有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/06/26 15:00
【資料】
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【項目】
153項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社グループが判断したものです。
(1)経営方針
当社グループは、「本気で課題に挑む人たちと、事業を通して社会にポジティブなアップデートを仕掛けていくこと」をミッションに掲げています。そのミッションを通じて、全人類が生まれた時から持っているクリエイティブへの情熱を呼び起こし「誰もが価値創造に夢中になれる世界」というビジョンの実現のためのサービスを提供していきます。課題解決のスピードはテクノロジーの進化によりどんどん加速しています、当社では課題解決のその先の未来、全人類価値創造時代のインフラとして純粋想起される存在を目指します。
(2)経営環境
少子高齢化を背景に人口減少フェーズに入り、生産年齢人口は2016年の7,700万人より2065年には4,500万人(注1)に減少すると見込まれています。また、「2025年の崖」(注2)に伴い、デジタルトランスフォーメーション未実現により2025年以降最大12兆円/年の経済損失が発生するリスクがあり、年間130兆円規模でのGDPへの影響が懸念されています。このようなデジタルへの移行が不可欠とされる状況下において、2030年には最大78.7万人のIT人材不足(注3)など、量、質ともに危機的な不足が予想されています。上記の課題は、社会が構造的に抱える課題であり、企業単位ではなく日本社会全体として、グローバルな視点での取り組みが必要な時代であると考えています。
当社グループではこのような環境下において、当社グループの提供するサービスにより、国内外の優秀な人材とテクノロジーの力を最大限に活用し、顧客のデジタルトランスフォーメーションを推進することで、当社グループのミッションでもある「本気で課題に挑む人たちと、事業を通して社会にポジティブなアップデートを仕掛けていくこと」を実現することを目指しています。
(注)1.総務省 情報通信白書 平成30年版
2.2025年の崖「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会
3.経済産業省 IT人材需給に関する調査
(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標
デジタル・クリエイティブスタジオタジオ事業においては、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、クリエイティブ&エンジニアリングにおけるストック型顧客数、平均顧客単価を重要指標としています。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社グループは、今後の更なる成長を実現する上で、以下の事項を経営課題として重視しています。
①デジタルトランスフォーメーション市場におけるデジタライゼーション市場の拡大
国内民間企業のIT市場規模は、今後も成長が続き、2021年度は13兆3,200億円と予測されています(注1)。現状は、国内企業のIT予算の約80%は、現行ビジネスの維持・運用に割り当てられており(注2)、新たなデジタル事業の創出に向けた投資が十分にはなされていないため、デジタライゼーション市場の拡大余地は大きく残されていると考えられます。
新規ビジネス向けのバリューアップ予算割合は2021年には22.5%から33.7%に増加が見込まれているため(注3)、当社グループは、国内のデジタライゼーション市場規模について、今後数年で約4.5兆円規模に拡大していくと推計しています(注4)。また、下表のとおり、海外主要国と比較してテクノロジーを活かすための環境整備の状況が低い水準にあり、日本における企業のIT投資の内訳がデジタイゼーション支出からデジタライゼーション支出への変更傾向の加速を示唆するものと考えています。当社グループは、デジタライゼーション実現のワンストップソリューションを提供し、引き続き市場を牽引していくことが重要であると認識しています。
テクノロジーを活かすための環境整備状況(注3)
(単位:%)
日本アメリカイギリスドイツ
実施している47.270.085.883.4
特に実施していない
/必要としていない
52.830.014.216.6

(注)1.国内企業のIT 投資に関する調査を実施(2019) 矢野経済研究所
2.企業IT 動向調査2019 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会
3.国内デジタライゼーション市場規模予測算出論拠
情報サービス産業市場規模25兆円、民間企業IT投資規模13兆3,200億円、上記よりデジタライゼーション市場13兆3,200億円*33.7%(IT投資におけるバリューアップ向け予算割合)=約4.5兆円
上記に記載の計算方法により、当社グループが推計したものであり、その正確性にはかかる統計資料や推計に固有の限界があるため、実際の市場規模はかかる推計値と異なる可能性があります。
参照元:「DXレポートITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開〜デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会
国内企業のIT投資に関する調査を実施(2019) 矢野経済研究所
企業IT動向調査2019 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会
4.「ICTによるイノベーションと新たなエコノミー形成に関する調査研究」(平成30年)
②技術力の更なる強化
当社グループでは、デジタライゼーション市場の変化の早さに対応するために最先端のテクノロジーへの投資に注力し顧客の事業成長の更なる向上に取り組んでいきます。AI(注1)、エッジコンピューティング(注2)、ブロックチェーン(注3)、サイバーセキュリティー(注4)、ディープフェイク(注5)、IoT(注6)などの研究開発を主にベトナム子会社内の研究開発チームにて行い、最先端技術の社会実装に向けて技術力の強化に向けて取り組んでいきます。
(注)1.AI:人工知能(artificial intelligence)の略称。人工的にコンピューター上などで人間と同様の知能を実現させようという試み、あるいはそのための一連の基礎技術を指す。
2.エッジコンピューティング:端末の近くにサーバーを分散配置するネットワーク技法のひとつ。
3.ブロックチェーン:散型台帳技術、または、分散型ネットワークのことで、ビットコインの中核技術を原型とするデータベース。ブロックと呼ばれる順序付けられたレコードの連続的に増加するリストを持つ。各ブロックには、タイムスタンプと前のブロックへのリンクが含まれている。
4.サイバーセキュリティー:サイバー領域におけるセキュリティを指す。
5.ディープフェイク:人工知能に基づく人物画像合成の技術を指す。
6.IoT:モノのインターネット(Internet of Things)の略称。センサーやデバイスといった「モノ」がインターネットを通じてクラウドやサーバーに接続され、情報交換することにより相互に制御する仕組み。
③優秀な人材の採用と育成
当社グループでは、日本の少子高齢化による高度IT人材の危機的不足が今後さらに拡大していく、という社会課題に対して、ASEAN諸国の大学との産学連携の取り組みを通じて多くの人材を輩出していくことが重要だと考えています。当社グループで手掛けている6つの大学との産学連携の取り組みの拡大、国内外での教育プログラムを強化するだけでなく、教育手法のコモディティ化を進め、人材輩出の質、量、スピードを高めていきます。また、従業員が中長期に渡って活躍しやすい環境の整備、人事制度の構築やカルチャーの推進などを進めていきます。また当社グループは、ベトナムにおいて強い採用競争力を有しており、育成だけでなく中途採用による採用も積極的に推進していきます。日本国内においては、リファーラル採用の強化、採用費の増加だけではなく、タレントプラットフォームサービス内のTalent Connectチームと採用チームと連携していくことで社内人材の獲得にも力を入れていきます。
④内部管理体制の更なる強化
当社グループは、更なる事業拡大を推進し、企業価値を向上させるためには、効率的なオペレーション体制を基盤としながら、内部管理体制を強化していくことが重要な課題であると認識しており、コンプライアンス体制及び内部統制の充実・強化を図っていきます。
⑤情報管理体制の更なる強化
当社グループでは、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格であるISO27001:2013の認証を取得していますが、事業を通じて多くの顧客の企業情報や顧客が保有する個人情報等、様々な機密情報に接する機会があります。従って情報管理体制を継続的に強化していくことが重要だと考えています。現在情報管理やセキュリティ管理に関する施策には万全の注意を払っていますが、今後も社内体制や管理方法の強化・整備に取り組んでいきます。
⑥新たな収益モデルによる収益機会の多様化及び新規事業の展開
当社グループの事業は、主にサービスの成長にコミットするデジタライゼーション市場での取り組みとなります。当社もクライアントと共にリスクテイクする代わりに、サービスの収益に応じたレベニューシェアでの取り組みや、スタートアップ企業の創業時、アーリーステージでの資本参加を中心に16社のスタートアップ企業への投資を実行しています。当社グループでは、投資後もスタートアップの成長に必要な機能を随時サポートすることで、投資先株式の価値向上に貢献しています。
こういった取り組みにより、デジタル・クリエイティブスタジオ事業の従来の収益に加えて、レベニューシェア契約からの売上・利益や、投資先の株式の売却益等、多様な収益機会を狙うことが可能となっています。
今後も当社グループの強みを生かして価値向上による新たな収益モデルにも取り組んでいきます。
また、今後の継続的な事業成長に向けて、既存サービスの拡大、教育事業の多国展開だけでなく、RubatoやSun*CIなどを基盤にした、デジタライゼーション推進をサポートするサービスを外部にも有料で公開するなど、新規事業の展開を積極的に検討していきます。