訂正有価証券届出書(新規公開時)
(1) 経営成績等の状況の概要
①経営成績の状況
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
当連結会計年度における当社グループの経営成績の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大防止対策であるワクチン接種の推進効果等で感染者数が減少したことから経済活動正常化に向けた動きがみられました。しかし、昨年来の資源・エネルギー価格の高騰に追い打ちをかけるウクライナ情勢の長期化、さらには米国の金融政策の影響等による急激な円安の進行から物価上昇局面となり、先行きは不透明な環境が続いております。
海外においては、ワクチン接種の進展などにより新型コロナウイルスに対する厳しい規制から抜け出し需要が拡大する一方で、上記要因から欧州などを中心に資源・エネルギー価格の高騰が続く状況にあります。
当社グループの事業におきましては、新型コロナウイルス感染者数の減少から経済活動が活発になり、いくら・サーモン等の市場供給量が不足する中、養殖事業及び海外加工事業を中心に当社製品に対する需要及び販売価格が高水準で推移しました。
このような状況のもと、当社グループでは、養殖事業から国内加工事業、海外加工事業及び、海外卸売事業という川上から川下まで一貫した事業運営体制を背景に、製品品質の向上とコスト削減、継続的に商品を届け続けることに努めてまいりました。
その結果、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ3,886百万円増の24,100百万円(前期比119.2%)、営業利益は前連結会計年度に比べ1,465百万円増の2,961百万円(前期比197.9%)、経常利益は前連結会計年度に比べ1,748百万円増の3,341百万円(前期比209.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,257百万円増の2,249百万円(前期比226.8%)となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円/%)
※調整額はセグメント間取引及び全社費用等であります。
また、売上高営業利益率は12.3%(参考:2022年3月期全産業平均6.49%。2023年3月期JPX調査レポートより。)、自己資本当期純利益率(ROE)は35.4%(参考:2022年3月期全産業平均9.37%。2023年3月期JPX調査レポートより。) と、高い収益性を達成することができました。
(養殖事業)
養殖事業においては、国内養殖場の規模拡大に伴う養殖量の増加、デンマークにおいて収穫時期を例年より遅らせたことによるトラウト卵の収穫量の増加に加え、コロナ禍後の世界的な需要増加やウクライナ侵攻後の供給・流通不安により、サーモン市場価格が歴史的な水準まで上昇したことから、収益性が大きく改善しました。なお、養殖事業には国際財務報告基準(IFRS)を採用するデンマーク子会社Musholm A/Sが含まれており、養殖事業の損益には、IAS第41号「農業」に従った売却コスト控除後の公正価値により評価した結果(売上原価△90百万円)が含まれております。
(単位:百万円)
(国内加工事業)
当期はいくら・筋子の新製品の拡販や生産ラインの大幅な見直しなどにより増収増益を見込んでいましたが、世界的ないくらの在庫・供給量不足などを背景に値上げを余儀なくされたものの、その後においても当社主力製品である筋子・いくらについて販売が好調に推移したことで、一定の利益を確保いたしました。
(海外加工事業)
新型コロナウイルス感染症流行に伴う東南アジア諸国での都市封鎖(ロックダウン)により、外注加工委託先の生産能力の低下が生じ、サプライチェーンの混乱等の影響を受け売上は減少しました。一方で、サーモン相場の変化をとらえて、低価格での調達を行うことができたことから、一定の利益を確保いたしました。
(海外卸売事業)
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う東南アジア諸国での都市封鎖(ロックダウン)等により、一時的な売上の落ち込みは生じたものの、ワクチンの普及に伴い外食規制等が撤廃されるとともに外食事業向けの販売が拡大し、事業は堅調に推移いたしました。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
当第3四半期連結累計期間における当社グループの経営成績の状況の概要は次のとおりです。
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、コロナ禍を抜けて第3次産業や個人消費を中心に経済活動正常化に向けた動きがみられたものの、資源・エネルギー価格の高騰に追い打ちをかけるウクライナ情勢の長期化、急激な円安の進行とその後の円高など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
海外においては新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックは収束に向かい、当社グループの事業領域である欧州や東南アジアでは活動規制の緩和や堅調な外需による景気の持ち直しが続く一方で、上記世界情勢の不透明さに起因したインフレーションが続き、今後の事業活動への影響に注視が必要な状況となっております。
当社グループの事業におきましては、サーモンの市場供給量の不足とサーモン相場の高騰から、養殖事業及び海外加工事業を中心に当社製品に対する需要及び販売価格が高水準で推移しました。
このような状況のもと、当社グループでは、養殖事業から国内加工事業、海外加工事業及び、海外卸売事業という川上から川下まで一貫した事業運営体制により、製品品質の向上とコスト削減、継続的に商品を届け続けることに努めてまいりました。
その結果、売上高は20,855百万円、営業利益は2,799百万円、経常利益は3,033百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は2,063百万円となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円/%)
※調整額はセグメント間取引及び全社費用等であります。前第3四半期連結累計期間については、四半期連結財務諸表を作成していないため、記載を省略しております。
(養殖事業)
養殖事業においては、国内では4月以降の水揚に向けて養殖魚の成長段階である一方、海外では養殖魚の水揚と販売が行われました。国内養殖事業においては、2022年8月9日に青森県西津軽郡深浦町周辺で発生した大雨土砂災害により、深浦大峰中間養殖場において飼育する中間魚、養殖設備等に被害がありました。また海外養殖事業においては、2022年11月12日にデンマーク子会社の養殖生簀に漁船が衝突する事故があり、飼育する養殖魚、養殖設備等に被害がありました。いずれも、当該災害にかかる保険金については特別利益の受取保険金として、発生が見込まれる費用については、特別損失の災害による損失及び災害損失引当金繰入額として計上し、来期に向けて設備の復旧等を進めております。
なお、養殖事業には国際財務報告基準(IFRS)を採用するサーモン養殖事業会社が含まれており、養殖事業の損益には、IAS第41号「農業」に従った売却コスト控除後の公正価値により評価した結果(売上原価△271百万円)が含まれております。
(単位:百万円)
(国内加工事業)
魚卵製品の原料価格上昇に伴う販売価格転嫁後においても引き続き魚卵製品に対する需要は堅調であり、年末商戦を含め好調に推移しましたが、2022年9-12月の北海道の秋鮭が前年比76%増の豊漁であったことから魚卵製品の市中供給量が増加し、価格・数量は調整局面に入っています。
(海外加工事業)
東南アジア諸国での新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和により、外注加工委託先の生産能力が回復したほか、ミャンマーの子会社では軍事クーデターに伴い事業を停止していたものの2021年10月より工場の稼働を再開したことにより、海外加工事業では、加工量、販売量ともに堅調に推移しています。また、サーモン相場の高騰によりサーモン仕入価格は上昇していますが、価格転嫁と過去に低価格で仕入れた在庫により利益を確保しています。
(海外卸売事業)
東南アジア諸国での新型コロナウイルス感染症に関する行動制限・外食制限の緩和・撤廃などにより、外食事業向けの販売が拡大し、事業は堅調に推移いたしました。
②財政状態の状況
当社グループの財政状態は次のとおりであります。
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は18,457百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,643百万円増加しました。これは主に、事業規模拡大及び豊漁期に起因して原材料及び貯蔵品や商品及び製品が2,144百万円増加したことに加え、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)を当連結会計年度から適用したことにより有償支給先の原材料を2,308百万円計上したこと、国内養殖事業の規模拡大により仕掛品が314百万円増加した等によるものであります。固定資産は5,876百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,305百万円増加しました。これは主に養殖用施設への投資等で有形固定資産が1,346百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は24,333百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,948百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は12,293百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,680百万円増加しました。これは主に、運転資金として短期借入金が1,063百万円増加したこと及び「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)を当連結会計年度から適用したことにより「有償支給取引に係る負債」を2,308百万円計上したこと等によるものであります。固定負債は4,592百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,085百万円増加しました。これは主に、設備投資資金として長期借入金が1,030百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、負債合計は16,885百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,766百万円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は7,447百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,182百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益を2,249百万円計上したこと等により利益剰余金が2,095百万円増加したこと等によるものであります。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
当第3四半期連結会計期間における当社グループの財政状態の状況の概要は次のとおりです。
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は26,113百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,655百万円増加しました。これは主に、年末商戦での売掛債権の回収が進んだことにより現金及び預金が1,528百万円増加したこと、国内加工事業で秋口から冬にかけて魚卵の仕入を行ったことや養殖事業におけるサーモンの養殖にかかる餌代等を仕掛品に計上したことにより棚卸資産が5,911百万円増加したこと等によるものであります。固定資産は7,275百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,399百万円増加しました。これは主に養殖用施設への投資等で建設仮勘定が398百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は33,388百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,055百万円増加しました。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は19,439百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,146百万円増加しました。これは主に、運転資金として短期借入金が7,102百万円増加したこと等によるものであります。固定負債は4,411百万円となり、前連結会計年度末に比べ181百万円減少しました。
この結果、負債合計は23,850百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,965百万円増加しました。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は9,537百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,089百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する四半期純利益を2,063百万円計上したこと等により利益剰余金が2,006百万円増加したこと等によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
営業活動によるキャッシュ・フローは、863百万円の支出(前期は3,606百万円の収入)となりました。
税金等調整前当期純利益が3,274百万円となった一方で、当社主要事業がそれぞれ事業拡大傾向であることに加え、国内加工事業においては、主原料である魚卵が豊漁の時期と重なり、計画的に仕入総額を増やしたこと等に伴う棚卸資産残高の増加が4,721百万円生じたこと等が主な要因となり、マイナスの営業キャッシュ・フローとなりました。
なお、上記棚卸資産の増加については、収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)の適用に伴い、買い戻し義務のある有償支給先の原材料を棚卸資産として認識した2,308百万円が含まれており、有償支給原材料を除いた棚卸資産の残高の増加は2,412百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,633百万円の支出(前期比438百万円の支出増加)となりました。
国内養殖事業拡大のための設備投資や、海外での加工品質向上を目的とした設備増強など有形固定資産の取得による支出が1,666百万円(前期比191百万円の支出増加)となったためです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,457百万円の収入(前期は2,691百万円の支出)となりました。
過年度設備投資目的での借入資金であった長期借入金の返済が668百万円あったものの、上記、設備投資活動目的での長期借入金の借入2,005百万円及び、原材料仕入等の運転資金目的での短期借入金の純増減額1,063百万円があったためです。
以上に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額58百万円を調整した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ18百万円増加し、1,961百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
第52期連結会計年度及び第53期第3四半期連結累計期間における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しておりません。
2.金額は、販売価格によっております。
3.海外卸売事業については、自社生産設備を保有していないため、記載を省略しております。
b 受注実績
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c 販売実績
第52期連結会計年度及び第53期第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
a. 経営成績の状況に関する分析
外部環境が不安定ななか、当社グループとしては大きく業績を伸ばす結果となりました。
特に業績を牽引したのは養殖事業と国内加工事業ですが、これらの事業において、当社の強みが発揮された結果であると考えています。当社の強みとは具体的には、①「自社原料を有していること」、②「外食店と小売店の両方を販売先として有していること」です。
・ 自社原料を有していること
水産資源の枯渇化、人口増に伴う水産物需要の増加を背景に、水産資源の価格の高騰が続いています。そこにウクライナの危機が重なり、原料調達の困難性が高まり、水産物の価格が急激に上昇しました。水産物を扱う多くの事業者にとっては、販売価格の上昇とともに仕入価格の上昇も伴います。在庫を有していた事業者も、手持ち在庫がなくなれば高い価格で調達せざるを得ない状況でした。高い価格でも調達できればまだ良い方で、数量の確保すら困難という状況が起こりました。
その点、当社グループは自社原料を有しています。飼料価格や輸送コストの上昇によるコスト増は当社も影響を受けますが、販売価格の上昇はそれを大きく上回るという状況が発生しました。勿論数量確保という意味でも自社原料は強さを発揮します。まさに自社原料として一定の在庫量が確保でき、市場の価格高騰の影響も限定的な自社原料が大きな利益を生み出しました。当社グループの場合、養殖したサーモンから国内加工事業で使ういくら・筋子の原料も採っていますので、養殖事業のみならず国内加工事業もこの恩恵を受けました。
・ 外食店と小売店の両方を販売先として有していること
営業制限により、外食店は大きなダメージを受けました。外食店と取引をしている事業者もその影響を受けます。当社も営業制限中は外食店向けの売上がダウンするという状況になりました。
一方で外食店向けの需要が小売店に流れた結果、小売店の売上高は増加するという現象が起きました。当社グループは外食店と小売店の両方を顧客として有しており、当社グループ全体では営業制限の影響を最小限に留めることができた点が好業績の一因であったと考えられます。
b. 財政状態に関する分析
棚卸資産の増加と有形固定資産の増加を主要因として総資産額が増加しています。負債側では借入金の増加を主要因として負債が増加しています。なお、「収益認識に関する会計基準」の適用により資産と負債がそれぞれ2,308百万円増加しています。
・棚卸資産の増加
当社グループではどの事業も拡大基調にあるため、恒常在庫水準が上昇傾向にあります。特に海外卸売事業を除く3事業は在庫回転期間が長いため、事業拡大に伴う在庫金額の増加も大きく出やすい傾向があります。このうち養殖事業は水揚げ時期の関係で期末在庫は大きくはなりませんが、国内加工事業と海外加工事業の在庫金額の増加が貸借対照表残高に大きく影響しています。これらの事業については、世界情勢の不安定感などを背景にリスクヘッジの観点から在庫を多めに抱える必要性も生じており、それも在庫金額増加の要因になっています。
・有形固定資産の増加
有形固定資産の増加については養殖設備への増加が主な内容になります。特に国内養殖の規模拡大は当社の成長戦略の最重要課題となっていますので、今後も引き続き、積極的な設備投資を行っていく方針です。
・借入金の増加
上記の在庫投資と設備投資の要する資金は借入金で賄っており、その結果として負債が増加しています。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
a. 経営成績の状況に関する分析
当第3四半期連結累計期間におきましては、前期から好業績が継続する形となりました。
不安定な外部環境が継続する中、引き続き水産品の価格は高い水準で推移しました。そういった環境下にあっても、当社グループにおいては自社原料を含む原料調達力が強みを発揮して安定的な商品供給を行うことができ、相場上昇による利益率向上を享受することができました。
また、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限解除後に小売店から外食店へ需要がシフトしていく環境の変化がありましたが、こちらも外食店と小売店の両方を販売先として有していることが功を奏し、引き続き売上を伸ばすことができました。
b. 財政状態に関する分析
基本的には従来の傾向が継続しており、棚卸資産の増加と有形固定資産の増加を主要因として総資産額が増加しています。負債側では借入金の増加を主要因として負債が増加しています。
・棚卸資産の増加
当社グループではどの事業も拡大基調にあるため、恒常在庫水準が上昇傾向にあります。加えて、原料価格上昇の影響で在庫単価も上昇しており、それも在庫残高を押し上げる要因となりました。また前期末との比較では、4月から始まる国内養殖の水揚げシーズンを前に、養殖事業の在庫が膨らんでいることも在庫金額増加の要因となっています。
・有形固定資産の増加
養殖量拡大に向けて、中間養殖場を中心に積極的な投資を継続しており、その結果として有形固定資産が増加しています。また、国内養殖事業の効率化や近代化に向けた投資も行っており、給餌用バージ船を昨年導入したことも有形固定資産増加の一因となっています。
・借入金の増加
上記の在庫投資と設備投資の要する資金は借入金で賄っており、その結果として負債が増加する傾向が継続しています。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
a. キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、863百万円の支出(前期は3,606百万円の収入)となりました。
税金等調整前当期純利益を3,274百万円計上しましたが、一方で棚卸資産残高の増加によるキャッシュ・アウトが大きく影響した結果、マイナスの営業キャッシュ・フローとなっています。
当社グループは事業の性質上、在庫回転期間が比較的長くなる傾向がありますが、そういったなかで事業規模拡大に伴い恒常在庫水準は年々上がっているため、大きなトレンドとして在庫投資に資金を要する傾向が継続しています。加えて、不安定な国際情勢を背景としたリスクヘッジとしての在庫確保、さらには短い周期で豊漁不漁が繰り返されるなかで当事業年度が豊漁期にあたっているといった要因も相まっております。いずれも、積極的な理由による計画的な支出であると捉えております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,633百万円の支出(前期比438百万円の支出増加)となりました。支出のほとんどは設備投資によるものです。当社グループの成長に向けた主要課題として、国内の中間養殖場のキャパシティ拡大、成長するアジアの日本食需要への対応力強化があります。特に国内中間養殖場の拡大は重要課題ですが、建設期間や養殖期間を考慮すると相当程度前もって投資を行う必要があります。国内養殖量は2022年6月期の1,600トンから、3年後にはほぼ倍増を計画しています。その点を踏まえ、中期計画に沿った養殖量を達成するために必要な設備を順次計画的に建設しています。
以上のように在庫投資や設備投資に多くの資金を投入していますが、その資金は自己資金及び外部借入で調達しています。その結果、財務活動によるキャッシュ・フローは2,457百万円の収入(前期は2,691百万円の支出)となっています。金融機関とは良好な関係を維持しており、現状において資金調達環境に特段の懸念はありません。
また、現金及び現金同等物の期末残高は、翌月以降の資金繰り見込みを踏まえて期末時点の必要水準を確保した残高となるよう、借入金返済とのバランスを考慮しております。
b. 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループの資本の財源は、自己資金及び金融機関からの借入であります。借入に関しましては、運転資金は主に短期借入金で、設備資金は主に長期借入金で調達しております。運転資金需要のうち主なものは、養殖事業における飼料代金、国内加工事業及び海外加工事業における原料仕入代金、海外卸売事業における商品仕入代金であります。設備資金需要のうち主なものは、養殖施設(冷凍設備や船等)や、国内加工工場(裁断機や浄化設備等)の設備投資代金であります。
当社グループでは、事業活動を円滑に行うため、金融機関との当座貸越契約等を利用し、実需に応じた資金調達を実施し、流動性を確保しております。当面の資金繰りのための資金は十分に確保していると判断しております。
③ 重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表を作成するにあたって、棚卸資産の評価、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性等の資産、負債、収益及び費用に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。これらは、過去の実績や将来の事業計画等に基づき合理的に算出しておりますが、見積りの不確実性から実際の結果と異なる可能性があります。
また、海外子会社における生物資産評価については、生物資産を公正価値で測定し、取得価額との差額を損益(売上原価の繰入又は戻入)として認識しており、その測定には生物資産の正味売却価額や生存率等を見積もる必要があることから、市場の動向等により結果が大きく変動する可能性があります。当該海外子会社における生物資産評価については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルスによる当社グループへの影響は現時点においては限定的と考えているため、会計上の見積りについて、重要な変更は行っておりません。
①経営成績の状況
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
当連結会計年度における当社グループの経営成績の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染拡大防止対策であるワクチン接種の推進効果等で感染者数が減少したことから経済活動正常化に向けた動きがみられました。しかし、昨年来の資源・エネルギー価格の高騰に追い打ちをかけるウクライナ情勢の長期化、さらには米国の金融政策の影響等による急激な円安の進行から物価上昇局面となり、先行きは不透明な環境が続いております。
海外においては、ワクチン接種の進展などにより新型コロナウイルスに対する厳しい規制から抜け出し需要が拡大する一方で、上記要因から欧州などを中心に資源・エネルギー価格の高騰が続く状況にあります。
当社グループの事業におきましては、新型コロナウイルス感染者数の減少から経済活動が活発になり、いくら・サーモン等の市場供給量が不足する中、養殖事業及び海外加工事業を中心に当社製品に対する需要及び販売価格が高水準で推移しました。
このような状況のもと、当社グループでは、養殖事業から国内加工事業、海外加工事業及び、海外卸売事業という川上から川下まで一貫した事業運営体制を背景に、製品品質の向上とコスト削減、継続的に商品を届け続けることに努めてまいりました。
その結果、当連結会計年度の売上高は前連結会計年度に比べ3,886百万円増の24,100百万円(前期比119.2%)、営業利益は前連結会計年度に比べ1,465百万円増の2,961百万円(前期比197.9%)、経常利益は前連結会計年度に比べ1,748百万円増の3,341百万円(前期比209.7%)、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度に比べ1,257百万円増の2,249百万円(前期比226.8%)となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円/%)
売上高 | 前期増減 | 前期比 | セグメント 損益 | 前期増減 | 前期比 | |
養殖事業 | 5,011 | +1,171 | 130.5 | 1,055 | +733 | 327.9 |
国内加工事業 | 8,703 | +2,192 | 133.7 | 1,634 | +569 | 153.5 |
海外加工事業 | 9,348 | △273 | 97.2 | 765 | +300 | 164.8 |
海外卸売事業 | 4,988 | +1,429 | 140.2 | 397 | +228 | 235.4 |
調整額※ | △3,951 | △633 | 119.1 | △891 | △367 | 170.2 |
合計 | 24,100 | +3,886 | 119.2 | 2,961 | +1,465 | 197.9 |
※調整額はセグメント間取引及び全社費用等であります。
また、売上高営業利益率は12.3%(参考:2022年3月期全産業平均6.49%。2023年3月期JPX調査レポートより。)、自己資本当期純利益率(ROE)は35.4%(参考:2022年3月期全産業平均9.37%。2023年3月期JPX調査レポートより。) と、高い収益性を達成することができました。
(養殖事業)
養殖事業においては、国内養殖場の規模拡大に伴う養殖量の増加、デンマークにおいて収穫時期を例年より遅らせたことによるトラウト卵の収穫量の増加に加え、コロナ禍後の世界的な需要増加やウクライナ侵攻後の供給・流通不安により、サーモン市場価格が歴史的な水準まで上昇したことから、収益性が大きく改善しました。なお、養殖事業には国際財務報告基準(IFRS)を採用するデンマーク子会社Musholm A/Sが含まれており、養殖事業の損益には、IAS第41号「農業」に従った売却コスト控除後の公正価値により評価した結果(売上原価△90百万円)が含まれております。
(単位:百万円)
売上高 | 5,011 | |
営業費用 | 材料費、人件費、販管費等 | 4,046 |
小計(公正価値評価を除いたセグメント損益) | 964 | |
営業費用 | 公正価値評価による影響額 | 90 |
合計(セグメント損益) | 1,055 |
(国内加工事業)
当期はいくら・筋子の新製品の拡販や生産ラインの大幅な見直しなどにより増収増益を見込んでいましたが、世界的ないくらの在庫・供給量不足などを背景に値上げを余儀なくされたものの、その後においても当社主力製品である筋子・いくらについて販売が好調に推移したことで、一定の利益を確保いたしました。
(海外加工事業)
新型コロナウイルス感染症流行に伴う東南アジア諸国での都市封鎖(ロックダウン)により、外注加工委託先の生産能力の低下が生じ、サプライチェーンの混乱等の影響を受け売上は減少しました。一方で、サーモン相場の変化をとらえて、低価格での調達を行うことができたことから、一定の利益を確保いたしました。
(海外卸売事業)
新型コロナウイルス感染症の影響に伴う東南アジア諸国での都市封鎖(ロックダウン)等により、一時的な売上の落ち込みは生じたものの、ワクチンの普及に伴い外食規制等が撤廃されるとともに外食事業向けの販売が拡大し、事業は堅調に推移いたしました。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
当第3四半期連結累計期間における当社グループの経営成績の状況の概要は次のとおりです。
当第3四半期連結累計期間におけるわが国経済は、コロナ禍を抜けて第3次産業や個人消費を中心に経済活動正常化に向けた動きがみられたものの、資源・エネルギー価格の高騰に追い打ちをかけるウクライナ情勢の長期化、急激な円安の進行とその後の円高など、依然として先行き不透明な状況が続いております。
海外においては新型コロナウイルス感染症の世界的なパンデミックは収束に向かい、当社グループの事業領域である欧州や東南アジアでは活動規制の緩和や堅調な外需による景気の持ち直しが続く一方で、上記世界情勢の不透明さに起因したインフレーションが続き、今後の事業活動への影響に注視が必要な状況となっております。
当社グループの事業におきましては、サーモンの市場供給量の不足とサーモン相場の高騰から、養殖事業及び海外加工事業を中心に当社製品に対する需要及び販売価格が高水準で推移しました。
このような状況のもと、当社グループでは、養殖事業から国内加工事業、海外加工事業及び、海外卸売事業という川上から川下まで一貫した事業運営体制により、製品品質の向上とコスト削減、継続的に商品を届け続けることに努めてまいりました。
その結果、売上高は20,855百万円、営業利益は2,799百万円、経常利益は3,033百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益は2,063百万円となりました。
各セグメントの経営成績は次のとおりであります。
(単位:百万円/%)
売上高 | 前期増減 | 前期比 | セグメント 利益 | 前期増減 | 前期比 | |
養殖事業 | 3,252 | - | - | 762 | - | - |
国内加工事業 | 6,928 | - | - | 1,359 | - | - |
海外加工事業 | 9,193 | - | - | 818 | - | - |
海外卸売事業 | 5,340 | - | - | 452 | - | - |
調整額※ | △3,859 | - | - | △592 | - | - |
合計 | 20,855 | - | - | 2,799 | - | - |
※調整額はセグメント間取引及び全社費用等であります。前第3四半期連結累計期間については、四半期連結財務諸表を作成していないため、記載を省略しております。
(養殖事業)
養殖事業においては、国内では4月以降の水揚に向けて養殖魚の成長段階である一方、海外では養殖魚の水揚と販売が行われました。国内養殖事業においては、2022年8月9日に青森県西津軽郡深浦町周辺で発生した大雨土砂災害により、深浦大峰中間養殖場において飼育する中間魚、養殖設備等に被害がありました。また海外養殖事業においては、2022年11月12日にデンマーク子会社の養殖生簀に漁船が衝突する事故があり、飼育する養殖魚、養殖設備等に被害がありました。いずれも、当該災害にかかる保険金については特別利益の受取保険金として、発生が見込まれる費用については、特別損失の災害による損失及び災害損失引当金繰入額として計上し、来期に向けて設備の復旧等を進めております。
なお、養殖事業には国際財務報告基準(IFRS)を採用するサーモン養殖事業会社が含まれており、養殖事業の損益には、IAS第41号「農業」に従った売却コスト控除後の公正価値により評価した結果(売上原価△271百万円)が含まれております。
(単位:百万円)
売上高 | 3,252 | |
営業費用 | 材料費、人件費、販管費等 | 2,761 |
小計(公正価値を除いたセグメント損益) | 490 | |
営業費用 | 公正価値評価による影響額 | 271 |
合計(セグメント損益) | 762 |
(国内加工事業)
魚卵製品の原料価格上昇に伴う販売価格転嫁後においても引き続き魚卵製品に対する需要は堅調であり、年末商戦を含め好調に推移しましたが、2022年9-12月の北海道の秋鮭が前年比76%増の豊漁であったことから魚卵製品の市中供給量が増加し、価格・数量は調整局面に入っています。
(海外加工事業)
東南アジア諸国での新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和により、外注加工委託先の生産能力が回復したほか、ミャンマーの子会社では軍事クーデターに伴い事業を停止していたものの2021年10月より工場の稼働を再開したことにより、海外加工事業では、加工量、販売量ともに堅調に推移しています。また、サーモン相場の高騰によりサーモン仕入価格は上昇していますが、価格転嫁と過去に低価格で仕入れた在庫により利益を確保しています。
(海外卸売事業)
東南アジア諸国での新型コロナウイルス感染症に関する行動制限・外食制限の緩和・撤廃などにより、外食事業向けの販売が拡大し、事業は堅調に推移いたしました。
②財政状態の状況
当社グループの財政状態は次のとおりであります。
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は18,457百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,643百万円増加しました。これは主に、事業規模拡大及び豊漁期に起因して原材料及び貯蔵品や商品及び製品が2,144百万円増加したことに加え、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)を当連結会計年度から適用したことにより有償支給先の原材料を2,308百万円計上したこと、国内養殖事業の規模拡大により仕掛品が314百万円増加した等によるものであります。固定資産は5,876百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,305百万円増加しました。これは主に養殖用施設への投資等で有形固定資産が1,346百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は24,333百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,948百万円増加しました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は12,293百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,680百万円増加しました。これは主に、運転資金として短期借入金が1,063百万円増加したこと及び「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)を当連結会計年度から適用したことにより「有償支給取引に係る負債」を2,308百万円計上したこと等によるものであります。固定負債は4,592百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,085百万円増加しました。これは主に、設備投資資金として長期借入金が1,030百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、負債合計は16,885百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,766百万円増加しました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は7,447百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,182百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益を2,249百万円計上したこと等により利益剰余金が2,095百万円増加したこと等によるものであります。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
当第3四半期連結会計期間における当社グループの財政状態の状況の概要は次のとおりです。
(資産)
当第3四半期連結会計期間末における流動資産は26,113百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,655百万円増加しました。これは主に、年末商戦での売掛債権の回収が進んだことにより現金及び預金が1,528百万円増加したこと、国内加工事業で秋口から冬にかけて魚卵の仕入を行ったことや養殖事業におけるサーモンの養殖にかかる餌代等を仕掛品に計上したことにより棚卸資産が5,911百万円増加したこと等によるものであります。固定資産は7,275百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,399百万円増加しました。これは主に養殖用施設への投資等で建設仮勘定が398百万円増加したこと等によるものであります。
この結果、総資産は33,388百万円となり、前連結会計年度末に比べ9,055百万円増加しました。
(負債)
当第3四半期連結会計期間末における流動負債は19,439百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,146百万円増加しました。これは主に、運転資金として短期借入金が7,102百万円増加したこと等によるものであります。固定負債は4,411百万円となり、前連結会計年度末に比べ181百万円減少しました。
この結果、負債合計は23,850百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,965百万円増加しました。
(純資産)
当第3四半期連結会計期間末における純資産合計は9,537百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,089百万円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する四半期純利益を2,063百万円計上したこと等により利益剰余金が2,006百万円増加したこと等によるものであります。
③キャッシュ・フローの状況
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
営業活動によるキャッシュ・フローは、863百万円の支出(前期は3,606百万円の収入)となりました。
税金等調整前当期純利益が3,274百万円となった一方で、当社主要事業がそれぞれ事業拡大傾向であることに加え、国内加工事業においては、主原料である魚卵が豊漁の時期と重なり、計画的に仕入総額を増やしたこと等に伴う棚卸資産残高の増加が4,721百万円生じたこと等が主な要因となり、マイナスの営業キャッシュ・フローとなりました。
なお、上記棚卸資産の増加については、収益認識に関する会計基準(企業会計基準第29号)の適用に伴い、買い戻し義務のある有償支給先の原材料を棚卸資産として認識した2,308百万円が含まれており、有償支給原材料を除いた棚卸資産の残高の増加は2,412百万円であります。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,633百万円の支出(前期比438百万円の支出増加)となりました。
国内養殖事業拡大のための設備投資や、海外での加工品質向上を目的とした設備増強など有形固定資産の取得による支出が1,666百万円(前期比191百万円の支出増加)となったためです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、2,457百万円の収入(前期は2,691百万円の支出)となりました。
過年度設備投資目的での借入資金であった長期借入金の返済が668百万円あったものの、上記、設備投資活動目的での長期借入金の借入2,005百万円及び、原材料仕入等の運転資金目的での短期借入金の純増減額1,063百万円があったためです。
以上に加え、現金及び現金同等物に係る換算差額58百万円を調整した結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末に比べ18百万円増加し、1,961百万円となりました。
④生産、受注及び販売の実績
a 生産実績
第52期連結会計年度及び第53期第3四半期連結累計期間における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 第52期連結会計年度 (自 2021年7月1日 至 2022年6月30日) | 前期比(%) | 第53期第3四半期連結累計期間 (自 2022年7月1日 至 2023年3月31日) |
養殖事業 | 5,011百万円 | 130.5 | 3,252百万円 |
国内加工事業 | 8,703百万円 | 133.7 | 6,928百万円 |
海外加工事業 | 547百万円 | 121.1 | 1,343百万円 |
海外卸売事業 | - | - | - |
合計 | 14,262百万円 | 132.0 | 11,524百万円 |
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しておりません。
2.金額は、販売価格によっております。
3.海外卸売事業については、自社生産設備を保有していないため、記載を省略しております。
b 受注実績
当社グループは、需要予測に基づく見込生産を行っているため、該当事項はありません。
c 販売実績
第52期連結会計年度及び第53期第3四半期連結累計期間における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 | 第52期連結会計年度 (自 2021年7月1日 至 2022年6月30日) | 前期比(%) | 第53期第3四半期連結累計期間 (自 2022年7月1日 至 2023年3月31日) |
養殖事業 | 3,708百万円 | 138.2 | 2,050百万円 |
国内加工事業 | 8,397百万円 | 133.0 | 6,450百万円 |
海外加工事業 | 7,006百万円 | 91.5 | 7,014百万円 |
海外卸売事業 | 4,988百万円 | 140.2 | 5,340百万円 |
合計 | 24,100百万円 | 119.2 | 20,855百万円 |
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
a. 経営成績の状況に関する分析
外部環境が不安定ななか、当社グループとしては大きく業績を伸ばす結果となりました。
特に業績を牽引したのは養殖事業と国内加工事業ですが、これらの事業において、当社の強みが発揮された結果であると考えています。当社の強みとは具体的には、①「自社原料を有していること」、②「外食店と小売店の両方を販売先として有していること」です。
・ 自社原料を有していること
水産資源の枯渇化、人口増に伴う水産物需要の増加を背景に、水産資源の価格の高騰が続いています。そこにウクライナの危機が重なり、原料調達の困難性が高まり、水産物の価格が急激に上昇しました。水産物を扱う多くの事業者にとっては、販売価格の上昇とともに仕入価格の上昇も伴います。在庫を有していた事業者も、手持ち在庫がなくなれば高い価格で調達せざるを得ない状況でした。高い価格でも調達できればまだ良い方で、数量の確保すら困難という状況が起こりました。
その点、当社グループは自社原料を有しています。飼料価格や輸送コストの上昇によるコスト増は当社も影響を受けますが、販売価格の上昇はそれを大きく上回るという状況が発生しました。勿論数量確保という意味でも自社原料は強さを発揮します。まさに自社原料として一定の在庫量が確保でき、市場の価格高騰の影響も限定的な自社原料が大きな利益を生み出しました。当社グループの場合、養殖したサーモンから国内加工事業で使ういくら・筋子の原料も採っていますので、養殖事業のみならず国内加工事業もこの恩恵を受けました。
・ 外食店と小売店の両方を販売先として有していること
営業制限により、外食店は大きなダメージを受けました。外食店と取引をしている事業者もその影響を受けます。当社も営業制限中は外食店向けの売上がダウンするという状況になりました。
一方で外食店向けの需要が小売店に流れた結果、小売店の売上高は増加するという現象が起きました。当社グループは外食店と小売店の両方を顧客として有しており、当社グループ全体では営業制限の影響を最小限に留めることができた点が好業績の一因であったと考えられます。
b. 財政状態に関する分析
棚卸資産の増加と有形固定資産の増加を主要因として総資産額が増加しています。負債側では借入金の増加を主要因として負債が増加しています。なお、「収益認識に関する会計基準」の適用により資産と負債がそれぞれ2,308百万円増加しています。
・棚卸資産の増加
当社グループではどの事業も拡大基調にあるため、恒常在庫水準が上昇傾向にあります。特に海外卸売事業を除く3事業は在庫回転期間が長いため、事業拡大に伴う在庫金額の増加も大きく出やすい傾向があります。このうち養殖事業は水揚げ時期の関係で期末在庫は大きくはなりませんが、国内加工事業と海外加工事業の在庫金額の増加が貸借対照表残高に大きく影響しています。これらの事業については、世界情勢の不安定感などを背景にリスクヘッジの観点から在庫を多めに抱える必要性も生じており、それも在庫金額増加の要因になっています。
・有形固定資産の増加
有形固定資産の増加については養殖設備への増加が主な内容になります。特に国内養殖の規模拡大は当社の成長戦略の最重要課題となっていますので、今後も引き続き、積極的な設備投資を行っていく方針です。
・借入金の増加
上記の在庫投資と設備投資の要する資金は借入金で賄っており、その結果として負債が増加しています。
第53期第3四半期連結累計期間(自 2022年7月1日 至 2023年3月31日)
a. 経営成績の状況に関する分析
当第3四半期連結累計期間におきましては、前期から好業績が継続する形となりました。
不安定な外部環境が継続する中、引き続き水産品の価格は高い水準で推移しました。そういった環境下にあっても、当社グループにおいては自社原料を含む原料調達力が強みを発揮して安定的な商品供給を行うことができ、相場上昇による利益率向上を享受することができました。
また、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限解除後に小売店から外食店へ需要がシフトしていく環境の変化がありましたが、こちらも外食店と小売店の両方を販売先として有していることが功を奏し、引き続き売上を伸ばすことができました。
b. 財政状態に関する分析
基本的には従来の傾向が継続しており、棚卸資産の増加と有形固定資産の増加を主要因として総資産額が増加しています。負債側では借入金の増加を主要因として負債が増加しています。
・棚卸資産の増加
当社グループではどの事業も拡大基調にあるため、恒常在庫水準が上昇傾向にあります。加えて、原料価格上昇の影響で在庫単価も上昇しており、それも在庫残高を押し上げる要因となりました。また前期末との比較では、4月から始まる国内養殖の水揚げシーズンを前に、養殖事業の在庫が膨らんでいることも在庫金額増加の要因となっています。
・有形固定資産の増加
養殖量拡大に向けて、中間養殖場を中心に積極的な投資を継続しており、その結果として有形固定資産が増加しています。また、国内養殖事業の効率化や近代化に向けた投資も行っており、給餌用バージ船を昨年導入したことも有形固定資産増加の一因となっています。
・借入金の増加
上記の在庫投資と設備投資の要する資金は借入金で賄っており、その結果として負債が増加する傾向が継続しています。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報
第52期連結会計年度(自 2021年7月1日 至 2022年6月30日)
a. キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、863百万円の支出(前期は3,606百万円の収入)となりました。
税金等調整前当期純利益を3,274百万円計上しましたが、一方で棚卸資産残高の増加によるキャッシュ・アウトが大きく影響した結果、マイナスの営業キャッシュ・フローとなっています。
当社グループは事業の性質上、在庫回転期間が比較的長くなる傾向がありますが、そういったなかで事業規模拡大に伴い恒常在庫水準は年々上がっているため、大きなトレンドとして在庫投資に資金を要する傾向が継続しています。加えて、不安定な国際情勢を背景としたリスクヘッジとしての在庫確保、さらには短い周期で豊漁不漁が繰り返されるなかで当事業年度が豊漁期にあたっているといった要因も相まっております。いずれも、積極的な理由による計画的な支出であると捉えております。
投資活動によるキャッシュ・フローは、1,633百万円の支出(前期比438百万円の支出増加)となりました。支出のほとんどは設備投資によるものです。当社グループの成長に向けた主要課題として、国内の中間養殖場のキャパシティ拡大、成長するアジアの日本食需要への対応力強化があります。特に国内中間養殖場の拡大は重要課題ですが、建設期間や養殖期間を考慮すると相当程度前もって投資を行う必要があります。国内養殖量は2022年6月期の1,600トンから、3年後にはほぼ倍増を計画しています。その点を踏まえ、中期計画に沿った養殖量を達成するために必要な設備を順次計画的に建設しています。
以上のように在庫投資や設備投資に多くの資金を投入していますが、その資金は自己資金及び外部借入で調達しています。その結果、財務活動によるキャッシュ・フローは2,457百万円の収入(前期は2,691百万円の支出)となっています。金融機関とは良好な関係を維持しており、現状において資金調達環境に特段の懸念はありません。
また、現金及び現金同等物の期末残高は、翌月以降の資金繰り見込みを踏まえて期末時点の必要水準を確保した残高となるよう、借入金返済とのバランスを考慮しております。
b. 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループの資本の財源は、自己資金及び金融機関からの借入であります。借入に関しましては、運転資金は主に短期借入金で、設備資金は主に長期借入金で調達しております。運転資金需要のうち主なものは、養殖事業における飼料代金、国内加工事業及び海外加工事業における原料仕入代金、海外卸売事業における商品仕入代金であります。設備資金需要のうち主なものは、養殖施設(冷凍設備や船等)や、国内加工工場(裁断機や浄化設備等)の設備投資代金であります。
当社グループでは、事業活動を円滑に行うため、金融機関との当座貸越契約等を利用し、実需に応じた資金調達を実施し、流動性を確保しております。当面の資金繰りのための資金は十分に確保していると判断しております。
③ 重要な会計上の見積及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表を作成するにあたって、棚卸資産の評価、固定資産の減損、繰延税金資産の回収可能性等の資産、負債、収益及び費用に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。これらは、過去の実績や将来の事業計画等に基づき合理的に算出しておりますが、見積りの不確実性から実際の結果と異なる可能性があります。
また、海外子会社における生物資産評価については、生物資産を公正価値で測定し、取得価額との差額を損益(売上原価の繰入又は戻入)として認識しており、その測定には生物資産の正味売却価額や生存率等を見積もる必要があることから、市場の動向等により結果が大きく変動する可能性があります。当該海外子会社における生物資産評価については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
なお、新型コロナウイルスによる当社グループへの影響は現時点においては限定的と考えているため、会計上の見積りについて、重要な変更は行っておりません。