有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2018/11/13 15:00
【資料】
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【項目】
56項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日において当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、以下のとおり、タグラインを定め、経営理念を掲げています。常に挑戦者・革新者としての靭やかさを持ち続け、新時代の主役インフラである情報通信の担い手として社会の進化に貢献すべく、より一層の成長を目指します。
(タグライン)
靱やか情報通信プラットフォーマー
(経営理念)
アルテリア・ネットワークスは、
・創業以来のフロンティア精神を研ぎ澄まし、変化し続ける顧客ビジネスの課題解決に取り組む
・独自のネットワークアセットと顧客志向性で差別化し、野心的で柔軟に発想、迅速で緻密に行動する
・情報通信プラットフォームの創造を通じ顧客の成長と世の中の進歩に貢献し、社員ひとりひとりの夢を実現する
(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社グループは、収益性の指標として調整後営業利益及び調整後EBITDAマージンを、財務体質の健全化の指標としてデット・エクイティ・レシオ及びネット・レバレッジ・レシオを、それぞれ重要な経営指標としております。
なお、調整後営業利益、調整後EBITDAマージン、デット・エクイティ・レシオ及びネット・レバレッジ・レシオの内容については、後記「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (参考情報)」をご参照ください。
(3) 経営戦略
企業活動のあらゆる場面において情報通信が必要とされ、その重要性は既に必須インフラとして位置付けられる時代であることに加え、近年では、ビッグデータ・IoT(Internet of Things)の普及、動画視聴等の拡大を背景に、国内データトラヒックは増加の一途を辿っています。当社グループは、全国の主要都市部に自社回線網を保有し、高成長が見込まれるFTTHサービス、イーサネット専用サービス、VPN接続サービス、全戸一括型マンションインターネット接続サービス等をはじめとするB2B/B2B2C事業にフォーカスしたユニークな市場ポジショニングを活かし、高品質かつコストパフォーマンスの高いサービスを迅速かつ柔軟に提供することで、市場成長率を超える事業拡大を達成してきております。
当社グループは、その強みを背景に以下の経営戦略を定めており、今後もお客様の更なる成長を支えてまいります。
(当社グループの強み)
① 優れた財務パフォーマンス
2018年3月期において、売上高成長率15.0%(前期比)(前連結会計年度の当社グループの売上高と株式会社つなぐネットコミュニケーションズの売上高を合算した場合、売上高成長率3.2%(前期比)(注1)となります。)、調整後フリー・キャッシュ・フロー53億円及び調整後EBITDAマージン30.6%を実現しております(なお、調整後フリー・キャッシュ・フロー及び調整後EBITDAマージンの内容については、後記「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (参考情報)」をご参照ください。)。
② 安定性の高い収益モデル
当社グループの売上高の大部分は、月額利用料によるリカーリング型の収益(注2)を基礎としており、継続的かつ安定的な収益モデルとなっております(当連結会計年度の売上高に占める月次請求売上の割合は約94%を達成しております)。
③ 全戸一括型マンション向けシェア「国内No.1」
当社グループは全戸一括型マンションインターネット接続サービス分野において、全国シェア1位(全体の27.2%)(注3)となっております。
(注1)当社グループの前連結会計年度売上高(国際会計基準(IFRS))及び株式会社つなぐネットコミュニケーションズの2017年3月期の売上高(日本基準の数値を国際会計基準(IFRS)の数値に修正)の単純合算値(内部取引消去前)と、当社グループの当連結会計年度の売上高(国際会計基準(IFRS))を基に算定したものです。株式会社つなぐネットコミュニケーションズの2017年3月期の売上高は、当社が2017年3月に同社を連結子会社化する前の期間における会社法に基づく同社の日本基準に基づく経営成績を示すものです。当社の現在の経営陣は、2017年3月の連結子会社化前における、株式会社つなぐネットコミュニケーションズの財務諸表の作成又は同社の経営を監督しておらず、またこれに関与しておりません。
(注2)継続的なサービス提供に紐づく売上収益を指し、毎月お客様に請求している利用料収入を意味します。
(注3)出典:MM総研「全戸一括型マンションISPシェア調査(2018年3月末)」
(経営戦略)
① 売上成長戦略
当社グループでは、インターネットサービス、ネットワークサービス、マンションインターネットサービスの3つの領域で事業を展開しております。各領域において、当社グループの強みを活かすことが可能で、高い成長が見込まれる分野やエリアでのサービス展開に経営資源を集中させることで、今後も、各領域の市場全体を上回る成長の実現を目指します。
(ア)インターネットサービス
主要都市部を中心に展開するFTTHサービス(注1)は、自社回線網を活用し、より高品質なサービス提供ができる専有型として他社サービスとの差別化を図ることで成長を実現してきました。当社グループの強みを更に拡大させるため、ネットワーク設備の更改を順次進めており、より高品位なサービスである「ARTERIA光」を2017年度に首都圏で、2018年度には大阪で本格的にサービス開始し、今後、その他の主要都市部にも拡大していくことで、成長の維持・拡大を実現していきます。また、2019年度にはVNE事業(注2)にも参入する予定であり、輻輳対策やIPv6対応などを積極的に進めております。IP電話サービスについては、0AB-J(注3)の割当てを強みに、柔軟な料金体系を提供することで好調な成長を実現しており、今後もクラウドPBX事業者等のニーズに対応し、成長を維持していく所存です。
(注1)各家庭まで光ファイバーケーブルを敷設することにより、数十Mbps~最大数Gbps程度の超高速インターネットアクセスを提供するサービスをいいます。家庭用のみならず、オフィス向けのサービスにおいてもFTTHと呼ばれることがあります。
(注2)ISP事業者に対してインターネットサービス提供に必要となるネットワーク設備や、その他システム・運用機能等を提供する事業をいいます。
(注3)通常の固定電話に割り当てられるものと同様の番号体系であり、総務省の定める品質条件を満たした場合のみIP電話にも0AB-J番号が割り当てられます。
(イ)ネットワークサービス
2014年2月に国内初の100Gbpsサービスを提供するなど高速イーサネット専用線ではマーケットリーダとして、またエントリー型VPNでは自社回線網を活用したセキュリティの高いクローズドVPNを主力サービスとして、成長を実現してまいりました。今後も顧客ニーズに即した高品位なサービス提供体制の維持を図るとともに、今後更なる市場拡大が見込まれるクラウドやセキュリティ市場への対応を強化し、SD-WAN(注)やCloud Wi-Fiなどの新サービス提供も充実させることで、成長の維持・継続を図っていきます。
(注)回線スピードの変換やセキュリティ、認証機能等をソフトウェアで提供することにより、開通時間の短時間化や構成・機能の変更を行いやすくしたSDN(Software Defined Network)の適用範囲をLAN(Local Area Network)からWANに拡張したものをいいます。
(ウ)マンションインターネットサービス
主力としてきた新築分譲マンション向け市場に加え、昨年度からは急速に市場が拡大している賃貸マンション向け市場にもいちはやく参入したことで、受注戸数は倍増しており、好調な成長を実現しています。更に、株式会社つなぐネットコミュニケーションズとの事業統合により、前述のとおり、全戸一括型マンションインターネット接続サービス分野でNo.1(全体の27.2%)(注)の地位を確固たるものとし、日本国内の有力デベロッパー各社とより強固な関係を築くことができました。加えて、スケールメリットを活用し、広帯域通信のオール光、賃貸向け廉価サービス、顧客ニーズに応じたIoT関連サービス提供を他社に先駆けて実現することで、更なる事業拡大を目指します。また今後、サービスのクロスセル、サービス仕様・バックオフィス業務の統合による効率化等の統合シナジーも見込んでおります。
(注)出典:MM総研「全戸一括型マンションISPシェア調査(2018年3月末)」
(エ)売上成長を支える投資戦略
中期経営計画では、既存ネットワークの維持・増強投資に加え、前述の次世代プラットフォームである「ARTERIA光」のエリア拡大や、輻輳対策やIPv6対応等、継続的な成長投資を予定しており、より長期的に安定したサービス提供を可能とする体制を構築してまいります。
② コスト改善戦略
当社グループは、インターネット黎明期より全国主要都市に自社ファイバー網を敷設して通信ネットワークインフラを構築し、サービス提供のための基盤設備を整えてまいりました。当該自社保有網を活用することで、固定費が主となるコスト構造となることから、売上成長に対して原価増加を抑制することが可能となっております。
また、2014年に株式会社UCOMと合併、2017年には株式会社つなぐネットコミュニケーションズを連結子会社化するなど、事業規模を拡大することで、仕入調達面においてスケールメリットによるコスト削減を実現しており、今後もコスト削減に向けた努力を継続してまいります。加えて、その他のコストマネジメントを更に推進することで、今後もより利益率の高い経営を目指してまいります。
③ その他
また、当社は、上記の他にも、急速に変化する事業環境の中、当社の強みを活かしつつ、潜在的な事業機会を適切に捉えること等を通じて、更なる成長の可能性を模索してまいります。中期経営計画の期間以降も含む中長期的な当該成長の手段として想定されるものとしては、例えば、以下が含まれます。
・マンション向けISPの買収やOEMサービスの提供などを行うことを通じたマンションインターネット事業の拡大
・OTT(注1)向けDWDM(注2)マネージド・サービスの拡大
・B2B/B2B2C事業モデルを商業・オフィスビルへ活用することなどによる顧客基盤の拡大
・5Gの導入やIoTの発展など、データ量増大による影響を適切に捉えた新規事業への参入
(注1)ISPが提供するインターネット接続サービスの上で、動画や各種アプリケーション等のコンテンツを提供する事業者をいいます。
(注2)複数の光信号をファイバー上で同時に異なる波長で結合・伝送するWDM技術を密集化させた技術をいいます。既存のファイバーネットワークの帯域幅を増やすために使います。
さらに、当社は、丸紅株式会社から出資を受け入れており、丸紅株式会社は本書提出日現在、当社発行済株式総数の50.0%を保有しております。丸紅グループが保有する顧客ネットワークやパートナー企業へのアクセスを活用することや、丸紅グループと新規事業分野を含めた様々な分野で協業することを通じて、潜在的シナジーの追及を図っております。
(4) 対処すべき課題
中長期的な会社の経営戦略の実現を果たすため、当社グループは下記の課題に取り組んでまいります。
① 顧客基盤の拡大
前述のとおり、当社グループの事業は、月額利用料によるリカーリング型の収益(注1)を基礎としているため、適切な価格での顧客数の増大が収益基盤の向上のために重要であると考えております。顧客数を増大するには、既存顧客の解約を防止することに加え、新規顧客の増大を図ることが必要であります。そのため、効率的なプロモーション活動により、全戸一括型マンションインターネット接続サービス分野においてNo.1(全体の27.2%)(注2)である当社グループの信頼性と多種多様な法人向け通信サービスを有する当社グループの特徴に関して認知度を上げるとともに、パートナー企業との協力関係を強化することによって、競合他社から当社グループへの各種サービスの乗り換えを促してまいります。
② 人材の確保・育成
当社グループが、今後さらなる成長をしてくためには、専門スキル及びノウハウをもった優秀な人材を継続的に確保していくことが重要であると考えております。そのために、人事制度、研修制度の充実等の実施を図る一方、新卒採用も併せて積極的に行い、次世代を担う人材の育成にも注力してまいります。
③ 内部管理体制の強化
当社グループを取り巻く事業環境の変化及び事業の継続的な発展に伴い、業務運営の効率化、コーポレート・ガバナンス機能の強化は必須であり、そのために財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムの適切な運用が重要であると考えております。このため、当社グループと致しましては、内部統制システムの整備、改善を継続的に行い、経営の公正性・透明性を確保するための組織体制の強化に取り組んでまいります。
④ 新規事業の創出
当社グループを取り巻く事業環境は、急速に変化をしており、今後も引き続き変化は激しさを増すことが想定されるため、将来を見据えたサービス開発、新規事業の創出が重要な課題であると考えております。当社グループの強みである基幹網(注3)とFTTx網(注4)を活用して、新サービス開発、他社との協業及びオープンイノベーションを通じて今まで取り込めていなかった市場の開拓を行ってまいります。
(注1)継続的なサービス提供に紐づく売上収益を指し、毎月お客様に請求している利用料収入を意味します。
(注2)出典:MM総研「全戸一括型マンションISPシェア調査(2018年3月末)」
(注3)通信事業者の回線網などで、中核的な部分であるネットワーク(バックボーン回線)のことをいいます。
(注4)通信事業者の基地局から、ビルや住宅など目的の場所まで光ファイバーを敷設して、高速・広帯域のデータ伝送を可能にするもので、各家庭まで光ファイバーを敷設するFTTHなどをいいます。