有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2021/11/16 15:00
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【項目】
157項目

事業内容

(1) 当社グループの事業内容について
当社グループは、当社及び連結子会社5社により構成されています。
当社グループの主な事業は、リード端子事業(アルミ電解コンデンサ用リード端子の製造・販売)、光部品・デバイス事業(光ファイバ通信網用光部品の製造・販売等)であり、各事業の内容は以下のとおりであります。
なお、次の事業内容の区分は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントと同一の区分であります。
当社は、リード端子の製造・販売を国内顧客向けに行っており、光部品・デバイスの製造・販売を国内顧客及び海外顧客向けに行っております。また当社は、リード端子の一部の製品をKOHOKU ELECTRONICS (S) PTE.LTD.及び蘇州瑚北光電子有限公司より購入しており、光部品・デバイスの一部の製品を蘇州瑚北光電子有限公司及びKOHOKU LANKA (PVT) LTD.より購入しております。
KOHOKU ELECTRONICS (S) PTE.LTD.は、リード端子の販売及び光部品・デバイスの販売を行っております。
KOHOKU ELECTRONICS (M) SDN.BHD.は、リード端子の製造・販売を行っております。
東莞瑚北電子有限公司は、リード端子の製造・販売を行っております。
蘇州瑚北光電子有限公司は、リード端子の製造・販売及び光部品・デバイスの製造・販売を行っております。
KOHOKU LANKA (PVT) LTD.は、光部品・デバイスの製造を行っております。
以上述べた事項を事業系統図によって示すと、次のとおりであります。

(2) 各セグメントの事業内容について
① リード端子事業
リード端子事業は、生活家電・情報通信機器・自動車等の、内部に電子基板を持つ製品に搭載されるアルミ電解コンデンサ(*1)の主要構成部品であるリード端子(*2)の製造販売を行っております。1959年の設立当初からの創業事業であり、今日では当社グループ全体で年間400億個余りを生産し、主要アルミ電解コンデンサメーカーへの供給を行っております。
ⅰ. 創業当初から、主要生産設備である溶接・プレス機を自社開発しております。また、1980年代後半には、アルミ電解コンデンサの特性と品質の向上、製造工程の生産性向上のため、洗浄・化成工程並びに洗浄・化成装置を開発致しました。その後も車載用途等の顧客からの要求事項に対応し、溶接・プレス機、洗浄・化成装置並びに各製造工程におけるノウハウの更新・改良を実施しております。
ⅱ. アルミ電解コンデンサの更なる特性向上と品質向上に寄与するため、次のような技術開発を行ってまいりました。これらはいずれも国際特許にて保護されております。
① アルミ電解コンデンサの構成部品であるアルミ箔や電解紙(セパレータ)(*3)の破損を防止するため、プレス工程を改善し、突起物等の発生を抑制する技術(ノーバリ技術)を開発しました。
② リード端子の表面に発生し、アルミ電解コンデンサの破損の原因となるウィスカ(金属結晶が針状に成長する現象)を抑制するため、樹脂コーティング技術を開発しました。
③ アルミ電解コンデンサのスリーブ破損(*4)と封口ゴム破損対策のため、Cp線(*5)の先端を丸目状に加工する技術を開発しました。
ⅲ. 創業当初から、主要アルミ電解コンデンサメーカーの工場拠点に近い立地での生産を進めてまいりました。特に日系アルミ電解コンデンサメーカーのASEAN地域、中国等への海外進出に呼応し、マレーシア、中国・東莞、中国・蘇州の3拠点に子会社を設立して生産を行っております。各生産拠点においては、同一設備、同一生産方法で生産を行うと共に、BCP(事業継続計画)に対応する体制を構築しており、長きに亘り安定供給を継続しております。
ⅳ. 主要顧客との営業、技術・品質指導及び会議を通じ、製造工程における生産技術や品質管理の強化等のレベルアップを図っております。国際規格のISO9001、ISO14001に加え、自動車産業に特化した国際規格であるIATF 16949をグローバルで認証取得しています。
ⅴ. ネットワーク機器向けについては、スマートフォンの普及による通信基地局の大容量化(4G及び次世代5G無線通信用)に伴う使用数の増加、サーバー増強等に伴う使用数の増加、スマートフォン等向けのモバイルチャージャーの高性能化等により、出荷数が増加しております。
近年において、成長市場とされる車載用途やネットワーク機器用途のアルミ電解コンデンサは、使用環境が厳しい上に耐久性も求められるため、当社グループでは高い品質と信頼性の確立を企図し、量産技術の確立や品質管理の徹底を行うことにより、競合他社との差別化を図っております。
当社のリード端子が使用されるアルミ電解コンデンサの主な用途として、テレビ、パソコン、ゲーム機、エアコン、洗濯機、自動車、太陽光発電機器等が挙げられます。
② 光部品・デバイス事業
光部品・デバイス事業は、今日の情報通信に欠かせない光ファイバ通信の機器や光モジュール(*6)に使用される「光部品(FA製品)(*7)」及び「光デバイス(YD製品)(*8)」を製造販売しており、特に1955年より高信頼性(水深6,000メートルの海底で25年間故障せず機能し続けること)が要求される光アイソレータ(*9)の製造販売に携わっております。
ⅰ. 当社グループが製造販売する光部品・光デバイスは、長年培ってきた精密形状の石英ガラスの製造技術及び磁気光学材料の製造技術等のノウハウに基づく素子づくり、並びに光ファイバの高精度整列技術(*10)及び光学部品の高精度インテグラル(すり合わせ)技術(*11)に基づく精密組立の一貫生産を強みとし、競合他社との差別化を図っております。
ⅱ. 光デバイスにおいては、当社のファラデーローテータ(磁気光学材料)(*12)の応用製品として光アイソレータを開発し、関連した光フィルタ(*13)等と共に主に海底ケーブル向けに製造販売しております。海底ケーブル向け光アイソレータは、高信頼性(100万時間あたりの故障率が0.01%以下)が特長であり、海底ケーブルの通信手法が旧来の方式(光信号を電気信号に変換・増幅する方式)から現在の方式(光信号を増幅する方式)へと移り変わる最中であった1995年に販売を開始して以来、25年以上の実績があります。また、海底ケーブルの高速大容量化を実現する波長多重化(*14)および空間多重化(*15)のプラットフォーム開発に係わり、新たな光フィルタ等の製品も製造販売・開発しております。
ⅲ. 今日においては、移動体通信(*16)の大容量化、データセンタの大規模化等による世界的な情報通信量の増加に伴い、海底ケーブルの投資や敷設が増加しており、光アイソレータ等の安定供給のために、国内とスリランカとの拠点間の垂直分業(磁気光学材料づくりと精密組立との分業)による一貫生産の体制をさらに強化しております。
ⅳ.光部品においては、高速光ファイバ通信を担う波長可変レーザ(ITLA)(*17)や光受信回路(ICR)(*18)用途に2008年頃から進出し、当社の精密形状の石英ガラスを用いた光部品(FA製品)が光モジュールの大手メーカーに採用されており、供給者としての関係を堅持しています。また近年の世界的な光ファイバ通信の投資と増設に牽引された大手光モジュールメーカーの増産に対応し、中国・蘇州とスリランカとの拠点間の水平分業、国内と海外拠点との垂直分業(精密形状石英ガラスづくりと高精度配列との分業)することで、顧客が要求する数量・納期に柔軟な対応を可能とする光部品(FA製品)の製造販売体制を構築しております。
(用語解説)
項番用語意味・内容
1アルミ電解コンデンサ電気エネルギーを蓄えたり、一定の周波数の電流だけを通すといった機能を持つ電子部品。2枚のアルミ箔の間に液体電解質をはさむ構造で、小型・軽量でありながら静電容量が大きいという特徴をもつ。
2リード端子アルミ電解コンデンサの電極となる主要部品の1つ。
3電解紙(セパレータ)アルミ電解コンデンサのプラス極とマイナス極とを隔離する絶縁紙。
4スリーブ破損スリーブ(アルミ電解コンデンサを覆っているビニール)とリード端子の先端とが接触し、スリーブを損傷させてしまう事象。
5Cp線銅で被覆された金属線。
6光モジュール複数の機能(例えば光送信と光受信)を統合した光部品。
7光部品(FA製品)光ファイバの端末を加工した製品の当社用語。
8光デバイス(YD製品)光アイソレータなどの光受動部品の当社用語。
9光アイソレータ一方向の光のみを通す光受動部品。
10光ファイバの高精度整列技術光ファイバの端末を加工する際に、髪の毛より細い光ファイバを2本以上整列固定する技術。例えば0.25ミリメートルの間隔かつ±0.001ミリメートルの精度にて2本以上整列固定する。
11光学部品の高精度
インテグラル(すり合わせ)技術
光デバイスを製造する際に、レンズやファラデーローテータ(光アイソレータには欠かせない素子)などの光学部品を0.001ミリメートルの精度にて調整固定する技術。
12ファラデーローテータ磁気と光との間で相互作用が生じる特性を持つ、光アイソレータに不可欠な材料。
13光フィルタ特定波長の光を分別する光受動部品。
14波長多重化信号を伝える単位である光の波長を1波から2波、2波から4波と増やし、通信量を増やすこと。
15空間多重化信号を伝える単位である光ファイバを1本から2本、2本から4本と増やし、通信量を増やすこと。また、光ファイバ内の光の通り道を1つから2つ、2つから4つと増やし、通信量を増やすこと。
16移動体通信携帯電話の通信等に代表される、移動する情報端末を対象とした通信。
17波長可変レーザ(ITLA)波長が任意に変えられるレーザ(光源)。
18光受信回路(ICR)光通信を受信して電気信号へ変える光モジュール。