有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/08/17 15:00
【資料】
PDFをみる
【項目】
129項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針・経営環境
当社は「価値の高い情報サービスの創造と提供を通して社会に貢献し、常に期待される企業を目指す。」という企業理念の下、「技術と情熱をもってお客様に楽しさと満足を提供するサービスを創造するとともに、社員一人ひとりの個性を尊重し社員の成長を支援する。」ことを企業指針とし、メッセージングプラットフォーム「Cuenote(キューノート)」を、クラウドサービス(SaaS)形式、ソフトウエア形式で提供しております。
当社が属する情報サービス業においては、企業のICT投資がハードウエアからソフトウエアサービスへ移行しております。総務省の「令和2年通信利用動向調査の結果」によりますと、調査対象企業におけるクラウドサービスの利用割合は68.7%(前年比+4.0ポイント)と上昇し、利用企業における評価は「非常に効果があった又はある程度効果があった」とする割合が87.1%と、企業規模を問わずその有効性から普及が進んでおります。
また、当社の推進するメッセージングソリューション事業は、継続率の高いサービス利用料が収入の大半を占めるストック型ビジネス(サブスクリプションモデル)であり、収益・投資等の計画を立てやすく、スケールメリットを得やすいビジネスモデルのため、基本的には堅調な事業推進が可能となっております。
(2)経営戦略等
このような経営方針・経営環境の下、「SaaS事業成長」「顧客価値向上」を通じて、健全な事業拡大のため、次のような取り組みを行っております。
① 提供サービスの拡充
主力商品である「Cuenote FC」について、2020年1月にメール受信者の行動に応じてメールコンテンツを自動で送り分けるシナリオ配信(注1)機能を搭載し、シナリオメール配信に係る煩雑な工程を自動化し運用負担を軽減するとともに、メールマーケティングの効果向上を実現しております。
また、2020年7月には顧客のWebサイトでの行動(Webサイトの特定ページへの訪問有無などの履歴)を記録し、顧客行動に合わせたパーソナライズメール(セグメントメール、シナリオメール)を送ることで、マーケティング効果を向上させるWebトラッキング機能を搭載しております。
また、「Cuenote SMS」では、2020年7月に「楽天モバイル」回線向けSMS配信に対応し、国内4キャリアと直接接続を可能としました。
更に2020年12月には複数部門での利用、クラウドサービス事業者において「事業部や拠点ごとに異なる発信元番号でSMSを送り、送信実績も事業部や拠点ごとに簡単に一元管理したい。」、「クラウドサービス事業者が、利用企業ごとに異なる送信元番号でSMSを送信し、実績データを簡単に一元管理したい。」というニーズに応えるため、SMS発信元番号の使い分けに対応する機能を搭載しております。
Webアンケート・フォームシステム「Cuenote Survey」においては、2020年9月にWebアンケートやフォームの完成イメージを確認しながら、ドラッグアンドドロップ方式で、直感的に操作できるUI(注2)に刷新し、新機能を追加した新バージョンをリリースしております。
当社では2003年にMTAを独自に開発して以降、メッセージング領域における技術力とノウハウを蓄積し、顧客ニーズに応じたサービスや機能を拡充し続けてまいりました。
生活様式が多様化する現在において、情報通信技術やデジタルデバイスの進展により企業と消費者の
コミュニケーション手段もまた多様化しております。
複数のコミュニケーション手段を統合的に管理でき、個々に対し最適な手法を用いメッセージングする
基盤の構築は、マーケティング効果や業務効率の向上、良質な顧客体験の提供を実現する上で効果的
かつ不可欠な手段になると捉え、統合基盤(プラットフォーム)化を進めてまいります。
② 開発力の強化
安定的かつ着実な事業拡大を図る上では、既存顧客の契約を継続することのみならず、案件数等が増加した場合においても、収益率を高水準に維持し、かつ顧客サービスのパフォーマンスを維持・向上することが重要であると考えております。
2020年12月期において新規サービスやCuenoteサービスの機能開発など、開発力向上のため技術者の採用に注力いたしました。その結果、全従業員に占める技術者割合は、2020年12月期末において64.8%となりました。なお、優秀な技術者を採用するため、東京、大阪、福岡、沖縄及び北海道に拠点を有しており、継続的に開発力強化のための基盤整備を推進してまいります。
③ 基盤設備の増強
国内に新たなSaaS用のサービス基盤設備を2020年3月に開設いたしました。新基盤では新技術を採用し、システムの可用性、拡張性の向上にあわせ高いデータの堅牢性を実現しております。2018年12月期より提供するDR(ディザスタリカバリ)拠点間分散サービス(注3)とともに顧客からは事業継続の観点から高い評価を得られていると考えております。
なお、2020年12月期における各サービスの稼働率(注4)は次のとおりとなりました。
Cuenote FC(注5) : 99.9984%
Cuenote FC Premium(注6):100.0000%
Cuenote SR-S : 99.9938%
Cuenote Survey : 99.9706%
Cuenote SMS : 99.7972%
引き続き、適時適切な設備投資により基盤設備を強化し、データの堅牢性の維持確保、提供サービスの安定運用を図ってまいります。
④ サービスの認知・理解向上のためのプロモーション、セミナー活動
オンラインでのプロモーション活動の強化や展示会への出展、また、サービス活用セミナーの実施により、Cuenoteブランドの認知、営業機会の創出にあわせ、既存顧客に対してもサービスの効果的な活用方法を提示してまいりました。
今後も継続的に、ブランド力の維持・強化並びにメッセージングソリューションサービスの認知・理解の向上を推進してまいります。
⑤ 内部管理体制の強化
当社は、適時適切なリスク管理並びに業務運営の効率化を通じた企業価値向上のため、コーポレート・ガバナンスの強化が重要な課題であると考えております。
企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために、効率性の優れた透明性の高い経営を実現させ、適切な資源配分、意思決定の迅速化、コンプライアンスの徹底を推進することは、健全な企業統治体制の確立の視点からも極めて重要であると強く認識しており、コーポレート・ガバナンスの強化に努めております。
引き続き、企業価値の維持・向上を目指し、経営の公正性・透明性を確保するとともに、より強固な内部管理体制の構築に取り組んでまいります。
(注1)シナリオ配信とは、あらかじめ設定したメールをユーザーの状況や行動に応じて、自動でメールを配信するメールマーケティング手法の一つです。顧客に合わせた内容とタイミングでコミュニケーションを行い、顧客体験の向上につなげることを目的とした機能です。
(注2)ユーザーインターフェイス(User Interface)の略称で、一般的にユーザー(利用者)と製品やサービスとのインターフェース(接点)すべてのことを意味します。
(注3)大規模災害などによるデータセンターの壊滅的被害を想定し、東京・北九州など遠隔拠点に設置する複数設備を用いサービスを提供するオプションサービスです。
(注4)稼働率とは、システムやサービスが稼働すべきであった時間の内、正常に稼働していた時間の割合を求めたもので、次の算式により求めます。稼働率=(全時間-システム停止時間)/全時間
(注5)Cuenote FCは、プライベート型のSaaSとなります。
(注6)Cuenote FC Premiumは、パブリック型のSaaSとなります。
(3)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 優秀な人材の確保
事業成長のため、優秀な人材の獲得は不可欠であると考えており、積極的な採用と共に研修等による人材の育成、職場環境の整備に取り組んでまいります。
② SaaSの付加価値の向上
当社事業には競合する企業が存在しており、これまで性能面や機能面などにおいて競争力を高めてまいりましたが、今後も継続し機能開発や設備投資によりサービスの付加価値の向上に努めてまいります。
③ サービスの安定稼働
いつでも安心して利用できることは、SaaSにおいて不可欠であり、顧客が継続利用を判断する重要な要素であると考えております。今後も顧客増加や通信量の増加を見据え計画的な設備投資や増強、予防交換に取り組んでまいります。
④ 当社及びサービスの認知度の向上
当社はこれまで販売促進を目的にインターネット広告を活用してまいりましたが、今後のサービス拡販や人材獲得のためさらなる認知度の向上が必要であると考えており、インターネット以外のメディア活用や出稿量の増加により露出を高め認知度の向上に努めてまいります。
⑤ 情報管理体制の強化
当社ではプライバシーマークやISMSなど外部認証を取得し、規程に基づく運用及び定期監査、見直しの実施や役職員への定期的な啓蒙、訓練、物理的・技術的対策への投資により情報管理体制を強化してまいります。
以上が、当社が優先的に対処すべき主要な課題であると認識しております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は持続的な成長と企業価値の向上を目標としており、主な経営指標として売上高、営業利益、営業利益率にあわせ定期契約額(月次経常収益)とメールサービスの解約率を重視しております。
以上のとおり、事業運営上必要な施策を適時適切に実行することにより定期契約額を増加させ、事業規模を拡大し経営の効率性を高めてまいります。
また、内部統制を有効的に機能させることによりコーポレート・ガバナンスを強化し、企業倫理を遵守しながら企業市民としての社会的責任を果たし、定量的にも定性的にも健全な経済活動を展開してまいります。