有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/05/18 15:00
【資料】
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【項目】
157項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
給与計算業務のプロフェッショナルとして、「お客様に気持ちよくサービスを受けていただく」を第一に考え、専門性・安全性・確実性、さらに効率性を徹底的に追求し、開発した「サービス」を提供することで企業の存在基盤を支える「ソフトインフラ」としての役割を担っていきます。さらに時代と経営環境の変化への対応とサービス精度向上の為に「サービス」を進化・成長させ、提供し続けることで企業社会の基盤を担う強固な「ソフトインフラ」としての使命を全うしていきます。
(2)経営戦略等
給与計算業務のアウトソーシング市場は拡大が見込まれており、今後も新規顧客の開拓が行われていくマーケットであることから、当社グループは、多くの顧客にサービス提供を行ってきた実務経験を集約した新基幹システム(P3)を用いて、最新のテクノロジーを利用したサービスを構築することによって、より専門性・安全性・確実性・効率性の高いサービスの提供、サービス範囲の拡大、ターゲット層拡大による新規顧客の開拓に注力し、“日本の給与計算”のデファクトスタンダードとなることを目指しております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの収益・利益は、給与計算処理実績人数の増加に伴い運用売上高が増加することによって拡大するものであるため、給与計算運用受注高、給与計算処理実績人数、リテンション率((当期運用売上高-喪失顧客の前期運用売上高)÷当期運用売上高)を重視しております。
また、給与計算処理実績人数の増加により、標準運用によるスケールメリットの効果により、売上原価率の低下が見込まれることから、売上総利益率の向上についても重視しております。
(4)経営環境
当社グループが提供するBPO事業は、給与計算業務、年末調整補助業務、マイナンバー管理業務等をはじめとする人事関連業務のフルスコープ型アウトソーシングサービスを特色としており、大手企業を中心に給与計算処理の導入実績もあることから、業界内において競争優位性を保っているものと認識しております。
現在、当社グループを取り巻く外部環境として、政府が進める「働き方改革」のもと、長時間労働の是正、労働生産性の向上等が各企業に求められておりますが、人材採用競争の激化は続くものと想定され、人員の増加により、これらの課題を解消することは困難となっております。
このような環境下で、企業が限られたリソースの選択と集中を行いながら、「働き方改革」という戦略的な業務を実施していくために、人事部門のアウトソーシングの活用がさらに活発化することが予想され、社会全体が転換期を迎えている状況にあります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは、今後の事業成長を支えるうえで以下の項目を重要な課題として認識しておりますが、これらに対応し、サービスを安定的に提供するため積極的に対処してまいります。
①新規顧客の獲得
給与計算業務のアウトソーシング市場は拡大が見込まれると考えており、今後も新規顧客の大幅な開拓が行われていく市場と考えられます。
このような事業環境のもと、当社グループは企業の人事部門が担う給与計算業務のほぼ全てを受託できるフルスコープ型アウトソーシングサービスを提供し、他社との差別化を図っております。新規顧客の獲得のためには、今後も顧客企業の給与計算業務の負荷を軽減すべく更なるサービスの強化を図ることが重要な課題であると認識しております。
マイナンバー制度の施行の際に、アウトソーシングサービスを活用した企業が多く存在していることは、企業における人事部門のアウトソーシング活用のハードルが低下し、給与計算業務のアウトソーシング市場拡大にプラス要因として機能しております。また、ペーパーレス化、テレワークの推進及び人事部門がコア業務へ特化するための施策や、BCP対策の一環、長時間労働是正の手段として、アウトソーシングサービスを活用し、コア業務に注力することに対する機運が高まっていることから、当社グループにとって、大きなビジネスチャンスと捉え、新規顧客に対してこれらに関する経営層、担当者向けのセミナーや営業活動を積極的に実施してまいりました。
当社グループのこれらの活動をきっかけとして、給与計算業務をアウトソースすることの有用性をご理解いただき、フルスコープ型アウトソーシングサービス導入へと繋げることで、更なる収益力の強化を図ってまいります。
②新基幹システム(P3)の開発・移行
当社グループが提供する給与計算業務のアウトソーシングサービスは、クラウドサービスの進展に伴い今後も大きく発展すると見込んでおり、継続的な業務の効率化並びに品質向上を進めることは、収益の増加はもとより顧客満足度の向上に繋がり、ひいては当社グループの成長に繋がるものと認識しております。このため、当社グループは持続的かつ安定的な成長基盤を構築し、強固な経営基盤を確保するために新基幹システム(P3)の開発・移行を継続しております。
新基幹システム(P3)では、次の3点により、持続的かつ安定的な成長基盤を構築すべく、開発・移行を行っております。
1、当社グループでの処理がブラックボックスにならないように、クラウド化の利便性を活用することで業務内容や進捗状況を「見える化」し、顧客企業がシームレスに現在の状況を確認できるようにすることで、より効率的に業務を行えるサービスを提供しております。当社が徹底した標準運用による業務効率化、業務統一を行ってきた実績があることにより実現できる開発であり、新基幹システム(P3)において他社との差別化を図ってまいります。
2、人的作業が必要だった部分の多くをシステムでカバーすることで、作業の効率化を図ると共に人的ミスも防ぎ、既存システムより高い品質を担保しております。既存システムから新基幹システム(P3)への移行を順次進めることで、精度向上の実現と更なる顧客満足度の向上に繋げてまいります。
3、新基幹システム(P3)を汎用性のあるものとすることで、給与計算業務を提供するだけでなく、当社グループにおいて業務効率向上のための販売管理等の社内業務と繋がるシステムの継続開発を行い、最適な業務処理体制の構築を図ってまいります。
③優秀な人材の採用・育成の強化、定着化
当社グループは、給与計算業務アウトソーシングサービスの効率的かつ安定的な品質をもったサービスを提供するため、北海道プロセスセンター、北海道セットアップセンター、北海道BPOセンター、長崎BPOセンター及び東京本社各拠点において業務の効率化を図っております。今後もより効率的に業務を行う体制を整備するため、社内の組織体制の見直しやジョブローテーションを通じ、業務を最適化することが必要であります。
加えて、今後の新規顧客の獲得や新サービス開始による事業規模拡大に伴い、給与計算処理実績人数が増加する中でも、安定的かつ高品質のサービスを提供できる体制を構築するため、新たな拠点を設置し、人材を採用・育成していくことに努めてまいります。
また、優秀な人材の確保も課題であり、多様な採用チャネルを通じて採用を推進するとともに、優秀な社員の流出を防ぐため、教育・研修制度の充実化を図り、社員のキャリアアップを促進してまいります。
北海道BPOセンターでは、住民税改定業務及び年末調整補助業務の時期に業務が集中的に発生し、給与計算処理実績人数の増加に伴い業務量も増加するため、パートタイマーの採用が重要な課題となっております。このため、パートタイマーにとっても働きがいのある環境を整備することに努めてまいります。
④法改正等への対応
労働基準法等の給与計算業務に係る法改正等は、当社グループのシステムにおいて影響を及ぼす可能性があり、迅速な対応が求められます。
当社グループでは、法改正等への対応について、早期に情報を収集することにより、当社がサービスを提供するシステムを改修するための体制を整備しており、今後も継続してこれらの取り組みを推進してまいります。
⑤財務体質の強化
当社グループの内、当社は、借入額の資産合計に占める割合が高くなっております。今後は、運転資金、各種投資のための資金確保の必要もあることから、有利子負債とのバランスを勘案しつつ自己資本の拡充を図ってまいります。
また、当社グループの内、当社は、旧株式会社ペイロールの買収に伴い、資産合計に占めるのれんの割合が高くなっております。これらは、事業の収益力を高め、のれんと負債の削減に努めることで、財務体質の強化に努めてまいります。
⑥新たな顧客群の獲得
当社グループは、フルスコープ型アウトソーシングサービスを提供するため、法改正への対応、雇用・勤怠形態の多様化への対応等、複雑化する日本の給与計算業務に対応可能な体制を整えてまいりました。その結果、当社グループは、給与計算業務が複雑な大規模企業(従業員数1,000人以上を目安)から受注を積み重ね、順調に業績を伸長させてまいりました。当面は、大規模企業へ当社グループの特徴等を訴求し、受注拡大を行う予定であります。
一方で、長期的には当社グループの対象顧客を増加させることを目的として、中規模企業(従業員数300人~1,000人程度を目安)にも当社サービスの展開を検討しております。そのためには、新基幹システム(P3)の定着や中規模企業向けのサービス範囲の決定等(P3 Standard Modelの確立)が必要となります。当社グループは今後、継続して中規模企業への展開について継続して検討してまいりますが、現時点で展開方針・時期等は決定しておりません。