有価証券報告書-第11期(2024/01/01-2024/12/31)

【提出】
2025/03/31 11:43
【資料】
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【項目】
115項目
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における資産の残高は、前事業年度末に比べ79,627千円増加し、656,988千円になりました。うち流動資産は、前事業年度末に比べ67,509千円増加し、603,567千円となりました。これは主に、大口売掛入金による現金及び預金が199,049千円増加及び売掛金が139,552千円減少したことによるものであります。
固定資産は、前事業年度末に比べ12,117千円増加し、53,421千円となりました。これは主に、自社開発のソフトウエア(ソフトウエア仮勘定を含む)計上により無形固定資産が6,591千円及び繰延税金資産が5,953千円増加したことによるものであります。
(負債)
当事業年度末における負債の残高は、前事業年度末に比べ1,386千円減少し、419,165千円になりました。うち流動負債は、407,970千円となり、前事業年度末に比べ5,777千円増加となりました。これは主に、1年内返済予定長期借入金の返済により18,000千円減少、前期末における未払金の支払いにより16,466千円減少した一方、情報漏洩対策ソリューション「ZENMU Virtual Drive」のサブスクリプション契約増加に伴い契約負債が27,981千円、黒字化に伴い賞与引当金が15,195千円増加したことによるものであります。
固定負債は11,195千円となり、前事業年度末に比べ7,164千円減少となりました。これは、長期借入金から1年内返済予定の長期借入金への振替により減少したことによるものであります。
(純資産)
当事業年度末における純資産の残高は、前事業年度末に比べ81,013千円増加し、237,823千円となりました。これは当期純利益78,513千円計上により利益剰余金が増加、新株予約権の行使に伴い資本金が2,500千円増加したことによるものであります。
この結果、自己資本比率は35.4%(前事業年度末は26.2%)となりました。
②経営成績の状況
当事業年度(2024年1月1日~2024年12月31日)における我が国経済は、日経平均株価が34年振りに更新されたことや日本銀行のゼロ金利政策の解除により、経済・社会活動は緩やかに回復基調となりました。また企業の賃上げ率も高水準となり、デフレ基調を脱してインフレ経済への転換期を迎えております。一方で、地政学的リスクの高まりによるエネルギー資源や原材料価格の高騰等に伴う物価上昇、日米金利差による日本経済や株価の多面的な影響など、依然として先行きは不透明な状況にあります。
当社が属する情報セキュリティ産業におきましては、サイバー攻撃の高度化とデータ漏洩事件の増加により企業に対してセキュリティ対策の強化が一層重要なものとなっており、被害の復旧には膨大な時間と費用がかかることから、データ保護を含めたリスクアセスメントを行い、セキュリティ対策を重視したソリューションを導入する企業が増加傾向にあります。
このような環境のもと、当社の主要な技術である、情報を暗号化して複数に分割管理することで、それぞれのデータを無意味化し、情報の安全を守る秘密分散ソリューション「ZENMU」シリーズは、エンドポイントセキュリティとして従業員のリモートワークなどの多様な働き方を重視し、情報漏洩等のセキュリティインシデント発生の抑制及び発生時の被害のリスクを減少したい顧客への導入が増加しております。特に「ZENMU」シリーズの主力となる「ZENMU Virtual Drive」は、契約更新数及び新規受注数も好調に推移し、事業成長をけん引いたしました。さらに、継続的なマーケティング活動により当社製品の認知度向上を図り、販売パートナーと協業することで、新規導入企業数が伸長いたしました。
また、当社の秘密分散技術のコア技術を「ZENMU Engine」として提供しており、顧客に対して「ZENMU Engine」を組み込むソリューションの提案を進めることで、秘密分散技術の適用領域を広げ、さらなる業容の拡大を目指しております。
さらに、情報を秘匿しつつ利活用することのできる「秘密計算技術」の秘密計算ソリューション「QueryAhead」の研究開発を、国立研究開発法人産業技術総合研究所との連携により引き続き取り組んでまいりました。当該研究成果を材料開発や製造業の企業への具体的な適用検討に向けて大手シンクタンクと連携して早期実用化に向けた検証を進めております。
以上の結果、当事業年度の売上高は648,942千円(前期比47.2%増)、営業利益は76,528千円(前期比62.9%増)、経常利益は84,155千円(前期比47.8%増)、当期純利益は78,513千円(前期比7.7%増)となりました。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末より199,049千円増加し、507,266千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は242,825千円(前事業年度において獲得した資金は9,648千円)となりました。これは主に、税引前当期純利益84,155千円の計上(前年同期比27,217千円増加)、売上債権の減少額139,552千円(前年同期は売上債権の増加額185,176千円)によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は21,112千円(前事業年度において使用した資金は17,700千円)となりました。これは主に、情報漏洩対策ソリューション「ZENMU Virtual Drive」のバージョンアップに伴う無形固定資産の取得による支出18,970千円(前年同期は無形固定資産の取得による支出15,214千円)が発生したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は22,664千円(前事業年度において獲得した資金は232,413千円)となりました。これは、長期借入金の返済による支出25,164千円(前年同期は長期借入金の返済による支出7,164千円)、株式の発行による収入2,500千円(前年同期は株式の発行による収入234,300千円)によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、当該記載はしておりません。
b.受注実績
当事業年度の受注実績を示すと、次のとおりです。
事業の名称受注高(千円)前年同期比(%)受注残高(千円)前年同期比(%)
秘密分散ビジネス549,625119.6179,220105.5
秘密計算ビジネス180,700654.760,700-
その他17,714114.01,390269.4
合計748,039148.8241,310141.6

c.販売実績
当事業年度の販売実績は、次のとおりです。なお、当社は情報セキュリティ事業の単一セグメントですが、販売実績を売上の計上区分別に記載しております。
事業の名称販売高(千円)前年同期比(%)
秘密分散ビジネス511,858135.9
秘密計算ビジネス120,000238.7
その他17,083123.9
合計648,942147.2

(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先前事業年度
(自 2023年1月1日
至 2023年12月31日)
当事業年度
(自 2024年1月1日
至 2024年12月31日)
金額(千円)割合(%)金額(千円)割合(%)
株式会社日立製作所177,77027.4
デロイト トーマツ グループ合同会社80,96018.4115,60017.8
国立研究開発法人
産業技術総合研究所
45,28010.3113,50017.5
株式会社日立システムズエンジニアリングサービス45,86410.476,27811.8
株式会社野村総合研究所168,55438.2

※総販売実績に対する当該販売実績の割合が10%未満であるため、記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a 財政状態
財政状態につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりでございます。
b 経営成績
経営成績につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりでございます。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の事業活動における運転資金需要のうち主なものは、サービス提供のための人件費、外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要はソフトウエアの開発費であります。
当社は、これらの資金需要に対して、事業上必要な資金の流動性と財源を安定的に確保することを基本方針とし、資金使途や金額に応じて自己資金又は金融機関からの借入といった資金調達を柔軟に検討し、確保しております。
当事業年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたりましては、当事業年度における資産、負債の報告金額及び収益、費用の報告金額に影響を与える見積り、判断及び仮定を過去の経験や状況に応じ合理的と判断される入手可能な情報により継続的に検証し、意思決定を行っております。しかしながら、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。
当社の財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。会計上の見積りのうち重要なものにつきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりです。
④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況
「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、当社は達成状況を判断するための経営上の指標につきまして、「ZENMU Virtual Drive」の売上成長を最重要課題としており、ライセンス数(サブスクリプション契約と保守契約の合計値)を重要な経営指標と認識しております。
「ZENMU Virtual Drive」ライセンス数については、2023年12月期末57,767ライセンスに対し、2024年12月期末では99,317ライセンスに増加しております。この要因として、大手損害保険会社での追加導入や2023年12月期末に納入した共同組合などに対する保守契約の増加によるものです。将来の収益基盤の拡大のためサブスクリプションライセンスの増加についても一層の取り組みを強化する方針です。