有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2019/11/12 15:00
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82項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
第15期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
当事業年度における我が国経済は、米国経済の拡大を背景に製造業を中心として企業業績が大幅に改善する一方、米中貿易摩擦並びに中国景気の減速、FRBの利上げ凍結観測による市場の混乱などもあり、不透明さが増しました。当社を取り巻く環境におきましては、家計の金融資産残高が過去最高の1,830兆円となり(2018年12月末。日本銀行『資金循環統計(速報)』2018年第4四半期)、個人投資家数(延べ人数)が5,000万人を超え(東京証券取引所『2017年度株式分布状況調査の調査結果』)、自社PRのニーズを背景に、株主優待制度を導入する企業が1,450社(2018年11月9日現在 大和インベスター・リレーションズ株式会社 プレスリリース『上場企業の約4割が導入!「株主優待ガイド2019年版」発行』)と過去最高を記録いたしました。また、1月から施行されたMiFID2の影響によりIR活動の在り方が劇的に変化するとともに、海外機関投資家の保有株式比率上昇も相まって、上場企業における統合報告書の需要も旺盛でありました。
当社はこのような環境のもと、「プレミアム優待倶楽部」導入社数を26社まで増やすことができました(前事業年度から純増8社)。また、新たに電子議決権行使結果の集計等のサービスについて、2018年9月には上場企業における同システムの安全性・有用性を確認する実証実験に成功いたしました。「IR-navi」の契約社数は231社となりました(前事業年度から純増19社)。また、サービス提供した企業がWICIジャパン統合報告優良企業賞、日経ARアワード等の多数の受賞歴を有するアレックス・ネット株式会社を2018年6月1日付で吸収合併しております。これにより、「IR-navi」・「プレミアム優待倶楽部」等のプラットフォームの提供のみならず、デジタルコンテンツ制作能力を獲得するに至り、営業面では、商材・ノウハウ及び販路共有化にともなう複数サービス提供案件も受注いたしました。
この結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。
a.財政状態
(資産)
当事業年度末における総資産は、827,373千円(前事業年度末は345,266千円)となり、482,107千円増加いたしました。
流動資産は、554,897千円(前事業年度末は249,852千円)となり、305,045千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が154,284千円、受取手形が26,076千円、売掛金が97,554千円、電子記録債権が13,350千円、前払費用が9,806千円増加したこと等によるものであります。
固定資産は、272,475千円(前事業年度末は95,413千円)となり、177,061千円増加いたしました。これは主に、ソフトウエアが59,874千円、のれんが55,831千円、顧客関連資産が37,558千円、保険積立金が10,269千円、繰延税金資産が17,054千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債は、575,071千円(前事業年度末は226,785千円)となり、348,285千円増加いたしました。これは主に、買掛金が74,219千円、1年内返済予定の長期借入金が21,622千円、未払金が74,945千円、未払法人税等が9,584千円、前受金が21,515千円、預り金が6,158千円、長期借入金が140,332千円増加したこと等によるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、252,302千円(前事業年度末は118,480千円)となり、133,822千円増加いたしました。これは主に、当期純利益を121,822千円計上したことにより利益剰余金が増加したことによるものであります。
b.経営成績
当事業年度の業績は、売上高は1,161,243千円(前事業年度比78.6%増)となりました。加えて、プレミアム優待倶楽部事業の増収により、売上総利益が向上した結果、営業利益は110,367千円(同101.4%増)となり、経常利益は107,710千円(同92.4%増)となりました。当期純利益は121,822千円(同3,349.1%増)となりました。
なお、当社の事業は株主管理プラットフォーム事業の単一セグメントのため、セグメントごとの記載はしておりません。製品・サービス別業績の概要は以下のとおりであります。
「プレミアム優待倶楽部」の売上高は、新規顧客の獲得と大型案件の受注増に加え、既存顧客における株主優待ポイントの利用が伸長したことで671,820千円(同100.2%増)となりました。
「IR-navi」の売上高は、サービス提供の実態に合わせて契約形態を変更したことにより、232,705千円(同14.4%減)となりました。
「ESGソリューション」の売上高は、2018年6月1日におけるアレックス・ネット株式会社の買収により、231,110千円(同1,969.1%増)となりました。
その他の売上高は、顧客上場企業へのコンサルティング業務などにより、25,607千円(同18.9%減)となりました。
第16期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
当第3四半期累計期間におけるわが国経済は、米中間の貿易摩擦をはじめとした外部環境の不透明感の高まりを受け、円高の進行や輸出の伸び悩みによる製造業の悪化、及び消費税引き上げに伴うマイナス影響を背景に個人消費は底堅く、AI、RPAなど新技術による行政・企業の業務効率化を目的とした設備投資も堅調であり、東京オリンピック及びインバウンドに伴う内需改善により、引き続き緩やかな回復基調が継続する見通しであります。
国内株式市場においては、上場企業における持続的な企業価値向上を動機付ける観点から、当該上場企業の成長段階、上場銘柄の特性に応じた市場構造の変更も検討されており、当社サービスの販売先である上場企業を取り巻く環境も変化しつつあります。上場企業におけるIR活動も多様化し、コーポレートガバナンス強化の観点から国内外機関投資家との対話促進ニーズが旺盛であり、MiFID2の施行及び海外機関投資家の保有比率の上昇も相まって、自社株式マーケティングを目的とした国内外機関投資家への情報配信、統合報告書やCSRレポート等のコミュニケーションツールの引き合いも増加いたしました。
この結果、第3四半期累計期間末の財政状態及び経営成績は以下の通りとなりました。
a.財政状態
(資産)
当第3四半期会計期間末における資産合計は1,093,949千円となり、前事業年度末に比べ266,576千円増加いたしました。これは主に、受取手形及び売掛金が18,444千円、電子記録債権が13,938千円、投資その他の資産が11,032千円減少したものの、現金及び預金が281,429千円、ソフトウエアが31,110千円増加したこと等によるものであります。
(負債)
当第3四半期会計期間末における負債合計は518,562千円となり、前事業年度末に比べ56,508千円減少いたしました。これは主に、未払法人税等が61,347千円、前受金が45,505千円増加したものの、買掛金が32,150千円、1年内返済予定の長期借入金が10,702千円、未払金が66,722千円、長期借入金が55,158千円減少したこと等によるものであります。
(純資産)
当第3四半期会計期間末における純資産合計は575,387千円となり、前事業年度末に比べ323,085千円増加いたしました。これは主に、資本金及び資本剰余金がそれぞれ79,485千円、四半期純利益を計上したことにより利益剰余金が166,205千円増加したこと等によるものであります。
b.経営成績
当第3四半期累計期間の経営成績は、売上高1,176,645千円、営業利益238,441千円、経常利益243,416千円、四半期純利益166,205千円となりました。
なお、当社は株主管理プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント情報との関連についての記載はしておりません。サービス別売上高の概況は以下のとおりです。
「プレミアム優待倶楽部」は「ポイント制株主優待」と株主の「電子化」(株主の電子メールアドレスを取得して法定書類を電磁的に提供し、また株主専用サイトにおける上場企業と株主との双方向コミュニケーションを実現すること)を組み合わせたサービスです。2018年末より契約社数が16社増加し、42社になったこと等により、売上高が761,764千円となりました。
「IR-navi」は、上場企業へ提供している機関投資家マーケティングプラットフォームです。2018年末より契約社数が33社増加し、264社になったこと等により、売上高が195,541千円となりました。
「ESGソリューション」は、統合報告書やアニュアルレポートなどの投資家とのコミュニケーションツールを企画、制作するサービスです。2018年にアレックス・ネット株式会社の吸収合併の影響により売上高が204,749千円となりました。
その他、決算説明会の企画及び運営サポートを行っております。このサービスによる売上高が14,589千円となりました。
② キャッシュ・フローの状況
第15期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べると、154,284千円増加し、343,676千円となりました。なお、合併による現金及び現金同等物の増加額は95,116千円であります。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローにより獲得した資金は、153,318千円(前事業年度は98,156千円の獲得)となりました。主な増加の要因は、税引前当期純利益104,706千円、減価償却費28,248千円、のれん償却額3,869千円、支払手数料2,678千円、仕入債務の増加額68,192千円があったこと等によるものであります。一方、減少の要因として、売上債権の増加額123,756千円があったこと等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローにより流出した資金は、264,447千円(前事業年度は41,582千円の流出)となりました。主な減少の要因は無形固定資産の取得による支出75,048千円、合併交付金の支払額187,697千円があったこと等によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローにより獲得した資金は、170,296千円(前事業年度は10,976千円の獲得)となりました。主な増加の要因は長期借入れによる収入190,000千円があったことによるものであります。一方、減少の要因として、長期借入金の返済による支出28,046千円があったことによるものであります。
③ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社は受注活動を行っておりますが、受注実績は販売実績と近似しているため、記載を省略しております。
c.販売実績
第15期事業年度及び第16期第3四半期累計期間における販売実績は、次の通りであります。
なお、当社は株主管理プラットフォーム事業の単一セグメントであります。
セグメントの名称第15期事業年度
(自 2018年1月1日
至 2018年12月31日)
第16期
第3四半期累計期間
(自 2019年1月1日
至 2019年9月30日)
販売額(千円)前年同期比(%)販売額(千円)
株主管理プラットフォーム1,161,243178.61,176,645

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて作成されております。この財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
また、財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
第15期事業年度(自 2018年1月1日 至 2018年12月31日)
a 売上高
当事業年度における売上高は、前事業年度と比べて511,118千円増加し、1,161,243千円(対前期増減率78.6%増)となりました。その主な内訳は、「第2 事業の状況3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b 売上総利益
当事業年度における売上原価は、304,905千円増加し、591,575千円(同106.4%増)となりました。その主な内訳は、プレミアム優待倶楽部売上高の増加に伴う商品仕入が増加、ESGソリューション売上高の増加に伴う制作原価が増加したこと等によるものであります。
これらの結果、売上総利益は569,668千円(同56.7%増)となりました。
c 販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度と比べて150,648千円増加し、459,300千円(同48.8%増)となりました。その主な内訳は、人員増加に伴う人件費が114,590千円、支払手数料が19,286千円、研究開発費が15,000千円増加したこと等によるものであります。
これらの結果、営業利益は110,367千円(同101.4%増)となりました。
d 経常利益
当事業年度における営業外収益は、前事業年度と比べて1,802千円減少し、1,939千円(同48.2%減)となりました。その主な内訳は、賃料収入が1,928千円減少したこと等によるものであります。営業外費用は、前事業年度と比べて2,035千円増加し、4,596千円(同79.5%増)となりました。その主な内訳は、支払利息が851千円、支払手数料が969千円増加したこと等によるものであります。
これらの結果、経常利益は107,710千円(同92.4%増)となりました。
e 特別損益
当事業年度における特別利益は計上しておりません。特別損失は、前事業年度と比べて47,417千円が減少し、3,004千円(同94.0%減)となりました。その主な内訳は、固定資産除却損が41,443千円、減損損失が8,077千円減少したこと等によるものであります。
f 税引前当期純利益
当事業年度における税引前当期純利益は、104,706千円(同1,344.2%増)となりました。
g 法人税等
当事業年度における法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額は、△17,115千円(前事業年度は3,717千円)となりました。
h 当期純利益
当事業年度における当期純利益は、121,822千円(対前期増減率3,348.7%増)となりました。
第16期第3四半期累計期間(自 2019年1月1日 至 2019年9月30日)
a 売上高
当第3四半期累計期間における売上高は、1,176,645千円となりました。その主な内訳は、「第2 事業の状況3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載のとおりであります。
b 売上総利益
当第3四半期累計期間における売上原価は、606,422千円となりました。その主な内訳は、プレミアム優待倶楽部売上高の増加に伴う商品仕入が増加、ESGソリューション売上高の増加に伴う制作原価が増加したこと等によるものであります。
これらの結果、売上総利益は570,222千円になりました。
c 販売費及び一般管理費、営業利益
当第3四半期累計期間における販売費及び一般管理費は、331,781千円となりました。
この結果、営業利益は238,441千円となりました。
d 経常利益
当第3四半期累計期間における営業外収益は、6,604千円となりました。その主な内訳は、保険解約返戻金が6,453千円増加したこと等によるものであります。営業外費用は、1,628千円となりました。その主な内訳は、支払利息が1,349千円増加したこと等によるものであります。
これらの結果、経常利益は243,416千円となりました。
e 税引前四半期純利益
当第3四半期累計期間における税引前四半期純利益は、243,416千円となりました。
f 四半期純利益
当第3四半期累計期間における法人税等を77,211千円計上しました。
この結果、四半期純利益は166,205千円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主たるものは、「プレミアム優待倶楽部」の優待商品仕入、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社は、事業活動に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金及び設備投資は、自己資金及び金融機関からの長期借入により調達しております。
なお、当事業年度における借入金の有利子負債の残高は235,776千円となっております。また、当事業年度における現金及び現金同等物の残高は343,676千円となっております。
⑤経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、高い成長性、収益性、及び資本効率を達成するために、売上高成長率20%、営業利益率20%、及びROIC20%の達成を中期的に目指す経営指標として捉えております。
これらの目標に対し、当事業年度の達成状況は次のとおりです。
経営指標目標値2018年12月期目標差異
売上高成長率20%以上78.6%58.6ポイント
営業利益率20%以上9.5%△10.5ポイント
ROIC20%以上14.9%△5.1ポイント