有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2022/11/10 15:00
【資料】
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【項目】
136項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、“経営理念”・“企業ミッション”・“長期ビジョン”・“お客様への約束”から構成される「新生スカイマーク方針」を基に、その実現及び継続に向け全社一丸となって取り組んで参ります。具体的には以下の経営理念及び経営テーマを掲げております。
(経営理念)
一、安全運航を使命として、社会に役立ち評価される存在となります。
一、お客様の思いを真摯に受け止め、チャレンジ精神を忘れず、広くアンテナを張り、社会環境の変化に機敏に対応することで、良質かつ特色あるサービスを提供します。
一、お客様へのサービス提供者である社員を尊重し、社員が互いに協力しあい、誇りを持って働ける環境と企業風土を築きます。
(経営テーマ)
・安全・整備体制の強化
・お客様満足と運航品質の向上
・収益性・生産性の向上による利益体質の構築、新型コロナウイルス感染症拡大により傷ついた財務基盤の強化
・社員満足向上のための人事・組織・風土改革
・事業拡大・再成長に向けた基盤作り
(2)経営戦略及び目標とする経営指標等
当社は適正な運賃水準を維持しながら、安定した運航品質及びお客様への心のこもったサービスを提供することで収益の安定的確保を図って参ります。当社は、大手航空会社と遜色のない運航品質及び機内サービスを、より低価格で提供できていると考えており、今後、レベニューマネジメントに基づく適正な運賃水準の設定により、収益性を向上させることを目指して参ります。
コスト面に関しても、ボーイング737-800型機のみの運航体制とし、多頻度運航を行うほか、継続してコスト削減に取り組むことで、国内線における収益性の安定確保に注力して参ります。
また、当社は、本書提出日現在運航中のボーイング737-800型機の後継機としてボーイング737MAXシリーズのボーイング737-8型機及びボーイング737-10型機を導入予定です。具体的には、2022年11月、現在運航中のボーイング737-800型機の後継機として、ボーイング737-8型機を導入することを決定しリース会社と6機のリース契約を締結しました。当社は、2025年度第1四半期より後継機の導入を開始し、現行機材を更新するとともに、更なる成長に向けて、保有機材数を拡大する予定です。さらに、当社は、同月、ボーイング737-8型機及びボーイング737-10型機計6機(確定4機、オプション2機)の発注についてボーイング社と基本合意しました。これらの機材は、2026年度より順次導入する計画で、今後、正式契約の締結に向けてボーイング社と協議を続けて参ります。当社としては、ボーイング737-800型機よりも座席数の多いボーイング737-10型機を、収益性の高い羽田空港国内路線に導入することにより、更なる収益性の向上に努めて参ります。また、新型機の導入により、着陸料や燃料費等の更なるコスト削減を見込んでおります。
加えて、羽田空港、神戸空港、茨城空港及び福岡空港等の拠点において、発着枠の拡大を通じて運航便数を増加させ、有償旅客数の増加に繋げることで当社の収益性の更なる向上を目指して参ります。
上記のほか、運航路線及び運航時間の変更などの見直しを行い利便性の向上、定時性の確保、心に残る温かいサービスを提供し続けることによりお客様にとって価値のあるValue for Money(VFM)トップの航空会社であり続けられるよう取組んで参ります。なお、運航品質面では2021年度においても5年連続となる「定時運航率№1」を確保しており(注1)、また、2022年度には「顧客満足度」第1位を獲得するなど、(注2)、安全運航の堅持を前提にお客様の利便性向上を追求し他社との差別化を図るべく、こうした指標については今後も日本一の継続を目標として参ります。
また、将来の事業拡大を安定的に行うため、新造機の選定及び導入、新規路線の多角的な検討を行いながら、その土台作り及び成長戦略を築いて参ります。
(注1)出典:国土交通省HP「航空輸送サービスに係る情報公開」
(注2)出典:サービス産業生産性協議会HP「Japanese Customer Satisfaction Index 2022」、国内長距離交通部門
(3)経営環境
日本の航空業界において、近年のLCCの参入により航空各社の勢力地図にも変化がみられ、訪日外国人旅行客の増加等、国内海外問わず航空需要は日々大きく変化しております。当社においては、一部の路線でLCC及び大手航空会社との競合に直面しており、また、日本国内でも最大の混雑空港である羽田空港を発着する路線及び地方空港を発着する一部の路線では、大手航空会社との競争が進行しております。
また、当社の主要路線は同業他社も運航しており、路線によっては新幹線・高速道路等の地上交通機関とも競合関係にあります。今後において、競合他社等の運賃戦略等により競争が激化した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、航空機燃料は原油相場の影響を受け、航空機のリース料等の外貨取引は為替相場の影響を受けるため、今後の相場次第では当社の経営環境に影響を与える事が予想されます。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①新機材の導入
当社は本書提出日現在運航中のボーイング737-800型機の後継機としてボーイング737MAXシリーズのボーイング737-8型機及びボーイング737-10型機を導入予定です。ボーイング737MAXシリーズは省燃費機材で燃料消費量や二酸化炭素排出量を軽減できることに加え、ボーイング737-10型機は長胴型であり提供座席数を拡大することができます。ボーイング737-8型機については2025年度第1四半期より導入を開始する計画であり今後、導入に向けた準備を継続して参ります。当社としては、新機材を導入することは重要な施策と考えており、収益性の高い羽田空港国内路線に導入することで、更なる収益性の向上に努めて参ります。
②発着枠の拡大
羽田空港国内路線の拡大にあたり、5年毎の羽田空港国内路線発着枠の配分見直しにおける増枠の達成が重要と考えております。2020年の配分見直しにおいては評価項目として以下が設けられておりました。
・運賃水準の低廉化の努力
・安全の確保
・全国的なネットワークの形成
・航空会社の効率的な経営の促進
・発着枠の効率的な使用
・行政処分の有無
当社は2020年の羽田空港国内路線発着枠の配分見直しにおいて、本邦航空会社で唯一羽田空港国内路線発着枠の増枠を達成しており、今後も当社の「身近な価格で、高い運航品質とシンプルで心のこもったサービスを提供する」ビジネスモデルを維持・強化し、増枠に必要な評価を得られるように継続して努めて参ります。
③財務上の課題
当社は新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う旅客需要の減少により、業績に大きな影響を受けておりました。現在行動制限は実施されておらず、旅客需要の回復の兆しが見え始めておりますが、今後の感染拡大の可能性に備えて業績への影響を最小化すべく次のとおり取り組んでおります。
a.手許資金の確保及び財務基盤の強化
・間接金融による既存借入金の継続
・公租公課等の支払猶予制度の活用
・増資と同時の減資実施による投資余力の拡大
増資と同時の減資の実施に関する詳細は「募集又は売出しに関する特別記載事項 5.株式発行と同時の資本金の額及び資本準備金の額の減少について」をご参照ください。また、見込まれる具体的な効果については後記「2 事業等のリスク (25)欠損金の繰越控除について」もご参照下さい。
b.収支改善に向けた継続的なコスト削減施策の実施
・業務委託費・賃料等の固定費の減額交渉の実施
・管理可能費の徹底的な削減
なお、当社としましてはこれらの施策を今後継続することで同様の事象が起きた場合も過去の感染拡大時の経験を活かし、対応できるように準備をしております。また、新型コロナワクチンの第4回目以降の接種が始まっており、旅客需要も回復が見込まれることなどから、足もとは特段の影響はないものと考えております。