有価証券報告書-第16期(令和2年8月1日-令和3年7月31日)

【提出】
2021/10/28 10:38
【資料】
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【項目】
102項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
① 経営成績等の状況
当事業年度(2020年8月1日~2021年7月31日)の具体的な進捗としましては、再生誘導医薬開発品レダセムチド(HMGB1より創製したペプチド医薬)について、臨床試験に向けた研究開発が引き続き進捗いたしました。レダセムチドは、従来の再生医療とは異なり、体外で人工的に培養した細胞の移植や投与を一切必要とせず、薬の投与のみにより患者体内の幹細胞を活用する方法で、損傷した組織の再生を促す全く新しい作用メカニズムに基づく医薬品です。当事業年度においては、レダセムチドの導出先である塩野義製薬株式会社(本社:大阪市中央区、代表取締役社長:手代木 功、以下「塩野義製薬」)との間で2020年6月30日付にて締結したレダセムチドの複数の疾患に対する臨床開発を加速度的に展開していくための契約について、本契約に係る一時金の受領条件を達成し、一時金1,400百万円を受領いたしました。本契約は、当社がこれまでに複数のアカデミア・グループとの共同研究を通じて蓄積してきた非臨床のエビデンスを活用して、新たに慢性肝疾患、変形性膝関節症、心筋症を対象とした医師主導治験を開始する準備を進めていくものであり、慢性肝疾患、変形性膝関節症においては2020年11月より第Ⅱ相臨床試験が開始されております。引き続き幅広い疾患領域への適応拡大を通じて、レダセムチドの価値最大化に向けた取り組みを加速してまいります。
当社の事業領域である再生医療業界においては、2014年11月に施行された再生医療安全性確保法及び改正薬事法によって再生医療の産業化促進の基盤が整う中、引き続き複数の再生医療等製品が承認を受けるなど、再生医療技術に対する社会的な期待と関心はますます高まっております。また、再生医療の市場規模予測では、国内2020年950億円が2050年2.5兆円、世界2020年1兆円が2050年38兆円と大幅な増加が見込まれており、従来の医薬品や医療では治療が困難であった疾患に対する新たな医療への期待がいかに大きいものかがわかります。このような状況の中、体外で培養し加工した細胞を用いず、医薬品の投与によって患者自身の体内で間葉系幹細胞の集積誘導による再生医療を実現する「再生誘導医薬」を、移植治療や従来型の再生医療が抱える数多くの問題を克服する革新的な再生医療技術として、表皮水疱症をはじめとした難病を含む様々な疾患に苦しむ世界中の患者の皆様にお届けすることは、ステムリムの社会的使命であると考えております。
レダセムチドにおける疾患ごとの進捗は以下の通りです。
a) 栄養障害型表皮水疱症治療薬(PJ1-01)の開発について、2020年1月に開催された第41回水疱症研究会及び、第1回国際表皮水疱症会議(The 2020 EB World Congress)にて、栄養障害型表皮水疱症患者を対象とした臨床試験(第Ⅱ相医師主導治験)のデータ解析結果(速報)が報告され、本治験に参加した栄養障害型表皮水疱症患者全例(9例)の解析で、レダセムチド投与により主要評価項目(全身皮膚の水疱、びらん、潰瘍の合計面積の治療前値からの変化率)で、統計学的に有意な改善が確認されました。レダセムチド投与終了後の最終観察時点(投与終了6ヵ月後)においても、9例中7例が治療前値を下回る改善を示し、そのうち4例は50%以上の著明な改善を示したことから、栄養障害型表皮水疱症に対するレダセムチド治療効果の長期持続性も確認されました。また副次評価(安全性評価)では懸念となる有害事象は観察されず、栄養障害型表皮水疱症患者におけるレダセムチド投与の有効性と安全性が確認されました。
表皮水疱症治療薬について、対象となる栄養障害型表皮水疱症は、全国の患者数が200名前後である希少難治性疾患であり現在有効な治療法が存在せず、また年間当たりの新規患者は15名程度と想定されており、大規模な第Ⅲ相試験を計画することが困難であります。そのため、第Ⅱ相試験の結果を踏まえ医薬品の承認申請を行うべく、塩野義製薬において規制当局との協議を進めておりましたが、本試験の結果は著効例が認められるものの、更なる有効例の積み上げが必要との結論に至っており、本試験結果の再現性を確認することを目的として、追加臨床試験を実施予定です。
b) 脳梗塞治療薬(PJ1-02)の開発について、本医薬品のライセンス先である塩野義製薬により、第Ⅱ相臨床試験が進行中であり、これまでに被験者の組み入れと安全性の確認が順調に進捗し、2021年7月に患者の組み入れが目標症例である150例に到達・完了いたしました。今後は治験登録患者の経過観察期間を経てデータ解析・評価が行われる予定です。
c) 心筋症治療薬(PJ1-03)の開発について、大阪大学医学系研究科心臓血管外科学との共同研究において、心筋梗塞や各種心筋症の疾患モデル動物を用いた薬効試験にて顕著な治療効果と作用メカニズムの証明がなされており、その成果は、米国の循環器学会であるAHA (American Heart Association) Scientific Sessions 2018 等の国際学会で報告されるとともに、2019年3月の第18回日本再生医療学会総会では多光子顕微鏡によるin vivo imaging(生体画像描出法)によって、レダセムチドを投与した心筋梗塞モデル動物において、GFP(緑色蛍光タンパク)陽性骨髄由来細胞が心筋梗塞巣へ集積し血管周囲において活発に移動する様子を観察することに成功したことを報告するなど、評価を受けております。
d) 変形性膝関節症治療薬(PJ1-04)の開発について、2020年11月より国立大学法人弘前大学において、変形性膝関節症患者を対象とした医師主導治験(第Ⅱ相試験)が開始され、2021年2月より治験患者第一例目への投与が開始されております。変形性膝関節症は膝関節軟骨の摩耗により膝の形が変形、痛みや腫れをきたす疾患で、重度の症例では強い痛みのため歩行困難になることも多く、QOL (Quality of Life) 及び日常生活動作の低下が顕著になります。本邦の潜在患者数は約2,500万人、そのうち自覚症状を有する患者数は約800万人と推定されています。主な原因は加齢によるものが多く、40代以降の中高年に多く発症します。損傷をうけた関節軟骨は自己修復しにくいことが知られており、損傷した軟骨組織の修復促進、あるいは人工関節置換術への移行を回避できるような新たな治療法の開発が望まれています。レダセムチドは、マウス膝関節軟骨欠損モデルを用いた本剤の非臨床試験で軟骨修復作用等が確認されており、変形性膝関節症患者に対する新たな治療薬となることが期待されます。
e) 慢性肝疾患治療薬(PJ1-05)の開発について、2020年11月より国立大学法人新潟大学において、慢性肝疾患患者を対象とした医師主導治験(第Ⅱ相試験)が開始され、2021年3月より治験患者第一例目 への投与が開始されております。線維化が進行した肝硬変は、肝機能低下、門脈圧亢進、発癌など生命予後を左右する様々な問題が生じうる疾患であり、肝硬変の患者数は国内40~50万人と推定されております。現状、一般治療において、線維化が進行した肝硬変に対し完治が期待できる治療法は肝移植を除き確立しておらず、移植医療に頼らない新たな肝線維化改善薬や組織再生促進薬の開発が期待されております。レダセムチドは、肝硬変モデルマウスに対して高い抗炎症、線維化改善効果が確認されており、有効な治療法のなかった線維化を伴う慢性肝疾患・肝硬変の患者に対し、新たな治療の選択肢になり得る可能性があります。
レダセムチドについて、2020年9月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する令和2年度「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発(3次公募)」に採択されました。COVID-19肺炎は、重症化すると肺胞上皮細胞や肺胞周囲の血管内皮細胞が不可逆的に傷害され、肺炎治癒後も肺機能障害が長期の後遺症として残り、抗ウイルス薬や抗炎症剤では失われた肺機能の回復は期待し得ないことが知られておりますが、レダセムチドの投与により骨髄から損傷組織に集積する間葉系幹細胞は、抗炎症作用、抗線維化作用と共に、上皮組織や血管組織を再生する作用を持つことが示されていることから、レダセムチドはCOVID-19肺炎の後遺症リスクを軽減する世界初の治療薬となることが期待されます。
肺線維症マウスモデルにおいて、レダセムチドの投与により肺中コラーゲンの指標であるハイドロキシプロリン量を最大70%統計学的に有意に抑制し、かつ病理組織学的評価で線維化スコアの低下を確認しました。また経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)測定の結果、肺機能の改善傾向が確認されたことから、臨床において重視される肺機能検査上の改善効果を得ました。LPS誘発による急性炎症肺炎モデルにおいては、レダセムチドの投与により肺中のサイトカイン量や炎症細胞数が低下傾向を示したことにより、COVID-19の急性炎症亢進に対するレダセムチドの有効性を示唆する結果を得たほか、パラビオーシスマウスモデルにおいては、レダセムチドにより誘導される間葉系幹細胞が損傷肺のAce2陽性2型肺胞上皮に分化して肺胞機能の再生に寄与していることが明らかとなりました。
レダセムチド以外の新規再生誘導医薬候補物質の探索プロジェクトについては、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する複数の新規候補化合物を同定するに至っております。
また、2021年1月に本社研究所を拡張し、同建屋内に動物実験施設(約223㎡)を新設いたしました。本動物実験施設では、新規シーズのスクリーニング、実験動物を使用した薬効試験等を行い、今後、再生誘導医薬の対象となる疾患領域の更なる拡大に寄与すると考えております。
これらの結果、当事業年度の経営成績の状況は以下のとおりであります。
(事業収益)
当事業年度における事業収益は前事業年度に比べて700,000千円減少し、1,400,000千円(前年同期比33%減)となりました。事業収益は、塩野義製薬株式会社と締結している新たに3疾患を対象としたレダセムチドの適応拡大に向けた契約に係る一時金の受領条件を達成・受領したことによるものです。
(事業費用)
当事業年度における研究開発費は前事業年度に比べて167,150千円増加し1,523,797千円(前年同期比12.3%増)、販売費及び一般管理費は前事業年度に比べて142,292千円増加し469,932千円(前年同期比43.4%増)となりました。
研究開発費の増加は、主に本社動物実験施設の拡張に伴う研究機器の導入、研究開発活動の積極的な推進に伴う研究用試薬等の購入による研究用材料費の増加、人員の増加による人件費の増加、及び共同研究費の増加によるものであります。
この結果、当事業年度における事業費用は前事業年度に比べて309,443千円増加し1,993,729千円(前年同期比18.3%増)となりました。
(営業損益)
当事業年度において、事業収益1,400,000千円、事業費用1,993,729千円を計上した結果、営業損失は593,729千円(前事業年度は415,713千円の営業利益)となりました。
(営業外損益・経常損益)
当事業年度における営業外収益は前事業年度に比べて302千円減少し12,778千円(前年同期比2.3%減)、営業外費用は前事業年度に比べて64,887千円減少し2,877千円(前年同期比95.8%減)となりました。営業外収益の主な内訳は補助金収入12,723千円であり、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が実施する、「令和2年度 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬開発(3次公募)」に採択されたことによるものであります。また、営業外費用の主な内訳は本社動物実験施設工事に係る撤去費用2,657千円及び支払利息219千円であります。
これらの結果、経常損失は583,827千円(前年同期は361,030千円の経常利益)となりました。
(特別損益・税引前当期純損益)
当事業年度における特別利益は7,784千円(前年同期はなし)となりました。特別利益は従業員の退職に伴う新株予約権の戻入益7,784千円であります。
これらの結果、税引前当期純損失は576,043千円(前年同期は361,030千円の税引前当期純利益)となりました。
(当期純損益)
当事業年度における法人税等は6,404千円となりました。この結果、当期純損失は582,448千円(前事業年度は347,761千円の当期純利益)となりました。
② 財政状態
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は10,497,494千円となり、前事業年度末に比べ469,216千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が503,020千円減少したことによるものです。また、固定資産合計は411,784千円となり、前事業年度末に比べ97,080千円増加いたしました。これは主に動物実験施設の拡張により、有形固定資産が94,115千円増加したほか、敷金及び保証金の増加により投資その他の資産が2,819千円増加したことによるものです。この結果、資産合計は10,909,279千円となり、前事業年度末に比べ372,136千円減少となりました。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は87,625千円となり、前事業年度末に比べ266,904千円減少いたしました。これは主に未払金が203,623千円減少したことによるものです。また、固定負債合計は125,013千円となり、前事業年度末に比べ48,182千円増加いたしました。これは主に資産除去債務が48,468千円増加、繰延税金負債が2,774千円増加したことによるものです。この結果、負債合計は212,638千円となり、前事業年度末に比べて218,721千円減少となりました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は10,696,640千円となり、前事業年度末に比べ153,414千円減少いたしました。これは主に当期純損失582,448千円を計上した一方、新株予約権が316,734千円増加、新株予約権の行使により資本金及び資本準備金がそれぞれ56,149千円増加したことによるものです。なお、2020年12月の減資により資本金が73,013千円減少し、資本準備金が73,013千円増加しております。この結果、資本金32,424千円、資本剰余金10,500,407千円、利益剰余金△234,686千円となりました。
なお、当社は再生誘導医薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。また、当事業年度の業績への新型コロナウイルス感染症による特段の影響はありません。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は10,172,222千円と前事業年度末と比べ503,020千円の減少となりました。
営業活動の結果使用した資金は519,649千円(前事業年度は575,413千円の収入)となりました。これは主に、税引前当期純損失の計上576,043千円、株式報酬費用の計上324,519千円、未払金の減少203,623千円等によるものであります。
投資活動の結果使用した資金は92,715千円(前事業年度は153,711千円の支出)となりました。これは主に本社動物実験施設の拡張に伴う、有形固定資産の取得によるものであります。
財務活動の結果得られた資金は109,317千円(前事業年度は7,757,140千円の収入)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式発行収入によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a) 生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b) 受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c) 販売実績
当社は再生誘導医薬事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称当事業年度
(自 2020年8月1日
至 2021年7月31日)
金額(千円)前年同期比
(%)
再生誘導医薬事業1,400,00066.6
合計1,400,00066.6

(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2019年8月1日
至 2020年7月31日)
当事業年度
(自 2020年8月1日
至 2021年7月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
塩野義製薬㈱2,100,000100.01,400,000100.0
合計2,100,000100.01,400,000100.0

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。当社の財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項」の「重要な会計方針」に記載のとおりであります。この財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
(3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要の主なものは、継続的な候補物質の探索や候補物質の製品化に向けた開発に関する研究開発費と、販売費及び一般管理費などの事業費用であります。これらの資金需要に対して安定的な資金供給を行うための財源については主に内部資金を活用することにより確保しております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により確保しております。
(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

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