有価証券報告書-第9期(令和2年7月1日-令和3年6月30日)

【提出】
2021/09/29 15:00
【資料】
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【項目】
129項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げ、スマートフォンやWEBにおいて個人間で簡単に不要品を売買できるCtoCマーケットプレイス「メルカリ」等のサービスを提供しております。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、日本及び米国で事業展開をしており、各地域によって成長ステージが異なっております。そのため、流通総額及び売上高の成長を通じて企業価値の向上を図って参ります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、以下の強みを背景に中長期的な経営戦略を立案しております。
当社グループの強み
① 中古品市場の拡大をけん引するCtoCマーケットプレイスのパイオニア
当社グループは、使いやすく楽しく、かつ安心・安全なCtoCマーケットプレイスの提供を通じて、フリマアプリ市場を作り上げ、オフライン店舗やインターネットオークションに限定されない日本の中古品市場全体の拡大をけん引して参りました。2020年に行った当社調査によると、フリマアプリ及びオークションサイトの利用経験者のうち当社サービスの利用者数が最も多く、他社のサービスを上回る支持を獲得しております。当社グループは、CtoCマーケットプレイスのパイオニアとしての圧倒的なポジショニングを活用することで、上記の中古品市場の高い市場成長を享受できる立場にあると自負しております。
更に、米国をはじめとする海外においても、個人による中古品売買のニーズは高く、「メルカリ」を通じて中古品市場の成長に貢献して参ります。
② エンゲージメントの高いユーザ基盤及びこれを通じて得られる高付加価値のデータ
出品者・購入者双方にとって簡単で使いやすく、楽しく夢中になれるユーザ体験を提供することで、「メルカリ」は高いユーザエンゲージメントを実現しております。「メルカリ」のMAU(注)は2021年6月期第4四半期において19.5百万人であり、2020年に実施した当社調査によると、フリマアプリ及びオークションサイト4社のうち、売れやすさ、使いやすさの利用満足度において、当社サービスの満足度が最も高くなっております。当社は、上記のような高いエンゲージメントを誇るユーザ基盤を通じて、ユーザの取引情報やユーザ間における取引評価情報等、利用価値の高いデータを大量に収集することができます。これらのデータと当社が注力して取り組むAI技術の活用により、購入者の嗜好にあわせた商品提案等による購入転換率の向上や、売れやすい出品価格提案等による出品転換率の向上、カスタマーサポートの効率化等に取り組んで参ります。そのような取り組みによって、既存のサービスにおけるユーザ体験の向上に加え、今後の成長に資する新規サービスの開発につなげることができると考えております。
(注)MAUは「Monthly Active User」の略。1ヶ月に1回以上アプリ又はWEBサイトをブラウジングしたユーザの四半期平均の人数。
③ CtoC特有のネットワーク効果による高いロイヤルティの獲得
CtoCマーケットプレイスである「メルカリ」は、ネットワーク効果が強く働くサービスです。すなわち、出品者・出品数が増えれば、購入したい商品が増えるため購入者・購入数が増加し、これにより商品の流動性が高まり、更に出品者・出品数が増加していきます。更に「メルカリ」では、多くの出品者・購入者が高い頻度でサービスを利用しており、ネットワーク効果による自走的成長が促進されています。また、商品を販売して得た売上金をもとに別の商品の購入が可能なため、「メルカリ」で商品を販売した出品者が次の購入者となることが促進されています。その結果、ユーザの大部分は、出品者と購入者の双方として「メルカリ」を利用しています。
このようなネットワーク効果による出品者や購入者からの高いロイヤルティ獲得につながり、リピートユーザによる継続的な取引への参加が流通総額の成長に大きく貢献しています。更に、ユーザの過去の取引評価の蓄積により、他のユーザが安心して取引を行うことができるとともに、ユーザ獲得競争において他の競合サービスへの流出を抑制する効果を有しています。
④ 高い収益性を実現するビジネスモデル
当社グループは、メルカリJPにおいて既に高い収益性を実現しています。この背景は、一定の事業規模に達するとその後の更なる事業規模拡大に際してコストを適切に管理できるというビジネスモデルにあります。具体的には、当社のコスト構造の相当の割合は広告宣伝費により構成されていますが、一般的にモバイルアプリの初期成長段階では売上高に占める広告宣伝費の割合は高くなるものの、ユーザ基盤が拡大し安定するにつれて広告宣伝費の比率を抑えることが可能になります。その結果高い収益性を実現することが可能となります。
⑤ イノベーションを推進する経営陣及び企業文化
創業者で代表取締役CEO(社長)である山田進太郎が率いる当社グループの経営陣は、革新的なスタートアップ企業の創設者や経営幹部としての経験、豊富なエンジニアリング経験等を有する多くの起業家により構成されています。ソーシャルメディアやモバイルサービスにおいて、ユーザのエンゲージメントを高め、収益化し、規模を拡大させる豊富な経験を当社グループの経営に活かしています。
当社グループの成功は、当社グループのエンジニアやその他のプロフェッショナル人材の質の高さにも起因しています。これは、採用と継続雇用に対する投資や、「Go Bold」、「All for One」、「Be a Pro」の3つの行動指針(バリュー)を尊重する企業文化を反映しています。日本及び米国それぞれの現地チームにおいて、経営陣及びその他の主要なプロフェッショナル人材の採用・育成強化に積極的に取り組んで参ります。
当社の具体的な経営戦略
2021年6月期は、メルカリJP/メルペイ/メルカリUSの3本柱に加え、当社グループのさらなる成長・ミッションの達成を目指し、新規事業に取り組む子会社である株式会社ソウゾウ、株式会社メルコインを設立いたしました。今後も、既存事業においては事業環境を踏まえ機動的に内容の見直しを行いながらもグロースを優先した投資を行い、新規事業においてはグループシナジーを最大化する事業を創出することで、グループとして持続的な成長及び将来利益の最大化を進めて参ります。
① メルカリJP:新規ユーザの獲得によるMAUの増加と、既存ユーザへのパーソナライゼーションやカテゴリー強化によるARPU(注)の向上
メルカリでは、コアユーザの若年層だけでなく、中高年層も含めた幅広い層からも利用して頂くことで新規ユーザ獲得によるMAU増加を目指して参りました。加えて、これからはAIを活用したパーソナライゼーションやカテゴリ強化を通じて、既存ユーザがより利用して頂けるサービスの改善も行って参ります。
2021年4月に株式会社電通マクロミルインサイトが実施した調査に基づく分析によれば、2021年6月期第4四半期MAU19.5百万人に対し、「メルカリ」の認知と出品意向はあるが未出品のユーザはおよそ36百万人いると試算されています。このような潜在出品者に向けた施策を通じて、「メルカリ」の更なる成長に注力して参ります。
・リアルタッチポイントの強化
「メルカリ」の利用経験の無いあるいは少ないユーザに対する「メルカリ」の使い方等に関する講習会や、梱包・発送場所の増加等のオフラインUXの進化等、様々なオフライン施策を活発化することで、潜在出品顧客の取り込みに取り組んで参ります。
・既存ユーザに対してAIを活用したパーソナライゼーションやカテゴリー強化によるARPUの向上
過去の閲覧履歴をもとに購入者ごとにカスタマイズされたおすすめ商品の提案や、思ってもみなかった商品を提案することで「メルカリ」をもっと使いたくなるサービスにしていきます。カテゴリー強化施策としては、特定カテゴリーとの戦略的連携やWEB強化によるカテゴリーごとの購入体験の最大化によってカテゴリーを強化して参ります。
・一次流通、二次流通の連携による新しい売買体験
一次流通企業が保有する商品データ等と、当社が保有する二次流通データを連携することで、商品の検索、比較、出品時の情報入力等がより簡易化するほか、一次流通への購入導線の設置等、よりスムーズでシームレスな売買体験の提供を行って参ります。
(注)ARPUは「Average Revenue Per User」の略。ユーザ一人当たりの平均購入金額。
② メルペイ:収益基盤の確立と循環型金融の促進
メルペイでは、「決済」「与信」「ふえるお財布」の3つの分野において事業を展開しており、それぞれにおいて、利便性やユーザ体験の向上を目指したサービスの提供・改善に努めております。2021年6月期以降、独自のロジックにて与信付与を行う「与信」分野を中心に、収益力の強化に取り組んでおり、その結果、2021年5月には一時的ではありますが、単月営業利益(黒字)を実現いたしました。また、eKYC等による本人確認を積極的に推進しており、本人確認済みユーザ比率は8割を超え、ユーザにとってより安心・安全な利用環境の実現とともに、今後の事業拡大を円滑に推進すべく準備を進めております。今後も、収益基盤をより強固なものにすると同時に利便性の高い新たなサービスや機能の追加に取り組み、グループシナジーを活かした総合的な金融サービスの提供を行って参ります。
・「決済」における利便性強化、利用促進
「決済」分野においては、既存の決済手法である「iD」「コード」「バーチャルカード」の利用促進に向け、認知度の拡大やユーザの日常生活導線に沿った加盟店開拓を推進し、さらなる利用機会の創出を目指します。また、新サービスや機能の開発により、利便性の強化にも取り組んで参ります。
・「与信」を中心とした収益基盤の確立
2020年7月より提供を開始した「メルペイスマート払い(定額払い)」や2021年8月に開始した「メルペイスマートマネー」等、「メルカリ」の利用履歴に基づく独自の与信を活用したサービスを中心に収益基盤の確立を推進します。またこれらのサービス利用や安心・安全な利用環境の構築に不可欠な本人確認を引き続き促進するとともに、ライセンスを取得予定であるAI与信を活用したユーザ体験の向上にも取り組んでいく予定です。
・「ふえるお財布」におけるユーザ体験の向上
メルペイ残高を利用した資産運用ができる「ふえるお財布」では貸付投資サービス「funds」を活用した取り組みの第3弾を予定するとともに、2021年4月に設立した株式会社メルコインと連携し、ビットコインを活用した資産運用サービスの提供を検討しております。これに伴い、株式会社メルコインでは「暗号資産交換業者」のライセンス取得を目指します(注)。メルペイでは、これらのサービスを一つのウォレットで提供することで、すべての人が必要な時に必要な金融サービスを利用できる環境の構築に努めて参ります。
(注)ライセンスの取得時期は未定
③ メルカリUS:パーソナライゼーションの推進等、2023年6月期以降の更なる成長に向けた準備に注力
メルカリUSは、簡単で安全に商品を取引できるマーケットプレイスを目指し、規律を持ちつつも積極的なマーケティング投資によるブランド認知度向上とユーザ獲得、プロダクト機能や配送方法の改善に取り組んで参りました。その結果、流通総額は高い成長を実現しています。また、2021年6月期第2四半期より新たに徴収を開始した決済手数料等により収益基盤が改善し、第4四半期には初めての四半期営業利益(黒字)を達成いたしました。2022年6月期も安定成長を堅持しつつ、2023年6月期以降の成長再加速に向けた利便性の向上に関わる新機能の開発や優秀な人材の確保等への投資を行って参ります。
・オートメーション & パーソナライゼーション
AIやデータを活用した検索エンジン改善によるオートメーション強化と、個人の好みや行動履歴に基づいてユーザの出品を促すパーソナライゼーションへの進化を目指します。
・配送イノベーション
地域の人々とつながることで、あらゆるモノの購入や出品を安全で簡単に行えるローカル配送には大きな可能性があると考えております。即日配送サービスMercari Local (旧:Mercari Now)を拡大することでローカル配送を強化し、新規出品者の開拓を行って参ります。
・使いやすさの向上
アプリ/WEBのデザインシステム統一等引き続き機能改善に注力する他、分割払い等ユーザの支払の利便性を向上させるような施策を行って参ります。
(4)会社の課題
① サービスの安全性及び健全性の確保
Eコマースサービスやソーシャルメディア等の普及に伴い、インターネット上のサービスの安全性維持に対する社会的要請は一層高まりを見せております。当社グループは、安全・安心な取引の場を提供するため、サービスの安全性・健全性確保を最重要課題として、個人情報保護や知的財産権侵害品対策等に継続的に取り組んで参ります。
② 人材の育成
サービスのグローバル展開を含めた今後の成長を推進するにあたり、人材の育成は重要な課題と認識しております。従業員が高いモチベーションをもって働けるよう、育成の仕組みや人事制度の整備、ダイバーシティ&インクルージョンの推進等を積極的に進めて参ります。
③ 技術力の強化
当社グループはインターネット上でサービスを提供しており、サービス提供に係るシステムを安定的に稼働させることが事業運営上重要であると認識しております。出品数の増加に伴うアクセス数の増加を考慮したサーバー設備の強化、並列処理システムの導入等による負荷分散等、継続的にシステムの安定性確保に取り組んで参ります。
また、先端技術への投資に注力し、更なるユーザ体験の向上に取り組んで参ります。例えば、過去の取引履歴や評価情報等の膨大なデータを元にしたAIや機械学習技術の活用により、サービスの利便性向上や、安全性及び健全性の維持・強化を推進して参ります。更に、自動翻訳による異なる言語間での取引の推進や、ブロックチェーン、VR/AR、量子コンピュータ、IoT(モノのインターネット)等の先端技術への投資を行う等、技術力の強化に向けて取り組んで参ります。
④ 海外展開への対応
当社グループは、ミッションに掲げる「新たな価値を生みだす世界的なマーケットプレイスを創る」の実現に向け、2014年に米国へ進出し、2019年には日本における「メルカリ」に出品された商品を海外から購入できる越境販売を開始するなど、海外展開にも着手して参りました。米国で提供する「Mercari」の着実な成長や越境販売における海外ユーザの購買ニーズを通じ、まだ進出していないエリアにも潜在的な事業機会が広がっていると考えております。メルカリUSの更なる拡大に加え、規律のある投資を意識しつつも積極的に新たな海外展開を図っていく方針であります。
⑤ コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、経営の監視機能及び内部統制機能の充実、コンプライアンス経営の徹底を通じて、企業価値の向上に努めることをコーポレート・ガバナンスの基本方針として定め、ステークホルダーのみなさまの信頼に応えるべく、今後もこの基本方針のもと、経営の効率性、透明性を高め、企業価値の最大化と持続的な成長、発展に努めていく方針であります。
⑥ 内部管理体制の拡充並びにコンプライアンスの徹底
当社グループは今後もより一層の事業拡大を目指しており、社会的責任を果たし、持続的な成長と企業価値向上を図るために、当社グループの成長に見合った人材の確保、育成及びコンプライアンスの徹底を重要な課題と考えております。内部監査、法務、財務、経理、情報セキュリティ等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、社員に対する継続的な啓蒙活動及び研修活動を行うことで、更なる内部管理体制の強化を図ると共に、コンプライアンスの徹底に努めて参ります。

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