有価証券報告書-第15期(2023/04/01-2024/03/31)
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当事業年度の世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻による戦況が膠着状態となり、引き続き世界経済に影響を与えました。一方、2023年10月7日に始まった、パレスチナとイスラエルの紛争の影響を受けて、中東全体を含んだ複雑な紛争状況となりました。これにより、エネルギー価格の高騰が心配されましたが、中国経済の状況などもあり、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)について$100/バレルを越えるような高騰はありませんでした。
米国景気は当事業年度を通して強い状態で進行し、金利上昇をもたらしましたが、下期にはその進行は穏やかになりました。一方、物価は一貫して高い上昇率を示しており、労働市場がタイトで、賃金上昇が顕著であったことと合わせ、米国の金利が下がる状況にはなりませんでした。このような米国の金利状況があったため、ドル円の為替レートは、1ドル130円台から150円を突破する水準まで下落しました。この為替レートの変化は、我が国における物価の上昇に大きな影響を与えましたが、当社にとっては輸出品の円価格での上昇をもたらしました。
当社製品の主要なビジネス分野であるLGD(Laboratory Grown Diamond:人工宝石)市場は、当事業年度において引き続き規模が拡大しております。このような状況下、前事業年度第4四半期から、特に小型宝石について供給過剰が発生し、そのことによってLGDの価格は全般に下落しており、その影響が天然ダイヤモンドの価格にも反映され、価格下落が進行しております。
当社の主要種結晶ユーザーは主に小型宝石の生産を行っておりましたので、当社の種結晶は当事業年度において受注が減少したほか、前事業年度の受注のキャンセルが発生するなどの困難な事態となりました。また、ユーザーによっては経営が困難となったところもありました。
インド市場においては、LGDメーカーが種結晶を自家生産する動きが拡大したことから、種結晶価格の低下が顕著となり、当社も価格情報を入手して、対応を進めてまいりました。
また、一部のユーザーは採算が悪化した小型宝石から価格の高い大型宝石へ軸足を移す動きが増加しております。当社は、その動きに対応するため、2023年8月に13x13mm及び14x14mm種結晶を発売し、また、2023年11月には15x15mm種結晶も発売することで、大型宝石製作のための種結晶製品をラインアップし、これらのユーザーの需要に応えました。これらの大型宝石用種結晶は、当事業年度の売上に貢献しましたが、数量の多かった小型宝石用種結晶に比べ、販売数量が少なく、小型宝石用種結晶の需要減少による売上減少をカバーするには十分ではありませんでした。
さらに、イスラエルには当社の最も大口のユーザーがありますが、2023年10月に始まったパレスチナとイスラエルの紛争の影響は大きく、当該ユーザーとの取引は一時的に停止せざるを得なくなりました。その後、当事業年度末にかけて取引の条件を整えることで、制限された範囲での出荷が可能となりました。
このような状況下、当事業年度の種結晶売上は、前事業年度に比べ81.4%減の480百万円にまで減少いたしました。2022年12月の輸出貿易管理令の一部を改正する政令の施行への対応として、2023年4月から一時的に輸出を保留したことで、一部ユーザーからの受注の減少もありました。その後、2023年7月から輸出許可を取得することで、通常の輸出が出来るようになりましたので、納期が以前より若干長くなった影響はありましたが、インドを含め世界各地のLGDメーカーからの受注を獲得してまいりました。
一方、種結晶以外の製品については、当事業年度の初めから内外の企業、研究機関から多くの引き合いが来ていました。特に、量子コンピューター関連研究を行っている海外のベンチャー企業や、パワーデバイス開発を目指す国内外の企業等から、各種の基板の受注が活発にありました。従前から活動していた国内の大学や公的な研究機関からも、前事業年度を上回る受注を獲得しました。この要因として、各国のダイヤモンドデバイスの開発支援策が整ってきたことが挙げられます。特に米国ではダイヤモンドデバイスの実用化に向けて新たな資金の投入が始まっております。
当社は創立当初からダイヤモンドデバイスの開発に資する各種基板、ウエハを出荷してきましたが、当事業年度においては、新たに開発の支援を行う新製品を上市いたしました。パワーデバイスの開発向けには、2023年8月にボロンを高濃度含有させた低抵抗基板の販売を開始いたしました。また、2023年11月には、15x15mmの単結晶基板を実用化いたしました。さらに、2024年3月には量子デバイスの開発を後押しするため、低窒素濃度の(111)基板を実用化いたしました。これらの新しい製品は、既に売上に貢献しているだけではなく、上記の各種プロジェクトを推進する役割も果たしております。
このような積極的な対応により、基板・ウエハの当事業年度の売上は、前事業年度の240.6%増の229百万円となり、特に第4四半期においては、種結晶の売上を上回る売上を達成いたしました。一方、光学部品等や工具素材につきましては、前事業年度の売上を下回る結果となりました。
種結晶の受注が大幅に減少する中、支出を抑えるべく生産設備の一部休止を含む費用削減策を講じてきました。その影響で、2022年11月に稼働を開始した島工場へは、前事業年度に発注した成長装置が導入されましたが、稼働は限定的となりました。購入資材については、必要最小限に絞るなどの対策を、当事業年度を通して講じてまいりました。
また、大型単結晶の開発、切断などの加工技術の開発にも、これまで以上の研究開発費を投じました。
前事業年度に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしましたが、これによって内部管理体制の強化などに、従来以上のリソースを投入することが必要となりました。このために、これらを担う人材の確保を進めました。開発費用の増加に加え、この負担も増加しましたので、販売費及び一般管理費は前事業年度より大幅に増加しました。
一方、当社はLGD分野での新たなビジネス展開を行うため、原石等の製品化を目指してきましたが、2024年1月に当社100%子会社であるエス・エフ・ディー株式会社(以下「SFD」といいます。)を設立し、ビジネス体制を整えてきました。
以上の結果、当事業年度の売上高は757,549千円(前年同期比72.0%減)、営業損失は213,997千円(前年同期は1,280,928千円の営業利益)、経常損失は97,384千円(前年同期は1,280,724千円の経常利益)、当期純損失は111,336千円(前年同期は909,628千円の当期純利益)となりました。
なお、当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
②財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,897,003千円となり、前事業年度末に比べ1,065,240千円減少いたしました。これは主に、輸出貿易管理令の一部を改正する政令の施行への対応として、一時的に製品等の輸出取引を保留したことや、パレスチナ・イスラエル紛争によるイスラエルの当社種結晶ユーザーとの一時的な取引停止、インドのLGDメーカーによる種結晶の自家生産の動き等の影響により、種結晶の売上が前事業年度に比べ大きく減少したため、現金及び預金が1,551,352千円、売掛金が133,728千円減少したものの、製品が412,651千円、仕掛品が176,974千円増加したことによるものであります。固定資産は3,440,667千円となり、前事業年度末に比べ386,453千円増加いたしました。これは主に、前事業年度に発注していた生産及び開発設備の購入により有形固定資産が300,395千円増加したことによるものであります。
この結果、資産合計は、5,337,670千円となり、前事業年度末に比べ678,787千円減少いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は220,192千円となり、前事業年度末に比べ520,353千円減少いたしました。これは主に未払法人税等が357,613千円、未払金が82,058千円、1年内返済予定の長期借入金が34,279千円及び役員賞与引当金が25,000千円減少したことによるものであります。固定負債は266,822千円となり、前事業年度末に比べ78,586千円減少いたしました。これは主に長期借入金が83,550千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、487,015千円となり、前事業年度末に比べ598,939千円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は4,850,654千円となり、前事業年度末に比べ79,848千円減少いたしました。これは主に、譲渡制限付株式報酬としての新株式の発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ15,744千円増加したものの、当期純損失計上により利益剰余金が111,336千円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は90.9%(前事業年度末は82.0%)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純損失が86,711千円(前年同期は1,275,102千円の税引前当期純利益)と1,361,814千円減少したこと等により、前事業年度末に比べ1,551,352千円減少し、当事業年度末は688,217千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は630,746千円(前事業年度は1,184,225千円の獲得)となりました。これは主に、減価償却費451,124千円及び売上債権の減少額133,728千円があったものの、税引前当期純損失が86,711千円、棚卸資産の増加額618,577千円、法人税等の支払額339,371千円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は908,505千円(前事業年度は1,886,624千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出828,295千円、関係会社株式の取得による支出110,000千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は118,477千円(前事業年度は,1,862,248千円の獲得)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出117,829千円等があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における生産実績は以下のとおりであります。
(注)1.金額は製造原価によっております。
2.当社の売上高及び生産高は、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模(生産能力)に依存します。なお、最近2事業年度の当社の生産能力(カラットベース)は、以下のとおりであります。
b.受注実績
当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における製品種類別の受注実績は以下のとおりであります。
c.販売実績
当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における製品種類別の販売実績は、以下のとおりであります。
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
2.当社は、大型のダイヤモンド単結晶を大量に製造することができますが、当社の主要な製品である種結晶に
ついて、人工宝石市場における種結晶の大型化のニーズが増大しております。なお、当事業年度におけるサ
イズ別の種結晶の出荷割合(出荷個数ベース)は以下のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
また、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
a.経営成績に重要な影響を与える要因
当社の事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社の資金需要のうち主なものは、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備投資、研究開発費、人件費等の営業費用であります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
当社は、日常の運転資金については自己資金で賄い、自己資金では賄えない設備投資資金等については金融機関からの長期借入で賄うとともに、資本での調達を検討することとしております。
なお、当事業年度末における借入金の残高は、232,225千円であり、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は688,217千円であります。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための成長性を判断する客観的な指標として、①売上高成長率、②経常利益率、③ROE、④自己資本比率を重視しております。
①当事業年度における売上高成長率は、△72.0%(前期は73.3%)となっております。
売上高成長率は、当社の成長性や事業進捗のペースを表す指標として、重視しております。
当社が競争優位性を確保しながら適切なペースで売上高を向上させ、経営上の目標を達成するための施策としては、当社の売上高はダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模に依存することから、金融機関からの借入及び資本での調達による長期的な資金を獲得し、設備投資を進め、生産能力の拡大を図ってまいります。
②当事業年度における経常利益率は、△12.9%(前期は47.3%)となっております。
経常利益率は、当社の売上高に対する収益性を表す指標として、重視しております。
当社の事業進捗及び競争優位性の確保にとって、設備投資及び研究開発活動が重要ですが、そのための長期的な資金として自己資金を継続的に確保することが必要であるため、一定の経常利益率の確保に努めてまいります。
③当事業年度におけるROEは、△2.3%(前期は26.1%)となっております。
ROEは、当社の投下資本に対する収益性を表す指標として、重視しております。
また、研究開発活動により、ダイヤモンド単結晶の新たな用途を開拓することにより事業領域の拡大を図ってまいります。具体的には、大型単結晶の開発、ダイヤモンド半導体デバイス開発に必要な素材の開発や光学部品として必要な高品質結晶の開発を推進してまいります。
④当事業年度の自己資本比率は、90.9%(前期は82.0%)となっております。
当社の事業進捗にとって設備投資は重要ですが、財務の健全性を保つためには、自己資本比率を50%以上に保ちたいと考えております。過度な借入を行うことがないよう、キャッシュ・フローにも注意を払っております。
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当事業年度の世界経済は、ロシアのウクライナ侵攻による戦況が膠着状態となり、引き続き世界経済に影響を与えました。一方、2023年10月7日に始まった、パレスチナとイスラエルの紛争の影響を受けて、中東全体を含んだ複雑な紛争状況となりました。これにより、エネルギー価格の高騰が心配されましたが、中国経済の状況などもあり、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)について$100/バレルを越えるような高騰はありませんでした。
米国景気は当事業年度を通して強い状態で進行し、金利上昇をもたらしましたが、下期にはその進行は穏やかになりました。一方、物価は一貫して高い上昇率を示しており、労働市場がタイトで、賃金上昇が顕著であったことと合わせ、米国の金利が下がる状況にはなりませんでした。このような米国の金利状況があったため、ドル円の為替レートは、1ドル130円台から150円を突破する水準まで下落しました。この為替レートの変化は、我が国における物価の上昇に大きな影響を与えましたが、当社にとっては輸出品の円価格での上昇をもたらしました。
当社製品の主要なビジネス分野であるLGD(Laboratory Grown Diamond:人工宝石)市場は、当事業年度において引き続き規模が拡大しております。このような状況下、前事業年度第4四半期から、特に小型宝石について供給過剰が発生し、そのことによってLGDの価格は全般に下落しており、その影響が天然ダイヤモンドの価格にも反映され、価格下落が進行しております。
当社の主要種結晶ユーザーは主に小型宝石の生産を行っておりましたので、当社の種結晶は当事業年度において受注が減少したほか、前事業年度の受注のキャンセルが発生するなどの困難な事態となりました。また、ユーザーによっては経営が困難となったところもありました。
インド市場においては、LGDメーカーが種結晶を自家生産する動きが拡大したことから、種結晶価格の低下が顕著となり、当社も価格情報を入手して、対応を進めてまいりました。
また、一部のユーザーは採算が悪化した小型宝石から価格の高い大型宝石へ軸足を移す動きが増加しております。当社は、その動きに対応するため、2023年8月に13x13mm及び14x14mm種結晶を発売し、また、2023年11月には15x15mm種結晶も発売することで、大型宝石製作のための種結晶製品をラインアップし、これらのユーザーの需要に応えました。これらの大型宝石用種結晶は、当事業年度の売上に貢献しましたが、数量の多かった小型宝石用種結晶に比べ、販売数量が少なく、小型宝石用種結晶の需要減少による売上減少をカバーするには十分ではありませんでした。
さらに、イスラエルには当社の最も大口のユーザーがありますが、2023年10月に始まったパレスチナとイスラエルの紛争の影響は大きく、当該ユーザーとの取引は一時的に停止せざるを得なくなりました。その後、当事業年度末にかけて取引の条件を整えることで、制限された範囲での出荷が可能となりました。
このような状況下、当事業年度の種結晶売上は、前事業年度に比べ81.4%減の480百万円にまで減少いたしました。2022年12月の輸出貿易管理令の一部を改正する政令の施行への対応として、2023年4月から一時的に輸出を保留したことで、一部ユーザーからの受注の減少もありました。その後、2023年7月から輸出許可を取得することで、通常の輸出が出来るようになりましたので、納期が以前より若干長くなった影響はありましたが、インドを含め世界各地のLGDメーカーからの受注を獲得してまいりました。
一方、種結晶以外の製品については、当事業年度の初めから内外の企業、研究機関から多くの引き合いが来ていました。特に、量子コンピューター関連研究を行っている海外のベンチャー企業や、パワーデバイス開発を目指す国内外の企業等から、各種の基板の受注が活発にありました。従前から活動していた国内の大学や公的な研究機関からも、前事業年度を上回る受注を獲得しました。この要因として、各国のダイヤモンドデバイスの開発支援策が整ってきたことが挙げられます。特に米国ではダイヤモンドデバイスの実用化に向けて新たな資金の投入が始まっております。
当社は創立当初からダイヤモンドデバイスの開発に資する各種基板、ウエハを出荷してきましたが、当事業年度においては、新たに開発の支援を行う新製品を上市いたしました。パワーデバイスの開発向けには、2023年8月にボロンを高濃度含有させた低抵抗基板の販売を開始いたしました。また、2023年11月には、15x15mmの単結晶基板を実用化いたしました。さらに、2024年3月には量子デバイスの開発を後押しするため、低窒素濃度の(111)基板を実用化いたしました。これらの新しい製品は、既に売上に貢献しているだけではなく、上記の各種プロジェクトを推進する役割も果たしております。
このような積極的な対応により、基板・ウエハの当事業年度の売上は、前事業年度の240.6%増の229百万円となり、特に第4四半期においては、種結晶の売上を上回る売上を達成いたしました。一方、光学部品等や工具素材につきましては、前事業年度の売上を下回る結果となりました。
種結晶の受注が大幅に減少する中、支出を抑えるべく生産設備の一部休止を含む費用削減策を講じてきました。その影響で、2022年11月に稼働を開始した島工場へは、前事業年度に発注した成長装置が導入されましたが、稼働は限定的となりました。購入資材については、必要最小限に絞るなどの対策を、当事業年度を通して講じてまいりました。
また、大型単結晶の開発、切断などの加工技術の開発にも、これまで以上の研究開発費を投じました。
前事業年度に東京証券取引所グロース市場への上場を果たしましたが、これによって内部管理体制の強化などに、従来以上のリソースを投入することが必要となりました。このために、これらを担う人材の確保を進めました。開発費用の増加に加え、この負担も増加しましたので、販売費及び一般管理費は前事業年度より大幅に増加しました。
一方、当社はLGD分野での新たなビジネス展開を行うため、原石等の製品化を目指してきましたが、2024年1月に当社100%子会社であるエス・エフ・ディー株式会社(以下「SFD」といいます。)を設立し、ビジネス体制を整えてきました。
以上の結果、当事業年度の売上高は757,549千円(前年同期比72.0%減)、営業損失は213,997千円(前年同期は1,280,928千円の営業利益)、経常損失は97,384千円(前年同期は1,280,724千円の経常利益)、当期純損失は111,336千円(前年同期は909,628千円の当期純利益)となりました。
なお、当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
②財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,897,003千円となり、前事業年度末に比べ1,065,240千円減少いたしました。これは主に、輸出貿易管理令の一部を改正する政令の施行への対応として、一時的に製品等の輸出取引を保留したことや、パレスチナ・イスラエル紛争によるイスラエルの当社種結晶ユーザーとの一時的な取引停止、インドのLGDメーカーによる種結晶の自家生産の動き等の影響により、種結晶の売上が前事業年度に比べ大きく減少したため、現金及び預金が1,551,352千円、売掛金が133,728千円減少したものの、製品が412,651千円、仕掛品が176,974千円増加したことによるものであります。固定資産は3,440,667千円となり、前事業年度末に比べ386,453千円増加いたしました。これは主に、前事業年度に発注していた生産及び開発設備の購入により有形固定資産が300,395千円増加したことによるものであります。
この結果、資産合計は、5,337,670千円となり、前事業年度末に比べ678,787千円減少いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は220,192千円となり、前事業年度末に比べ520,353千円減少いたしました。これは主に未払法人税等が357,613千円、未払金が82,058千円、1年内返済予定の長期借入金が34,279千円及び役員賞与引当金が25,000千円減少したことによるものであります。固定負債は266,822千円となり、前事業年度末に比べ78,586千円減少いたしました。これは主に長期借入金が83,550千円減少したことによるものであります。
この結果、負債合計は、487,015千円となり、前事業年度末に比べ598,939千円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は4,850,654千円となり、前事業年度末に比べ79,848千円減少いたしました。これは主に、譲渡制限付株式報酬としての新株式の発行により資本金及び資本準備金がそれぞれ15,744千円増加したものの、当期純損失計上により利益剰余金が111,336千円減少したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は90.9%(前事業年度末は82.0%)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、税引前当期純損失が86,711千円(前年同期は1,275,102千円の税引前当期純利益)と1,361,814千円減少したこと等により、前事業年度末に比べ1,551,352千円減少し、当事業年度末は688,217千円となりました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は630,746千円(前事業年度は1,184,225千円の獲得)となりました。これは主に、減価償却費451,124千円及び売上債権の減少額133,728千円があったものの、税引前当期純損失が86,711千円、棚卸資産の増加額618,577千円、法人税等の支払額339,371千円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は908,505千円(前事業年度は1,886,624千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出828,295千円、関係会社株式の取得による支出110,000千円等があったことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は118,477千円(前事業年度は,1,862,248千円の獲得)となりました。これは主に長期借入金の返済による支出117,829千円等があったことによるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における生産実績は以下のとおりであります。
| 生産高 | 当事業年度 (自2023年4月1日 至2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
| 生産高合計(千円) | 772,775 | 81.7 |
(注)1.金額は製造原価によっております。
2.当社の売上高及び生産高は、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模(生産能力)に依存します。なお、最近2事業年度の当社の生産能力(カラットベース)は、以下のとおりであります。
| 前事業年度 (自2022年4月1日 至2023年3月31日) | 当事業年度 (自2023年4月1日 至2024年3月31日) | |
| (カラット) | (カラット) | |
| 生産能力 | 150,000 | 210,000 |
b.受注実績
当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における製品種類別の受注実績は以下のとおりであります。
| 製品種類 | 当事業年度 (自2023年4月1日至2024年3月31日) | |||
| 受注高(千円) | 前年同期比(%) | 受注残高(千円) | 前年同期比(%) | |
| 種結晶(注) | 466,525 | 28.5 | 21,197 | 5.9 |
| 基板及びウエハ | 251,914 | 358.3 | 29,377 | 273.7 |
| 光学部品及びヒートシンク | 21,843 | 63.9 | 5,160 | 52.0 |
| 工具素材 | 15,927 | 78.5 | 479 | 21.0 |
| 合計 | 756,211 | 42.9 | 56,214 | 14.8 |
c.販売実績
当社はダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当事業年度における製品種類別の販売実績は、以下のとおりであります。
| 製品種類 | 当事業年度 (自2023年4月1日 至2024年3月31日) | 前年同期比(%) |
| 種結晶(千円)(注)2. | 480,753 | 18.6 |
| 基板及びウエハ(千円) | 229,964 | 340.6 |
| 光学部品及びヒートシンク(千円) | 29,103 | 77.4 |
| 工具素材(千円) | 17,728 | 86.1 |
| 合計(千円) | 757,549 | 28.0 |
(注)1.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。
| 相手先 | 前事業年度 (自2022年4月1日 至2023年3月31日) | 当事業年度 (自2023年4月1日 至2024年3月31日) | ||
| 金額(千円) | 割合(%) | 金額(千円) | 割合(%) | |
| CBC株式会社 | 687,713 | 25.4 | 132,769 | 17.5 |
| 本田技研工業株式会社 | - | - | 103,523 | 13.7 |
| Appsilon Enterprise | 52,629 | 1.9 | 101,632 | 13.4 |
2.当社は、大型のダイヤモンド単結晶を大量に製造することができますが、当社の主要な製品である種結晶に
ついて、人工宝石市場における種結晶の大型化のニーズが増大しております。なお、当事業年度におけるサ
イズ別の種結晶の出荷割合(出荷個数ベース)は以下のとおりであります。
| 種結晶サイズ | 当事業年度 (自2023年4月1日 至2024年3月31日) |
| 割合(%) | |
| 7x7mm以下 | 16.9 |
| 8x8mm~9x9mm | 42.3 |
| 10x10mm~11x11mm | 26.1 |
| 12x12mm以上 | 14.7 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
また、財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。
a.経営成績に重要な影響を与える要因
当社の事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
b.資本の財源及び資金の流動性
当社の資金需要のうち主なものは、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備投資、研究開発費、人件費等の営業費用であります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
当社は、日常の運転資金については自己資金で賄い、自己資金では賄えない設備投資資金等については金融機関からの長期借入で賄うとともに、資本での調達を検討することとしております。
なお、当事業年度末における借入金の残高は、232,225千円であり、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は688,217千円であります。
c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、経営上の目標の達成状況を判断するための成長性を判断する客観的な指標として、①売上高成長率、②経常利益率、③ROE、④自己資本比率を重視しております。
①当事業年度における売上高成長率は、△72.0%(前期は73.3%)となっております。
売上高成長率は、当社の成長性や事業進捗のペースを表す指標として、重視しております。
当社が競争優位性を確保しながら適切なペースで売上高を向上させ、経営上の目標を達成するための施策としては、当社の売上高はダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模に依存することから、金融機関からの借入及び資本での調達による長期的な資金を獲得し、設備投資を進め、生産能力の拡大を図ってまいります。
②当事業年度における経常利益率は、△12.9%(前期は47.3%)となっております。
経常利益率は、当社の売上高に対する収益性を表す指標として、重視しております。
当社の事業進捗及び競争優位性の確保にとって、設備投資及び研究開発活動が重要ですが、そのための長期的な資金として自己資金を継続的に確保することが必要であるため、一定の経常利益率の確保に努めてまいります。
③当事業年度におけるROEは、△2.3%(前期は26.1%)となっております。
ROEは、当社の投下資本に対する収益性を表す指標として、重視しております。
また、研究開発活動により、ダイヤモンド単結晶の新たな用途を開拓することにより事業領域の拡大を図ってまいります。具体的には、大型単結晶の開発、ダイヤモンド半導体デバイス開発に必要な素材の開発や光学部品として必要な高品質結晶の開発を推進してまいります。
④当事業年度の自己資本比率は、90.9%(前期は82.0%)となっております。
当社の事業進捗にとって設備投資は重要ですが、財務の健全性を保つためには、自己資本比率を50%以上に保ちたいと考えております。過度な借入を行うことがないよう、キャッシュ・フローにも注意を払っております。