有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/16 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
134項目

事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、以下の記載事項については、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において不確実性を内在しているため、実際の結果とは異なる可能性があります。
(1)事業環境に関するリスクについて
①新型コロナウイルス感染症による業績等への影響について
本書提出日現在において、世界的に新型コロナウイルス感染症の拡大が続いており、グローバル社会における経済への影響は計り知れないものがあります。当社では、行政機関からの指示・要請や、感染拡大防止、従業員の安全確保を最優先とし、クライアントのご理解を得ながら、在宅勤務の導入、提携コールセンター企業及びSATSUMA BPOセンターと連携することで、コンタクトセンターの継続運営を実現するとともに、感染防止・予防に取り組んでおります。当2021年3月期においては、入国制限や緊急事態宣言を受けて国内においても人の移動が制限されたことから、マルチリンガルCRM事業においては、訪日外国人旅行者(インバウンド)対応の多言語案件や航空便利用客向けの問い合わせ窓口案件の入電数が激減したほか、セールスアウトソーシング事業においては、東京電力グループの訪問営業案件が2020年4~6月の期間が活動休止となるなどの影響を受けました。ただし、当社の事業活動や業績に対する影響は、顧客との契約により短期的には限定的なものとなりました。一方で、在宅率増加によりカスタマーセンター案件の入電数増加や地方自治体及び民間企業における新型コロナウイルス相談窓口業務を受託するなど新たな需要も発生しております。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大が長期化した場合、あるいは当社事業所内において新型コロナウイルス感染症の大規模クラスター発生によって業務を停止する事態に至った場合などには、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②インバウンド需要について
当社はマルチリンガルCRM事業において本書提出日現在、日本語を含め12カ国語に対応する体制を整えております。新型コロナウイルス感染症の影響により、足元では訪日外国人旅行者(インバウンド)数は激減しておりますが、中長期的にはインバウンドの回復に伴って様々な分野でのインバウンド需要の拡大が見込まれます。当社では単なる外国人向けCRM業務の受託にとどまらず、クライアントに対してインバウンド需要を取り込むための新たなCRMの企画提案に注力するとともに、対応言語の拡大や業務対応キャパシティの向上を行っております。しかしながら、法律または規制の変更、社会・政治及び経済情勢の変化等により訪日外国人旅行者(インバウンド)数やインバウンド需要が伸びない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③クライアントの業況について
当社は新規クライアントの開拓、サービスを提供するクライアントの業種を拡大し、特定の業界・クライアントの景況に左右されないよう事業展開を図っております。しかしながら、当社はBtoBtoCの事業形態であることから、クライアントの業況や外注方針等によって業務受託量や受託価格が左右される結果、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④特定取引先への依存状況について
当社は主にセールスアウトソーシング事業において、経営資源配分の関係などから特定の販売先数社に取引が集中する傾向にあり、さらにその相手先についても、市場のニーズや時代の流行に合わせて適宜、取り扱う商材・サービスを入れ替える必要があることから、年度によって大きく変遷しております。2019年3月期からは東京電力グループ(東京電力エナジーパートナー株式会社、株式会社PinT(2020年3月期より取引開始))との間でセールスアウトソーシング事業を中心に業務を受託しており、同社グループに対する売上高が2019年3月期422,700千円(当社売上高比14.3%)、2020年3月期1,553,559千円(当社売上高比52.1%)、2021年3月期第2四半期累計期間415,675千円(当社売上高比45.5%)であります。当社では、来期以降も同社グループとの取引関係を重視かつ、経営資源の拡充により新たな商材・サービスの取り扱いを推進してゆく方針でありますが、同社グループとの取引や取扱商材・サービスの入れ替えが計画通りに進まなかった場合や、他の受託会社における不祥事等の発生により、行政処分またはクライアントの自主的判断によって営業活動が停止となった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(注)本書提出日現在、当社は東京電力グループである東京電力フロンティアパートナーズ合同会社より、出資比率3.8%の出資を受けております。
相手先第4期事業年度
(自 2018年4月1日
至 2019年3月31日)
第5期事業年度
(自 2019年4月1日
至 2020年3月31日)
第6期第2四半期累計期間
(自 2020年4月1日
至 2020年9月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
東京電力エナジーパートナー株式会社422,70014.31,492,36150.0409,67144.9
800TELESERVICES (Hong Kong) LIMITED--305,47710.293,08410.2
株式会社ITサポート1,088,80036.9----
株式会社ライフイン24302,59410.2----

(注)1.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
2.第4期事業年度の800TELESERVICES (Hong Kong) LIMITEDに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
3.第5期事業年度及び第6期第2四半期累計期間の株式会社ITサポートに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
4.第5期事業年度及び第6期第2四半期累計期間の株式会社ライフイン24に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
⑤競合会社について
当社は、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)として主にマルチリンガルCRMサービス、営業アウトソーシングサービスを提供しております。マルチリンガルCRMサービスにおいては大手の寡占化が進んでおり、各社において付加価値を高めてサービスの質の向上を目指すと共に、派生する事業への参入を進めるなど競合が進んでおります。また、BPOは市場規模が約4兆円(出典:株式会社矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望 2018-2019」(2018年9月))と大きな市場ではありますが、参入障壁が低い点から大手からベンチャーまで多数の企業が参入しており、群雄割拠の状態が続いております。
当社の特徴として営業機能を備えた24時間365日、多言語に対応するマルチリンガルCRMサービスの提供など得意分野に特化した差別化戦略を採用しておりますが、今後同領域に新規参入が続き、当社が明確な競争優位を維持できなかった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容に関するリスクについて
①クライアントとの契約について
クライアントとの契約期間は1ヵ月から年単位まで様々ありますが、主要取引先との契約において他企業への切り替えや内製化に伴う途中解約等によって契約更新が行われなかった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②代替システムの発達による優位性や競争力の低下について
当社は、熟練した専門オペレーションスタッフを育成することによってエンドユーザー目線の顧客満足度が高いマルチリンガルCRMサービスや成果の大きい営業アウトソーシングサービスをクライアントに提供しており、それが当社の優位性や競争力になっているものと認識しております。しかしながら、将来的に通信技術やAI、音声認識等の技術革新に伴って熟練した専門オペレーションスタッフに代替し得る完成度の高い自動音声応答システムが出現した場合には、当社の優位性や競争力が損なわれ、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③システムトラブルについて
当社は通信インフラの利用について、電話回線の他にインターネット回線を利用したIP通話や、クラウド型のCTI(Computer Telephony Integration)システム(注)を利用しております。これら通信インフラの堅牢性向上のためサーバーの負荷分散、稼働状況の常時監視、バックアッププランの確立等の手段を講じることで、システムトラブルの防止及び回避に努めております。しかしながら、何らかのトラブルによるインターネット回線の遮断やCTIシステムのトラブルなどにより通信インフラが損なわれ、障害が生じた場合には、責任の所在にかかわらず損害賠償請求による損失の発生や信用の失墜により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(注)CTI(Computer Telephony Integration)システムとは、電話がかかってきた際に、電話の着信音と同時にその顧客情報をコンピュータ画面に表示させるものであります。
④事業のグローバル展開について
当社ではマルチリンガルCRM事業において海外企業との提携による対応言語の拡大や業務対応キャパシティの向上、さらには多国籍企業や日本で事業展開を行う外資系企業など海外クライアントの開拓など事業のグローバル展開を推進しております。しかし、現在のところは取り組みから間もない段階にあり、事業のグローバル展開が今後進捗し、当社が期待するような成果を実現できる保証はありません。
(3)組織体制に関するリスクについて
①人材の確保及び雇用形態について
当社の事業は人材の質・量に大きく左右されるビジネスモデルであることから、事業の中核となる専門知識やスキルを持った優秀な人材に加え、コンタクトセンターにおけるオペレーションスタッフ及びスーパーバイザーの確保と育成が大きな課題であります。当社では通年採用による求人及び、人事制度の改定、各種研修の実施等により、人材の確保及び定着率上昇を常に意識しております。しかしながら、経済環境や雇用情勢の変化等により計画どおりの人員を確保することができなかった場合には、増加する業務量に対応できずサービス品質の低下を招くなどクライアントの信用を喪失し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、コンタクトセンターにおけるオペレーションスタッフについては、契約社員、受入派遣社員、パートタイムなど多様な雇用形態が存在しております。近年、これら非正規雇用に関する労働法令が頻繁に改正されており、人材を安定的に確保していくうえで雇用形態や処遇を見直す必要が生じた場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②小規模組織体制について
当社は現状の事業規模に応じた比較的小規模な経営管理組織及び業務執行体制で運営を行っております。今後は事業拡大に合わせて、専門知識やスキルを持った優秀な人材の確保・育成に努めながら経営管理組織及び業務執行体制の充実を図っていく方針でありますが、計画どおりに優秀な人材の確保・育成が進まない場合、あるいは役職員が予期せず退社した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③内部管理体制の強化について
当社では、企業価値の継続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが必要不可欠であると認識し、今後とも業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のために内部管理体制の適切な運用、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守を徹底してまいります。しかしながら、事業の急速な拡大により、内部管理体制の構築が追いつかず、コーポレート・ガバナンスが有効に機能しなかった場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)法的規制に関するリスクについて
①情報管理に関するリスク
当社では、クライアントが取得・管理する個人情報及び機密情報を取り扱っております。当社では個人情報の取扱いと管理には細心の注意を払い、情報管理の重要性を鑑み、2016年10月にプライバシーマークを取得して以降、日本工業規格(JISQ15001:2006)に合致した個人情報保護規程を策定し、個人情報の機密性を高める施策を講じております。しかしながら、当社が取り扱う個人情報及び機密情報について何らかの理由により情報漏洩や改ざん、不正使用等の事態が生じた場合には、損害賠償請求による損失の発生や信用の失墜により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②法的規制について
セールスアウトソーシング事業では、エンドユーザーに対する営業活動を代行または代理する場合があり、電気通信事業法、特定商取引法、電気事業法など法的規制を遵守する義務があります。そのため、業務委託先を含めてコンプライアンス研修の徹底に努めているほか、クライアントによる定期的な監査も受けておりますが、何らかの不適切な営業活動等によってエンドユーザーからクレームを受けるなどしてクライアントの評判や信用を毀損した場合には、損害賠償請求による損失の発生や信用の失墜により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)その他のリスクについて
①自然災害等による影響について
地震、台風、津波等の自然災害、火災、停電、各種感染症等が発生した場合、当社の事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に、当社の本社及び代理店・提携企業の主要な事業拠点である首都圏、コンタクトセンターがある鹿児島県南さつま市において大規模な自然災害等が発生した場合には、正常な事業運営が行えなくなる可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、自然災害等が発生した場合に備え、危機管理体制を整備しておりますが、自然災害等による人的、物的損害が甚大である場合は、事業の継続そのものが不可能になる可能性があります。
②レピュテーションリスクについて
SNS等の急速な広がりは、個人同士または個人と企業との多岐にわたる相互コミュニケーションを可能とする一方、SNS等を通じた情報はその真偽に関わらず急速に拡散される可能性があり、コントロールが難しい側面を持ちます。
当社の事業における風評や批判的評価、誤った情報等がSNS等を通じて拡散した場合、当社の社会的信用が毀損し、レピュテーションの低下が、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(注)レピュテーションリスクとは、企業に対する批判的な評価や評判が広まることで、ブランド価値や企業の信用が低下し、損失を被るリスクのことをいいます。
③ストック・オプションの行使による株式価値の希薄化について
当社は、取締役及び従業員に対して当社の業績向上に対する意欲や士気を高め、より一層の企業価値向上を図ることを目的として、新株予約権方式によるストック・オプション制度を採用しております。新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在におけるこれらの新株予約権による潜在株式数は71,700株であり、発行済株式総数の9.76%に相当しております。また、当社は今後においても優秀な人材確保のためにストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、将来付与される新株予約権について権利行使が行われた場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
④株式会社a2media及び株式会社リンクアンドモチベーションがその他関係会社から外れることについて
当社は2015年4月に株式会社a2mediaから新設分割にて設立されました。企業コミュニケーションツールの企画・制作を行う同社にとって当社との事業シナジーが限定的であることから、双方合意の下、同社の所有株式は当社の取引先、役員及びベンチャーキャピタル等に段階的に譲渡され、本書提出日現在では154,200株(出資比率23.25%)となっております。また、同社は2017年10月に株式会社リンクアンドモチベーションの完全子会社となっております。当社の上場に際して同社からの株式売出しの予定はありませんが、新株式発行が行われる結果、同社の出資比率は18.15%に低下する見込みであります。同社及び株式会社リンクアンドモチベーションは「その他の関係会社」から外れることとなりますが、当社の経営判断については、現時点においても同社及び株式会社リンクアンドモチベーションの承認が必要な事項はなく、当社が独自に検討の上決定しているため、当社の経営や事業運営等に与える影響は特にありません。しかしながら、同社の今後の当社株式の保有・処分方針によっては、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ベンチャーキャピタル等による株式保有について
本書提出日現在における当社の発行済株式総数は663,000株であり、そのうちアイビスAM投資事業組合、グリーンフィールドキャピタル株式会社及び株式会社AMG(以下、「ベンチャーキャピタル等」という。)の所有株式数は69,000株であり、発行済株式総数の10.4%に相当しております。
当社株式の上場時においてベンチャーキャピタル等は株式売出しを実施する予定はありませんが、相当数の当社株式を保有する株主であることから、その保有・処分方針によっては、当社株式の流動性及び株価形成等に影響を及ぼす可能性があります。
⑥配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、財政状態及び経営成績を勘案して、株主への利益配当を実現することを基本方針としております。しかしながら、当社は事業拡大の途上にあり、経営計画達成のための事業展開と財政基盤強化のために必要な内部留保を優先するため、これまでのところ配当は実施しておりません。現時点においても、当社は事業拡大の途上にあると認識し内部留保の充実に努めておりますが、将来的には、財政状態及び経営成績を勘案しながら株主への利益還元を実行する方針であります。なお、現時点において、配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。
⑦資金の使途について
当社が今回計画する公募増資による調達資金の使途については、社内基幹システムの改修及び老朽化したPC等機器の入れ替え、本社改修及び本社移転費用並びに保証金、AI(人工知能)通訳を中心としたマルチリンガルCRMシステムの機能拡充などの開発、人材の採用費及び人件費、広告宣伝費、借入金返済等に充当する予定であります。しかしながら、外部環境等の影響により、目論見通りに事業計画が進展せず、調達資金が上記の予定通りに使用されない可能性があります。また、予定通りに使用された場合でも、外部環境の急激な変化等により、期待通りの投資成果を得られない可能性があります。