有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/12 15:00
【資料】
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【項目】
141項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営方針
当社の経営理念である「ALL HAPPY BY DESIGN」は、デザインの力で世界にHAPPYの循環を作り出し、これによって社会に貢献することを意図しており、建築物を中心とした空間の創造を通じて経営理念を実現すべく事業を展開しております。
例えば図書館にいると自然と小声となるように、空間には私たちの思考や行動を変える大きな力があると考えております。空間をその空間の目的に沿って適切にデザインし、加えてその空間を共有する人々に心地よい、幸せな時間を過ごしてほしい。これが私たちの考える「ALL HAPPY BY DESIGN」です。
また、当社グループは、企業としての活動の全てが社会に何らかの価値をもたらすものであるべきと考えます。収益事業を通じてHAPPYを循環させるだけではなく、収益事業以外の活動、いわゆるCSR活動にも注力し、ESGを意識した経営を目指しております。当社グループは、収益事業から生み出される強みや資産を活用したCSR活動に取り組んでおりますが、CSR活動の成果は常に収益事業にフィードバックしており、収益事業と収益事業以外の活動を一体のものとして捉え、社会に貢献したいと考えております。
第12期連結会計年度までのCSR活動としては、当社連結子会社の所在地であるフィリピン・セブ州において、現地の子供を対象とした内装デザインコンテストを実施いたしました。
このイベントでは、親にプレゼントしたい家を子供達にデザインしてもらい(画像1)、これを3Dスキャナーの取り込みデータ及び3D画像製作システムを使って仮想空間に実現する(画像2)というものです。
現地の子供達にはデザインの素晴らしさと創ることの喜びを伝え、この活動に関わった当社従業員については、社会貢献意識の醸成と勉強会(画像3)や実践を通じての3D関連スキルの向上を目指しました。
(画像1) (画像2) (画像3)
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(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業拡大、企業価値向上を目指し、売上高及び売上高経常利益率を経営における重要な指標としております。具体的な数値については、上場後速やかに検討を行う予定です。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、デザインによる付加価値を有した空間の創造(企画、設計及び施工)を事業の中心としており、創業以来、当社グループの強みであるデザイン力を継続して強化してまいりました。当社グループが目指すデザインは、建築物の表面的な見栄えではなく、デザインをツールとした課題解決力を指し、創造力と言い換えることができるものです。
当社グループは、「人が人生の少なくない時間を過ごすオフィスという空間は、もっと人にとって心地良いものであるべき」という問題意識の下、オフィスの内装デザイン・施工から事業をスタートいたしました。
オフィスは固定費であり、これに係るコストは極力抑制するべきという考え方が多い中で、オフィスを単なるコストの対象としてみるのではなく、そこで働くワーカーのヒューマンエクスペリエンスを高めるための投資、その会社のブランドを体現するための投資と考え、人々を幸せにするだけでなく、空間の目的を実現する付加価値を持ったオフィスのデザインを目指してきました。昨今の働き方改革の流れは、当社グループの考えに一致するものであり、時流を的確に捉えて空間のデザインにおける当社グループの地位を一層高めてまいります。
また、当社グループの知名度が上がったことで、大手不動産会社・大手商社・大手IT企業等、新規のクライアントからの引き合いが増え、事業の規模と領域が拡大してまいりました。具体的には、大規模オフィス(大手町・渋谷・福岡の再開発ビル等)の内装デザインを受注した他、都内駅周辺開発計画のグランドデザイン及び設計・施工を受注する等、案件の大型化が進んでおります。海外での知名度の向上に伴い、海外展開、特に環太平洋地域への進出が視野に入りつつあること等、当社グループの事業は新しいステージに入ってきたと考えております。
このような状況を受け、当社グループは、2019年度からの3年間で次の成長へ向けた企業基盤の強化に取り組むことを予定しております。
具体的には、これまで実施してきた利益率向上施策・人材教育施策の継続の他、次の項目へ優先的に取り組んでまいります。
① 事業拡大及び適切な経営管理のための従業員数確保と環境整備
当社グループは成長の途上にあり、継続して従業員数を拡大する必要があると考えております。現業部門の従業員については、一人当たり売上高等の指標を考慮しつつ、管理部門の従業員については内部統制の状況を踏まえて従業員数の拡大を行う計画です。
また、これら従業員が快適に働ける環境を整えることは、従業員のモチベーションの向上、ひいては「ドラフト」というブランドの維持に大きな役割を果たしております。ショールームを兼ねた現在のオフィスは手狭となっており、オフィス移転又は改修による働く環境の再整備を進めてまいります。
② デジタルテクノロジーの積極的取り込みによる新領域事業の開発と業務効率化の推進
一般に建設業界はデジタル化が遅れていると言われておりますが、デジタルテクノロジーの積極的な活用は早急に対応すべき重要課題であると認識しております。
当社グループでは、D-RAWRITE INC.の設立及び育成を通じて、デジタル領域の機能強化を図ってきました。また、3Dスキャナーを購入し、CSR活動に活用しつつ設計のデジタル化に取り組むとともに、BIM(注1)による業務全体の効率化を進める等、デザインとテクノロジーの相乗効果による事業拡大を探索しております。通常の設計では、平面図等の図面関係資料と3D画像等はそれぞれ独立したデータとして個別に作成する必要があります。一方、BIMを活用した設計では、一元的に管理された詳細な設計情報(画像1)から様々な図面やパース(画像2)を容易に作成できる等、特に設計業務の効率化に大きな効果があります。
(画像1) (画像2)
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また、当社グループはデザイン力・企画力が強みであり、価格競争に巻き込まれにくい事業モデルであると考えておりますが、施工業務の適切な管理も利益の安定的かつ効率的な確保には重要であると考えます。このため、かねてよりプロジェクトマネジメント及びコンストラクションマネジメントの強化を推進しております。施工業務の適切な管理は、無駄な外注費・材料費の発生を抑え、適正な利益の確保につながります。この結果として、直接外注費及び材料費を売上高から控除した利益の率は過去より着実に改善しておりますが(注2)、RPA(注3)の導入等を通じて、一層の生産性の向上を実現したいと考えます。
このようなテクノロジーを積極的に取り込んで現在の事業の業務効率化を図りつつ、これらテクノロジーを活用した新しい事業への取り組みを進めてまいります。
③ 活動拠点の拡大(地方中核都市、海外等)
当社グループは、現在、東京及び大阪を中心に事業を行っておりますが、付加価値の高いオフィス等を求める需要は地方中核都市にも広がっております。これら地方中核都市の需要を確実に取り込み、高品質かつ利益率の高い事業を行うため、名古屋・福岡といった大都市での拠点開発を検討してまいります。
海外拠点の開発については現時点で具体的な計画はないものの、海外における度々の受賞等で当社グループの知名度は高まっており、海外のオフィスデザイン業務が発生しております。このため、将来への備えとして、海外子会社であるD-RAWRITE INC.の機能拡充及び連携強化並びに当社従業員の語学教育の充実は引き続き実施していく計画です。
0202010_006.png 0202010_007.pngD-RAWRITE INC.のオフィス(左)及びテレビ電話を介した当社との協業の様子(右)
(4)経営環境及び会社の対処すべき課題
働き方改革、健康経営オフィスの普及啓発活動(経済産業省)等、当社グループの主力事業領域であるオフィスへの関心はかつてないほど高まっております。また、J-REIT等に見られる活発な不動産投資も当社グループにとってのビジネス機会拡大につながるものと考えております。
このような中、当社グループは当面の課題を次の3点と考え、事業基盤の強化及び事業の拡大を進めてまいります。
① 優秀な人材の確保及び育成
当社グループの事業の性質上、事業の拡大には一定規模の人員拡大及び適切な人材育成が不可欠であると考えております。一人当たり生産性の向上に努めつつも、採用の強化及び従業員が高いモチベーションを保って働くことができる環境・体制の整備を進めてまいります。
② 業務実施体制の高度化
当社グループの事業は拡大しており、業務内容の高度化と業務規模の大型化が進んでおります。これに対応するため、個人に蓄積されていたスキル・ノウハウを組織として共有し、組織として業務を実施する体制の構築を進めております。今後も業務インフラのIT化などを行いつつ、業務実施体制の高度化に努めてまいります。
③ 内部管理体制の拡充及びコンプライアンスの徹底
当社グループは、社会的責任を果たしつつ、持続的な成長とこれによる企業価値の向上を目指してまいります。
当社グループの成長には、成長ステージに見合った管理機能とコンプライアンスの精神が深く浸透した企業風土の醸成が必須であると考えております。内部監査・人事・法務・経理等、それぞれの分野で高い専門性や豊富な経験を有している人材を採用することに加え、従業員に対する継続的な啓蒙及び研修等を実施することで、内部管理体制の一層の強化を図るとともにコンプライアンスの徹底に努めてまいります。
※ 用語解説
(注1)BIMとは、Building Information Modelingの略で、一般には建築物を構成する材料や設備機器等の各種情報(製品情報、位置情報、価格情報等)を建築物の3次元モデルに紐付けて管理し、これを建築設計、施工、維持管理といったあらゆる工程で活用する仕組みです。建築物の質の向上や業務効率化に大きく貢献するものと期待されております。
(注2)売上高から直接外注費及び材料費を除いた利益(直接外注費及び材料費が発生しない又は僅少な設計業務・設計監理業務を単独で行う案件を除く)の利益率は、2015年3月期の18.2%から2019年3月期の30.0%へ継続して改善しております。
(注3)RPAとは、Robotic Process Automationの略で、定型的作業をルールエンジンや人工知能等の技術を備えたソフトウエアのロボットに代行させる概念を指しております。