有価証券報告書-第16期(2025/01/01-2025/12/31)

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2026/03/27 16:06
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【項目】
109項目

有報資料

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 経営方針
「細胞から希望をつくる」
「細胞のみから成る立体的な組織・臓器を患者さまへお届けする」
当社は、「革新的な三次元細胞積層技術の実用化を通じて医療の飛躍的な進歩に貢献する」という企業理念のもと、2010年の創業以来、「細胞だけで」立体的な組織・臓器を作製し、再生医療・創薬分野をはじめとする再生・細胞医療分野において、社会貢献することを企業使命として事業を進めてまいりました。
当社は、人工の足場材料を用いることなく細胞のみで立体的な組織・臓器を作製することを可能とする独自の三次元細胞積層技術(基盤技術)及びこの基盤技術を搭載した細胞版の3Dプリンタ(バイオ3Dプリンタ)を用いて作製した立体的な組織・臓器を「3D細胞製品」として実用化し、患者さまにお届けするとともに、将来的には、当社の事業拡大を通じて日本発の本技術をグローバルに展開し、再生・細胞医療分野での中心的存在になることを目指しております。
(2) 中長期的な経営戦略及び経営環境
中期経営計画における事業戦略として、バイオ3Dプリンタの普及により「ベース収益の確保」と「シーズ育成環境」を実現し、研究用組織(創薬/再生医療研究用途等)で「細胞製品の実用化」を実現する段階を経て、中長期的に「再生医療等製品の承認取得」を目指し、再生医療ベンチャーとしての事業価値最大化を図ることとしております。
中長期的な経営戦略及び当社事業を取り巻く経営環境は以下となります。
1. 再生医療等製品の上市(開発パイプラインの事業化)
2. 開発会社としての細胞製品の実用化に向けた研究開発体制及び上場会社としての経営管理体制の強化
3. 上市後の飛躍的成長へ向けた開発パイプラインの拡充及びグローバル展開
① 再生医療領域
開発パートナー企業とともに、複数パイプラインの臨床開発を進め、再生医療等製品の承認取得を実現し、長期的ドライバとしての事業確立を目指します。
バイオテクノロジー及び再生・細胞医療領域においては、2022年に内閣府より「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が発表されて以降、バイオベンチャーへの支援がより一層推進傾向にあり、特に再生医療・遺伝子治療等のバイオ分野は国益に直結する科学技術・イノベーション分野として重点投資分野に指定されており、今後の経済成長が期待されております。
再生医療等製品市場は、細胞移植による組織再生を促す再生医療等製品や、CAR-T細胞製品に代表される遺伝子改変した細胞製品の普及を背景に、引き続き成長を続けております。
また、循環器、骨・軟骨、神経系疾患など幅広い領域で製品上市が進んでおり、細胞を用いた新たな治療法の選択肢が提供できる環境及び市場領域の拡大が着実に進展しております。iPS細胞を活用した同種(他家)細胞製品の登場やゲノム編集技術を用いた高度な細胞製品が実用化フェーズに移行しており、こうした技術革新と製造技術の高度化が相まって、再生医療の社会実装は今後ますます加速していくと期待されております。
「2020年度再生医療・遺伝子治療の市場調査業務」の最終報告書(アーサー・ディ・リトル・ジャパン株式会社が国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)から委託を受けた調査)では、国内の市場規模は2020年時点の250億円から2040年時点の1.1兆円規模まで拡大し、今後20年で40倍以上の規模に成長すると見込まれております。
領域別でみても、筋骨格領域、神経領域をはじめとして、様々な領域において急速に市場が拡大すると予想されています。筋骨格領域に関しては、変形性膝関節症を対象とする再生医療等製品が上市したことにより、適応となる患者数が大幅に増えることが予想され、市場が拡大すると想定されます。
上記以外にも、直近では角膜疾患を対象とした製品上市が続いている眼科領域に加え、肝臓や腎臓が掌る内分泌・代謝系の領域、心血管・血液領域、泌尿生殖器領域、消化器領域等、また昨今の新型コロナウイルス感染症のような感染症や呼吸器に関する領域等いずれの領域も、新たな製品が上市されることで再生医療の新たな治療領域として市場の拡大がより一層進んでいくことが予想されています。
一方、これらの再生医療等製品の多くは細胞治療に分類され、細胞懸濁液等を静脈注射する治療法が主流となっています。今後は、立体形状を有する製品として、二次元のシート状組織や三次元の立体組織を移植する製品群の開発が進行することが予測されております。
また、現在の再生医療領域がおかれている状況下にあって、移植待機患者数の増加等の社会的課題に対して、当社が開発を進める3D細胞製品のような社会的意義の大きい新たな再生医療等製品の誕生により、臓器移植の新たな選択肢としての再生医療が実現することへの期待が高まっている状況にあります。
② 創薬支援領域
開発パートナー企業とともに、創薬支援分野において肝臓構造体の毒性評価モデルの事業化を実現し、中期的ドライバとしての事業確立を目指します。
科学技術のテクノロジーの進歩が著しい昨今においても、近年のヘルスケア業界における製品開発では、数年以上の長期間、数十億ドル規模の研究開発費を要することに加え、より開発が困難な新製品創出が求められる現状が続く一方で製品の安全性の要求も高まっており、新製品の開発コストは増加の一途をたどっています。
また、現状では、動物実験により製品の安全性や有効性を検証する方法により製品開発が進められていますが、近年、世界各国において動物の保護を目的とする法整備が進んでおり、EU域内においては化粧品開発のための動物実験が全面的に禁止される等、その動向は世界的に加速しています。
例えば、今後の化粧品の研究開発において動物実験が全面的に禁止される可能性があり、様々な製品開発において動物実験を代替する新製品誕生に対するニーズが高まっているという状況にあります。
さらに、食品・化粧品等のあらゆる製品の開発には動物実験が介在しているものの、現状ではこれに代わるソリューションがなく、動物実験の代替製品の市場だけでも、世界的には2020年の91億ドルから2030年には306億ドルに、年平均成長率13.5%で市場拡大が進むと予測されています。
このような現状にあって、現在の企業の製品開発においては、なお動物試験を継続して、あるいはヒト臓器から取り出した細胞をシャーレ上で培養したものを研究開発に使用する等、根本的に動物試験に代替する製品が市場には存在しておらず、今後、当社の3D細胞製品のようなこれまでにない新たな革新的製品を事業化することにより、医療業界及びヘルスケア業界全体が抱える社会課題に対するソリューションを安価に平等に提供できることへの期待が高まっている状況にあります。
③ デバイス領域
開発パートナー企業とともに、バイオ3Dプリンタによる基盤技術の普及を進めるとともに、再生医療領域において必要となる基盤技術の応用や新技術開発を継続し、基盤技術のグローバル・スタンダード化を目指します。
再生医療周辺産業においても、2015年から2030年までCAGR+23%での成長が予測されており、装置類や消耗品類、製造受託等のサービス類が市場を牽引すると見込まれております。また、再生医療に使用する目的以外にも、新薬開発や研究用の組織としての製造受託等の各種受託の需要も見込まれており、特に、創薬分野では三次元培養によって作製した細胞や3D細胞製品を用いて、生体内により近い環境下での、肝炎、肝臓病、がん等に関する研究が行われています。
今後、再生医療の産業化・市場拡大が進み、神経、骨、血管等の各種組織・臓器を立体的に作製するニーズが増加することに伴って、再生医療周辺産業の市場もさらに拡大すると見込まれております。
バイオ3Dプリンタ(装置以外の各種消耗品も含む)市場では、大学や研究機関での技術導入に加え、今後は企業での導入が進むと予想されております。特に製薬会社の創薬・スクリーニングでは細胞の使用量が多くなるため、自動装置及びバイオ3Dプリンタの需要が高まるとみられます。
さらに、立体的にヒトの皮膚を培養した化粧品のサンプルテストへの応用、医師の手術用練習ツールとしての人工臓器の作製等の様々な領域への技術応用が拡大しており、今後は、医薬における研究以外の様々な分野での需要拡大も予想されます。
(3) 目標とする経営指標等
当社は、独自の基盤技術を活用して創出する新たな細胞製品により市場の開拓及び拡大成長を目指して、積極的にパイプライン開発及び研究開発・技術開発等への先行投資を行っている段階であり、2021年12月期においては通期黒字化を達成したものの、安定して利益を計上するに至っておりません。
このため、現時点において当社は、現預金残高水準(キャッシュポジション)を目標とする経営指標等としております。具体的には、今後、経済・金融環境の変化に備えて十分な手元流動性を確保し、中長期的な財務基盤の拡充を図り、確実に再生医療等製品の事業化を達成するための経営指標等として、安定した資金力(キャッシュポジション)の確保・維持することを重視しております。さらに、多様な資金確保手段を講じ安定的な現預金残高水準を確保・維持するとともに、大手金融機関・政府系金融機関・地方銀行等の複数の金融機関との間でコミットメントライン契約等を含む融資枠を設定しております。中長期的には、再生医療等製品をはじめとする事業成長等による収益安定化の実現により経営指標等の達成を目指してまいります。
(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社は、企業理念である「革新的技術を用いて医療の飛躍的な進歩に貢献する」ことを目指し、独自の基盤技術である「バイオ3Dプリンティング」を用いた再生医療等製品の実用化及び3D細胞製品の産業化、並びに永続的な企業成長の実現に向け、多角的な戦略のもと様々な領域において事業展開しております。
当社のさらなる企業成長へ向けた重要なフェーズに位置付ける当事業年度においては、新しい医療や新産業の創出を目指し、下記の課題に対処すべく再生医療・細胞治療領域を中心とした複数領域での事業活動に取り組んでおります。
具体的には、①強固な事業基盤の構築、及び②組織体制及び財務基盤の強化を中心とした経営体制の強化、並びに、③人的資本経営の拡充に重点的に取り組み、中長期的な企業成長と事業価値の最大化を果たしてまいります。
① 強固な事業基盤の構築
a.パイプライン価値の向上及び独自の事業化モデルの構築
当社の再生医療等製品及び細胞製品を医療現場で普及させ、中長期的な企業成長へと繋げていくためには、細胞製品の実用化・商業化に向けてパイプラインの価値を継続的に拡大・発展させていく必要があります。そのためには、革新的な再生医療等製品をはじめとする、当社独自の基盤技術から生み出される3D細胞製品を広く周知し、普及していくことが重要です。
当社の製品は前例のない新しいコンセプトの製品ゆえ、その製品上市を通じた市場浸透及び産業化のバリューチェーンを構築することが課題として挙げられます。
本課題へ対処すべく、当社では、高度な開発力・技術力等の専門性を有する複数の事業会社パートナーとの強固かつ効率的な共同開発体制を構築し、製品上市へ向けた臨床開発を加速させております。また、このような取り組みに加え、パートナー企業との戦略的な提携を進めることで、研究開発の成果としての社会実装に留まることなく、『着実な製品開発』と『効率的な製造』、そして『安定的な収益化』の3つが連動する独自の事業化モデルを構築することを推進してまいります。
b.基盤技術のプラットフォーム化及び独自のポジション確立
当社独自の基盤技術を事業展開の基軸として、持続的な企業成長を果たしていくためには、再生医療・細胞治療領域における基盤技術の普及及びプラットフォーム化を推進することが重要です。
当社では、学会をはじめとする業界団体への認知度向上に向けた活動とともに、現在の基盤技術を搭載したバイオ3Dプリンタのみならず、細胞製品製造工程の機械化・自動化へ向けた新技術開発を進める等、基盤技術としてのさらなる付加価値向上へ向けた技術開発に継続して取り組んでおります。
また、3D細胞製品の業界スタンダードモデル化に向け、パートナー企業との戦略的パートナーシップを深化させ、再生医療の市場拡大及びコスト低減の両面に貢献してまいります。そして、将来の商業生産を支える「産業化技術基盤」を確立することで、再生医療及びライフサイエンス分野の産業化を牽引するプラットフォーマーとして独自のポジション構築を推進してまいります。
② 経営基盤の強化
a.組織体制の強化
持続的な企業成長のためには、将来の事業基盤の構築と独自の3D細胞製品の開発に必要となる技術革新を着実に実行できる高度な専門人財で構成される組織体制を強化していくことが課題として挙げられます。
本課題へ対処すべく、当社では、自社において組織的な開発力・技術力の向上を図るとともに、パートナー企業等との協働を通じ、専門性の高いプロジェクトをバイオロジー及びエンジニアリングの両側面から1つの組織で牽引できる組織体制に注力しております。
さらに、将来のグローバル展開を加速させるべく、多様性のあるグローバル人材の確保、海外の規制や市場動向に対応できるガバナンス体制の整備を進め、健全かつ機動的な経営体制を構築してまいります。
b.財務基盤の強化
研究開発型ベンチャー企業である当社の特性上、恒常的な製品販売等による安定的な収益確保に至るまでは先行投資による資金需要が発生します。
そのため、将来の持続的な収益基盤形成に向けて、収益の多様化やデバイス販売、各種受託等のベース収益の安定化を図るとともに、開発効率の向上やコスト抑制を継続し、財務基盤を強化する必要があります。
また、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)及び東京都等の行政からの研究開発・技術開発に対する事業採択を通じた効果的な開発資金を獲得する等、研究開発費を中心とした事業活動資金を継続的に外部より調達しております。
さらに、安定した運転資金を確保しながら、研究開発及び技術開発に対する先行投資を着実に実行するため、証券取引所への上場等による資金調達の選択肢拡大に加え、大手金融機関からの融資枠の供与や政府系金融機関からの長期借入を通じて対外信用力を強化する等、間接金融による財務状況の安定性強化も進めております。
今後も、予算管理の徹底を通じてコスト抑制を図りながら、将来の成長に向けた研究開発投資を継続しつつ、外部資金の積極的な活用や株式市場からの調達等を含めた機動的な資金調達の検討を行う等、資本効率を意識した健全かつ安定的な財務体質の維持・向上を図り、外部環境に左右されない強固な財務基盤の構築を推進してまいります。
③ 人的資本経営の拡充
当社のような小規模なベンチャー企業における持続的な企業成長と価値創造の源泉は「人」にあります。当社では、独自の技術情報を継承する高度専門人材の確保、事業化・グローバル展開を牽引する次世代リーダーの育成に注力し、多様な人材が活躍できる組織文化の醸成を図りながら企業成長を目指す人的資本経営が極めて重要であると考えております。
本課題へ対処すべく、当社では、独自の基盤技術に精通し高度な専門的技能及び経験を有する研究者・技術者・開発者等の高度専門人材の確保及び育成、並びに、社内環境整備に関する様々な施策を通じて、人的資本経営を拡充することに積極的に取り組んでおります。
具体的には、中長期的インセンティブプランとしてのストック・オプション制度の継続に加え、役職員自らが環境を構築する独自の『まほろばプロジェクト』を通じ、男性役職員の育児休業取得も積極的に促進する等、すべての社員がライフステージに合わせた柔軟な働き方で能力を発揮できる体制を構築することで、人的資本経営に基づく持続的な組織成長を実現します。

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