有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2020/11/12 15:00
【資料】
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【項目】
149項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは以下を社是として、常に業界の先端を行く製品開発に取り組んでおります。顧客の個別ニーズに
合わせたカスタマイズバルブを開発・製造・販売し、標準製品では対応できないニッチ市場を開拓することにより
事業展開を行っております。
① 独創的な技術
オーケーエムは、他社に真似のできない製品・サービスを創り続けます。
我々は、すべての仕事に「こだわり・工夫・改善」を積み重ね、強みを連携させて顧客・社会の発展に貢献し
ます。
② 最高の品質 最低の資源消費
オーケーエムは、顧客が感動できる製品・サービスを創り続けます。
我々は、採算意識を持って、最高の仕事をすることで、無駄を最小に、利益を最大にします。
③ 余裕ある生活と豊かな心
オーケーエムは、社員の物心両面の幸福の追求と、健康に活躍できる職場づくりをします。
我々は、希望ある充実した生活を送り、仕事を通じて自己実現を果たし、誇りを持って働ける会社をつくりま
す。
④ 地域社会に貢献する
オーケーエムは、市民の一員であるという認識に立ち、持続可能な社会づくりに貢献し、地域にとって必要と
される会社となります。
我々は、家族・社会の発展、幸せ増進の実現に向けて活動をします。
(2) 市場環境
①市場規模
日本のバルブ製造業は、経済産業省工業統計調査によると、2018年時点で従業員4名以上の事業所数は406事業
所がありますが、大部分が小規模の機械加工を専門とする工場であり、自社ブランドで製造販売を行う会社は150
社程度です。これらの会社は、一般的に品種、材料あるいは用途によって専門的な生産体制をとっております。
また、標準化された製品の量産方式や特別仕様に基づく受注生産方式に概ね分かれております。経済産業省の
データ(下図:「バルブ生産額合計推移」を参照)によると、2017年においては4,774億円の生産をしており、そ
の後も好調な世界経済に牽引され、バルブ生産額は高水準を維持しております。一時的には新型コロナウイルス
感染症の経済への影響が懸念されるものの、中期的には堅調な需要が持続する見通しです。
バルブ生産額合計推移(年度) (単位:億円)

※経済産業省「鉄鋼・非鉄金属・金属製品統計」より作成
②海運業界と取り巻く主要な環境規制
IMOによる大気汚染防止を目的としたNOx規制では、2016年1月より北米、カリブ海にて1次規制の80%減となる3次規制が施行されました。更に、2021年1月より北海、バルト海に適用地域が拡大する予定です。SOx(注1)規制につきましては、2020年1月より全海域にて、船舶の燃料油に含まれるSOx濃度を3.5%以下から0.5%以下とするよう規制が強化されました。バラスト水(注2)に関しましては、他海域にて放水される際、バラスト水中に含まれるプランクトン等の海洋生物を死滅させる処理装置を搭載することを義務付けました。こちらについては、バラスト水管理条約を締結した80カ国(注3)にて適用されます。
最近の環境保護関連の主な規制

※国土交通省「海事分野におけるSOx規制の概要及び国土交通省の対応について」より作成
大気汚染防止に関する環境規制に対しては、船舶エンジンにSCR装置(脱硝装置)や排気ガス処理装置(スクラバー)を装備することが求められており、船舶エンジンにSCR装置を追加するため船舶排ガス用バルブの需要の拡大が見込まれております。SCR装置では、排気管中に触媒を取り付け、その上流から尿素水の噴霧を吹き込みます。尿素水は排気ガスの熱によって分解されアンモニアに変化し、触媒反応により、NOxとアンモニアは無害な窒素ガスと水に変換されます。
また、LNG(注4)やメタノール燃料等の規制適合油を使用する新造船の建造も対応策として挙げられます。ただし、規制適合油での対応につきましては、適材適所で調達するためのインフラ整備が課題となります。
船舶排ガス用バルブSCR装置(脱硝装置)システム系統図

(注)1.硫黄酸化物
2.大型船舶が航行時のバランスを取るために船内に貯留する海水
3.2019年2月21日時点
4.液化天然ガス
(3) 会社の対処すべき課題と中長期的な会社の経営戦略
今後の世界経済は、東アジアや中東地域における地政学的リスクに加え米国の政策運営の動向等、また、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大の影響等もあり、先行きへの不透明感が増しております。
一方、国内経済につきましては、緩やかな回復基調にあるものの上記要素により下振れする懸念があります。
このような経済環境のもとで、当社といたしましては、生産拠点を置く日本、マレーシア及び中国の3極体制の中で、より効率的で高品質な製品供給に努めると同時に、「お客さまに喜ばれる商品創り」に徹し、バルブ部門創業以来の技術力を活かし、新分野への製品開発を進めてまいります。また、営業面でも日本国内はもとより、海外市場、特に中国市場及びアセアン市場への販売体制を強化し、きめ細かなサービス提供をより一層充実し、特に下記の5点を重要課題として取り組んでおります。
①成長市場に対応出来る新商品開発と販売体制を確立する
船舶分野においては、船舶エンジンの排気ガスに対してIMOによるNOx3次規制が2016年から実施され、世界の舶用エンジンメーカーは規制をクリアする排気ガス処理装置を市場に送り込んでいます。当社は船舶エンジンのライセンサーと連携して、排気ガス処理装置の高温ガス制御にマッチした船舶排ガス用バルブをいち早く開発しました。その結果、当社の当該バルブは、多くの日本、韓国及び中国のエンジンメーカーのエンジンへ標準搭載されることになりました。当該バルブの需要拡大に伴い、今後競合他社が参入してくると予想されますが、参入障壁を高くするために、さらなる商品改良、生産性向上、販売網構築に取り組み、売上高の拡大と収益力の向上を目指します。
船舶だけでなく成長市場(環境、エネルギー等)における新たな流体制御需要を常に探索し、需要に応える商品の研究開発に果敢に挑戦をします。そのため、2020年10月に滋賀県野洲市に研究開発拠点を新設し、顧客、マーケティング部門、研究開発部門を結ぶ拠点といたしました。当該拠点ではエンジニアが「独創的な技術」を生み出し、顧客との接点を増やすことによりニーズをいち早くキャッチすることで新規開発のサイクルを早め、今後バルブを中心とした流体制御に関わる製品、サービスを開発していきたいと考えております。
当社は2020年6月に経済産業省より、2020年版グローバルニッチトップ企業100選に選定されました。当社は、更に競争力を高め、流体制御のグローバルニッチトップを目指します。
②既存の商品力を強化する
売上のベースとなるゴムシート式バタフライバルブを中心とする既存バルブはビル建築、食品、工業用プラント、造船等幅広い工業インフラに採用されております。当該バルブは競合他社との競争にさらされておりますが、継続して顧客に選ばれ続けるために既存バルブのリニューアルを進めております。品質、生産性を設計から見直し、最新の生産技術(画像認識、IoT、ロボット等)も取り入れて、品質、コストとも競争力のある商品に変えてまいります。
日本、韓国、中国、東南アジアを主な販売エリアと定め、日本、マレーシア及び中国の各法人が販売活動を展開します。日本においては、販売代理店、販売店の集約を進め効率的な販売ルートを構築しました。当社の営業は新規顧客開拓にシフトし、更にマーケティング部門に人員を配置して新たな顧客を開拓することで売上高の拡大を目指します。
③企業風土を変革し、サステナブルに成長・発展出来る企業へ変革する
グループ内における全ての事業活動が財務会計とリンクした利益管理体制を強化し、予実管理の精緻化を目指します。また予算を基に組織的にPDCAを回し続けることの出来る企業への変革を目指します。これらの取り組みにより、組織・人材強化の基盤をつくります。
④社員満足度を向上させる
人が会社を創っていくことを基本にして、新たな市場開拓、商品開発、生産性向上に貢献出来る人材の採用と育成を目指し、制度整備、職場環境整備、人材育成プログラム再構築を行います。
⑤SDGs(注1)への取り組み
SDGsとは、2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標で、17の目標・169の達成基準から構成されています。当社では、17のゴールのうちメインターゲットとして「6 安全な水とトイレを世界中に」、「8 働きがいも 経済成長も」、「9 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「12 つくる責任 つかう責任」について、達成出来るよう日々活動に取り組んでおります。
主な取り組み状況は、以下のとおりです。
・船舶排ガス用バルブの製造、販売
・バラスト水処理装置用バルブの製造、販売
・ASEAN地域での水道用バルブの製造、販売
・水処理設備用バルブの製造、販売
・雨水用バルブの製造、販売
・国や団体からの各種認定取得
・滋賀東近江工場に太陽光発電設備を設置
・電動フォークリフトを採用
・工場照明にLEDを一部採用
・SDGs私募債の導入
・小学校や幼稚園等へ環境啓発絵本を寄贈

a SDGsに関する社内の取り組み
当社グループでは、以下の重点取組目標を掲げております。
・地球環境保全への取り組み
事業活動を通じ、資源の効率的な活用を推進し、地球の環境を保全することにより持続的な社会の実現に貢献します。
・グローバル社会への貢献
独創的な技術の開発を追求し、インフラ整備を通じて、地域社会を含めたグローバル社会の持続的な成長に貢献します。
・社員満足度の向上
社員の多様性を尊重し、真に豊かなこころを持った社員の育成に努めます。
b SDGs達成に貢献する製品開発
・船舶排ガス用バルブ
IMOのNOx3次規制を受けて、国内外の船舶エンジンメーカーと共同開発しました。環境規制では、船舶からの排気ガス中の大気汚染物質(NOx、SOx)濃度の低減が求められております。その対応策として、船舶にSCR装置を装備することが求められ、そこで当該製品が必要とされております。
・バラスト水処理装置用バルブ
バラスト水とは、大型船舶が航行時のバランスをとるために船内に貯留する海水のことです。このバラスト水中のプランクトン等を死滅させるための処理装置に当社のバルブが使われております。バラスト水の管理に貢献することが、バラスト水によって運ばれる外来種から生態系を守ることにつながっております。
船舶排ガス用バルブバラスト水処理装置用バルブ

(注)1.Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)
(4) 目標とする経営指標
当社グループは、世界の新市場の開拓に向け新商品開発と取扱い商品の拡充を行い、また既存の商品力を強化することにより業容の拡大を図ります。また生産性の向上等、原価低減活動に継続的に取り組むことにより業績目標を確実に達成すると共に、収益性の向上を図りROE8%以上になるよう努めます。