有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/10/14 15:00
【資料】
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【項目】
141項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は「アイディアとテクノロジーで革新的なサービスを提供し、便利で楽しい、みんながハッピーになる社会を創る。」というミッションを掲げております。当社は全ての人々の幸せな未来の生活を想像し、アイディアとテクノロジーでサービスを創造し、提供することで社会的課題を解決し、みんながハッピーでいられる社会を実現してまいります。当社は、このミッションに基づく事業活動が社会に貢献し、ひいては企業価値の最大化につながると考えております。
(2)経営戦略等
当社は、「メッセージングサービス事業」と「データセキュリティサービス事業」を安定成長事業として収益の基盤をつくり、「キャッシュレスサービス事業」を高成長事業として中長期的な収益拡大を目指す方針であります。
各事業におきまして、顧客との年間契約に基づきサービスを提供しており、月額利用料、決済額に応じた手数料、その両方もしくは年間ライセンス料というリカーリングビジネスによる継続的な売上高を得ることを最重要の戦略と位置付けております。これらの収益が占める割合は、2020年8月期で全売上の約87.3%で、その他12.7%は、初期費用、物品販売、受託開発等で構成されております。
当社のリカーリングビジネスの拡大のために、以下の開発を計画しております。
①より大規模なビジネスに対応できるよう、データ処理能力の向上及び原価低減を目的としたパブリッククラウドサーバ(注)を活用したSaaS型サービスへ完全移行するための開発
②サービス連携パートナー等の他社システムとの連携を容易にし、長期的に顧客がサービスを利用できるような多種多様なAPIの開発
③効率的な市場シェア拡大を目指したウェブ等による受発注システムの開発
④チャージバック等のサービスラインナップ拡充のための開発
2020年8月期から中期経営計画のビジョン「キャッシュレスの、その先へ」を全従業員で共有し、リカーリングビジネスの中でも、特に「キャッシュレスサービス事業に経営資源を集中し拡大を図っております。上記開発提供により、小規模な個店向けに即日サービス提供が可能となり、また月間数千億円規模の決済を伴う大型案件にも対応できるようにすることで、業績の拡大を計画しております。
(注)パブリッククラウドサーバとは、広く一般のユーザーや企業向けにクラウドコンピューティング環境をインターネット経由で提供するサービスのことを指します。サーバや通信回線等を調達・所有する必要がなくなり、クラウド事業者が提供する仮想化されたサーバやネットワーク等のクラウドリソースを必要なときに、必要な分だけ利用することができます。スケールアウトやスケールインを自由自在にリアルタイムで変更できる利点があり、急なアクセス増や会員数の増減にあわせて最適なITリソースを確保することが可能です。
(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等
各事業の目標達成状況を判断するための客観的な指標は下記の通りであります。
事業客観的な指標
キャッシュレスサービス事業・解約率:当月に解約となった顧客数÷月初の顧客数×100
・ハウス電子マネー決済額:店舗等でエンドユーザーが支払った金額
・顧客数:当社のサービスを利用する顧客社数
・エンドユーザー数:当社がデータベースとして管理する、エンドユーザーが保有する店舗の会員カード等に付されたIDの累計数
メッセージングサービス事業・解約率:当月に解約となったリカーリング売上÷月初のリカーリング売上×100
・解約顧客の平均利用期間:各年度に解約となった顧客を対象とし、契約開始月から解約月までの月数の平均値
データセキュリティサービス事業・解約率:当月に解約となったリカーリング売上÷月初のリカーリング売上×100
・解約顧客の平均利用期間:各年度に解約となった顧客を対象とし、契約開始月から解約月までの月数の平均値

(4)経営環境
高成長事業として位置付けております「キャッシュレスサービス事業」に関連する「国内プリペイド決済市場予
測」(注1)は、2019年は11兆7,958億円、2025年には、20兆1,865億円市場に成長すると予測されております。当社の「point+plus」が属するサーバ型前払式支払手段は、今後「Felica」(注2)等に代表される非接触IC電子マネーよりも成長し、2025年に向けて2019年比229.1%の成長が見込まれ、全プリペイド決済額の56.3%にあたる11兆3,589億円になると予想されております。
また経済産業省は、2025年までにキャッシュレス決済比率を40%程度とし、将来的には世界最高水準の80%を目
指す(注3)としております。
安定成長事業として位置付けております「メッセージングサービス事業」に関連する国内メール送信市場は、
2018年度は7.4%増、2019年度も7.7%増と安定した成長となっております(注4)。当社の「メッセージングサービス事業」にとって主要市場の一つがDMP市場(注5)であり、2019年度の市場規模は109億円であります。大半のベンダーが成長を継続しており、前年度比28.2%増が見込まれます。2023年度の市場規模は230億円に達すると予測されております。
「データセキュリティサービス事業」は、2019年は大規模なサイバーセキュリティ事件がなく、市場が穏やかで
あったため、市場の成長率は4.5%の伸びと予測されております(注6)。企業における個人情報は、改正個人情報保護法、JIS Q 15001 2017(新JIS)、改正割賦販売法、PCI DSS(注7)等の新たに制定された法律、規格や基準でより厳格な管理を求められており、今後も底堅いニーズがあると考えられております。
なお、新型コロナウイルス感染症が当社の経営環境に与える影響は、現時点では限定的なものではありますが、継続して注視してまいります。「キャッシュレスサービス事業」は、主に新型コロナウイルス感染症による業績への影響が限定的であった地域密着型のスーパーマーケット等へサービスを提供しており、年間契約による「メッセージングサービス事業」は月額利用料及び年間ライセンス料、「データセキュリティサービス事業」は年間ライセンス料にて提供していることから、足元での主力事業の業績への影響は軽微な状況であります。
(注)1.出典:2019年9月株式会社インフキュリオン カード・ウェーブ編集部発行「電子決済総覧2019-2020」
2.「Felica」とは、ソニー株式会社(現 ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社)が開発した非接触型ICカードの技術方式、及び同社の登録商標です。交通系電子マネーやコンビニエンスストア等が発行する電子マネー等で利用されております。
3.出典:2018年経済産業省「キャッシュレス・ビジョン」
4.出典:2020年2月株式会社アイ・ティ・アール発行「メール/Web マーケィング市場2020」
5.DMPとは、Data Management Platformの略であり、自社で取得したお問い合わせのデータや外部ツールで取得したウェブサイト内での行動履歴等の情報をもとに、特定のターゲット客へ広告配信をしたり、リピート購入を狙ったキャンペーンメールを配信したりするためのシステムを指します。
6.出典:2019年8月特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会 「国内情報セキュリティ市場2018年度調査報告」
7.PCI DSSとは、Payment Card Indsustry Security Standards Councilの略で、世界的に統一されたクレジットカード情報保護のためのセキュリティ対策フレームワークを指します。
(5)事業上及び財務上の対処すべき課題
当社が対処すべき主要な課題は、以下の項目と認識しております。
①成長サービスにおける新たなビジネスモデルによる業績拡大
「キャッシュレスサービス事業」は、今後も市場規模が拡大すると予測されており、大手企業の参入等による競争激化が見込まれます。そのような環境においても当社が継続的に業績を拡大するために、ハウス電子マネーの強みを活かしたビジネスの多様化を検討しております。例えば、電子ギフトで、電子マネーの入金額・利用額が増え、新たな手数料収入を得たり、エンドユーザーがハウス電子マネーを利用して特定メーカーの商品を購入すると、当該メーカーから電子マネーが付与され、当社は当該メーカーから手数料を得ることができるチャージバックシステムの開発を業務提携先である東芝テック株式会社と推進する等、新しいビジネスモデルの展開も積極的に検討し、業績の拡大を図ってまいります。
②優秀な人材の確保
当社の収益の源泉は、サービスの企画・設計を行う企画力であり、その企画を最新のテクノロジーで具現化する開発力及び保守運用力です。サービスの企画・設計を全て正社員で行っており、その開発を担当する人員の正社員の割合は90%以上であります。これらサービスの企画、開発、保守、運用を担当する正社員の全正社員に占める割合は約47.6%(2020年8月末現在)であります。これを維持・発展させるためには、当社のミッションに共感し、高い意欲を持った優秀な人材を数多く確保することが不可欠であります。高度な企画力、開発力及び運用力を持つ優秀な人材を積極的に採用し、人材の定着率を高めるために、従業員にとって働きやすい環境づくりに取り組んでおります。具体的には、自席だけでなく、開放感のあるオープンスペースでの執務環境の提供や従業員の自主性を尊重したコアタイムの無いフルフレックスタイムを採用することで、柔軟な働き方を支援しております。
③営業力の強化及び拡大
自社の営業力だけではなく、代理店やサービス連携パートナー企業等を活用した営業力の更なる強化が必要と考えております。加えて、当社が提供するウェブを活用したサービス提供も予定しており、顧客のサービス利用開始までの期間を短縮し、効率の良い販売及びサービス提供による売上の拡大にも努めてまいります。
④システムの安定性の確保
当社は、インターネットを利用して顧客にサービスを提供しているため、システムの安定稼働が必要不可欠です。このため、顧客の増加に合わせたサーバの処理能力を増強する施策を継続的に実施し、システムの安定性の確保に努めてまいります。また、パブリッククラウドサーバの利用を積極的に推進することで、データ量の増加にもフレキシブルな対応が可能となり、ディザスタリカバリー(注)による安全性も担保しやすくなります。
(注)ディザスタリカバリーとは、地震や津波等の天災や、テロ、不正侵入等によりシステムが壊滅的な状況になった際に効率的、かつダウンタイムを最小限にして復旧・修復すること、また、その災害に備えたシステムや体制を指します。
⑤個人情報管理体制の強化
GDPR(General Data Protection Regulation:EU一般データ保護規則)等による世界的な個人情報管理の規制強化を背景に、個人情報を保有する法人の情報管理の実効性強化が求められております。当社では、一般財団法人日本情報経済社会推進協会のプライバシーマークを2008年8月に取得する等、個人情報保護に努めておりますが、更に今後は、「キャッシュレスサービス事業」の拡大に合わせて、PCI DSSに準拠したシステム開発を行い、セキュリティ基準の認定取得を計画しております。
⑥内部管理体制の強化
当社は、今後もさらなる業容拡大を図るため、成長段階に沿った内部管理体制の強化が必要と認識しております。内部統制に基づき業務プロセスの整備を行い、業務を有効的かつ効率的に行ってまいります。また、内部管理体制を充実させるために、研修や社内勉強会等を開催し、内部統制及びコンプライアンスの強化に努めております。
⑦従業員教育等の支援強化
個々の従業員がミッションやビジョンを理解し、委譲された権限を適切に執行し、あらゆる製造原価、販売管理費の投資対効果を最大化させることができるよう、継続した従業員教育を行っております。一人ひとりが、新しい事業を生み出し、さらには起業できるような人材を社会に輩出できるようにすることが、当社の収益拡大につながると考えております。その他にも、外部の優秀な人材及び企業との交流を促進するために、当社のオフィススペースを活用した従業員による自主的なイベントの開催等を支援しております。その成果の一例としては、社外との交流イベント等を通じ、社員のブロックチェーン技術の知識が向上したことで個人間コイン流通サービスの開発につながり、実証実験の実施にまでこぎつけた事例等があげられます。