有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/09/02 15:00
【資料】
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【項目】
129項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「人の数だけ、キャリアをつくる。」というミッションの下、キャリアに関するデータを公開することで誰もが自由に働き方を選択できる社会を目指す「キャリアデータプラットフォーム」事業を運営しております。これまでHRマーケットにおいて、仕事選びに関するデータ(キャリアデータ)が集積していなかった課題に対し、当社は採用メディア「ONE CAREER」を運用することで、求職者の声を中心とした就職活動の体験情報や求職者の行動履歴等のキャリアデータの蓄積に注力してまいりました。国内最大級の質と量を持つ「キャリアデータプラットフォーム」を通じて、最適な「仕事(職)」と巡り合える機会を創出することで、求職者の人生をより豊かなものにしていきたいと考えております。また、企業に対しては、企業が発展する上で必要不可欠な採用活動・人事業務のDXを推進するサービスを提供しております。企業の採用活動においてもキャリアデータを有効活用することで、効率よく自社にあった人材を獲得する採用活動を支援しております。
(2)経営戦略等
当社は「キャリアデータプラットフォーム」を、キャリアに関するデータを公開し、仕事選びにおける不透明さを解消するプラットフォームであると定義し、これまで事業を推進してまいりました。その上で、企業に対して、会社情報や求人広告を掲載できるメディアや、採用計画をクラウド上で簡単に作成できるツール、場所や時間にとらわれず候補者に自社の魅力を伝えることができる動画配信サービスなどを展開してまいりました。企業は、当社サービスを活用することで採用活動や人事業務において、キャリアデータを用いた採用活動のDXを推進し、データに基づく意思決定と大幅な業務効率化、そして新たな採用活動手法の選択肢を増やすことが可能になります。
今後もキャリアデータの更なる拡充を目指すとともに、蓄積したキャリアデータを活用して、求職者の採用支援、企業の採用活動・人事業務のDXを推進するサービスの開発を行ってまいります。幅広い企業に利用されるために、応募者管理システムや適性検査などの商品ラインナップの拡充、営業戦略を通じた顧客基盤の拡大に経営資源を投下することにより事業拡大を目指します。これら既存事業の強化と新領域拡大を図り、収益基盤を強化していく方針であります。
また、現在当社の強みとなっている、新卒採用を中心とする若年層採用マーケットを軸足として、今後更に対象となる採用マーケットを拡大することで、求職者の仕事選びの機会により長く寄り添うことを目指し、収益機会の長期化を図る方針であります。
更に、キャリアデータを拡充することで、人々のライフスタイルに関わる情報へのアクセスが可能になるため、教育や金融、販促などの採用マーケット以外の領域でキャリアデータの利活用を見据えて、事業領域の拡大を目指します。
特に日本では学生がキャリアに向き合う機会が乏しく、若年層に向けたキャリア教育が不十分であることも課題となっており、当社のキャリアデータプラットフォームを通じて多様なキャリアのロールモデルや、HRマーケットに関する統計情報などをキャリア教育に活用することも考えております。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社は、継続的な売上高増加を実現するために、顧客基盤の拡大を図る経営に努めてまいります。その上で主要な経営指標として、売上高の対前期増加率と法人取引累計社数を重要指標としております。新卒採用領域においては企業の採用活動が季節性や年度ごとの採用方針により流動的であり、取引窓口を有している企業については常に営業活動を行うことで売上拡大の機会があるため、法人取引社数についてはその累計数を重要指標としております。
(4)経営環境
当社が属する2020年度の人材ビジネス業界は、市場規模6兆5,098億円(2020年度見込み)となる見込みです(出所:矢野経済研究所「2020年版 人材ビジネスの現状と展望PART1総合編」)。しかし、その大半は労働集約型の旧態依然としたビジネスモデルによって成り立っています。近年、少子高齢化による「労働力人口の減少」、働き方改革の影響による「働き方の多様化」、終身雇用崩壊による「雇用の流動化」といった急速に変化する社会の流れを受けて、顧客のニーズや課題感にも変化が生まれつつあります。「労働生産性の向上」や「働く人々の満足度の向上」といった新しい課題に順応するため、HRマーケットにおいてもDX推進が求められ、特にHRTech領域に注目が集まっています。2020年度のHRTechクラウド市場は426億円であり、2025年度には1,710億円の市場規模になると予測されています(出所:デロイト トーマツ ミック経済研究所「HRTechクラウド市場の実態と展望 2020年度版」(https://mic-r.co.jp/mr/01960/))。労働生産性の向上が求められることにより、今後の企業の採用戦略が大きく変容していくと認識しております。
当社の「キャリアデータプラットフォーム」で実現しているキャリアデータの透明化に加え、ワンキャリアクラウドシリーズの各サービスは採用DXを促進し、企業の採用活動・人事業務の負担削減に役立つため、企業側の限られた採用予算で効率的に求職者の採用をおこなうことが可能なサービスであると考えております。
加えて新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、各地で行われる企業説明会等のオフラインイベントが相次いで中止されたことで、これまでの対面での採用活動から、オンラインでのコミュニケーションに特化した採用サービスに期待が高まってきています。当社が提供する採用動画配信サービスはこれまでの採用活動から代替されるサービスであると考えております。
このように当社は、市場の拡大・変化及び競合企業の増加等の経営環境の変化に対応すべく、様々なサービスを創出し、社会的需要に合致した事業戦略で持続的な成長の実現に取り組んでまいります。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社が優先的に対処すべき課題は以下のとおりです。
①新規ビジネスの創出と顧客基盤の拡大
当社は、「第1 企業の概況 3事業の内容」に記載のとおり、創業以来、HRマーケットにおいて様々な新規サービスを開発し、新たな収益機会を創造してまいりました。今後も競争優位性を確保し長期的に成長し続ける組織であるためには、既存サービスの新規機能追加やUI/UXの改善に加え、企業のニーズを的確に捉え、新たなビジネスやサービスを創出することが極めて重要であると考えております。具体的には、「キャリアデータプラットフォーム」におけるキャリアデータの拡充と、保有するキャリアデータを活用することで採用活動を効率化できる「採用DX支援サービス」の新規機能開発に注力していくことで、新規顧客基盤の拡大を目指す方針であります。
②優秀な人材の確保と育成
当社は、今後の更なる事業拡大を目指すうえで、システムの開発部門及び営業部門等における優秀な人材の確保並びにその人材の育成が重要な課題であると認識しております。
人材の確保については、新卒・中途の両方において、積極的な採用活動を実施し、当社のミッションに共感を持つ人材の採用を行ってまいります。人材の育成に関しては、採用した人材のオンボーディング施策(入社後の定着施策)を強化し、定着率を向上させると共に、一人ひとりが強みを活かして活躍ができるように、研修・教育の強化、組織体制の強化及び最適な人員配置を実施してまいります。
③認知度の向上
当社では、これまで新聞、テレビ等の大規模なマスメディア向け広告を打ち出しておらず、主にWEBマーケティングの有効活用により、求職者会員及び求人募集企業の獲得を図ってまいりました。そのため、当社の認知度は、まだ大手の同業他社と比較して高くありません。既存事業の更なる拡大及び競合企業との差別化を図るに当たり、当社ブランドのより一層の認知度向上とブランド力強化が重要であると認識しております。今後も積極的なPR活動を実施し、キャリアデータのプラットフォーマーとして確立した当社ブランドの認知度の向上を図ってまいります。
④内部管理体制の強化
当社が今後更なる業容拡大、持続的成長するためには、リスク管理体制の強化と、確固たる内部管理体制構築を通じた業務の標準化及び効率化の徹底が重要であると考えております。当社では、更なる内部管理体制の強化によって、より一層のコーポレート・ガバナンス機能の充実を図り、経営の公正性・透明性の確保及び企業価値の最大化に努めてまいります。