となりました。これは、資金調達等において新株式を発行したことにより資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,645,517千円増加したこと及び親会社株主に帰属する当期純損失1,577,142千円を計上したことが主な要因であります。
以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の95.8%から95.3%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前連結会計年度末より1,578,189千円増加し6,528,759千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、1,591,336千円(前連結会計年度は1,067,512千円の支出)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失1,573,292千円を計上したことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は111,556千円(前連結会計年度は96,564千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出108,218千円及び無形固定資産の取得による支出3,337千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は3,281,082千円(前連結会計年度は3,559,188千円の収入)となりました。これは、新株予約権の発行による収入12,174千円及び新株予約権の行使による株式の発行による収入3,268,908千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
| セグメントの名称 | 生産高(千円) | 前年同期比(%) |
| 医薬品開発事業 | 313,014 | △38.9 |
| 合計 | 313,014 | △38.9 |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第Ⅲ相臨床試験が通期に亘って観察期間となり治験受託業務量が減少したため、前年同期と比べ 199,412千円減少しております。
(2) 受注実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
| セグメントの名称 | 受注高 (千円) | 前年同期比 (%) | 受注残高 (千円) | 前年同期比 (%) |
| 医薬品開発事業 | 326,196 | △37.9 | ― | ― |
| 合計 | 326,196 | △37.9 | ― | ― |
(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.ITK-1第Ⅲ相臨床試験が通期に亘って観察期間となり治験受託業務量が減少したため、前年同期と比べ 199,390千円減少しております。
(3) 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
| セグメントの名称 | 販売高(千円) | 前年同期比(%) |
| 医薬品開発事業 | 354,410 | △33.1 |
| 合計 | 354,410 | △33.1 |
(注)1.ITK-1第Ⅲ相臨床試験が通期に亘って観察期間となり治験受託業務量が減少したため、前年同期と比べ 175,202千円減少しております。
2.最近連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、以下のとおりであります。
| 相手先 | 前連結会計年度 (自 平成28年4月1日 至 平成29年3月31日) | 当連結会計年度 (自 平成29年4月1日 至 平成30年3月31日) | ||
| 販売高(千円) | 割合(%) | 販売高(千円) | 割合(%) | |
| 富士フイルム株式会社 | 515,370 | 97.3 | 318,522 | 89.9 |
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
4.ITK-1第Ⅲ相臨床試験が通期に亘って観察期間となり治験受託業務量が減少したため、前年同期と比べ 196,848千円減少しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は下記のとおりであります。なお、当社グループは、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日時点において当社が判断したものであります。
(経営指標について)
当社グループは、創薬ベンチャーであり、研究開発活動という投資期間が長く、その研究開発活動の成果として、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストン収入等などを獲得するビジネスモデルであります。
中長期的視点からの経営の安定化、企業価値の向上を目指して、また著しい技術革新がなされ、大きな期待を受けているがん免疫治療薬分野における大きな事業機会を逃さないために、既存のパイプラインの推進のみならず、新規パイプラインを積極的に導入していく方針であります。
従いまして、売上高や親会社株主に帰属する当期純損益の推移やROE、ROAといった経営指標を目的とすることはせずに、現預金残高の推移、研究開発活動の効率化、パイプライン数の拡大・充実について、財務状況を勘案しながら、早期のライセンスアウト及び黒字化の実現に向けて、事業を進めてまいります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。この見積りに関しては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づいて合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。
(2) 当連結会計年度末の財政状態の分析
① 資産の状況
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末より1,827,602千円増加し7,235,902千円となりました。
研究開発等に関連する支出の一方で資金調達の実施にかかる新株式の発行に伴う入金3,277,335千円により現金及び預金が1,578,189千円増加したこと、GRN-1201にかかる安定性試験や治験薬開発等の支出の増加により前払金が57,672千円増加したこと、また、主に川崎創薬研究所における研究の本格稼働及び研究の進捗に伴う研究環境の整備に伴う研究機器の購入により工具器具備品が130,839千円増加したことが主な理由であります。
当連結会計年度末における資産の内訳としましては、現金及び預金が6,528,759千円であり、資産の合計に占める割合は90.2%となっております。研究開発を推進していくにあたり、当面の資金は確保している状況にあります。
今後の現金及び預金の残高推移については、株式市場等からの資金調達やライセンス・アウトによる契約一時金収入・マイルストン収入の獲得が実施されるまでの期間において、主に研究開発費用及び研究機器等の購入に伴う支出により減少する傾向にあります。現金及び預金の残高推移を注視しつつ、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進してまいります。
② 負債の状況
当連結会計年度末における負債の合計は、前連結会計年度末より78,180千円増加し285,332千円となりました。
主に創薬研究にかかる研究開発費等の増加により未払金が74,549千円増加、資金調達により資本金が増加したことに伴う税金の増加により未払法人税等が10,352千円増加しました。一方で、ITK-1の第Ⅲ相臨床試験の業務が最終段階に進捗したことにより治験施設への支出等が減少したことにより、買掛金は13,785千円減少しました。
当連結会計年度末における総資産に占める負債の割合は、3.94%であります。
ITK-1の第Ⅲ相臨床試験の業務終了に伴い、ITK-1の今後の方向性は富士フイルム株式会社が検討してまいりますので、今後買掛金はその結果により増減いたします。一方で創薬研究等における研究開発費用の増加に伴い、未払金は増加する傾向にあります。
当連結会計年度末における現金及び預金の残高に対する負債の割合は非常に小さいと考えており、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。
③ 純資産の状況
当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末より1,749,421千円増加し6,950,570千円となりました。
資金調達において新株式を発行したことにより資本金及び資本剰余金がそれぞれ1,645,517千円増加したこと及び親会社株主に帰属する当期純損失1,577,142千円を計上したことが主な要因であります。
自己資本比率は前連結会計年度末の95.8%から95.3%となりました。
引き続き、自己資本比率については高水準を維持してまいります。
(3) 当連結会計年度の経営成績の分析
① 売上高の状況
当連結会計年度の売上高につきましては、前連結会計年度と比べ175,202千円減少(33.1%減)し、354,410千円となりました。
当連結会計年度の売上高の89.9%(318,522千円)が富士フイルム株式会社からの開発協力金でありますが、ITK-1の第Ⅲ相臨床試験の業務が最終段階に進捗したことにより治験受託業務量が減少したため、前連結会計年度と比べ、196,848千円の減収となりました。
平成31年3月期において、ITK-1の第Ⅲ相臨床試験にかかる業務の終了に伴うマイルストン収入100,000千円を富士フイルム株式会社から得ております。このマイルストン収入100,000千円及び既に締結している契約に基づく取引を見込み、平成31年3月期の売上高を150,000千円と想定しております。
② 営業損益の状況
当連結会計年度における営業損失は、前連結会計年度と比べ448,182千円損失が増加し1,561,732千円となりました。
当連結会計年度の研究開発費は、がん免疫治療薬分野の研究開発領域を拡大していくという方針のもと、川崎創薬研究所における創薬研究(ネオアンチゲンや抗体医薬)の本格稼働により研究が進捗したこと、細胞医薬の研究が進捗したこと、複数の大学・研究機関との共同研究契約を推進したことなどにより、前連結会計年度と比べ437,036千円増加し、1,253,819千円となりました。
当社グループの販管費に占める研究開発費の割合は約78%であり、事業運営費用が約22%となっております。このため、研究開発費の計上額の推移が営業損益の金額に直接影響を与える構造となっております。
平成31年3月期において、研究開発費は当連結会計年度よりも増額となる1,900,000千円、そして営業損益も研究開発費の増額により2,200,000千円の損失と当連結会計年度よりも損失増加を想定しております。
各パイプライン(GRN-1201、ネオアンチゲン、細胞医薬等)において、GRN-1201は第Ⅱ相臨床試験がさらに進捗していき、ネオアンチゲン及び細胞医薬については、共同研究先との研究が本格化していきます。各パイプラインの研究開発がそれぞれ進捗していくこと、また、がん免疫治療薬分野における「複合化」と「完全個別化」といった現在のトレンドのみならず、外部環境の状況を常に把握・アップデートしつつ新たなシーズ及びパイプライン候補にかかる研究も推進していくことから、当連結会計年度よりも研究開発費が増加することを想定しております。
③ 親会社株主に帰属する当期純損益の状況
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度と比べ463,481千円損失が増加し1,577,142千円となりました。
当連結会計年度の研究開発費が前連結会計年度と比べ437,036千円増加したこと、補助金収入が前連結会計年度と比べ12,628千円減少したことが主な要因であります。
平成31年3月期において、がん治療における期待の大きいがん免疫治療薬分野の研究開発を積極的に推進していく方針のもと、親会社株主に帰属する当期純損失は、主に研究開発の積極的な推進による販管費の増加により、当連結会計年度よりも損失増加となる2,200,000千円を想定しております。
(4) 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析
① 営業活動によるキャッシュ・フローの状況
がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針のもと、主に川崎創薬研究所における創薬研究(ネオアンチゲン及び抗体医薬)及び細胞医薬の研究の推進により、税金等調整前当期純損失が前連結会計年度と比べ456,364千円を損失が増加したため、営業活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度と比べ523,823千円支出が増加し、1,591,336千円の支出となりました。
今後においても、がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針を継続していきますので、当連結会計年度よりも支出額は増加する可能性があります。
② 投資活動によるキャッシュ・フローの状況
主に川崎創薬研究所における創薬研究及び細胞医薬研究の本格稼働に伴い研究機器の購入による研究環境の整備を図ったことにより有形固定資産の取得による支出が、前連結会計年度に対して微増の108,218千円となりました。その結果、投資活動によるキャッシュ・フローは前連結会計年度と比べ14,992千円支出増加の111,556千円の支出となりました。
今後においても、がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進するという方針を継続し、研究開発環境の向上を図ってまいりますので、当連結会計年度よりも支出額は増加する可能性があります。
③ 財務活動によるキャッシュ・フローの状況
がん免疫治療薬分野における新規パイプラインの創製・導入を積極的に推進していくにあたり、新規パイプラインの創製を資金使途とした資金調達が必要となるため、前連結会計年度に引き続き、当連結会計年度において新株予約権を活用した第12回新株予約権の発行による資金調達を実施しました。新株発行費用等を控除した手取り金額は3,281,082千円となりました。
第13回新株予約権につきましては、行使条件を満たしておりませんので、行使がなされる予定はありません。
前連結会計年度及び当連結会計年度における資金調達の実施により、当連結会計年度末における現金及び預金の残高は6,528,759千円となり、当面の研究開発及び事業運営にかかる経費を確保しております。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、当社が推進する研究開発を遅延又は中止させる事象でありますが、詳細については「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。
(6) 資金の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要は、研究開発にかかる人件費、試薬等材料費、消耗品費、外部委託費及び研究機器の購入等、及び事業運営・上場維持にかかる人件費、外部委託費及び特許関連費用等であります。これらの費用及び研究機器の購入等については、自己資金により支出していく予定であります。自己資金については、すべて銀行預金としておりますので、すべての支出について迅速かつ確実に対応できるよう資金の流動性を確保しております。
平成31年3月期のキャッシュ・フローについては、平成31年3月期の親会社株主に帰属する当期純損失が研究開発費の増加を主要因として当連結会計年度よりも損失が増加すること、また創薬研究及び細胞医薬研究における研究機器の購入も当連結会計年度よりも増加する見込みであることから、営業活動によるキャッシュ・フロー及び投資活動によるキャッシュ・フローは当連結会計年度よりも支出が上回る見込みであります。