有価証券報告書-第4期(平成30年4月1日-平成31年3月31日)

【提出】
2019/06/28 14:23
【資料】
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【項目】
140項目

対処すべき課題

(1) 経営方針
当社グループは暮らしTechセグメント及びITセグメントが単独で事業を深耕した上で、各々が最終ユーザーである入居者及び消費者をつなぐことで更に大きな付加価値を生み出すことを想定しております。
そのために「IT」によって「暮らしTech」を支え「暮らしTech」で創造した新たなサービスに関してITセグメントがその仕組を構築することで相互にシナジー効果を生み出す「暮らし×IT」を推進し、近未来のライフスタイルやITソリューションの提案によってビジネスを支え、あるいは人々の暮らしをより豊かに、快適にすることを目標として掲げております。
(2) 経営戦略等
当社グループの中期的方向性として、賃貸物件の紹介サイト「goodroom」のマンスリー・アクティブ・ユーザー数(MAU)を増加させることで、当社グループのエンジンとすることを想定しています。その上で、暮らしTechセグメントにおいてシェアリングエコノミーに資するサービスに特化し、賃貸サービスエリアの物件創造、賃貸契約及び入居後サービスまで一貫して提供することを想定しています。goodroomプラットフォームで実現している賃貸契約に関するオンライン申込に加え、ユーザーと管理会社を直接つなぎ、不動産取引の全てをIT重説(注)の解禁に合わせてgoodroomプラットフォームを一元的に処理するシステムにレベルアップすることを検討しております。
その上で、ITセグメントにおいては、「goodroom」での入居者情報をリアル店舗を持つ小売業者の消費者情報とつなぐことで、暮らしTechセグメントとITセグメントとのビジネスの機会を増加させシナジー効果を上げることで更に新しいビジネス循環を生み出す「暮らし×IT」とすることを基本戦略としています。なお、外部顧客向けサービスもビジネスの柱としております。
(注)IT重説:宅建業法第35条に基づき宅地建物取引士が行う重要事項説明を、テレビ会議等のITを活用して行うもの。
(3) 経営環境
当連結会計年度における我が国の経済は、堅調な企業収益により緩やかな持ち直し傾向で推移いたしましたが、米国・中国間のいわゆる「貿易戦争」が今後の景気に影響を与えることが懸念されます。
我が国が持つ構造的問題の一つとして、近年の少子高齢化に伴う人口の減少を背景とした空き家は、全国で2018年の予測が1,026万戸、空き家率は16%であり、2033年にはそれぞれ1,955万戸、27.3%になると予測される(出典:株式会社野村総合研究所「2018年6月13日付ニュースリリース」)など、空き家、空室の増大は大きな社会問題になっています。一方、「所有」から「賃貸」を選択する人の増加によるシェアリング志向の高まりが指摘されています。このことは、今後どのような経済環境になろうとも暮らしTechセグメントにおいては根強い需要が見込まれ、好循環が期待できる環境になると言えますし、ITセグメントにおいては今後も引き続きエンジニア等の人手不足問題が継続すると想定されますが、これからのビジネスにおいては不可欠なITへのニーズを考えると、「暮らし×IT」のシナジー効果により経済環境に影響を受けないビジネスモデルを作り上げられると考えております。
(4) 事業上及び財務上の対処すべき課題
① 事業上の課題
a ITセグメント事業
・ビジネス確保と拡大のために
継続的ビジネスを拡大するために、請負ビジネスにおいては、顧客と業務提携まで踏み込むビジネスを推進することが課題です。継続的ビジネスにつなげるために「アプリケーション保守・運用」ビジネスにも注力しております。
特定客先と共同開発中の「業務コアモデル」をベースとして、新規の顧客獲得を目指し営業活動を行っております。
SEサービスビジネスでは、顧客と開発・維持の範囲及び達成条件を事前に決め、長期契約を結んだ上で提供するサービスの顧客数を拡大することが課題です。
・ビジネスの在り方を変化させるために
今後、付加価値を持つ請負ビジネス及びアプリケーション保守・運用のように継続的に続くビジネスを増加させるため、goodroomプラットフォームで得た知見とこれからの新しい小売業のニーズであるデジタルトランスフォーメーション(注)への対応をクラウドサービスで提供することによって新しいビジネスを生み出す事、並びに新しい技術を使った「ビジネスモデル」創出も課題としております。
(注)デジタルトランスフォーメーション:「ITの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる。」という概念。
b 暮らしTechセグメント事業
・ビジネス確保のために
ハプティック株式会社のリノベーションブランド「TOMOS」を拡大するために必要なことの1つに、自前の営業の強化があります。オーナーを開拓しリピート需要を喚起する必要がありますが、一方で2016年度からスタートした資本業務提携先との業務提携は継続的にリノベーション案件を増加させております。これらに加え、事業の領域を住宅からオフィスに広げることで、取扱件数や取扱高を増やすことも実行中です。
しかし、中長期の視点から最も重視すべきはgoodroomプラットフォームを完成させることであり、入居者にとって賃貸住宅を探しやすく手続きを便利にすること、そして入居者に入居後の生活への様々な提案ができるようにし、「goodroom」を使う入居者を増やすことで、プラットフォームに係わる管理会社、電話・電気等公共事業会社また保証会社等からの利用料・広告料を増やしていくことが今後の課題です。
・賃貸物件仲介サイト「goodroom」の高度化のために
暮らしTechセグメントは、ITセグメントと連携することにより、社内にIT部門を持つことによる無駄のないコミュニケーションでニーズにスピードを持って対応できるという特質を生かして、「goodroom」高度化のスピードと継続的な改善を行うことで高い優位性を確保していくことが今後の課題です。
・リノベーションのコスト削減とスピードアップのために
コストの面からプランナーのリノベーション及びマネジメント力の向上が今後の課題です。課題改善については、取り組みを始めており、最近の現場技術者の人手不足対策のためには自社で大工を育成し、多能工を生み出すことも総合的コスト削減につながります。また外注業者の組織化、工事の工程管理や規格の標準化もコスト削減と品質の向上の両面から効果的と考えており実行中であります。
② 人材の確保及び育成
・人不足環境における人材確保について
キャリア採用が容易ではない環境下において、グループとして優秀な新入社員の採用に力を入れています。しかし、グループの持続的な成長には、キャリア採用による高度な人材を確保することも重要であると認識しております。今後採用方法を工夫し、キャリア採用を増やしていくことが今後の課題です。
・育成について
教育は最重要経営課題と捉え、力を入れております。基本はスキルナビゲーションプログラム(注)の定着です。このことに合わせて、OJT強化につなげております。Off-JT教育については、エントリー教育を2018年3月期に抜本的に変更しており、2019年3月期以降これをグループ全社のOff-JT教育にも反映し、推進しております。
(注)スキルナビゲーションプログラム:一人一人にスペシャルティを養成する教育プログラムをいいます。自分が目指し、また社会に求められているエンジニアになるために、「何が必要なのか」を常に把握し、スキルアップしながら目標に進んで行くためのプログラム。
③ 実行的なコーポレート・ガバナンス体制の構築
コーポレート・ガバナンス体制の構築とともにコンプライアンス体制、情報管理体制など内部統制システムを強化することにより、企業価値の向上と持続的成長を目指して参ります。