有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/02/25 15:00
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【項目】
148項目

事業等のリスク

当社グループの経営成績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。
また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断において重要であると考えられる事項については積極的に開示しております。
当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、本株式に関する投資判断は、以下の記載事項及び本項目以外の記載事項を、慎重に検討したうえで行われる必要があると考えられます。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
1.事業内容について
(1) 「演奏権等」の管理業務参入に関するリスクについて
当社グループでは著作権に関する4つの支分権のうち「演奏権等」を除く「録音権等」「出版権等」「貸与権」の3つの支分権と、「映画への録音」「ビデオグラム等への録音」「ゲームへの録音」「広告目的で行う複製」「放送・有線放送」「インタラクティブ配信」「業務用通信カラオケ」の7つの利用形態の著作権の管理を行っています。
「演奏権等」については、環境が整い次第、管理業務を開始する予定ですが、現時点ではその具体的な開始時期は未定であり、業務開始に伴う様々なコストの発生が、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
音楽著作権の4つの支分権(①~④)と7つの利用形態(⑤~⑪)の概念図

(2) 「著作権等管理事業」に関するリスクについて
当社グループの主力事業である「著作権等管理事業」は、著作権者との委任契約に基づき、利用者に提供しております。よって、大口著作権者が、他社サービスヘの移管等の理由により当社グループとの契約を終了させた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
(3) 「著作権等管理事業」の市場構造に関するリスクについて
当社グループの中核をなす音楽著作権管理事業の市場規模は、過去10年以上、年間の「著作権使用料徴収額」が1,100億円前後で推移しております。当該市場は、2001年10月に「著作権等管理事業法」が施行され、広く民間に著作権管理業務に関する門戸が開放されましたが、現在に至るまでJASRACの寡占状態が続いております。
当社グループといたしましては、同事業領域において、デジタルコンテンツディストリビューション(DD)業務などを推進し、さらなる差別化戦略の遂行を通じて、著作権の管理のみならず、利用者への訴求強化による利用促進を図ることで「権利者に選ばれ、利用者から支持される著作権管理事業者となる」という経営理念を実現し、業界のポジションを確固たるものとしてまいります。
しかしながら、今後景気の悪化や、業界のコスト構造の変化等により、当社グループが属する市場の規模が想定したほど拡大しない場合、あるいは、当社グループの差別化戦略が奏功せず、業界ポジションの確立につながらなかった場合には、当社グループの経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(4) 特定取引先への依存度が高いことについて
当社グループの主力事業である「著作権等管理事業(著作権管理業務)」の管理作品の11.4%は、当社のその他の関係会社に該当するエイベックス・グループの管理作品が占めております。
今後もエイベックス・グループとの良好な取引関係は継続してまいりますが、管理委託者の多様化を推進することにより、エイベックス・グループへの依存度を低減させるよう努めてまいります。
「著作権等管理事業(デジタルコンテンツディストリビューション業務)」においては、売上高の31.0%をiTunes社、16.9%をGoogle社が占めておりますが、同社の取引比率が高いことは当社固有の事情によるものではなく、同社が国内外の音楽配信市場において高いシェアを誇る配信事業者であることが要因となります。同社サービスにヒットコンテンツ、有名コンテンツを安定的に供給することによって、取引額の拡大を図り継続的な取引を指向してまいります。
また、「キャスティング事業」においては、売上高の81.6%を株式会社ティ・ジョイが占めており、内訳は、同社が運営する映画館でのライブビューイング案件の実施によるものとなります。近年、当社キャスティング事業における営業強化が奏功し、ライブ・コンサートから2.5次元ミュージカルやプロ野球中継等に至るまで、幅広いジャンルのライブビューイング案件を扱うことが可能となり、同社の取引比率が高まっております。今後も、同社取引額の拡大を図りながら、他社既存取引先における取引拡大と新規取引先の獲得によって、同社への依存度を低減させるよう努めてまいります。
なお、上記記載の比率(%)は、いずれも第20期第3四半期連結累計期間末時点のものとなります。
(5) システムリスクについて
当社グループの事業は、コンピュータシステム及びインターネットを活用しており、何らかの原因による当社サーバー等への一時的な過負荷や外部からの不正な手段によるサーバーへの侵入、役職員の過誤によるシステム障害が発生する可能性があります。これらの障害が発生した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 知的財産権に関するリスク
現時点において当社は、第三者の知的財産権の侵害は存在していないと認識しておりますが、今後も知的財産権の侵害を理由とする訴訟やクレームが提起されないという保証はなく、そのような事態が発生した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
(7) 減損に関するリスク
当社グループは著作権等管理事業において、効率的かつ精度の高い分配業務を実現するために、システムへの
投資を継続的に行っております。また、のれんに関しては、イーライセンスとJRCが合併・事業統合し当社が設
立された際に計上しております。
これらのソフトウェア及びのれんは、無形固定資産に計上しておりますが、これらの資産における十分な将来
キャッシュ・フロー創出能力を1年に1回判定し、減損の兆候の有無を把握しております。もし、減損の兆候が
認められた場合は、減損の認識の必要性に関して詳細な減損テストを実施いたします。
著作権等管理事業において、十分な将来キャッシュ・フローが見込めない場合は、減損損失を計上する可能性が
あり、この場合、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。
2.事業体制について
(1) 特定の人物(代表取締役等)への依存について
当社の代表取締役である阿南雅浩及び荒川祐二は、2016年2月の当社発足以前から、当社の主要事業である音楽著作権管理に関する業務に携わっており、当該事業に関する豊富な経験と知識を有しております。
現在、両名は当社の経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において重要な役割を担っており、両名もしくはそのいずれかが突発的に当社グループの事業へ関与できない状況が発生した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
しかしながら、当社グループの事業規模が拡大するとともに、権限移譲と後進の育成が順調に進められており、両名に過度に依存しない経営体制が整備されつつあります。そのため、将来的に上記の状況が発生した場合においても、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性は限定的なものとすべく、事業体制、経営体制の強化を図ってまいります。
(2) 内部管理体制について
当社は、企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題の一つと位置付け、多様な施策を実施しております。また、業務の適正の確保及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能するよう、内部管理体制を構築、整備、運用しております。
しかしながら、事業規模の拡大に応じた内部管理体制の構築に遅れが生じた場合には、当社の事業及び業績に何らかの影響を与える可能性があります。
(3) 情報セキュリティについて
当社は、第三者による当社サーバー等への侵入に対して、ファイアウォールや対策機器等によるシステム的な対応を行うほか、当社グループ全体の情報システムを司る子会社である株式会社NexToneシステムズにおいては、ISMS(ISO27001)認証を取得し、専門のエンジニアによる情報セキュリティ対策の強化を推進しております。
しかしながら、悪意をもった第三者の攻撃等により顧客情報及び顧客の有する重要な情報を不正に入手されるといった機密性が脅かされる可能性や、顧客が利用するサービスの改ざん等のデータの完全性が脅かされる可能性及びサービス自体が提供できなくなる等のシステムの可用性が脅かされる可能性は否定できません。このような事態が生じた場合には、当社に対する法的責任の発生、企業イメージの悪化等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) システムトラブルについて
当社の事業においては、安定したサービスを継続的に提供する必要がありますが、当社のサービスは、プログラム、システム及び通信ネットワークに依存しております。
ユーザーに、より良いサービスを提供するため、データベースの稼働率を高水準で維持し、サービスのシステム監視体制やバックアップ等の対応策をとっておりますが、災害や事故等の発生により通信ネットワークが切断された場合、急激なアクセスの増大によりサービスの稼働するサーバーが一時的に作動不能となった場合及びサーバーハードウェアに不具合が発生した場合には、安定したサービスが提供できなくなる可能性があります。
この場合、一定期間の収益低下、ユーザーからの信用低下及びブランドイメージの毀損等により、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(5) 大規模災害や事故等の発生に伴う影響やシステム障害に伴う影響
当社グループでは、自然災害、事故等に備え、システムの定期的バックアップ、稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止、回避等に努めておりますが、当社所在地近辺において、大地震等の自然災害や事故等が発生した場合、当社グループの設備損壊や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生して、当社グループの経営成績及び収益性に影響が生じる可能性があります。
(6) 個人情報漏洩による損害賠償リスク
当社グループでは、著作権管理業務を行う上で、著作権者及び音楽利用者の個人情報を取り扱う場合があります。そのため、当社では、個人情報の取扱いを社内規程に定めるとともに、社員研修の実施等により、セキュリティヘの意識の喚起や情報リテラシーの向上に努めております。しかしながら、個人情報の流出が発生する可能性は否定できないため、万が一、個人情報の流出といった事故が発生した際には、損害賠償請求訴訟等によって、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに大きな影響を及ぼす可能性があります。
(7) 法的規制について
当社グループが事業を展開するにあたり、主に「著作権等管理事業法」、「著作権法」、「著作権法施行令」、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」及び「個人情報の保護に関する法律」等の規制対象となります。
特に当社グループの主要事業である「著作権等管理事業」を展開するにあたり、その前提となるのは「著作権等
管理事業法」であり、著作権等管理事業者としての届出を文化庁長官に対して行っております(2001年10月11日
登録・登録番号01005)。当該登録は、「著作権等管理事業法」に定める民間管理事業者として著作権の管理等を
行うためのものであり、満了日に関する定めはありませんが、以下のとおり登録者としての義務が定められており
ます。
①対委託者 管理委託契約約款の説明、管理委託契約約款の公示、財務諸表等の備え付け等
②対利用者 使用料既定の公示、利用の許諾の拒否の制限、情報の提供
③対文化庁長官 各種届出(事業の変更・廃業等、管理委託契約約款、使用料規程)
当社グループでは、これらの法令を遵守して業務を行っており、事業の継続に支障を来たす要因は発生しており
ません。しかしながら、これらの法令等が改正され規制が強化された場合、新たに当社の事業活動を規制する法令
等が制定された場合、あるいは今後何らかの理由により、「著作権等管理事業法」第21条(登録の取消し等)に抵
触し、著作権等管理事業者の登録が取り消しになった場合には、事業への制約や追加的な対応が生じることによ
り、当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに重大な影響を及ぼす可能性があります。
(8) その他訴訟等による損害賠償責任に関するリスクについて
当社グループは、取引先、株主、従業員を含む第三者の権利・利益を侵害したとして、損害賠償などの訴訟を起こされ、または行政機関による調査等の対象となる可能性があります。その結果、当社グループの企業イメージが低下する可能性があるほか、金銭を含む経営資源に係る負担の発生等により、当社グループの事業展開、財政状態及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
3.その他のリスク
(1) 資金使途について(想定通りの投資効果が上げられない可能性及び、当初想定した使途と異なる目的で使用する
可能性等)
当社の株式新規公開時に計画している公募増資による調達資金の使途につきましては、事業拡大に伴い増加する人件費等の運転資金及びシステム開発等の設備資金に充当する予定であります。しかしながら、経営環境の急激な変化等により、上記の資金使途へ予定どおり資金を投入したとしても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。
また、今後の事業環境の変化や、当社事業戦略等の変更等により、将来において調達資金にかかる資金使途に変更が生じる可能性があります。
(2) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
当社では、取締役及び従業員等に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しており、本書提出日現在における新株予約権による潜在株式数は281,400株であり、発行済株式総数2,704,000株の10.4%に相当いたします。
また、今後においてもストック・オプション制度を採用する可能性があり、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。
(3) 配当政策について
当社は、設立以来配当を行っておりませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しており、企業体質の強化と将来の事業展開のために内部留保を確保しつつ、安定的かつ継続的に業績の成長に見合った成果を配当することを基本方針としております。
したがって、各期の経営成績及び財政状態等を勘案しながら、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、利益還元の実施について検討してまいりますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等につきましては未定であります。
(4)その他の関係会社等との関係について
エイベックス株式会社(以下「エイベックス」)の100%子会社であるエイベックス・ミュージック・パブリッシング株式会社(以下「AMP」)が当社の発行済株式の29.2%を保有しており、エイベックスは当社の「その他の関係会社」に該当いたしますが、当社の株式公開に際してAMPが保有する株式の一部の売出しを予定しており、その結果、当社はエイベックスの持分法適用関連会社から外れる予定であります。
当社グループとエイベックス・グループとの関係については、今後も社外監査役1名の兼務は継続し、「著作権等管理事業」等における良好な取引関係は継続していく予定ですが、今後エイベックスの経営方針やグループ戦略が変更された場合等、何らかの理由により当社との関係が将来において変化した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。