有価証券届出書(新規公開時)

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2019/07/05 15:00
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76項目
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
第13期事業年度(自 2017年8月1日 至 2018年7月31日)
当事業年度(2017年8月1日から2018年7月31日まで)におけるわが国経済は、政府の経済政策や金融政策を背景に企業収益は堅調に推移し、個人消費の緩やかな改善を受け景気には回復基調が見られましたが、欧米や東アジア地域における不確実性の高まりなど、先行き不透明な状況が続きました。
再生医療業界においては、2014年11月に施行された再生医療安全性確保法及び改正薬事法によって、再生医療の産業促進化が進むなか、新たに複数の企業主導治験及び医師主導治験が開始されるなど、再生医療等製品の上市にむけた活動は活発化しつつあり、再生医療に対する社会的な期待は高まっております。
しかしながら一方で、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)が進める再生医療用iPS細胞ストックプロジェクトを通じ提供されていた臨床用iPS細胞の製造過程において、本来使用すべき試薬とは異なる試薬が用いられていた可能性があることが判明し、同iPS細胞の提供が停止される事態に発展するなど、再生医療の製造管理体制構築の難しさとその事業化への課題を浮き彫りにする出来事も起きました。
このような環境のもと、当社は、従来型の再生医療/細胞治療とは異なり、生きた細胞の投与を必要とせず、物質=医薬品の投与によって患者自身の体内に存在する幹細胞を活性化し、損傷した組織の再生を促進させる、新しい再生医療「再生誘導医薬」の開発を積極的に推進して参りました。
当事業年度においては、当社で最も開発の進むHMGB1ペプチドを用いた再生誘導医薬開発プロジェクトについて、主に以下3つの適応症を対象に研究開発を進めて参りました。
a) 表皮水疱症治療薬(PJ1-01)の開発については、実際の患者に対しての臨床での有効性評価を目的とした医師主導治験(第Ⅱ相試験)が大阪大学において開始され、被験者の組み入れが順調に進捗しております。また、本医薬品については、昨年度、同じく大阪大学で実施された臨床研究において、健常者ボランティアに対する本医薬品の静脈内投与が、被験者の体内で骨髄内間葉系幹細胞を末梢血循環に動員し、抹消血液中の間葉系幹細胞数を有意に増加させるとの試験結果を得ており、当社がHMGB1ペプチドに期待する作用メカニズムを証明することができました。現在実施中の第Ⅱ相治験においても、同様の作用メカニズムに基づいて、HMGB1ペプチドの投与が間葉系幹細胞を末梢血中に動員し、表皮水疱症に対する治療効果を発揮するものと期待しております。
b) 脳梗塞治療薬(PJ1-02)の開発については、本医薬品のライセンス先である塩野義製薬株式会社において、第Ⅱ相臨床試験が開始され、これまでに被験者の組み入れと安全性の確認が順調に進捗しております。
c) 心筋症治療薬(PJ1-03)の開発については、大阪大学医学系研究科心臓血管外科学との共同研究において、心筋梗塞や各種心筋症の疾患モデル動物を用いた薬効試験で顕著な治療効果と作用メカニズムの証明がなされており、その成果は、米国の循環器学会であるAHA (American Heart Association) Scientific Sessions 2017 等の国際学会で報告されるとともに、2018年3月の第18回日本再生医療学会総会では多光顕微鏡によるin vivo imaging(生体画像描出法)によって、HMGB1ペプチドを投与した心筋梗塞モデル動物において、GFP(緑色蛍光タンパク)陽性骨髄由来細胞が心筋梗塞巣へ集積し血管周囲において活発に移動する様子を観察することに成功したことを報告するなど、評価を受けております。
また、HMGB1ペプチド以外の新規再生誘導医薬候補物質の探索プロジェクトについては、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する複数の新規候補化合物を同定するに至っております。当事業年度においては、本プロジェクトに関わる研究テーマが中小企業庁の平成29年度戦略的基盤技術高度化支援事業に採択され研究助成金を獲得することができ、また、第三者割当増資による資金調達にも成功したことから、本プロジェクトに対する投資をさらに推し進め、研究開発を加速して参りました。
このような状況のもと、当事業年度の業績については、HMGB1ペプチドの臨床開発が順調に進捗し、導出先である塩野義製薬株式会社からライセンス契約に基づくマイルストーン収入を受領したことから、事業収益は200,000千円(前事業年度比33.3%減)となりました。また、新規再生誘導医薬の探索を加速するため積極的な研究開発投資をおこない、研究開発費453,270千円を含む事業費用575,141千円を計上した結果、営業損失は375,141千円(前事業年度は160,763千円の営業損失)となりました。これに中小企業庁・戦略的基盤技術高度化支援事業の助成金等を含む営業外収益52,575千円を計上した結果、経常損失は327,338千円(前事業年度は157,140千円の経常損失)となり、当期純損失は323,822千円(前事業年度は123,936千円の当期純損失)となりました。
なお、当社は再生誘導医薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。
第14期第3四半期累計期間(自 2018年8月1日 至 2019年4月30日)
当第3四半期累計期間(2018年8月1日から2019年4月30日まで)におけるわが国経済は、企業収益及び雇用環境が引き続き底堅く推移しているものの、米中貿易摩擦の激化など海外経済の不確実性と金融市場への影響が懸念されるなか、先行き不透明な状況が続いております。
当社の事業領域である再生医療業界においては、2014年11月に施行された再生医療安全性確保法及び改正薬事法によって再生医療の産業化促進の基盤が整うなか、引き続き複数の再生医療等製品が承認を受けるなど、再生医療技術に対する社会的な期待と関心はますます高まっております。
このような環境のもと、当社は、生きた細胞自体を投与する従来型の細胞治療製品とは異なり、細胞の投与を必要とせず、物質=医薬品の投与によって患者自身の体内に存在する幹細胞を活性化し、損傷した組織の再生を促進させる、新しい再生医療製品「再生誘導医薬」の開発を積極的に推進してまいりました。
当第3四半期累計期間においては、当社で最も開発の進む再生誘導医薬HMGB1ペプチドの開発プロジェクト(PJ1)について、2つの適応症に対する臨床試験が引き続き順調に進捗いたしました。表皮水疱症治療薬の開発プロジェクト(PJ1-01)においては、第Ⅱ相医師主導治験が大阪大学、慶應義塾大学、東邦大学の三施設で実施され、予定通り進捗いたしました。脳梗塞治療薬の開発プロジェクト(PJ1-02)においては、本医薬品のライセンス先である塩野義製薬株式会社による第Ⅰ相臨床試験が終了し、予定通り第Ⅱ相臨床試験が開始されました。
また、HMGB1ペプチド以外の新規再生誘導医薬候補物質の探索プロジェクトについては、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質のスクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する複数の新規候補化合物を同定するに至っております。
このような状況のなか、塩野義製薬株式会社とのライセンス契約に基づくデータ使用料を受領したことで、当第3四半期累計期間の事業収益は100,000千円、営業損失は506,272千円、経常損失は506,305千円、四半期純損失は505,647千円となりました。
なお、当社は再生誘導医薬事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。
② キャッシュ・フローの状況
第13期事業年度(自 2017年8月1日 至 2018年7月31日)
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は1,843,404千円と前事業年度末と比べ939,084千円の増加となりました。
営業活動の結果使用した資金は260,976千円(前事業年度は285,347千円の支出)となりました。これは主に前払費用の減少46,527千円及び法人税等の還付額32,500千円等の増加要因があった一方、税引前当期純損失の計上327,338千円及びたな卸資産の増加10,345千円等の減少要因があったことによるものであります。
当事業年度において投資活動の結果使用した資金はありません(前事業年度は403千円の支出)。これは研究開発用資産等について、支出時に研究開発費処理を行っていることによるものであります。
財務活動の結果得られた資金は1,200,057千円(前事業年度はなし)となりました。これは株式の発行によるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a) 生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b) 受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c) 販売実績
当社は再生誘導医薬事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。第13期事業年度及び第14期第3四半期累計期間における販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称第13期事業年度
(自 2017年8月1日
至 2018年7月31日)
第14期第3四半期累計期間
(自 2018年8月1日
至 2019年4月30日)
金額(千円)前年同期比
(%)
金額(千円)
再生誘導医薬事業200,00066.7100,000
合計200,00066.7100,000

(注)1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
相手先第13期事業年度
(自 2017年8月1日
至 2018年7月31日)
第14期第3四半期累計期間
(自 2018年8月1日
至 2019年4月30日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)
塩野義製薬㈱200,000100.0100,000
合計200,000100.0100,000

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。
詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項」の「重要な会計方針」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a) 財政状態
第13期事業年度(自 2017年8月1日 至 2018年7月31日)
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は1,912,829千円となり、前事業年度末に比べ882,377千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が939,084千円増加したことによるものです。また固定資産合計は11,952千円となり、前事業年度末に比べ1,116千円減少いたしました。これは主に有形固定資産が減価償却費の計上により1,116千円減少したことによるものです。この結果、資産合計は1,924,782千円となり、前事業年度末に比べ881,261千円増加となりました。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は42,289千円となり、前事業年度末に比べ3,916千円増加いたしました。これは未払費用が2,739千円、未払法人税等が1,568千円増加したことによるものです。また、固定負債合計は10,329千円となり、前事業年度末に比べ3,662千円減少いたしました。これは、資産除去債務の増加103千円があったものの、繰延税金負債が3,766千円減少したことによるものです。この結果、負債合計は52,618千円となり、前事業年度末に比べ254千円増加となりました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は1,872,163千円となり、前事業年度末に比べ881,007千円増加いたしました。これは当期純損失の計上により利益剰余金が323,822千円減少した一方、第三者割当増資及び減資に伴い資本剰余金が1,204,830千円増加したことによるものです。
第14期第3四半期累計期間(自 2018年8月1日 至 2019年4月30日)
(資産)
当第3四半期会計期間末における流動資産合計は2,915,834千円となり、前事業年度末に比べ1,003,004千円増加いたしました。これは主に現金及び預金が876,917千円増加したことによるものです。また、固定資産合計は15,124千円となり、前事業年度末に比べ3,171千円増加いたしました。これは主に減価償却費の計上により927千円減少したものの、有形固定資産、無形固定資産及び投資その他の資産が4,099千円増加したことによるものです。この結果、資産合計は2,930,958千円となり、前事業年度末に比べ1,006,176千円増加となりました。
(負債)
当第3四半期会計期間末における流動負債合計は101,159千円となり、前事業年度末に比べ58,869千円増加いたしました。これは主に未払法人税等が13,104千円増加したことに加え、未払金が37,214千円増加したことによるものです。また、固定負債合計は18,333千円となり、前事業年度末に比べ8,004千円増加いたしました。これは主に繰延税金負債の減少2,521千円があったものの、リース債務が10,447千円増加したことによるものです。この結果、負債合計は119,492千円となり、前事業年度末に比べ66,874千円増加となりました。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は2,811,465千円となり、前事業年度末に比べ939,302千円増加いたしました。これは四半期純損失の計上により利益剰余金が505,647千円減少したものの、第三者割当増資に伴い資本金及び資本剰余金がそれぞれ722,475千円増加したことによるものです。
b) 経営成績
第13期事業年度(自 2017年8月1日 至 2018年7月31日)
(事業収益)
当事業年度における事業収益は前事業年度に比べて100,000千円減少し、200,000千円(前年同期比33.3%減)となりました。事業収益は、塩野義製薬株式会社とのライセンス契約に基づくマイルストーン収入であり、契約上の条件をクリアしたものについて収益計上を行った結果であります。
(事業費用)
当事業年度における研究開発費は前事業年度に比べて104,130千円増加し453,270千円(前年同期比29.8%増)、販売費及び一般管理費は前事業年度に比べて10,247千円増加し121,870千円(前年同期比9.2%増)となりました。
研究開発費の増加は、主に研究開発活動の積極的な推進に伴う、研究用試薬等の購入による研究用材料費の増加、人員の増加による人件費の増加、及び共同研究費の増加によるものであります。
この結果、当事業年度における事業費用は前事業年度に比べて114,377千円増加し575,141千円(前年同期比24.8%増)となりました。
(営業損益)
当事業年度において、事業収益200,000千円、事業費用575,141千円を計上した結果、営業損失は375,141千円(前事業年度は160,763千円の営業損失)となりました。
(営業外損益・経常損益)
当事業年度における営業外収益は前事業年度に比べて48,952千円増加し52,575千円(前年同期比1,351.2%増)、営業外費用は前事業年度に比べて4,772千円増加し4,772千円(前年同期は0千円)となりました。営業外収益の主な内訳は補助金収入52,250千円であり、中小企業庁・戦略的基盤技術高度化支援事業に採択されたことによる増加であります。また、営業外費用は株式交付費であり、第三者割当増資に伴う発生であります。
これらの結果、経常損失は327,338千円(前事業年度は157,140千円の経常損失)となりました。
(当期純損益)
当事業年度における法人税等は1,569千円となりました。この結果、当期純損失は323,822千円(前事業年度は123,936千円の当期純損失)となりました。
第14期第3四半期累計期間(自 2018年8月1日 至 2019年4月30日)
(事業収益)
当第3四半期累計期間における事業収益は100,000千円となりました。事業収益は、塩野義製薬株式会社とのライセンス契約に基づくデータ使用料を受領したものであります。
(事業費用)
当第3四半期累計期間における研究開発費は472,920千円、販売費及び一般管理費は133,351千円となりました。
研究開発費の増加は、主に研究開発活動の積極的な推進に伴う、共同研究費の増加、人員の増加による人件費の増加及び研究機材の導入等によるものであります。
この結果、当第3四半期累計期間における事業費用は606,272千円となりました。
(営業損益)
当第3四半期累計期間において、事業収益100,000千円、事業費用606,272千円を計上した結果、営業損失は506,272千円となりました。
(営業外損益・経常損益)
当第3四半期累計期間における営業外収益は5,399千円、営業外費用は5,432千円となりました。営業外収益の主な内訳は補助金収入5,280千円であり、中小企業庁・戦略的基盤技術高度化支援事業に係るものであります。また、営業外費用の主な内訳は株式交付費5,213千円であり、第三者割当増資に伴う発生であります。
これらの結果、経常損失は506,305千円となりました。
(当期純損益)
当第3四半期累計期間における法人税等は△657千円となりました。この結果、四半期純損失は505,647千円となりました。
c) キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
d) 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要の主なものは、継続的な候補物質の探索や候補物質の製品化に向けた開発に関する研究開発費と、販売費及び一般管理費などの事業費用であります。
当社は、事業上必要な資金については、手元資金で賄う方針としており、事業収益が現時点では限定的であるため、第三者割当増資により調達を行っております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により確保しております。
今後の重要な資本的支出としては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、再生誘導医学研究所及び動物実験施設の建設・設備導入を予定しており、その調達源については、新規上場に伴う第三者割当増資による調達資金を予定しております。なお当該調達資金の一部は、設備資金のほか、「第一部 証券情報 第1 募集要項 5 新規発行による手取金の使途」に記載のとおり、パイプラインに係る研究開発推進・新規パイプラインの研究開発資金、事業拡大のための優秀な人材確保を目的とした人件費・採用費へ充当することを予定しております。
e) 経営成績等の状況に関する認識
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。