有価証券報告書-第14期(平成31年4月1日-令和1年12月31日)

【提出】
2020/03/26 11:20
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【項目】
173項目

研究開発活動

当社グループでは、従来から「長期的視野に立った石油・天然ガスの探鉱・開発の技術レベルの維持・向上」と「持続可能なエネルギー供給システム構築の推進」という観点から研究開発活動に取り組んでまいりました。一方、2018年5月に策定した「ビジョン 2040」では、『「技術のINPEX」として多様化するエネルギー社会の未来を切り開く』を掲げ、2040年には石油・天然ガスのコア技術でアセット・プロジェクト価値の向上を図ると共に、得意技術で競争力を生み、更に次世代の持続可能なエネルギービジネスを推進する長期的未来を描いており、これを実現するために「技術ロードマップ2018」を策定し、今後5年間の技術目標を設定しました。当社グループでは、「ビジョン2040」と「技術ロードマップ2018」のもと、グループ全体の技術力の強化に取り組むと共に、従来からの研究開発も継続させつつ、ビジョンの実現に必要な研究開発を着実に進めていきます。
研究開発活動は地域ごとに集約した各報告セグメントに共通するもので、当連結会計年度は、442百万円となりました。技術ロードマップが取り組む各技術課題で進めている主な研究開発活動は以下の通りとなります。
(1) Core Technologies:石油・天然ガス上流事業の持続的成長の為に、「コア技術の着実な維持・向上と得意技術の競争力強化」を掲げ、当社グループの既存上流事業の各課題で以下の研究開発を進めています。
① 在来型油ガス田の開発・生産に関する既保有技術の維持・向上の為に、国内外の大学・研究機関・企業と連携を図りつつ、具体的には油層中で生産障害となるアスファルテンの制御技術、生産プラントへのダメージや環境問題を引き起こす水銀の制御・管理技術、油井管やパイプラインの腐食防食技術の研究開発を実施しています。また、当社は国内企業と連携し、セラミック膜を利用した随伴水処理技術を開発・実証し、国内操業現場において試験運転を実施すると共に、国外油田への適用に向けた検討を行っております。
② イクシスLNGプロジェクトの開発や直江津LNG基地の操業経験を通じて獲得したLNG技術につい て、その経験と知識をLessons Learntデータベースを構築し社内で共有しました。また、新潟やカナダのプロジェクトなどを通じて獲得したタイト貯留層開発技術については、Big Dataと人工知能を用いた生産量予測モデルの作成や地下の貯留岩のフラクチャ―形状を把握するマイクロサイスミック等の研究開発を進めており、これらを着実に競争力のある得意技術にしていきます。
(2) Next Challenge:今ある技術課題については、今後実証の場を経て当社グループのコア技術へと 成長させるべくチャレンジしていきます。また持続可能エネルギーシステムを推進するための低炭素化技術や再生可能エネルギーの取組みを強化して行きます。
① 既存油ガス田の回収率向上を目指す二酸化炭素圧入(CO2-EOR)技術に着目し、国内の大学・企業と連携を図りつつ研究開発に取り組んでいます。海外の油田にてCO2-EORの共同研究プロジェクトを立ち上げる準備を進めています。また、国内自社フィールド等を活用した実証試験にも取り組む予定です。
② 地球温暖化の原因とされる二酸化炭素(CO2)の分離回収・貯留(CCS)技術に関して、2016年度から二酸化炭素地中貯留技術研究組合に参画し、大規模CO2圧入・貯留の安全管理技術の開発・実証に取り組んでいます。また、CO2-EOR(CCUS)を含むCO2地下貯留の国際基準(ISO/TC265)策定活動に積極的に貢献すると共に日本CCS調査(株)の株主として日本国内に おける実証プロジェクトに参加しております。
③ 再生可能エネルギーの取り組み強化を進めるため、太陽光発電、地熱発電及び洋上風力発電に必要な技術的課題に取組み、技術の蓄積を図っていきます。
(3) Emerging:今後2040年のエネルギー社会を見据えた未来の技術に取り組んでいきます。
① 更なる低炭素化に向けた「炭素循環」の技術のなかでは、経済産業省及び新エネルギー・産業 技術総合開発機構(NEDO)が主導する「人工光合成化学プロセス技術研究組合」に参加し、太陽エネルギーを利用して光触媒の水分解による水素の生成、並びに、生成された水素とCO2からプラスチック原料等基幹化学品の製造を目指す研究開発プロジェクトに取り組んでいます。
また、NEDOから「CO2有効利用技術開発事業」を受託し、CO2からメタンを生成するメタネーションの技術開発に取り組んでいます。
② 国内研究機関と共同で地下常在菌を活用した増進回収技術(EOR)の研究開発を進めており、国内自社フィールド等を活用した実証試験にも取り組んでいます。また、次世代のEOR技術としての低塩分濃度水攻法の研究開発も進めています。
(4) Digital Transformation:デジタル技術をあらゆる分野で最大限に活用し、エネルギー企業として効率的な開発・操業の実現と、レジリエントな企業体質の構築の実現を進めていきます。技術的に大きく4つの分野にわけ、以下のような取り組みを実施しています。
① 油ガス田開発分野では、地震探査データ解釈の自動化、岩相・化石種の自動判定等に取り組み、作業効率の最大化を促進します。
② 掘削分野では、逸泥や抑留といった掘削障害早期検知モデルの研究開発を進めています。
③ 生産・操業分野では、操業費の全体最適化を目指し、Digital Oil FieldやDigital Twinといった技術に取り組んでいます。
④ 情報管理の面では、当社の保有する膨大な技術データをクラウド上で一元管理化を進めており、その有効活用を促進します。