有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/08/16 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
134項目

対処すべき課題

本書提出日現在における経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。また、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
(1)経営方針
①ミッション、ビジョン
当社は、「「IT産業の次世代」を創出する」というミッション及び「お客様の真なるデジタル化(DX)を支援/推進し、来るAI時代の企業競争力を実現するために、価値ある役割を果たしていきます(Right AI, Right DX.)」という経営ビジョンを掲げて、新しい価値を提供するITベンダーを目指して事業を展開しております。
②行動指針
「Think Big, Act Together.」
当社は顧客企業のDXを支援するビジネスを行っているため、自らが常識や固定概念にとらわれず自由に発想すること(Think Big)、常に顧客の立場に立って当事者としてあるべきビジネスの姿を共に考え共に行動すること(Act Together)を行動指針としております。
上記の行動指針を実現するための具体的なルールとして、以下の「CCT WAY」を定めて行動しております。
a. オーナーシップ(あらゆることに当事者意識を持つ)
b. カスタマーズ・ルール(自社の都合ではなく顧客への提供価値を判断基準とする)
c. ロジック×パッション(ロジックと情熱・感情のバランスをとって行動する)
③中期経営戦略
当社は、顧客企業のDX構想から仕組みの構築、内製化までを一気通貫で支援するDX支援サービスを展開しております。
当社のDX支援サービスは、
・DX後の目指す姿(=ToBe)を実現する具体的方法論である 「CCT-DX Method」
・AIを活用したToBe実現のためのDX製品であり開発基盤でもある「Orizuru」
を活用し、DXコンサルタントとAIエンジニアが顧客企業に伴走して、アジャイル方式(スピーディーかつ段階的に仕組みを構築する方式)でプロジェクトを進めていくサービスです。
これまで当社は、製造業・建設業を中心にDX支援サービスを展開してきましたが、あらゆる産業のさまざまな企業からDX実現のパートナーとして当社が選ばれることを目指し、「CCT-DX Method」「Orizuru」の熟成及び機能の拡充に経営資源を投入してまいります。
また当社は、当社の強みである開発支援パートナーネットワークを活かし、システム開発案件のマッチングを即時かつ効率的に行うことができるIT人材調達プラットフォーム「Ohgi」を2021年2月にリリースいたしました。各産業の事業会社、コンサルティングファーム、SIer等、あらゆる業種でITエンジニアの需要が増大している一方、供給は頭打ちで需給ギャップが拡大している状況下、「Ohgi」は時代に即したサービスであり、IT産業のサプライチェーンのDXを推進するツールでもあります。
当社はこれまでも安定的かつ継続的な事業成長をしてまいりましたが、「Orizuru」の機能拡充によるDX支援領域の拡大と「Ohgi」のプラットフォーム化の推進によるIT人材調達支援業務の拡大を成長の原動力にしていくとともに、顧客企業のDXを通じた日本全体のデジタル化推進及びITエンジニアの活躍の場の更なる拡大に寄与してまいります。
(2)経営環境
国内民間企業IT市場規模は約12~13兆円程度で推移しておりますが(矢野経済研究所)、新型コロナウイルスの影響を受け、IT投資計画の先送りや見送りなどマイナスの要因が生じる一方、働き方改革の推進、データを活用した取り組みの進展によるAI/IoTなどの普及、DX投資などのプラス要因もあり、市場規模に大きな変動はないものと思われます。
2018年に公表された経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」で指摘されているとおり、あらゆる産業において、競争力維持・強化のために、DXをスピーディーに進めていくことが喫緊の課題となっており、DXの国内市場規模(投資金額)は今後急速に拡大し、2030年には3兆円(2019年度の3.8倍)になると予測されています(富士キメラ総研「2020デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」)。また、IT産業における外部委託(BPO)市場規模は、2018年時点で2.5兆円程度であり、2023年には2.8兆円程度に拡大することが予測されています(矢野経済研究所「BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場の実態と展望」)。
このように、DX投資の急速な増加、IT人材需給ギャップの拡大が予測されている中、広汎なIT開発支援パートナーを活用したIT人材調達力をベースに顧客企業のDX支援を手掛ける当社にとって、事業環境は良好だと考えております。
当社が得意とする製造業・建設業向けDX支援においては国内外大手SIer等と競合しておりますが、ものづくりに関する知見、コンサルティング力、AI・IoT等のIT技術力等を活かし、顧客企業のノウハウを継承する形で企画から設計開発、生産・施工・出荷まで一貫したデジタルデータ(図面、3Dモデル)でDXを実現する当社のポジショニングや、内製化や内製化後のIT人材調達までを支援する当社の方針により差別化が図れるものと考えております。また、大手SIer等は当社の顧客(当社は大手SIerから2次請として受注)でもあるため、競合ではなく協業を目指し、協力しながらDXを推進していきたいと考えております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社は、顧客企業に付加価値の高いサービスを提供し続けることにより、事業の継続的な拡大と企業価値の向上を図ることが重要だと認識しており、事業の成長性を表す売上高成長率と、収益力を表す売上高営業利益率を重要な経営指標と考えております。
(4)事業上及び財務上の対処すべき課題
①成長戦略の実行
当社はこれまで安定的かつ継続的な事業成長をしてきましたが、「「IT産業の次世代」を創出する」というミッション及び「お客様の真なるデジタル化(DX)を支援/推進し、来るAI時代の企業競争力を実現するために、価値ある役割を果たしていきます(Right AI, Right DX.)」という経営ビジョンの実現のためには、顧客企業がDXを実現・内製化するために「再現性のあるDX方法論とDX機能基盤」を提供すること、顧客企業が「IT人材を直接調達できる仕組み」を提供することが重要だと考えております。
製造業・建設業向けのDX開発基盤である「Orizuru」について、流通・物流、医療、食品、その他B2B企業へと産業分野を拡張するための機能追加と業務領域を拡張するための機能追加を行い、DX支援領域の拡大を図ってまいります。また、「IT人材を直接調達できる仕組み」として、これまで自社活用していた「Ohgi」を外部に公開しプラットフォーム化を図るために、既存顧客及び既存開発支援パートナー企業に対するOhgi利用の促進、IT人材調達ニーズのある顧客企業の新規開拓及び新規開発支援パートナー企業の拡大、ユーザーの利便性向上のための機能追加を行ってまいります。こうした成長戦略を着実に実行することにより、安定的な高成長を持続していく方針です。
②売上高営業利益率の向上
当社は成長戦略を着実に実行していくことで売上高の安定的高成長を実現するとともに、売上高営業利益率の向上を図ることが課題だと認識しております。売上高の成長およびその過程において受注単価の向上を図ることにより、人件費等の固定費比率は徐々に低下し、相対的に売上高営業利益率は向上していくと考えておりますが、「Ohgi」のプラットフォーム化を推進し粗利率の高い手数料収入をアドオンすることにより、営業利益率の向上を図っていく方針です。
③IT人材の確保と育成
当社は、あるべき姿の策定から技術検証、システム構築、保守・運用から内製化支援まで、顧客企業のDX実現を一気通貫で伴走支援しておりますが、一連のプロセスの実行において、コンサルタント、AIエンジニア、アーキテクト、プログラマー、プロジェクトマネージャー等の様々なIT人材が必要となります。
当社は広範なIT開発支援パートナーによるIT人材調達力を活用し、必要な時に必要なスペックのIT人材を調達しプロジェクトを推進することが可能ですが、「お客様の真なるデジタル化(DX)を支援/推進し、来るAI時代の企業競争力を実現するために、価値ある役割を果たしていきます(Right AI, Right DX.)」という経営ビジョンを実現し、継続的に事業を拡大していくためには、中核的な技術やノウハウを社内に蓄積していく必要があり、コア人材となる社員の積極的な採用・定着・育成が重要だと考えております。
当社は魅力的な案件の獲得、比較的自由な開発体制や勤務体系、給与水準の向上や福利厚生の充実、公平・透明な人事評価制度、社内勉強会の開催・セミナー参加によるスキルアップ支援等により、優秀なIT人材の採用・定着・育成に注力しておりますが、今後も採用マーケットにおける他社との競合状況を勘案し、改善していく方針です。
④開発体制・プロジェクト採算管理の強化
当社は業容拡大に伴い、大規模案件の受注も増えてきているため、不採算・赤字案件が極力発生しないように、開発体制及び受注後のプロジェクト採算管理の強化が課題だと認識しております。当社は大規模案件にも対応できる体制構築のために、新卒・中途いずれについても積極的な採用活動を行っており、今後も継続していく予定です。当社の特徴である広範なIT開発支援パートナーによるIT人材調達力を活用し、必要な時に必要なスペックのIT人材を調達しプロジェクトを推進することが可能ですが、今後もIT開発支援パートナーの拡充を図ってまいります。
プロジェクト採算管理について、当社はリスク低減のために案件を細分化し(契約期間1カ月~3カ月が大半)、準委任契約(7~8割程度)にて受注するように努めております。また工数の予実乖離が生じないように、顧客とのコミュニケーション、緻密な要員管理、進捗管理、予実管理、品質管理を行っており、内部監査においても重点監査項目として設定しております。今後につきましても、プロジェクト採算管理を徹底していくとともに、プロジェクトマネージャーの育成、当社が得意とするアジャイル開発のノウハウを集約し全社共有することによる効率的かつ高品質な開発を実施していくことにより、収益力を高めていく方針です。
⑤販路の多様化・拡大
当社は既存顧客からのリピート受注が比較的安定している一方、事業の継続的な拡大と企業価値向上のためには、新規顧客の開拓力が課題だと認識しております。広報活動による当社の認知度・ブランド力の向上、Webマーケティングやウェビナー開催によるリード拡大に注力するとともに、Salesforce等の他社製品・サービスとの相互補完やカスタマイズ案件等のリレーションシップセールス活動の拡大を図っていくことにより、販路の多様化・拡大を図っていく方針です。
⑥経営管理体制の強化
当社は成長段階にありここ数年で組織が急速に拡大しておりますが、事業の継続的な成長には業務運営の効率化やリスク管理のための十分な内部管理体制の整備、マネジメント人材の拡充が重要だと考えております。このため、業務効率化のための社内基幹システムのリプレイスやバックオフィス業務の整備、経営の公正性及び透明性を確保するための内部監査の強化、監査等委員監査によるコーポレート・ガバナンスの充実などを行ってまいります。また、組織の拡大ペースに合わせる形でマネジメント人材の採用や育成、教育研修等を実施していく方針です。