有価証券報告書-第23期(2021/12/01-2022/11/30)

【提出】
2023/02/27 17:03
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【項目】
108項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
当社は、「先端テクノロジーで日本の明日に新たな価値を提供する」を経営理念に掲げ、AI・IoT・クラウドをはじめとした先端テクノロジーが新しい時代を切り開く中で、変化に順応するだけでなく新たな可能性を追求し、より付加価値の高いサービスを提供できる、選ばれる会社を目指して事業を行ってまいります。
当社は、経営理念の実現に向け、以下を経営方針としております。
① 就業者に選ばれる会社になる
高めあえる仲間と共に能力を最大限に発揮できる、働きがいのある環境を提供し、社員とその家族が誇りを持てる会社になります。
② お客様に選ばれる会社になる
確かな技術と誠実な対応でお客様の変革と価値創造に貢献し、常に信頼される会社になります。
③ コミットメント(必達目標)をやりとげる
高い目標に挑戦しやり遂げることで企業価値を向上させ、全てのステークホルダーの期待に応えられる会社になります。
(2) 経営環境
当社は、エンジニアの約9割が顧客企業先へ常駐して設計・開発プロジェクトに参画していることから、オンサイト型開発支援に対する需要に大きく依存しております。また、当社のエンジニアの8割はITエンジニアとなっており、IT人材の需要に依存しております。
経済産業省の取りまとめた「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(2019年3月)」によれば、IT需要の拡大にもかかわらず国内の人材供給力が低下することから、IT人材不足は今後より一層深刻化する可能性が高いといわれており、2030年にはIT人材が約16万人から約79万人不足すると推計されております。

「高位シナリオ」(グラフ上段の矢印)
IPA(情報処理推進機構)企業アンケート調査の回答(約3~9%)に基づいてIT需要が拡大すると想定した場合
「中位シナリオ」(グラフ中段の矢印)
「高位シナリオ」と「低位シナリオ」の中間の成長率(約2~5%)でIT需要が拡大すると想定した場合
「低位シナリオ」(グラフ下段の矢印)
各種調査会社等の市場成長予測や国内の実質GDP伸び率を参考にした成長率(1%)に応じてIT需要が拡大すると
想定した場合
そのため、IT人材の獲得競争が激化しており、流動性が高まっていることは機会でもあり脅威でもあると考えております。
一方、日本経済全体は、新型コロナウイルス感染拡大等の影響により急激な減速に転じ、景気回復に向けた財政・金融政策による景気浮揚策が講じられましたが、新規感染者数は依然として高い水準を維持しており、雇用環境も含め先行きが一層不透明な状況になりました。多くの企業で働き方改革を目的としたリモートワーク等のIT投資の需要があった一方、製造業を中心に投資抑制などがあり、需要は停滞傾向にあります。
特に、新型コロナウイルス感染症の影響について以下のように分析しております。
① 経営環境について
政府の各種政策の効果やワクチン接種の進展、及び経口治療薬の普及等により経済社会活動が正常に向かうことが期待されておりますが、引き続き感染拡大の波を繰り返していることから経済が再び減速する可能性があり、景気は依然として先行き不透明な状況にあります。
IT業界においては、民間企業によるIT投資はリモートワークの推進により需要が拡大しており、ITインフラ整備の動きは、今後も継続すると考えられます。
このような状況下において、新型コロナウイルス感染症の拡大が当社に与える影響について「マイナス影響」と「プラス影響」に大別して以下の通り認識しており、今後はプラス影響が更に顕在化していくものと考えております。
マイナス影響
・先行き不透明、景気後退に伴う民間企業の設備投資の減少
・部材の納入遅れによる工程遅延
・感染症対策に伴うコストの増加 等
プラス影響
・生活、社会、通信インフラの整備
・リモートワーク環境の整備に伴うクラウドサービスの増加
・リモートワーク、オンライン化に伴う経費の削減 等
② 感染防止対策について
オンサイト型開発支援業務においては顧客企業の方針に沿って対策を実施しております。受託開発業務及び管理部門においては、社員及びその家族並びに協力会社など、関係者の健康と生命の安全確保の観点から新型コロナウイルス感染症に対するガイドラインを従業員へ示し、感染状況・政府方針を踏まえ、リモートワークの促進、協力会社への指導などの感染防止対策を講じております。
③ 今後の業績への影響及びその前提となる仮定
新たな変異株の出現により新型コロナウイルスの感染が拡大することで経済が停滞するおそれがあり、景気は依然として先行き不透明な状況にありますが、当社の今後の業績を予想するにあたっては、「国内の経済活動の持ち直しにより、企業のIT投資意欲の更なる増大を見込んでおり、今後も高い需要の継続が見込まれる。」と仮定しております。
このような環境の下でも、エンジニア数を毎年増加することにより、サービス提供力を維持・拡大しており、国内の7つのエリアに9つの拠点を設置し、エリア毎のニーズに応じたサービスを提供することで、第23期には売上高の約7割(6,222百万円)を上場企業及び上場グループ企業が占めており(上場グループ企業34%、東証プライム上場企業37%、東証スタンダード上場企業4%、未上場企業25%)、また、売上高の約6割(5,142百万円)を取引年数5年以上の顧客が占めており(10年以上21%、5年以上41%、5年未満38%)、上場企業を中心に継続的な取引を行っております。
(3) 経営戦略
オンサイト型開発支援を中心に事業を展開し、多様化かつ高度化する顧客のニーズに対して柔軟にサービスを提供できるよう、更なるエンジニアの増強に力点を置くことを中期経営計画の柱に据えております。
先端エンジニアリング事業を推進していくために、事業領域を下表の通り既存領域と新規領域に分類した上で、拠点ごとに中心とする事業領域を定めることで、より高度な案件に対するサービスの提供を可能としております。
事業領域分類東京支社神奈川支社その他拠点
ソフトウエア既存領域
インフラ既存領域
メカトロニクス既存領域
エレクトロニクス既存領域
Salesforce新規領域
クラウド新規領域
AI新規領域

※〇:中心とする事業領域(〇のない事業領域についても全拠点でサービスを提供しております)
中期経営計画では、エンジニア数の増加及びエンジニアの技術力向上によりサービス提供力を強化することで取引の拡大を図る方針としております。
既存領域においては、多様な人材を採用し、エンジニアのスキルに応じたプロジェクトへの参画や、技術研修による技術力向上により、既存顧客を中心にサービスを提供することで取引の維持・拡大を図っております。新規領域においては専門知識を持った人材の採用に加え、既存領域に属するエンジニアの技術転換及び資格取得により、専門性の高いサービスを提供することで、新規市場への進出を含めた取引の拡大を図っております。
エンジニアの保有資格一覧(2022年11月現在)
情報処理技術者試験
(261人)
・応用情報技術者 ・基本情報技術者 ・データベーススペシャリスト
・ネットワークスペシャリスト ・エンベデッドシステムスペシャリスト
・情報セキュリティマネジメント ・情報処理安全確保支援士
ベンダー認定資格
(322人)
・AWS認定資格 ・Cisco認定資格
・JSTQB認定テスト技術者資格 ※ISTQB Platinum Partner認定
・Oracle認定資格 ・Microsoft認定資格
・Salesforce認定資格 ※Salesforceコンサルティングパートナー認定
その他の資格等
(374人)
・LinuC(旧:LPIC) ・Python3エンジニア認定基礎試験
・Python3エンジニア認定データ分析試験 ・G検定 ・E資格
・統計検定 ・情報処理検定 ・3次元CAD利用技術者試験
・電気主任技術者 ・デジタル技術検定 その他

また、企業として内部管理体制をより高いレベルに引き上げ、内部統制の有効性の向上に努めております。
(4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、サービスの競争力を維持し、財務活動を含めた全事業の業績を向上させていくことが重要であると認識していることから、売上高成長率及び経常利益成長率を経営指標としております。また、当社の売上高は概ねエンジニア数×稼働率×一人当たり売上高で算出できること、及びエンジニア数の増加に直結する採用紹介料が販売費及び一般管理費の10%以上を占めること、並びに稼働率と一人当たり売上高が売上総利益率に連動していることから、エンジニア数、稼働率、一人当たり売上高を経営指標の目標達成状況を計るためのKPIとしております。
エンジニア数については、第21期より新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い一時的に採用を抑制したものの、第19期より毎期、純増しております。
稼働率については、第20期にエンジニア数を大幅に増加したこと及び第21期より新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、オンサイト型開発支援の需要が停滞したことから一時的に低下しましたが、顧客企業先によるテレワークの推進に伴いITインフラ整備の需要が拡大したことから、第22期以降は回復しました。
一人当たり売上高については、第20期より育成人材を積極的に採用していること及び新型コロナウイルス感染症の拡大の影響に伴い、稼働率が低下したことにより一時的に下がりましたが、第22期以降は稼働率の回復に伴い上がりました。
(エンジニア数、稼働率、及び一人当たり売上高)
回次第19期第20期第21期第22期第23期
決算年月2018年11月2019年11月2020年11月2021年11月2022年11月
エンジニア数 (人)8081,0261,0881,1461,320
稼働率 (%)95.794.992.195.495.9
一人当たり売上高(千円/月)539541538563571

※エンジニア数:期末時点のエンジニア在籍数
※稼働率:(月ごとのエンジニア稼働数の合計)÷(月ごとのエンジニア在籍数の合計)×100
※一人当たり売上高:年間の売上高÷(月ごとのエンジニア稼働数+ビジネスパートナーの稼働数の合計)
※エンジニア数、エンジニア在籍数、エンジニア稼働数には臨時従業員を含む
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
① 事業領域の拡大
これまでソフトウエア、インフラ、メカトロニクス、エレクトロニクス関連の既存領域において顧客に当社のエンジニアを派遣契約あるいは請負契約等により事業を進めてまいりましたが、これに加え、新規領域においても顧客から選ばれるよう、以下のような分野へ進出する必要があると認識し、その提供を開始し、また拡大を進めてまいります。
(Salesforce(※1))
・システム導入/移行支援
・機能追加/カスタマイズ
・他システム連携作業
・システム運用/保守
(クラウド)
・クラウド基盤の設計/構築/運用/開発/保守(主にAWS(※2)、GCP(※3)、Azure(※4)などの基礎基盤)
・オンプレミスからクラウド基盤への移行
・ハイブリッドクラウドの設計/構築
(AI)
・Python(※5)を活用したAIプロダクト開発
・ビッグデータを活用したデータ分析
・画像及びテキストデータのAnnotation(※6)業務
② 人材の確保
既存領域においては、戦略的な採用体制と募集基準等により継続的に多くの人材を確保することができております。新規領域においては、人材獲得競争が激化を極め採用難易度がますますたかまっております。
経営方針の確実な達成のために、新規領域における採用強化と教育体制の再構築を行い、専門性の高い技術を有した人材の確保と育成に取り組んでまいります。
③ 働き方改革による管理部門の生産性最大化
社員が安心して働くことのできる環境を提供すべく、全社的に在宅勤務手当を導入するなどの取り組みにより在宅勤務を推奨してまいります。
また、同時に生産性を高めるためにデータの可視化、事務作業の自動化、契約/申請の電子化などのDX(※7)を推進することが重要であると考え、それらの実現を目指してまいります。
④ 財務基盤の安定
当社は、本書提出日現在において、必要になった資金につきましては内部留保及び営業活動によるキャッシュ・フローで賄っており、借入金等の負債もないことから、財務上の課題はないものと判断しております。ただし、発生可能性としては低いものと考えておりますが、新型コロナウイルス感染症の拡大や自然災害等の不測の事態に備え、手許流動性を補完すべく、金融機関と当座貸越契約を締結しております。
⑤ 持続的な成長の実現
当社は、サステナビリティ経営として事業活動を通じた社会課題の解決に取り組んでおります。SDGs(※8)をはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認し、以下の通り整理しました。これらの課題に取り組むことにより、社会とともに持続的に成長し信頼される企業を目指してまいります。
1. 事業活動に伴う環境負荷の低減
帳票の電子化によるペーパーレスの推進や、リモートワークによるCO2排出量の削減を通した環境改善により、以下の目標達成に向け課題解決に取り組みます。
(7. エネルギーをみんなにそしてクリーンに)
(12. つくる責任つかう責任)
(13. 気候変動に具体的な対策を)
2. 事業活動を通じた社会貢献
インフラ、クラウド技術の提供によるICT教育の支援や、AI技術の提供による先端テクノロジー普及の支援を通した社会貢献により、以下の目標達成に向け課題解決に取り組みます。
(4. 質の高い教育をみんなに)
(8. 働きがいも経済成長も)
(9. 産業と技術革新の基盤をつくろう)
3. 上場企業としてのガバナンス体制の強化
コンプライアンスの徹底や、積極的な情報開示を通した企業統治により、以下の目標達成に向け課題解決に取り組みます。
(17. パートナーシップで目標を達成しよう)
[用語解説]
※1.Salesforce
Salesforce.com社により提供されている顧客管理システムや営業支援システムを中心としたクラウドコンピューティングサービスの総称を指します。
※2.AWS
Amazon Web Servicesの略称。Amazon.com社が提供しているクラウドコンピューティングサービスの総称を指します。
※3.GCP
Google Cloud Platformの略称。Google社が提供するクラウドコンピューティングサービスの総称を指します。
※4.Azure
Microsoft Azureの略称。Microsoft社が提供するクラウドコンピューティングサービスの総称を指します。
※5.Python
プログラミング言語の一つで、Webサービスの開発や人工知能の開発などに使われております。
※6.Annotation
機械学習において、データに注釈を付けて意味づけすることを指します。
※7.DX
Digital Transformation(デジタルトランスフォーメーション)の略称。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立することを指します。
※8.SDGs
世界(地球)には、紛争や貧困、不平等や環境など、様々な社会課題がありますが、その中でも2030年までに解決すべき重要な問題について、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」として17個の目標(テーマ)を国連が定めたもので、英語の頭文字をとって、SDGs(えすでぃーじーず)と呼んでおります。世界中の人々が協力して、目標の達成に取り組むことで、社会課題を解決し、世界中の人々が、誰一人取り残されることのない社会を目指すものです。「自分の幸福のためだけに頑張る」のではなく、「社会全体、世界全体の幸福に向かって協力する」ための目印となるものです。