有価証券届出書(新規公開時)

【提出】
2023/02/27 15:00
【資料】
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【項目】
131項目

対処すべき課題

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営理念
当社の経営理念は、「私たちは、『スマートに働き、よく学び、よく遊び、夢や理想に近づく』という考え
を基にした働き方を通じて、全てのステークホルダーにとっての幸せを追求し続けます。」であります。
①スマートに働く
当社は、情報処理システム及びソフトウエアという情報技術を活用した無形の価値を顧客に提供しており、その価値の最大化を図るためには「能力で働く」という考え方が必要不可欠であると考えております。
能力で働くとは、単純に時間を費やすのではなく、能力(豊富な知識や高度な技術力、的確な思考力、生産性の高さ等)により成果を得る働き方を意味しております。
②よく学ぶ
情報処理システム及びソフトウエア開発のプロフェッショナルとして、知識力、技術力及び思考力等を養
い学び続けることが、スマートな働き方を実現する根本にあることを意味しております。
③よく遊び、夢や理想に近づく
遊ぶとは、単に遊行に興じることではなく、自身の時間を最大限に有効活用し、社内外を問わず、趣味趣
向に沿ったコミュニティ活動や社会的交流活動等へも積極的に参加するといったことを通じて、より文化的
でより充実した生活を送り、それぞれの描く夢や理想を実現しようという目的が込められています。
これら「スマートに働くこと・よく学ぶこと・よく遊び、夢や理想に近づくこと」は、それぞれが独立して
成り立つわけではなく、より大きな夢やより高い理想を実現したいという思いが、さらなるスマートな働き方
や学び続けることへも繋がっていくという、この好循環を続けていくことこそが経営理念の実践であり、全て
のステークホルダーにとっての幸せを追求し続けることに繋がると考えております。
(2)経営戦略
当社の経営戦略は、システム開発実績及び業務知識を基とした①既存開発領域における取引の拡大、②DX技術及び提案型活動を基とした開発領域の新規拡大、③クラウドサービスの推進、④新製品の開発であります。
①既存開発領域における取引の拡大
ア.継続的案件の受注
システム開発実績を積み重ねることで、当該企業の同一開発領域におけるシステム内容への精通度や当社への総合的な信用度が向上し、保守案件やリニューアル案件等の継続的な受注へと繋がる可能性が高まるという特性があります。足下の開発案件を着実に遂行することで更なる受注可能性が高まるという好循環を継続することを基本としつつ、開発領域固有のシステム情報及びノウハウ等の属人化や人材流動性の硬直化を回避し、協力会社からの役務提供も組み合わせて適切な開発体制を提供することで、継続的案件の受注及び拡大を図っております。
イ.業務知識を基とした新規案件の受注、業界特化型戦略の推進
システム開発実績を積み重ねることで、当該業界における特性や事業環境、業務内容の理解、必要となる許認可といった顧客業界に関する総合的な理解量を表す「業務知識」が蓄積されてまいります。システム開発実績と業務知識が組み合わさることで、当該業界内の他の企業へも展開可能なシステム開発モデルが確立され、そのモデルを訴求力とすることで新たな企業との取引の開始及び新規案件の受注へと繋げてまいります。
この循環を継続することによって業務知識が蓄積された業界が、当社にとって強みとなる業界であります。現に携わる業界におけるシステム開発を深化させることで当該業界における優位性の確立を目指しており、長年にわたる開発実績を有する保険業界に加えて、物流業界等の新たな強みとなる対象業界の構築に引き続き努めてまいります。また、同一の元請システムインテグレーション企業から受注するシステム開発実績を積み重ねることで、当社への総合的な信用度も向上することから、元請システムインテグレーション企業との良好なパートナーシップ関係を継続的に築いていくことで、新規案件の受注及び拡大を図っております。
②DX技術及び提案型活動を基とした開発領域の新規拡大
当社ではDX技術を、技術的な専門性のみならず、プロジェクト運営力やビジネス的観点での考察力を有し、業界における豊富な業務知識等を活用して顧客企業の業務効率化や事業多様化等に資する提案を行い、それらを実現に導くことができる力量と定義しております。当社は、多様なシステム開発実績を積み重ねることによって培われたDX技術を持つ人材を有しており、データ活用の方法やデジタル技術の提供等を通じた業務効率化に資する需要の喚起や、顧客業務の特性等を踏まえて当社が主体的に提案活動を行い、新たなシステム開発案件を創出することで開発領域の新規拡大を図っております。これらの活動により、保険会社のデータサイエンス推進領域におけるシステム開発や、自動車産業におけるCASE(Connected Autonomous Shared Electric)戦略のC:コネクテッドサービス(注)に係るシステム開発等への拡がりも見せております。
③クラウドサービスの推進
クラウドサービスの飲食店向け店舗運営システム「Order Revolution」と受付業務支援システム「アイウェルコ」は、導入後のシステム利用をサブスクリプション型サービスで提供しており、新規受注に伴って継続的収益が発生する契約数が増加することから、直接販売及び代理店販売施策により新規受注の拡大を推進すると共に継続契約の維持にも努めることにより、収益の拡大を図っております。
④新製品の開発
顔認証技術を活用した「入退室管理システム」の開発を手掛けております。既設のICカードリーダー等の機器設置環境を利用して設置することが可能であり、顔認証機能による厳格なセキュリティ環境の構築を実現し、体温検知機能による入室規制化、暗証番号等入力のタッチレス化、IC式IDカードの発行や携帯が不要となる等、先発する受付業務支援システム「アイウェルコ」に続き、業務効率化システムのクラウドサービスのラインナップとして加わる予定であります。
(注)コネクテッドサービスとは、ある製品に対して通信機能を設けることで、メーカーとユーザー間で通信
を行えるようにするサービスとなります。
(3)経営環境
2021年12月、デジタル社会形成基本法(2021年9月1日施行)に規定される「デジタル社会の形成に関する重点計画」(2021年12月24日閣議決定)が策定され、デジタル社会の実現に向けた基本的な施策として、国民に対する行政サービスのデジタル化、暮らしのデジタル化、規制改革、産業のデジタル化、デジタル社会を支えるシステム・技術、デジタル社会のライフスタイル・人材の6項目が掲げられました。
各項目の主なものとして、行政サービスのデジタル化、医療・教育・防災等の準公共分野のデジタル化、産業全体のデジタルトランスフォーメーション、国・地方の情報システムの刷新、新たなライフスタイル(テレワーク・シェアリングエコノミー)への転換等が示されており、当社事業と照らし合わせましても、フィンテック、デジタルトランスフォーメーション、リモートワークの拡大等のトピックスが業界への追い風となっており、好調なシステム開発需要を享受すると共に、新たな需要を喚起する提案型活動の推進等を通じて市場環境の変化にも絶えず対応し続けることで、更なる事業の拡大を図ってまいります。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①人材の確保
当社経営資源の基本となるシステム開発技術者の採用を継続的に行うことであります。定期及び通年での採用活動、働きやすい環境の整備、人事制度の充実化、研修体制の強化等を積極的に行い、人材の確保及び定着に努めてまいります。
また、システム開発においては、各案件の内容に応じて求められる専門性、特定の経験を有する技術者の存在、開発フェーズに応じた技術者数の供給調整等が必要となることから、同業の協力会社からも役務の提供等を受け開発体制を構築し、開発を推進しております。その必要性に応じて協力会社からの機動的な役務提供を受けることが可能となるよう、専任部署としてビジネスパートナー推進課を設置しており、協業体制の構築を継続的に図ってまいります。
②人材の育成
当社の標榜する働き方の根本にあるものとして「能力で働く」という考え方があります。単純に時間を費やすのではなく、能力(豊富な知識や高度な技術力、的確な思考力、生産性の高さ等)をもって成果を得る働き方を意味しており、キャリアプランニング支援、情報処理技術者試験及びPMP(プロジェクトマネジメントプロフェッショナル)等の資格取得講座の開講、データサイエンティスト養成プログラム、コンピテンシー研修等の各種研修制度の充実化等を通じて、システム開発技術者の能力向上に努めております。
収益拡大と収益性向上を実現するためには、上流工程(要件定義~基本設計)から参画できる人材の継続的な育成が必要不可欠であり、さらには、業界における豊富な業務知識を活用して顧客企業の業務効率化や事業多様化等に資する提案を行い、それらを実現に導くことができる力量を有するDX人材の育成も重要課題であります。上記研修制度の活用はもとより、携わるシステム開発案件のローテーション化、クラウドサービスの開発等を通じた先進性のある技術に触れる機会の提供等を通じて、全社員の10%に相当する50人のDX人材の育成に向けて取り組んでまいります。
③プロジェクト管理の充実化
当社は、受注における契約形態として完成物責任を負う請負契約を締結する場合があります。プロジェクト遂行部門から独立した機関としてプロジェクト管理部門を設置し、受注前段階及び進行中プロジェクトにおける開発体制の相応性評価、各プロジェクトの進捗状況の確認、長時間労働発生防止のためのモニタリング、標準的開発手法の整理取りまとめ及び技術者育成支援等の活動を通じて、不採算プロジェクト、作業遅延、納期遅延及び完成物の品質低下等の発生回避に努めております。
④多様化する働き方に対応した就業環境の整備
当社事業の特性上、従業員の多くが顧客企業における開発施設又は顧客企業が指定する場所にて、業務に従事しております。テレワークの拡大と定着化の流れもあり、物理的環境や就業場所の隔たりが業務遂行へ支障をきたすことがないよう、グループウエアサービスの導入等を進め、情報の共有化やコミュニケーション手段の確保を行っております。今後につきましても、業務遂行の効率化、情報活用の多様化、役員及び従業員間の意思疎通の活性化等を図ることを目的に、社内インフラ整備を進めると共に、サテライトオフィスの設置等を通じて多様化する働き方に対応した就業環境の整備に努めてまいります。
(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
本業における収益性を表す営業利益率10%を標榜し、継続的な企業価値向上に取り組んでまいります。