有価証券届出書(新規公開時)

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2020/03/19 15:00
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事業等のリスク

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものが挙げられます。また、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、積極的に開示することとしております。
当社は、これらのリスク発生の可能性を十分認識した上で、その発生の予防・回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本項以外の記載事項についても慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1)事業環境に関するリスク
① 市場動向について
a.Smart端末販売
当社のSmart端末販売の約63%(令和2年3月期第3四半期累計期間実績)が勤怠管理用として利用されており、働き方改革関連法の施行を背景に需要が拡大しております。今後、当該利用用途における販売が一巡し需要が低減した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.SmartSoundサービス
当社のサービスは、スマートフォンを活用したサービスを導入もしくは提供する事業者をメインターゲットとしており、スマートフォンの普及率向上及びスマートフォンによる各種サービスの利用拡大が今後の事業展開の基本条件であると考えており、これらは今後も安定的な成長を続けるものと見込んでおります。
しかしながら、スマートフォンの普及率や利用率に影響を及ぼす技術革新、その他予期せぬ要因により、今後の普及率や利用率に大きな変化が生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 競合について
a.Smart端末販売
当社のSmart端末は勤怠管理や経費精算におけるアプリケーションベンダーなどの主要なプレイヤーにすでに推奨端末として取り上げられており、市場における優位性を構築できていると認識しておりますが、当社のSmart端末販売における非接触ICカードリーダ端末につきましては、公開技術であるため、大手企業も参入しており、かつ新規参入障壁が低くなっております。今後、さらなる競合他社の事業の拡大や新規参入等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
b.SmartSoundサービス
当社のSmartSoundサービスにおける、スマートフォンアプリを活用した店舗向け販促サービスにつきましては、競合他社が存在しており、将来的に当社の提供するサービスにおいて優位性が保てなくなった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社のSmartSoundサービスにおける、音による近接通信技術を用いたサービスにつきましては、現時点で国内外において際立った競合は存在しませんが、今後、当社を凌ぐ企画力・開発力・資金力のある企業の新規参入等により、当社の優位性を保てなくなった場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容及び当社サービスに関するリスク
① フロー型サービスの比率
当社は、売上の約83%(令和2年3月期第3四半期累計期間実績)が、Smart端末販売のフロー型のビジネスであり、端末販売が一巡し需要が減少した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② ストック型サービスについて
当社ではストック型サービスであるSmartSoundサービスの販売に注力しておりますが、当社の期待どおり販売が伸びず、また大型の既存顧客の解約や利用店舗数の著しい減少があった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、平成29年12月に音通信の利用における新たな認証サービスである「TrustSoundサービス」をリリース致しました。当社は本サービスの将来性に期待し、今後もプロモーションを強化しつつ改良を重ねる計画ではありますが、今後の事業の進展に際しては、開発計画の遅れ、不測の改修要件の発生等、様々な不確実性を伴います。このため、当社の期待どおりに事業が進展しなかった場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可
能性があります。
また、本サービスの開発にソフトウエア資産を計上しております。今後において、当社の想定を超える追加開発が必要となった場合は、減価償却費の増加が利益を圧迫する可能性があるほか、想定どおりの収益を獲得できない場合は、減損損失が発生する可能性があります。
③ システム障害リスク
当社のSmartSoundサービスが提供するスマートフォン向けアプリや、プラットフォームサービスについては、外部のクラウドサービスを活用しております。当該クラウドサービスの信頼性及び安全性は、高いレベルにあるものと確信しておりますが、予期せぬ理由により当該クラウドサービスに障害が発生した場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 製造委託先への依存
当社では、当社製品全てを製造委託により仕入を行っており、単年度事業計画及び想定した仕入リードタイムに基づいた発注を行っております。今後も、当該製造委託先とは良好な関係を続けてまいりますが、当該製造委託先の事情や施策の変更等により取引環境が変化し、製品仕入が期待どおりできなくなるような場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 特定の部材仕入先への依存
当社では、製造委託へ提供する部材を他社より仕入を行っておりますが、当社の主力製品であり売上の約65%(平成31年3月期実績)を占めるピットタッチ・プロ2におきまして汎用品以外に当社の特別な仕様に基づき製造している部材が存在します。今後も、引き続き当該仕入先とは良好な関係を続けてまいるとともに、当該仕入先の事情や施策の変更等により取引環境が変化し、仕入が期待どおりできなくなるような場合に備え当該部材製造を代替できる体制を整えておりますが、代替品の製造が想定どおり行えなかった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 製品及び部材在庫の評価減リスク
当社では、在庫期間が一定期間以上(基準日(3月末)現在で在庫期間が1年以上)の棚卸資産につきまして評価減の対象となり、原則全額切り下げを行います。また、基準日(3月末)現在で在庫期間が1年未満の棚卸資産について、販売可能性が無いものについては、全額切り下げを行うこととしております。さらに、9月末及び基準日において在庫期間が1年を超えており、かつ在庫回転率が1を下回る製品については、他の同一製品全てを通常の営業循環過程から外れているとみなし、簿価を50%切り下げることとしております。今後、市場環境の変化等により、当社製品の販売が計画から大きく乖離する場合は、評価減が発生する可能性があります。
また、当社では、ピットタッチ・プロ2の当社の特別な仕様に基づく部材について、仕入が期待どおりにできなくなるリスクに備え、販売計画を考慮しながら一定量を在庫として保有しております。今後、市場環境の変化等により、当社製品の販売が計画から大きく乖離する場合は、当該部材在庫が余剰となり評価減が発生する可能性があります。
⑦ 品質管理について
当社の製品につきましては、品質管理部門においてその品質を厳格に管理しておりますが、予期し得ない品質不良発生の可能性は排除できないため、製造物責任賠償保険に加入するなどの備えを強化しております。しかしながら、品質不良が発生した場合は、当社製品に対する信頼性を損なうこととなり、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 個人情報及び機密情報の管理について
当社は、事業を遂行する上で顧客情報の取り扱いを行っており、当該情報中には顧客の機密情報や個人情報が含まれております。当社は、個人情報及び機密情報の管理を事業運営上の重要事項であるとの認識のもと、「個人情報保護管理規程」「情報セキュリティ管理規程」を制定し、個人情報及び機密情報の漏洩や不正使用等の防止を徹底しておりますが、何らかの理由により当社が管理する個人情報及び機密情報の漏洩や不正使用等の事態が生じた場合、当社及び当社サービスに対する信頼性の著しい低下や損害賠償請求等が生じ、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑨ 知的財産権について
当社は、運営する事業分野に関する知的財産権の獲得に努めるとともに、第三者の知的財産権侵害の可能性については、顧問弁理士を通じて調査可能な範囲で対応を行っております。しかしながら、当社の事業分野で当社の認識していない知的財産権が既に成立しており、第三者より使用差止請求又は損害賠償請求を受けた場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 法的規制について
当社の事業運営において、現在、著しく重要な影響を及ぼす法的規制はありませんが、当社の事業運営上、電波法、製造物責任法、電気通信事業法、個人情報の保護に関する法律等による法的規制を受けております。また、今後、当社サービスに関連する法改正や既存法令等の解釈変更があった場合には、当社の事業運営が制約を受け、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。特に当社の主力製品である「ピットタッチ」で使用する部材において、承認を受けずに仕様を変更した等の理由により、電波法における許認可登録が取消となった場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、EU で施行された 一般データ保護規則( General Data Protection Regulation :GDPR)につきましては、EEA(欧州経済領域)所在者に対する規制ではありますが、既にApple,Inc や Google LLC などのプラットフォームベンダが当該領域を超えてインターネットブラウザの Cookie の利用を制限する方向にあります。当社のサービスは、EEA所在者向けのサービスではなく、かつインターネットブラウザを介したサービスではありませんが、当該プラットフォームベンダがスマートフォンのアプリケーションに対して同様の制限をかけることとなった場合は、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社の事業活動に際して、電波法に定める許可を得ております。現在、当該許可が取消しとなる事由はありません。しかしながら、当社が何らかの事情により許可の取消し等が生じた場合には、当社の業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
取得日許認可等の名称許認可の内容規制法令法令違反の要件及び
主な許認可取消事由
平成29年5月8日誘導式読み書き通信設備の型式についての指定
(登録)
総務省
関東綜合通信局登録
(第AC-17112号)
(型式 BMF-800)
電波法主な取消理由
当該設備の接続図、外観、漏えい電界強度の設計値、電波の強度に対する安全施設の状況、高調波及び低調波による高周波出力の設計値をあらかじめ総務大臣の承認を受けずに変更した場合

⑪ 顧客ニーズの変化について
当社の主力製品である「ピットタッチシリーズ」はパソコン等への接続は不要で単体で稼働する独立型(スタンドアロンタイプ)の専用端末でありますが、勤怠管理における打刻方法において、パソコンに接続して使用するICカードリーダ製品や指紋認証、静脈認証等が主流になるなど、顧客のニーズが変化した際に既存製品では対応が出来ず、製品の陳腐化・市場性を失うリスクがあります。
⑫ 顧客の設備投資の影響について
当社の主力製品である「ピットタッチシリーズ」の販売は、勤怠システムの導入等に対する企業の設備投資に影響を受けるため、経済情勢や事業環境の悪化した際には企業の設備投資が削減される傾向にあることから、経済情勢や事業環境の悪化した場合には、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑬ 特定の販売先への依存について
当社の主力製品である「ピットタッチシリーズ」において、上位販売代理店への売上が占める割合は比較的高水準であり、特に販売先上位5社に対する売上高の当社売上高全体に占める割合は4割程度(令和2年3月期第3四半期累計期間実績)の水準となっております。そのため当該顧客の事業方針の変更や経営状態の変化が生じた場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 新製品開発について
当社は将来の成長においても技術優位性の維持拡張と、市場のニーズを先取りすることが重要であります。そのため既存製品の改良及び新製品開発に取り組んでおりますが、製品がユーザニーズに適応しない、製品改良及び開発の遅れや投入時期の遅れ等により当社製品が陳腐化し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)事業運営体制に関するリスク
① 特定の人物への依存
創業者であり、代表取締役社長である山川進は、当社設立以来の代表者であり、経営方針や事業戦略、サービスコンセプト等についてリーダーシップを発揮しております。各本部の本部長等へ権限移譲を進めることで、当人に過度に依存しない経営体制の構築を進めておりますが、現状、当人に不測の事態が生じた場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 優秀な人材の確保及び教育
当社が継続的に成長し続けるためには、当社の技術力を高い水準で維持し続けることが重要であると認識しております。そのために、高いスキルを備えた人材の確保及び育成が必要不可欠であり、当社では当該人材の採用を積極的に行うと共に、既存社員を含めた社員の教育、育成に注力してまいります。
しかしながら、当初の計画どおりに人員が確保・育成できず、適正な人材配置が困難となった場合は、競争力の低下や、業容拡大に対する制約要因が発生し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 内部管理体制について
当社は、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。今後、事業規模の拡大に合わせ、内部管理体制も充実・強化させていく方針ではありますが、事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 自然災害によるリスクについて
当社は本店所在地が東京都、開発拠点が北海道札幌市にあり、事業拠点が、地震、台風、津波等の大規模な自然災害、事故、火事、テロ、感染症等の被害を受けた場合には、営業活動の停止、システム障害、交通網の混乱により事業活動に支障が生じ、また、自社保有資産の復旧等において多額の費用が発生した場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。
⑤ 小規模組織であることについて
当社は小規模組織であり、内部管理体制についても組織の規模に応じたものとなっております。継続的に業務遂行体制の充実に努めてまいりますが、限りある人的資源に依存しているために、社員に業務遂行上の支障が生じた場合、あるいは社員が社外流出した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他
① 調達資金の使途について
当社の公募増資による調達資金の使途は、主として製品開発関連費、研究開発費、広告宣伝費、開発用機材購入費及びオフィス増床費に充当する予定であります。しかしながら、事業環境の変化に対応するために調達資金が計画どおり使用されない可能性があります。また、計画どおり使用された場合でも、当初想定した効果が得られず、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
② 新株予約権行使による株式価値の希薄化について
当社は、会社法の規定に従って平成27年11月6日開催の臨時株主総会決議、平成29年6月30日開催の定時株主総会決議及び令和元年6月27日開催の定時株主総会決議に基づき、新株予約権を付与しております。
本書提出日現在、新株予約権による潜在株式数は173,100株であり、同日現在の発行済株式総数の20.5%に相当し、これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値は希薄化し、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
③ 配当政策について
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識しております。一方で、当社は、未だ成長過程にあると考えており、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資に充当していくことが、現時点における株主に対する最大の利益還元につながると考えております。したがって、当面の間は配当を実施せず、剰余金は、なお一層の事業拡大を目指すことに有効活用していきたいと考えております。
将来的には、内部留保の充実状況及び事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的に剰余金の配当を実施する方針ですが、現時点において配当実施時期等については未定であります。
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