有価証券報告書-第20期(2024/08/01-2025/07/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
① 経営成績等の状況
当事業年度(2024年8月1日~2025年7月31日)の再生医療・医薬品業界においては、引き続き新規モダリティや新薬創出のための研究開発が進展し、革新的な治療法の実用化が加速しています。
米国FDAでは、医薬品の審査プロセスを迅速かつ柔軟にするための取り組みが進められており、政策的に重要な治療分野における早期承認の促進が期待されています。その一環として、国家の重点領域に資する医薬品を対象に審査期間を大幅に短縮できる「National Priority Vouchers」制度の導入が予定されているほか、申請を段階的に受け付けて並行審査を行うローリングレビューや、AIや臓器チップといった先端技術を活用した評価手法の導入も検討されています。これにより、従来よりも短期間で承認可否を判断できる体制の整備が進んでいます。さらに希少疾患領域では、単群試験に基づく限られたデータでも条件付き承認を可能とする制度改正が提案されており、アンメットメディカルニーズの高い分野における患者アクセスの改善が期待されています。こうした米国での取組は日本における承認審査に直接影響を与えるものではないものの、国際的な安全性・有効性・社会的受容性の裏付けとなり、国内開発品の実用化へ向けた間接的な追い風となることが期待されます。
また、日本政府においても創薬力強化を目的とした支援策が講じられており、文部科学省では、医学研究・ライフサイエンス研究の研究開発支援の強化、革新的シーズを創出するための分野横断的な基礎研究の推進、感染症有事を見据えた体制整備等が挙げられています。厚生労働省では、創薬エコシステム強化や新規モダリティ対応、有望なシーズの医薬品・医療機器の実用化促進等を重点施策としています。経済産業省では、医薬品・再生医療等製品の国産化促進、バイオ産業の拠点整備・技術支援、バイオベンチャー等の実用化支援等が重点施策として挙げられています。
このような創薬力強化に向けた動きが加速する一方、安全性・有効性に関する問題や、品質管理の難しさ、製造コストの増大等、再生医療・医薬品業界には依然として多くの課題が残されています。加えて、2025年5月に施行された再生医療等安全性確保法の改正によって、再生医療・遺伝子治療に関する承認審査が更に厳格化されることにより、開発期間の延伸やコストの増加といった課題が懸念されており、実用化へのハードルが一層高まる可能性もあります。
このような状況のもと、当社では、再生誘導医薬®開発品レダセムチド(HMGB1より創製したペプチド医薬)における臨床試験が進捗するとともに、レダセムチドに続く第二世代の再生誘導医薬®TRIM3、TRIM4について、非臨床開発及びライセンスアウトに向けた事業開発活動が引き続き進捗いたしました。
再生誘導医薬®は、従来の再生医療とは異なり、体外で人工的に培養した細胞の移植や投与を一切必要とせず、医薬品の投与によって患者自身の体内で間葉系幹細胞の集積誘導による再生医療を実現する、全く新しい作用メカニズムに基づく医薬品です。投与するのはペプチド、タンパクなどの物質であり、従来の医薬品と同じ方法で製造、輸送、保管、投与が可能であるため、再生医療・細胞治療と比較し、より手軽かつ安価に損傷組織の再生を促すことが可能であり、かつ再生医療・細胞治療と同等もしくはそれ以上の効果を発揮することが可能です。「生きた細胞を一切用いることなく、物質(化合物)の投与によって、再生医療/細胞治療を実現する」をコンセプトとする再生誘導医薬®は、移植治療や従来型の再生医療が抱える数多くの問題を克服する革新的な再生医療技術として、日本のみならず世界的な再生医療業界のゲームチェンジャーになることが期待されます。
(*)「再生誘導」、「再生誘導医薬」、「再生誘導医学」、「再生誘導医療」は当社の登録商標です。
各パイプラインにおける対象疾患ごとの進捗は以下のとおりです。
■レダセムチド(TRIM2:HMGB1より創製したペプチド医薬)
a)対象疾患:栄養障害型表皮水疱症
研究進捗:2015年8月 第Ⅰ相医師主導治験 開始
2017年3月 第Ⅰ相医師主導治験 終了
2017年12月 第Ⅱ相医師主導治験 開始
2019年9月 第Ⅱ相医師主導治験 終了
2020年3月 第Ⅱ相医師主導治験追跡調査 終了
2022年7月 追加第Ⅱ相臨床試験 開始
2023年3月 追加第Ⅱ相臨床試験 第一症例の登録
2025年7月 追加第Ⅱ相臨床試験 最終症例の登録
進捗状況:
2022年7月より追加第Ⅱ相臨床試験が開始され、2023年3月に第一例目の患者への投与が開始、2025年7月に最終症例の患者への投与が完了しております。本試験は難治性潰瘍を伴う栄養障害型表皮水疱症患者を対象に、レダセムチドの難治性潰瘍に対する有効性を検討することを目的としており、有効性評価の指標として、治験薬投与開始から52週以内における難治性潰瘍の閉鎖の有無を評価する予定です。また2020年3月に終了した栄養障害型表皮水疱症患者を対象とした医師主導治験及び追跡調査(第Ⅱ相試験)においては、第Ⅱ相試験に参加した栄養障害型表皮水疱症患者全例(9例)の解析で、レダセムチド投与により主要評価項目(全身皮膚の水疱、びらん、潰瘍の合計面積の治療前値からの変化率)で、統計学的に有意な改善が確認されております。レダセムチド投与終了後の最終観察時点(投与開始28週後)においても、9例中7例が治療前値を下回る改善を示し、そのうち4例は50%以上の著明な改善を示しました。また、有効性維持の評価を目的とした追跡調査の観察時点(投与開始52週後)においても有効性を確認したことから、栄養障害型表皮水疱症に対するレダセムチド治療効果の長期持続性も確認されました。副次評価項目(安全性評価)では懸念となる有害事象は観察されず、本治験において栄養障害型表皮水疱症患者におけるレダセムチド投与の有効性と安全性が確認されております。
表皮水疱症治療薬について、対象となる栄養障害型表皮水疱症は、全国の患者数が400名前後と推定される希少難治性疾患であり現在有効な治療法が存在せず、大規模な第Ⅲ相試験を計画することが困難であります。そのため、追加第Ⅱ相臨床試験の結果を踏まえ医薬品の承認申請を行う予定です。
なお、レダセムチドは2023年5月に厚生労働省より栄養障害型表皮水疱症を対象とした希少疾病用医薬品の指定を受けました。レダセムチドが希少疾病用医薬品の指定を受けたことは、表皮水疱症に対して有効である可能性及び現在の開発計画の妥当性について厚生労働省から一定の評価を受けたことになります。また、塩野義製薬においては、レダセムチドをできるかぎり早く医療の現場に提供できるよう、他の医薬品に優先して承認審査を受けることやその他の支援措置を享受することが可能になり、審査期間の短縮による早期の承認取得、販売開始が期待されます。
b)対象疾患:急性期脳梗塞
研究進捗:2019年4月 第Ⅱ相企業治験 開始
2021年10月 第Ⅱ相企業治験 終了
2023年4月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験(日本及び米国) 開始
2023年7月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験(欧州及び中国) 開始
2025年2月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験 治験計画の変更
2025年4月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験 中間解析
進捗状況:
2023年4月10日より日本において、2023年4月28日より米国において、2023年7月25日より欧州及び中国において、グローバル後期第Ⅱ相臨床試験がそれぞれ開始しており、本治験は、血管内再開通療法が実施できない急性期脳梗塞患者に対するレダセムチドの有効性及び安全性を評価するためにレダセムチド(1.5mg/kg:高用量群)、レダセムチド(0.75mg/kg:低用量群)またはプラセボを5日間投与する試験になります。2025年4月に実施された中間解析では事前に一定の無益性基準を設け、各用量群においてプラセボ群と比較してその基準を満たした場合は中止、満たさない場合は継続とする判断をすることとしておりました。盲検性を保つために独立した評価委員会で評価された上、塩野義製薬には各用量群に対する継続、中止の勧告がされることとなっており、中間解析の結果、レダセムチド高用量群については治験を継続し、レダセムチド低用量群については治験を中止すべきとの勧告が評価委員会から提示されました。本治験の計画当初、有効性が期待できる用量としてレダセムチド高用量群(1.5mg/kg)を計画しておりましたが、規制当局の指示によりレダセムチド低用量群(0.75mg/kg)も併せて検討することになっていたことから、今回の中間解析結果は当初より想定されていた範囲内の結果であります。
また、2022年10月に開示された第Ⅱ相臨床試験においては、薬剤投与開始90日後のmRS(脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの神経疾患といった神経運動機能に異常を来す疾患の重症度を評価するためのスケールであり、スコア0(症状なし)~スコア6(死亡)の7段階評価)を評価した結果、5日間投与完了の翌日に介助が必要な状態(mRS≧3)の患者が投与開始90日後に介助不要(mRS≦2)になった(症状が改善した)割合について、プラセボ投与群では18%(11例/60例)であることに対し、レダセムチド投与群では34%(23例/68例)となり、急性期脳梗塞患者に対するレダセムチドの有効性が示唆されました。要介護の脳梗塞患者において、介助不要となり社会的自立が可能なレベルにまで症状が改善することの社会的意義は大きく、レダセムチドの投与による急性期脳梗塞患者のQOL(Quality of Life)の向上が見込まれます。
c)対象疾患:虚血性心筋症
研究進捗:2024年3月 第Ⅱ相医師主導治験 開始
2024年12月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録
進捗状況:
2024年3月より、大阪大学医学部附属病院を中心とした複数の施設において第Ⅱ相医師主導治験が開始され、2024年12月に第一例目の患者への投与が完了いたしました。本治験は冠動脈バイパス手術を施行した虚血性心筋症患者に対し、レダセムチド若しくはプラセボ(各10例)を5日間投与し、レダセムチドの有効性、安全性を評価することを主たる目的としています。有効性においては投与開始52週後の心エコーなどによる各種心機能検査等について評価することが予定されております。
虚血性心筋症は心筋が血流不足や酸素不足により損傷を受ける状態を指し、心筋の主な血流供給源である冠動脈が狭窄または閉塞することによって発生します。発症すると心筋の機能障害を引き起こし、最終的には心不全を招く可能性があります。非臨床においては、レダセムチドの投与による心筋の壊死部分の縮小や心臓の繊維化の減少が確認されており、虚血性心筋症の新たな治療薬となることが期待されます。
d)対象疾患:変形性膝関節症
研究進捗:2020年11月 第Ⅱ相医師主導治験 開始
2021年2月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録
2021年12月 第Ⅱ相医師主導治験 最終症例の登録
2022年12月 第Ⅱ相医師主導治験 終了
進捗状況:
2023年3月に、弘前大学医学部附属病院において実施された医師主導治験(第Ⅱ相試験、レダセムチド群10例、プラセボ群10例)について、主要目的として設定したレダセムチド投与時の安全性評価について、重篤な有害事象及び本剤との関連性が認められると判定された副作用は認められず、変形性膝関節症を対象とする本剤投与時の安全性について確認された旨の開示をいたしました。また、副次目的として設定した本剤投与時の有効性評価について、変形性膝関節症の根本的な原因の一つである軟骨の損傷部位の形態学的評価としてMRI撮像を行ったところ、投与開始後52週時点の大腿骨内側顆軟骨欠損面積率の変化量(中央値)はプラセボ群で-3.5%であったのに対し、レダセムチド群では-7.5%であり、レダセムチド群でより欠損部位が縮小した傾向でした。なお、事後解析の結果になりますが、専門医師による内視鏡での肉眼観察においても、良好な軟骨再生の所見がレダセムチド群では5例に認められました(プラセボ群では2例)。現在、今後の開発方針を検討しております。
変形性膝関節症は膝関節軟骨の摩耗により膝の形が変形し、痛みや腫れをきたす疾患で、重度の症例では強い痛みのため歩行困難になることも多く、QOL及び日常生活動作の低下が顕著になります。国内の潜在患者数は約2,500万人、そのうち自覚症状を有する患者数は約1,000万人と推定されています。主な原因は加齢によるものが多く、40代以降の中高年に多く発症します。損傷をうけた関節軟骨は自己修復しにくいことが知られており、損傷した軟骨組織の修復促進、あるいは人工関節置換術への移行を回避できるような新たな治療法の開発が望まれています。レダセムチドは、マウス膝関節軟骨欠損モデルを用いた本剤の非臨床試験で軟骨修復作用等が確認されており、変形性膝関節症患者に対する新たな治療薬となることが期待されます。
e)対象疾患:慢性肝疾患
研究進捗:2020年11月 第Ⅱ相医師主導治験 開始
2021年3月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録
2022年6月 第Ⅱ相医師主導治験 最終症例の登録
2022年12月 第Ⅱ相医師主導治験 終了
進捗状況:
2023年4月に、新潟大学医歯学総合病院により実施された医師主導治験(第Ⅱ相試験、レダセムチド群10例)について、主要評価項目を達成いたしました。第Ⅱ相試験においては、主要目的として設定したレダセムチド投与時の安全性評価について、10例の患者のうち2例で治験薬との因果関係が否定できない有害事象(発声障害、発熱)が発現しましたが、いずれも軽度で回復しています。また、重篤な有害事象(肝生検実施時の出血)が1例発現しましたが、処置なく回復し、レダセムチドとの因果関係は否定されたことから、レダセムチドの忍容性は良好であると考えられます。副次目的として設定した探索的な有効性評価について、レダセムチド 1.5mg/kg(体重換算)を週1回4週間投与(計4回投与)した5例において、投与開始78日後及び162日後の時点で、MRエラストグラフィを指標とした肝硬度の改善傾向が認められました(投与開始前と比較して平均12%及び8%の減少率)。また、MRエラストグラフィによる肝硬度の改善だけでなく、他の線維化指標(線維化インデックス、線維化マーカー、modified HAIのFibrosis stage値)も随伴して改善傾向を示す症例が複数例認められました。これら各種有効性評価指標結果をふまえた治験責任医師による総合評価では、レダセムチド1.5mg/kg(体重換算)を週1回4週間投与(計4回投与)した5例のうち3例(60%)、1週目に4日間連続投与及び2~4週目に週1回投与(計7回投与)した5例のうち2例(40%)で肝線維化の改善傾向が示唆されました。以上の結果を踏まえ、慢性肝疾患に対する今後の開発方針が検討されています。
線維化が進行した肝硬変は、肝機能低下、門脈圧亢進、発癌など生命予後を左右する様々な問題が生じうる疾患であり、肝硬変の患者数は国内40~50万人と推定されております。現状、一般治療において、線維化が進行した肝硬変に対し完治が期待できる治療法は肝移植を除き確立されておらず、移植医療に頼らない新たな肝線維化改善薬や組織再生促進薬の開発が期待されております。レダセムチドは、有効な治療法の乏しい線維化を伴う慢性肝疾患の患者に対し、新たな治療の選択肢になり得る可能性があります。
■TRIM3、TRIM4(全身投与型再生誘導医薬®新規ペプチド)
レダセムチドに続く新規再生誘導医薬®候補物質の探索プロジェクトについて、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する新規候補化合物(TRIM3、TRIM4、TRIM5)を同定するに至っております。次世代の再生誘導医薬®TRIM3,TRIM4はレダセムチドと同様に抹消血中の間葉系幹細胞を増加させることで、組織損傷を伴う幅広い疾患に対する組織再生を誘導します。当事業年度においては、各疾患モデル動物での実験データを着実に蓄積し、ライセンスアウトに向けた事業開発活動が引き続き進捗いたしました。
■SR-GT1(表皮水疱症の根治治療を目的とした幹細胞遺伝子治療)
当社が大阪大学との共同研究で開発を進めている幹細胞遺伝子治療(SR-GT1)は、表皮水疱症患者の水疱から間葉系幹細胞を採取する独自の開発技術を基盤として、レンチウイルスベクタ―を用いてⅦ型コラーゲン遺伝子を患者皮膚由来間葉系幹細胞に効率的に導入し、水疱内へと戻して持続的Ⅶ型コラーゲン供給を可能にする根治的表皮水疱症治療技術です。患者由来皮膚細胞を用いて表皮水疱症モデル皮膚組織を作製し、吸引法により水疱を人工的に形成したところ、Ⅶ型コラーゲン遺伝子を導入した間葉系幹細胞を水疱内と同じ領域に投与して作製した表皮水疱症モデル皮膚組織では、Ⅶ型コラーゲンタンパク質を広範囲に基底膜領域へ供給しており、水疱が形成されないことが確認されました。また、他の投与経路と比較して水疱内投与は生体内において高い生着能を確認しております。遺伝子導入細胞の表皮シートを介した移植や皮内投与と比較し、より患者の負担が少なく高い薬効を長期間持続的に示す幹細胞遺伝子治療は、現在有効な根治療法のない栄養障害型表皮水疱症の根治的治療法となることが期待されます。
これらの結果、当事業年度の経営成績の状況は以下のとおりであります。
(事業収益)
当事業年度における事業収益はなし(前年同期の事業収益はなし)となりました。
(事業費用)
当事業年度における研究開発費は前事業年度に比べて59,318千円減少し1,394,651千円(前年同期比4.0%減)、販売費及び一般管理費は前事業年度に比べて45,233千円減少し576,881千円(前年同期比7.2%減)となりました。研究開発費の減少は、主に研究用材料費の減少及び研究員に対する株式報酬費用の減少によるものであります。販売費及び一般管理費の減少は、主に役員及び管理部門の従業員に対する株式報酬費用の減少によるものであります。この結果、当事業年度における事業費用は前事業年度に比べて104,552千円減少し1,971,532千円(前年同期比5.0%減)となりました。
(営業損益)
当事業年度において、事業収益なし、事業費用1,971,532千円を計上した結果、営業損失は1,971,532千円(前年同期は2,076,084千円の営業損失)となりました。
(営業外損益・経常損益)
当事業年度における営業外収益は前事業年度に比べて817千円増加し1,113千円(前年同期比276.6%増)、営業外費用は前事業年度に比べて2,058千円減少し24千円(前年同期比98.8%減)となりました。営業外収益の主な内訳は還付金収入579千円、物品売却益463千円であります。また、営業外費用の主な内訳は撤去費用20千円であります。これらの結果、経常損失は1,970,444千円(前年同期は2,077,872千円の経常損失)となりました。
(特別損益・税引前当期純損益)
当事業年度における特別利益は42,870千円(前年同期比27.4%減)、特別損失は210千円(前年同期の特別損失はなし)となりました。特別利益の主な内訳は従業員の退職に伴う新株予約権戻入益42,850千円であります。また、特別損失の主な内訳は固定資産売却損140千円であります。これらの結果、税引前当期純損失は1,927,784千円(前年同期は2,018,825千円の税引前当期純損失)となりました。
(当期純損益)
当事業年度における法人税等は1,652千円となりました。この結果、当期純損失は1,929,437千円(前年同期は2,022,166千円の当期純損失)となりました。
なお、当社は再生誘導医薬®事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。
② 財政状態
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は7,325,049千円となり、前事業年度末に比べ1,552,439千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が1,415,857千円減少したことによるものです。また、固定資産合計は193,610千円となり、前事業年度末に比べ9,315千円減少いたしました。これは、有形固定資産の減価償却により有形固定資産が5,618千円減少、ソフトウエアの減価償却により無形固定資産が139千円減少、長期前払費用の流動資産への振替により投資その他の資産が3,558千円減少したことによるものです。この結果、資産合計は7,518,659千円となり、前事業年度末に比べ1,561,755千円減少となりました。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は87,884千円となり、前事業年度末に比べ20,357千円増加いたしました。これは主に前受金が27,126千円増加したことによるものです。また、固定負債合計は116,545千円となり、前事業年度末に比べ1,807千円減少いたしました。これは主に繰延税金負債が1,980千円減少したことによるものです。この結果、負債合計は204,430千円となり、前事業年度末に比べて18,549千円増加となりました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は7,314,229千円となり、前事業年度末に比べ1,580,305千円減少いたしました。これは主に当期純損失1,929,437千円を計上した一方、新株予約権が137,831千円増加、新株予約権の行使及び役員の株式報酬としての譲渡制限付株式の発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ105,650千円増加したことによるものです。なお、2025年7月30日効力発生の減資により資本金が106,400千円減少し、資本準備金が106,400千円増加しております。この結果、資本金10,000千円、資本剰余金9,634,875千円、利益剰余金△3,783,253千円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は6,994,592千円と前事業年度末と比べ1,415,857千円の減少となりました。
営業活動の結果支出した資金は1,414,608千円(前事業年度は1,881,497千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失の計上1,927,784千円、株式報酬費用の計上391,553千円、未収消費税等の減少79,495千円等によるものであります。
投資活動の結果支出した資金は42,498千円(前事業年度は4,784千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものであります。なお、研究用機器については取得時に研究開発費として費用処理しております。
財務活動の結果得られた資金は41,250千円(前事業年度は78,966千円の収入)となりました。これは新株予約権の行使による株式発行収入によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a)生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b)受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c)販売実績
当社は再生誘導医薬®事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。また、前事業年度および当事業年度における販売実績はないため記載を省略しております。
(2)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。当社の財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当社における重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計上の見積り」に記載の通りであります。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要の主なものは、継続的な候補物質の探索や候補物質の製品化に向けた開発に関する研究開発費と、販売費及び一般管理費などの事業費用であります。これらの資金需要に対して安定的な資金供給を行うための財源については主に内部資金を活用することにより確保しております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により確保しております。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社が判断したものであります。
① 経営成績等の状況
当事業年度(2024年8月1日~2025年7月31日)の再生医療・医薬品業界においては、引き続き新規モダリティや新薬創出のための研究開発が進展し、革新的な治療法の実用化が加速しています。
米国FDAでは、医薬品の審査プロセスを迅速かつ柔軟にするための取り組みが進められており、政策的に重要な治療分野における早期承認の促進が期待されています。その一環として、国家の重点領域に資する医薬品を対象に審査期間を大幅に短縮できる「National Priority Vouchers」制度の導入が予定されているほか、申請を段階的に受け付けて並行審査を行うローリングレビューや、AIや臓器チップといった先端技術を活用した評価手法の導入も検討されています。これにより、従来よりも短期間で承認可否を判断できる体制の整備が進んでいます。さらに希少疾患領域では、単群試験に基づく限られたデータでも条件付き承認を可能とする制度改正が提案されており、アンメットメディカルニーズの高い分野における患者アクセスの改善が期待されています。こうした米国での取組は日本における承認審査に直接影響を与えるものではないものの、国際的な安全性・有効性・社会的受容性の裏付けとなり、国内開発品の実用化へ向けた間接的な追い風となることが期待されます。
また、日本政府においても創薬力強化を目的とした支援策が講じられており、文部科学省では、医学研究・ライフサイエンス研究の研究開発支援の強化、革新的シーズを創出するための分野横断的な基礎研究の推進、感染症有事を見据えた体制整備等が挙げられています。厚生労働省では、創薬エコシステム強化や新規モダリティ対応、有望なシーズの医薬品・医療機器の実用化促進等を重点施策としています。経済産業省では、医薬品・再生医療等製品の国産化促進、バイオ産業の拠点整備・技術支援、バイオベンチャー等の実用化支援等が重点施策として挙げられています。
このような創薬力強化に向けた動きが加速する一方、安全性・有効性に関する問題や、品質管理の難しさ、製造コストの増大等、再生医療・医薬品業界には依然として多くの課題が残されています。加えて、2025年5月に施行された再生医療等安全性確保法の改正によって、再生医療・遺伝子治療に関する承認審査が更に厳格化されることにより、開発期間の延伸やコストの増加といった課題が懸念されており、実用化へのハードルが一層高まる可能性もあります。
このような状況のもと、当社では、再生誘導医薬®開発品レダセムチド(HMGB1より創製したペプチド医薬)における臨床試験が進捗するとともに、レダセムチドに続く第二世代の再生誘導医薬®TRIM3、TRIM4について、非臨床開発及びライセンスアウトに向けた事業開発活動が引き続き進捗いたしました。
再生誘導医薬®は、従来の再生医療とは異なり、体外で人工的に培養した細胞の移植や投与を一切必要とせず、医薬品の投与によって患者自身の体内で間葉系幹細胞の集積誘導による再生医療を実現する、全く新しい作用メカニズムに基づく医薬品です。投与するのはペプチド、タンパクなどの物質であり、従来の医薬品と同じ方法で製造、輸送、保管、投与が可能であるため、再生医療・細胞治療と比較し、より手軽かつ安価に損傷組織の再生を促すことが可能であり、かつ再生医療・細胞治療と同等もしくはそれ以上の効果を発揮することが可能です。「生きた細胞を一切用いることなく、物質(化合物)の投与によって、再生医療/細胞治療を実現する」をコンセプトとする再生誘導医薬®は、移植治療や従来型の再生医療が抱える数多くの問題を克服する革新的な再生医療技術として、日本のみならず世界的な再生医療業界のゲームチェンジャーになることが期待されます。
(*)「再生誘導」、「再生誘導医薬」、「再生誘導医学」、「再生誘導医療」は当社の登録商標です。
各パイプラインにおける対象疾患ごとの進捗は以下のとおりです。
■レダセムチド(TRIM2:HMGB1より創製したペプチド医薬)
a)対象疾患:栄養障害型表皮水疱症
研究進捗:2015年8月 第Ⅰ相医師主導治験 開始
2017年3月 第Ⅰ相医師主導治験 終了
2017年12月 第Ⅱ相医師主導治験 開始
2019年9月 第Ⅱ相医師主導治験 終了
2020年3月 第Ⅱ相医師主導治験追跡調査 終了
2022年7月 追加第Ⅱ相臨床試験 開始
2023年3月 追加第Ⅱ相臨床試験 第一症例の登録
2025年7月 追加第Ⅱ相臨床試験 最終症例の登録
進捗状況:
2022年7月より追加第Ⅱ相臨床試験が開始され、2023年3月に第一例目の患者への投与が開始、2025年7月に最終症例の患者への投与が完了しております。本試験は難治性潰瘍を伴う栄養障害型表皮水疱症患者を対象に、レダセムチドの難治性潰瘍に対する有効性を検討することを目的としており、有効性評価の指標として、治験薬投与開始から52週以内における難治性潰瘍の閉鎖の有無を評価する予定です。また2020年3月に終了した栄養障害型表皮水疱症患者を対象とした医師主導治験及び追跡調査(第Ⅱ相試験)においては、第Ⅱ相試験に参加した栄養障害型表皮水疱症患者全例(9例)の解析で、レダセムチド投与により主要評価項目(全身皮膚の水疱、びらん、潰瘍の合計面積の治療前値からの変化率)で、統計学的に有意な改善が確認されております。レダセムチド投与終了後の最終観察時点(投与開始28週後)においても、9例中7例が治療前値を下回る改善を示し、そのうち4例は50%以上の著明な改善を示しました。また、有効性維持の評価を目的とした追跡調査の観察時点(投与開始52週後)においても有効性を確認したことから、栄養障害型表皮水疱症に対するレダセムチド治療効果の長期持続性も確認されました。副次評価項目(安全性評価)では懸念となる有害事象は観察されず、本治験において栄養障害型表皮水疱症患者におけるレダセムチド投与の有効性と安全性が確認されております。
表皮水疱症治療薬について、対象となる栄養障害型表皮水疱症は、全国の患者数が400名前後と推定される希少難治性疾患であり現在有効な治療法が存在せず、大規模な第Ⅲ相試験を計画することが困難であります。そのため、追加第Ⅱ相臨床試験の結果を踏まえ医薬品の承認申請を行う予定です。
なお、レダセムチドは2023年5月に厚生労働省より栄養障害型表皮水疱症を対象とした希少疾病用医薬品の指定を受けました。レダセムチドが希少疾病用医薬品の指定を受けたことは、表皮水疱症に対して有効である可能性及び現在の開発計画の妥当性について厚生労働省から一定の評価を受けたことになります。また、塩野義製薬においては、レダセムチドをできるかぎり早く医療の現場に提供できるよう、他の医薬品に優先して承認審査を受けることやその他の支援措置を享受することが可能になり、審査期間の短縮による早期の承認取得、販売開始が期待されます。
b)対象疾患:急性期脳梗塞
研究進捗:2019年4月 第Ⅱ相企業治験 開始
2021年10月 第Ⅱ相企業治験 終了
2023年4月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験(日本及び米国) 開始
2023年7月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験(欧州及び中国) 開始
2025年2月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験 治験計画の変更
2025年4月 グローバル後期第Ⅱ相臨床試験 中間解析
進捗状況:
2023年4月10日より日本において、2023年4月28日より米国において、2023年7月25日より欧州及び中国において、グローバル後期第Ⅱ相臨床試験がそれぞれ開始しており、本治験は、血管内再開通療法が実施できない急性期脳梗塞患者に対するレダセムチドの有効性及び安全性を評価するためにレダセムチド(1.5mg/kg:高用量群)、レダセムチド(0.75mg/kg:低用量群)またはプラセボを5日間投与する試験になります。2025年4月に実施された中間解析では事前に一定の無益性基準を設け、各用量群においてプラセボ群と比較してその基準を満たした場合は中止、満たさない場合は継続とする判断をすることとしておりました。盲検性を保つために独立した評価委員会で評価された上、塩野義製薬には各用量群に対する継続、中止の勧告がされることとなっており、中間解析の結果、レダセムチド高用量群については治験を継続し、レダセムチド低用量群については治験を中止すべきとの勧告が評価委員会から提示されました。本治験の計画当初、有効性が期待できる用量としてレダセムチド高用量群(1.5mg/kg)を計画しておりましたが、規制当局の指示によりレダセムチド低用量群(0.75mg/kg)も併せて検討することになっていたことから、今回の中間解析結果は当初より想定されていた範囲内の結果であります。
また、2022年10月に開示された第Ⅱ相臨床試験においては、薬剤投与開始90日後のmRS(脳出血や脳梗塞などの脳血管障害、パーキンソン病などの神経疾患といった神経運動機能に異常を来す疾患の重症度を評価するためのスケールであり、スコア0(症状なし)~スコア6(死亡)の7段階評価)を評価した結果、5日間投与完了の翌日に介助が必要な状態(mRS≧3)の患者が投与開始90日後に介助不要(mRS≦2)になった(症状が改善した)割合について、プラセボ投与群では18%(11例/60例)であることに対し、レダセムチド投与群では34%(23例/68例)となり、急性期脳梗塞患者に対するレダセムチドの有効性が示唆されました。要介護の脳梗塞患者において、介助不要となり社会的自立が可能なレベルにまで症状が改善することの社会的意義は大きく、レダセムチドの投与による急性期脳梗塞患者のQOL(Quality of Life)の向上が見込まれます。
c)対象疾患:虚血性心筋症
研究進捗:2024年3月 第Ⅱ相医師主導治験 開始
2024年12月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録
進捗状況:
2024年3月より、大阪大学医学部附属病院を中心とした複数の施設において第Ⅱ相医師主導治験が開始され、2024年12月に第一例目の患者への投与が完了いたしました。本治験は冠動脈バイパス手術を施行した虚血性心筋症患者に対し、レダセムチド若しくはプラセボ(各10例)を5日間投与し、レダセムチドの有効性、安全性を評価することを主たる目的としています。有効性においては投与開始52週後の心エコーなどによる各種心機能検査等について評価することが予定されております。
虚血性心筋症は心筋が血流不足や酸素不足により損傷を受ける状態を指し、心筋の主な血流供給源である冠動脈が狭窄または閉塞することによって発生します。発症すると心筋の機能障害を引き起こし、最終的には心不全を招く可能性があります。非臨床においては、レダセムチドの投与による心筋の壊死部分の縮小や心臓の繊維化の減少が確認されており、虚血性心筋症の新たな治療薬となることが期待されます。
d)対象疾患:変形性膝関節症
研究進捗:2020年11月 第Ⅱ相医師主導治験 開始
2021年2月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録
2021年12月 第Ⅱ相医師主導治験 最終症例の登録
2022年12月 第Ⅱ相医師主導治験 終了
進捗状況:
2023年3月に、弘前大学医学部附属病院において実施された医師主導治験(第Ⅱ相試験、レダセムチド群10例、プラセボ群10例)について、主要目的として設定したレダセムチド投与時の安全性評価について、重篤な有害事象及び本剤との関連性が認められると判定された副作用は認められず、変形性膝関節症を対象とする本剤投与時の安全性について確認された旨の開示をいたしました。また、副次目的として設定した本剤投与時の有効性評価について、変形性膝関節症の根本的な原因の一つである軟骨の損傷部位の形態学的評価としてMRI撮像を行ったところ、投与開始後52週時点の大腿骨内側顆軟骨欠損面積率の変化量(中央値)はプラセボ群で-3.5%であったのに対し、レダセムチド群では-7.5%であり、レダセムチド群でより欠損部位が縮小した傾向でした。なお、事後解析の結果になりますが、専門医師による内視鏡での肉眼観察においても、良好な軟骨再生の所見がレダセムチド群では5例に認められました(プラセボ群では2例)。現在、今後の開発方針を検討しております。
変形性膝関節症は膝関節軟骨の摩耗により膝の形が変形し、痛みや腫れをきたす疾患で、重度の症例では強い痛みのため歩行困難になることも多く、QOL及び日常生活動作の低下が顕著になります。国内の潜在患者数は約2,500万人、そのうち自覚症状を有する患者数は約1,000万人と推定されています。主な原因は加齢によるものが多く、40代以降の中高年に多く発症します。損傷をうけた関節軟骨は自己修復しにくいことが知られており、損傷した軟骨組織の修復促進、あるいは人工関節置換術への移行を回避できるような新たな治療法の開発が望まれています。レダセムチドは、マウス膝関節軟骨欠損モデルを用いた本剤の非臨床試験で軟骨修復作用等が確認されており、変形性膝関節症患者に対する新たな治療薬となることが期待されます。
e)対象疾患:慢性肝疾患
研究進捗:2020年11月 第Ⅱ相医師主導治験 開始
2021年3月 第Ⅱ相医師主導治験 第一症例の登録
2022年6月 第Ⅱ相医師主導治験 最終症例の登録
2022年12月 第Ⅱ相医師主導治験 終了
進捗状況:
2023年4月に、新潟大学医歯学総合病院により実施された医師主導治験(第Ⅱ相試験、レダセムチド群10例)について、主要評価項目を達成いたしました。第Ⅱ相試験においては、主要目的として設定したレダセムチド投与時の安全性評価について、10例の患者のうち2例で治験薬との因果関係が否定できない有害事象(発声障害、発熱)が発現しましたが、いずれも軽度で回復しています。また、重篤な有害事象(肝生検実施時の出血)が1例発現しましたが、処置なく回復し、レダセムチドとの因果関係は否定されたことから、レダセムチドの忍容性は良好であると考えられます。副次目的として設定した探索的な有効性評価について、レダセムチド 1.5mg/kg(体重換算)を週1回4週間投与(計4回投与)した5例において、投与開始78日後及び162日後の時点で、MRエラストグラフィを指標とした肝硬度の改善傾向が認められました(投与開始前と比較して平均12%及び8%の減少率)。また、MRエラストグラフィによる肝硬度の改善だけでなく、他の線維化指標(線維化インデックス、線維化マーカー、modified HAIのFibrosis stage値)も随伴して改善傾向を示す症例が複数例認められました。これら各種有効性評価指標結果をふまえた治験責任医師による総合評価では、レダセムチド1.5mg/kg(体重換算)を週1回4週間投与(計4回投与)した5例のうち3例(60%)、1週目に4日間連続投与及び2~4週目に週1回投与(計7回投与)した5例のうち2例(40%)で肝線維化の改善傾向が示唆されました。以上の結果を踏まえ、慢性肝疾患に対する今後の開発方針が検討されています。
線維化が進行した肝硬変は、肝機能低下、門脈圧亢進、発癌など生命予後を左右する様々な問題が生じうる疾患であり、肝硬変の患者数は国内40~50万人と推定されております。現状、一般治療において、線維化が進行した肝硬変に対し完治が期待できる治療法は肝移植を除き確立されておらず、移植医療に頼らない新たな肝線維化改善薬や組織再生促進薬の開発が期待されております。レダセムチドは、有効な治療法の乏しい線維化を伴う慢性肝疾患の患者に対し、新たな治療の選択肢になり得る可能性があります。
■TRIM3、TRIM4(全身投与型再生誘導医薬®新規ペプチド)
レダセムチドに続く新規再生誘導医薬®候補物質の探索プロジェクトについて、次世代の開発候補品選定に向けた積極的な研究開発投資を続けながら候補物質スクリーニングを多面的に展開してきたことで、これまでに顕著な活性を有する新規候補化合物(TRIM3、TRIM4、TRIM5)を同定するに至っております。次世代の再生誘導医薬®TRIM3,TRIM4はレダセムチドと同様に抹消血中の間葉系幹細胞を増加させることで、組織損傷を伴う幅広い疾患に対する組織再生を誘導します。当事業年度においては、各疾患モデル動物での実験データを着実に蓄積し、ライセンスアウトに向けた事業開発活動が引き続き進捗いたしました。
■SR-GT1(表皮水疱症の根治治療を目的とした幹細胞遺伝子治療)
当社が大阪大学との共同研究で開発を進めている幹細胞遺伝子治療(SR-GT1)は、表皮水疱症患者の水疱から間葉系幹細胞を採取する独自の開発技術を基盤として、レンチウイルスベクタ―を用いてⅦ型コラーゲン遺伝子を患者皮膚由来間葉系幹細胞に効率的に導入し、水疱内へと戻して持続的Ⅶ型コラーゲン供給を可能にする根治的表皮水疱症治療技術です。患者由来皮膚細胞を用いて表皮水疱症モデル皮膚組織を作製し、吸引法により水疱を人工的に形成したところ、Ⅶ型コラーゲン遺伝子を導入した間葉系幹細胞を水疱内と同じ領域に投与して作製した表皮水疱症モデル皮膚組織では、Ⅶ型コラーゲンタンパク質を広範囲に基底膜領域へ供給しており、水疱が形成されないことが確認されました。また、他の投与経路と比較して水疱内投与は生体内において高い生着能を確認しております。遺伝子導入細胞の表皮シートを介した移植や皮内投与と比較し、より患者の負担が少なく高い薬効を長期間持続的に示す幹細胞遺伝子治療は、現在有効な根治療法のない栄養障害型表皮水疱症の根治的治療法となることが期待されます。
これらの結果、当事業年度の経営成績の状況は以下のとおりであります。
(事業収益)
当事業年度における事業収益はなし(前年同期の事業収益はなし)となりました。
(事業費用)
当事業年度における研究開発費は前事業年度に比べて59,318千円減少し1,394,651千円(前年同期比4.0%減)、販売費及び一般管理費は前事業年度に比べて45,233千円減少し576,881千円(前年同期比7.2%減)となりました。研究開発費の減少は、主に研究用材料費の減少及び研究員に対する株式報酬費用の減少によるものであります。販売費及び一般管理費の減少は、主に役員及び管理部門の従業員に対する株式報酬費用の減少によるものであります。この結果、当事業年度における事業費用は前事業年度に比べて104,552千円減少し1,971,532千円(前年同期比5.0%減)となりました。
(営業損益)
当事業年度において、事業収益なし、事業費用1,971,532千円を計上した結果、営業損失は1,971,532千円(前年同期は2,076,084千円の営業損失)となりました。
(営業外損益・経常損益)
当事業年度における営業外収益は前事業年度に比べて817千円増加し1,113千円(前年同期比276.6%増)、営業外費用は前事業年度に比べて2,058千円減少し24千円(前年同期比98.8%減)となりました。営業外収益の主な内訳は還付金収入579千円、物品売却益463千円であります。また、営業外費用の主な内訳は撤去費用20千円であります。これらの結果、経常損失は1,970,444千円(前年同期は2,077,872千円の経常損失)となりました。
(特別損益・税引前当期純損益)
当事業年度における特別利益は42,870千円(前年同期比27.4%減)、特別損失は210千円(前年同期の特別損失はなし)となりました。特別利益の主な内訳は従業員の退職に伴う新株予約権戻入益42,850千円であります。また、特別損失の主な内訳は固定資産売却損140千円であります。これらの結果、税引前当期純損失は1,927,784千円(前年同期は2,018,825千円の税引前当期純損失)となりました。
(当期純損益)
当事業年度における法人税等は1,652千円となりました。この結果、当期純損失は1,929,437千円(前年同期は2,022,166千円の当期純損失)となりました。
なお、当社は再生誘導医薬®事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績記載を省略しております。
② 財政状態
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は7,325,049千円となり、前事業年度末に比べ1,552,439千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が1,415,857千円減少したことによるものです。また、固定資産合計は193,610千円となり、前事業年度末に比べ9,315千円減少いたしました。これは、有形固定資産の減価償却により有形固定資産が5,618千円減少、ソフトウエアの減価償却により無形固定資産が139千円減少、長期前払費用の流動資産への振替により投資その他の資産が3,558千円減少したことによるものです。この結果、資産合計は7,518,659千円となり、前事業年度末に比べ1,561,755千円減少となりました。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は87,884千円となり、前事業年度末に比べ20,357千円増加いたしました。これは主に前受金が27,126千円増加したことによるものです。また、固定負債合計は116,545千円となり、前事業年度末に比べ1,807千円減少いたしました。これは主に繰延税金負債が1,980千円減少したことによるものです。この結果、負債合計は204,430千円となり、前事業年度末に比べて18,549千円増加となりました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は7,314,229千円となり、前事業年度末に比べ1,580,305千円減少いたしました。これは主に当期純損失1,929,437千円を計上した一方、新株予約権が137,831千円増加、新株予約権の行使及び役員の株式報酬としての譲渡制限付株式の発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ105,650千円増加したことによるものです。なお、2025年7月30日効力発生の減資により資本金が106,400千円減少し、資本準備金が106,400千円増加しております。この結果、資本金10,000千円、資本剰余金9,634,875千円、利益剰余金△3,783,253千円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は6,994,592千円と前事業年度末と比べ1,415,857千円の減少となりました。
営業活動の結果支出した資金は1,414,608千円(前事業年度は1,881,497千円の支出)となりました。これは主に、税引前当期純損失の計上1,927,784千円、株式報酬費用の計上391,553千円、未収消費税等の減少79,495千円等によるものであります。
投資活動の結果支出した資金は42,498千円(前事業年度は4,784千円の支出)となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものであります。なお、研究用機器については取得時に研究開発費として費用処理しております。
財務活動の結果得られた資金は41,250千円(前事業年度は78,966千円の収入)となりました。これは新株予約権の行使による株式発行収入によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a)生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b)受注実績
当社は受注生産を行っておりませんので、該当事項はありません。
c)販売実績
当社は再生誘導医薬®事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を行っておりません。また、前事業年度および当事業年度における販売実績はないため記載を省略しております。
(2)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。当社の財務諸表の作成にあたり採用している重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計方針」に記載のとおりであります。また、当社における重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」の「重要な会計上の見積り」に記載の通りであります。
(3)資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要の主なものは、継続的な候補物質の探索や候補物質の製品化に向けた開発に関する研究開発費と、販売費及び一般管理費などの事業費用であります。これらの資金需要に対して安定的な資金供給を行うための財源については主に内部資金を活用することにより確保しております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により確保しております。
(4)経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。