有価証券報告書-第14期(平成31年4月1日-令和1年12月31日)

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2020/03/26 11:20
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対処すべき課題

(1)経営方針、経営戦略、経営計画、経営環境及び対処すべき課題
当社グループを取り巻く経営環境として、中長期的には世界の中間層人口の拡大、新興国を中心とした経済成長等により、一次エネルギー需要は持続的に増加すると見込まれています。石油の需要は、今後も堅調に推移すると見込まれていますが、他の化石燃料と比較してCO2の排出が少ない天然ガスと、環境負荷が小さい再生可能エネルギーの需要は長期的に大幅に増加すると見込まれています。
日本では、安定的なエネルギー供給と石油・天然ガスの自主開発比率の向上が課題となっており、日本政府による2030年度の自主開発比率目標40%以上に対して、2017年度・2018年度の実績は30%未満の水準となっております。
他方、2015年に採択されたパリ協定では世界共通の長期目標として、産業革命前からの平均気温上昇を2℃未満に抑え、さらに1.5℃に抑える努力をする目標が設定され、温室効果ガスの削減と低炭素社会の実現に向けた国際社会全体での積極的な取り組みが求められています。
こうした経営環境の認識を踏まえ、当社は、2018年5月に「ビジョン2040 -エネルギーの未来に応える-」を策定しました。「エネルギーの開発・生産・供給を、持続可能な形で実現することを通じて、より豊かな社会づくりに貢献する」という経営理念のもと、当社グループは日本をはじめとする世界のエネルギー需要に応えていくことで、社会にとってかけがえのないリーディングエネルギーカンパニーとなることを目指します。
その実現に向け、①石油・天然ガス上流事業の持続的成長を通じて、同分野でトップクラスを目指すとともに、②グローバルガスバリューチェーンを構築し、天然ガス供給拡大と柔軟なLNG供給体制を整備し、③再生可能エネルギーの取り組みを強化し、気候変動対応を見据えつつ、将来の成長分野での事業拡大を図ってまいります。そして、企業として果たすべき社会的責任や様々なステークホルダーの皆様からの期待を強く認識し、CSR経営を推進することで長期的に企業価値を向上させるとともに、活力に満ちた企業風土を醸成し、社員と会社が共に成長する企業となることを目指します。
同じく2018年5月には、「ビジョン2040」に併せて「中期経営計画2018‐2022 -Growth & Value Creation-」を策定し、同ビジョンの達成に向けた2018年度から2022年度の具体的な取り組み及び目標を掲げております。
さらに、効率的な事業遂行体制を維持・強化すべく、個別プロジェクトごとの投資の見直しや操業費及び本社管理費等の間接経費の節減を引き続き進めており、原油換算1バレル当たりの生産コスト(ロイヤリティ除く)は2015年3月期10.9ドル、2016年3月期7.6ドル、2017年3月期5.9ドル、2018年3月期5.9ドル、2019年3月期5.7ドル、2019年12月期5.3ドルと着実に低減しております。
上記の経営環境の認識及び中長期的な経営方針を踏まえ、当社グループは、ビジョン2040及び中期経営計画に掲げる事業目標の達成とこれを支える基盤整備に向け、以下のとおり継続的かつ確実な取り組みを進めております。
1.事業目標
①石油・天然ガス上流事業の持続的成長
当社グループは、コアビジネスである石油・天然ガス上流事業において、新規探鉱の推進、効率的な操業や油ガス田の回収率向上等による既存開発・生産プロジェクトの価値向上、戦略的な資産買収やM&Aの実行、面的な事業展開を可能とするコアエリアの充実と拡大、当社技術力の向上につながるオペレータープロジェクトの遂行を進めてまいります。
また、これらを通じて、(1)地域や事業ステージなどにおいてバランスの取れたポートフォリオの構築、(2)オペレーターとしてイクシス・アバディの安定的、効率的な開発・操業の実現、(3)既存プロジェクトに加え、新規探鉱の成功、資産買収などによる次の成長プロジェクトの創出、という成長に必要な3つの要素を獲得し、当社のポートフォリオを質・量ともに大きく成長させることで、持続的成長の実現を目指してまいります。
具体的には、長期的にネット生産量日量100万バレルを展望した埋蔵量の維持・拡大、純利益及び営業キャッシュフローの大幅な拡大と資本効率性の向上の実現により、2040年に向けて生産量・埋蔵量・収益力・技術力などにおいて国際大手石油会社トップ10へと成長することを目指します。
・オーストラリアのイクシスLNGプロジェクトについては、2018年7月に生産井からのガス生産を開始し、10月以降、LNG、LPG、コンデンセートについて順次出荷を開始しました。その後、生産施設・設備の調整を行いつつ生産量を徐々に増加させてきましたが、生産量は、当初の想定より早いペースで順調に増加しており、2019年11月には累計100隻となるLNGタンカーの出荷を達成し、年度末にはほぼ所期の生産量を継続できる状態になってきております。今後は、これらの操業状況を維持し、年間を通じ安全かつ安定した生産操業及び製品供給を行ってまいります。
・同じくオーストラリアの西豪州沖合WA-44-L鉱区プレリュードFLNGプロジェクトにおいては、2018年12月に生産井からガス生産を開始した後、2019年6月にLNGカーゴの出荷を開始いたしました。現在は着実な生産量の増加と安定操業を目指し生産を継続中です。
・インドネシアのアバディLNGプロジェクトについては、2018年の概念設計(Pre-FEED)作業を踏まえた経済性確保を含むインドネシア政府当局との協議の結果、2019年7月に、年産950万トンの陸上LNG方式による改定開発計画(POD)が同政府より承認されました。併せて、同鉱区の契約期限が2055年まで延長されております。現在は、2020年代後半の生産開始を目指し、基本設計(FEED)作業の準備を進めております。
・アラブ首長国連邦でのアブダビ事業については、アブダビ沖合の油田群及びアブダビ陸上のADCO鉱区において、順調に原油の生産を継続しております。また、下部ザクム油田のアセットリーダーとして、当社の人材・技術を同油田の開発・生産事業に重点的に投入し、同油田のオペレーター会社であるADNOC Offshore社に対し、開発・生産に関する助言を行うとともに、同社と緊密に連携し、プロジェクトの最適化に取り組んでおります。なお、2019年3月にはアブダビの探鉱公開入札にて、陸上のBlock4鉱区落札に成功し、以降、探鉱活動に取り組んでおります。
今後も新規埋蔵量獲得に向けた探鉱活動、優良プロジェクトへの参入機会の追求を行ってまいります。
②グローバルガスバリューチェーンの構築
当社グループは、国内天然ガス開発・供給事業については既存インフラの活用による安定供給と他社との連携による供給量の拡大、インドネシアをはじめとするアジアなどの成長市場においてはガス需要の開拓を進め、輸送能力・需給調整能力を含むグローバルなトレーディング機能の維持・強化を通じて、天然ガス事業の持続的な価値向上に努めてまいります。そして、2040年に向けて日本のみならずアジア・オセアニアを中心とした地域で天然ガス開発・供給の主要プレーヤーとなることを目指します。
・上越市の直江津LNG基地(受入基地)も安全安定操業を継続しており、約1,500kmに亘る天然ガスパイプラインネットワークのうち、長野県内で2019年10月に台風19号による被害を一部受けましたが、順調にガスの安定供給を行っております。
・国内のエネルギー市場では、電力・ガスの垣根を越えた競争が激しさを増す中で、多様化する天然ガス利用に関する顧客ニーズに応じた需要開発に注力しております。具体的には、従来型の燃料転換の提案に加え、自然災害への対応力を高める分散型発電システムを活用した提案やエネルギーサービス事業への参入等の取り組みを鋭意進めております。また、ガス卸先の都市ガス事業者と連携して電力販売事業への取り組みを着実に進めるとともに、新たに、都市ガス事業者が地域と繋がり、顧客・経営基盤を強化していく活動を支援するプログラム「INPEX 4U Challenge Lab」の取り組みを開始しました。
・温室効果ガス削減の有効な手段の一つとして期待される船舶へのLNG燃料供給(バンカリング)事業においては、ADNOCグループとUAEにおける事業化の協議を継続するとともに、東南アジアを始めとする地域におけるLNGバンカリングネットワーク拡大も追求しております。
引き続き、グローバルガスバリューチェーンの構築に向け、取り組んでまいります。
③再生可能エネルギーの取り組みの強化
当社グループは、地熱発電事業及び風力発電事業等の再生可能エネルギー事業への参入の拡大により、長期的に当社グループのポートフォリオの1割を再生可能エネルギー事業とすることを目指します。併せて温室効果ガスの削減に関連する研究開発も継続して進めてまいります。これらを通じて気候変動へ適切に対応し、長期的な再生可能エネルギー需要の増加に応えてまいります。
・秋田県小安地域において地熱発電の事業化に向けた調査を行っており、2018年12月より環境アセスメントを実施しております。また、福島県における共同地熱調査では、吾妻安達太良地域の調査に向けた準備を進めております。
・インドネシア北スマトラ州サルーラ地区で推進しておりますサルーラ地熱IPP事業において、2017年の第1号機・第2号機に続き、2018年には第3号機がそれぞれ商業運転を開始し、総出力約330MWにて順調に発電を継続しています。
・南長岡ガス田において、天然ガス生産時に付随して出される二酸化炭素(CO2)と、水の電気分解によって製造された水素を合成することによりメタンを製造する試験設備を2019年10月に完成させ、実証試験を開始しており、カーボンリサイクル技術の一つであるメタネーション技術の確立を目指してまいります。
これら事業目標を達成するための基盤整備については、以下の取り組みを継続してまいります。
2.基盤整備
①CSR経営の強化
当社グループは、当社グループの事業及びステークホルダー双方にとって重要度の高い6つの重点テーマとして、ガバナンス・コンプライアンス・HSE・地域社会・気候変動対応・従業員を特定し、CSR経営の実践を通じた事業と社会の持続的発展に努めてまいります。
・本事業年度は「中期経営計画 2018-2022」の2年目にあたり、2017年に策定した人権方針、昨年策定の税務方針及びグローバル贈収賄・汚職防止方針に基づいた、英国現代奴隷法ステートメントの開示、取締役会の実効性評価、贈収賄・汚職防止に係るリスク評価等の継続的取り組み(PDCAサイクル)に注力し、取締役会の実効性評価も適切に実施し、ガバナンス及びコンプライアンスの更なる強化に取り組んでおります。当社は持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るため、これらの方針に基づき、法令遵守、企業倫理の徹底、経営の透明性確保に努めてまいります。
②気候変動対応の推進
当社グループは、気候変動対応の基本方針に基づき、パリ協定の長期目標を踏まえた低炭素社会へ積極的に対応すべく、ガバナンス体制を強化するとともに、業務執行体制を整備し、事業戦略、リスク及び機会の評価、排出量管理の各分野で取り組みを進めてまいります。
・2015年12月に発表したポジションペーパー「気候変動対応の基本方針」(2018年7月改定)に基づき、パリ協定の長期目標を踏まえた低炭素社会へ積極的に対応してまいります。
・また、2018年5月には「ビジョン2040」及び「中期経営計画」において、TCFD提言(2017年6月の金融安定理事会(FSB)作業部会(TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures)による提言)に沿った取り組み及び情報開示を進めていくことを表明しています。石油・天然ガス開発企業としての責任ある役割を踏まえ、ガバナンス体制を強化し、事業戦略、リスク及び機会の評価、並びに排出量管理の各分野で取り組みを持続的に推進していきます。
・具体的には、各国の政策移行リスクに対してインターナルカーボンプライス($35/tCO2-e)及びIEAの2℃シナリオの油価・カーボンプライスを適用し、プロジェクトの経済性評価に反映しています。
③HSE
当社グループは、環境安全方針の宣言のもと、グローバル水準のHSEマネジメントシステムを経営層から従業員までが真摯に実行し、経営の最優先課題である、労働災害の防止、職場における安全と健康の確保、環境の保全に努めております。
・HSEマネジメントシステムについては継続的な整備を実施しております。また、HSEマネジメントシステムの実行を担保するために、HSE監査及びレビューの強化、HSE技術支援の強化を、全ての事業活動に対して実施しております。
・火災・爆発等の重大災害防止のために、プロセスセーフティ管理の強化を継続しており、セーフティケースの作成、設備の健全性のレビュー、リスク管理の強化を実施しています。万が一、事故が発生した場合に備えて、訓練を通じて、緊急時・危機対応能力の強化にも努めております。
・本社経営層による現場訪問の頻度を増やすと同時に、操業現場の責任者による国内外の現場訪問の機会を創出しました。この活動により、本社経営層、リーダー層そして現場従業員の間で、HSEに関して率直な意見交換、議論を継続して行っています。また、オペレータープロジェクトのHSEリスク管理状況を把握すべく、経営層による定期的なレビューを実施しています。さらに、環境への負荷を低減すべく、環境リスクの見直しと全社的な管理の方法についても検討を実施しました。
・現場がHSE活動の当事者、現場のHSE管理力が当社の競争力と認識し、現場におけるHSE活動を強力に推進しております。今後もこれらの活動を通じて、組織と個人がHSEに対する前向きな意識と姿勢を高めることで、当社のHSE文化を醸成してまいります。
④人材・組織
当社グループは、すべての役員・社員が一体となって働くための共通の基盤である「INPEXバリュー」の体現を通じ、多様性に富んだ人材が自主性を発揮し使命感を持って活躍できる会社づくりを推進しています。また、「INPEXグループ健康宣言」の下、社員一人ひとりの心身の健康が会社の基盤であると認識し、健康増進や良好な職場づくりに取り組んでいます。
・平成30年度「なでしこ銘柄」に選定され、「子育てサポート企業」として3度目の次世代認定マーク(愛称:くるみん)を取得しています。
・2019年よりLGBTアライ(理解者の集まり)を設立し、昨年10月には、「PRIDE指標2019」において、「シルバー」を受賞しました。
・健康経営の推進については、「健康経営優良法人2019(大規模法人部門)」(ホワイト500)に認定されました。
・さらに、2019年よりフレックスタイム制勤務制度、INPEXカジュアルエブリデーを導入するとともに、育児世代を部下に持つ上司向け研修、外国籍社員に対する日本語レッスンの実施、有期雇用社員の一部を正社員化、若手支援策としてメンター・サポータ制度の拡充など、働き方改革に関連した取り組みや、個々の力を最大化する働き方を支援・追求しております。今後も、多様な経験、価値観を有する人材の確保と活用を図るとともに、「ビジョン2040」に掲げた成長戦略の実現に必要な人材の育成施策の拡充に努め、効率的な組織体制の整備を進めてまいります。
また、効率的な操業体制を整備するほか、グローバルガスバリューチェーン、再生可能エネルギー、法務、気候変動対応に関する組織の強化などにも取り組んでまいります。
・2019年6月には、中期経営計画をさらに強力に推進することを目的として、上流事業開発本部・戦略プロジェクト室の設置、海外地域事業本部・技術本部の再編、リーガルユニットの独立等の組織改編を実施しました。
⑤技術
当社グループは、ビジョン2040及び中期経営計画に則り、上流事業での豊富な経験や実績により育んだコア技術をさらに得意技術として確実に強化することで、国際競争力を伸ばすとともに当社グループのプロジェクト価値を今以上に向上させてまいります。さらに未来の多様化するエネルギー社会を見据えて新たな技術分野の開発に挑戦することで、次世代のエネルギービジネスを推進してまいります。
・2018年5月には、新たに「技術ロードマップ2018」を発行し、今後5年間で得意技術としていく石油・天然ガスの上流コア技術に加え、例えば地熱・風力発電等の再生可能エネルギーや低炭素社会に向けた技術的取組み、そして今日あらゆる分野に浸透するデジタル技術を応用して行くDigital Transformation等の、当社が新たに挑戦すべき技術分野のテーマを選択し、それらへの取組方針とスケジュールを取りまとめました。現在、同技術ロードマップに則り、既存技術力の強化と次世代エネルギービジネスへの取り組みを鋭意進めているところです。
・例えば当社が、国内新潟地区のガス田やアラブ首長国連邦の油田生産開発事業、カナダシェールガス事業において培って来た低浸透性貯留岩開発技術は、米国テキサス州のシェールオイル生産開発事業の取得に大きく貢献しました。今後シェールオイル生産開発事業の運営・推進を通じて更に同技術を得意技術に深化させていくことになります。
・本事業年度は、カーボンリサイクル技術の一つであるメタネーション技術の確立を目指して、当社のプラント敷地内にメタン合成試験設備を完成させており、現在進めている各種試験及び連続運転を通じて技術課題の検討・評価を実施してまいります。
なお、本項の記載中、将来に関する事項については、本書提出日現在での当社グループの判断であり、今後の社会経済情勢等の諸状況により変更されることがあります。
(2)株式会社の支配に関する基本方針
①基本方針の内容
当社グループは、バランスの取れた資産ポートフォリオ、国際大手石油会社の上位を目指す我が国の中核的企業としてのプレゼンス、オペレーター事業を通じて培った高い水準の技術力等を最大限に活かし、今後も世界各地で積極的にプロジェクトを推進することで、我が国向けエネルギーの安定供給と石油・天然ガスの自主開発比率向上に貢献します。さらに、環境・社会・ガバナンスの各分野で責任ある取り組みを進めることで、石油・天然ガス上流事業に加え、再生可能エネルギーを含めた多様なエネルギーの開発・生産・供給を持続可能な形で実現することを通じて企業価値を向上させ、より豊かな社会づくりに貢献してまいります。
②財産の有効な活用及び不適切な支配の防止のための取り組み
当社グループは、資本効率性・財務健全性を意識しつつ、強固な財務体質を活かして、石油・天然ガス資源の安定的かつ効率的な供給を可能とするために事業基盤の拡大を目指し、探鉱・開発活動及び供給インフラの整備・拡充等への成長投資を行います。当社グループは、プロジェクトが生み出すキャッシュを、成長投資と株主還元にバランスよく配分することで、新たなキャッシュの創出と株主価値の増大を図り、持続的な企業価値の向上を目指します。
また、当社は、上記①の方針に基づき、投機的な買収や外資による経営支配等により、中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われること又は否定的な影響が及ぶことがないよう、経済産業大臣に対し甲種類株式を発行しております。
その内容としては、ⅰ)取締役の選解任、ⅱ)重要な資産の全部又は一部の処分等、ⅲ)当社の目的及び当社普通株式以外の株式への議決権(甲種類株式に既に付与された種類株主総会における議決権を除く。)の付与に係る定款変更、ⅳ)統合、ⅴ)資本金の額の減少、ⅵ)解散、に際し、当社の株主総会又は取締役会の決議に加え、甲種類株式の株主による種類株主総会(以下、「甲種類株主総会」という)の決議が必要とされております。ただし、ⅰ)取締役の選解任及びⅳ)統合については、定款に定める一定の要件を充たす場合に限り、甲種類株主総会の決議が必要とされております。甲種類株主総会における議決権の行使に関しては、甲種類株主が令和元年経済産業省告示第37号に定める甲種類株式の議決権行使の基準に則り、議決権を行使できるものとしております。
当該基準では、上記ⅰ)及びⅳ)に係る決議については、「中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に背反する形での経営が行われていく蓋然性が高いと判断される場合」、上記ⅲ)の当社普通株式以外の株式への議決権(甲種類株式に既に付与された種類株主総会における議決権を除く。)の付与に係る定款変更の決議については、「甲種類株式の議決権行使に影響を与える可能性のある場合」、上記ⅱ)、ⅲ)当社の目的に係る定款変更、ⅴ)及びⅵ)に係る決議については、「中核的企業として我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現に果たすべき役割に否定的な影響が及ぶ蓋然性が高いと判断される場合」のみ否決するものとされております。
さらに、当社の子会社定款においても子会社が重要な資産処分等を行う際に、上記ⅱ)の重要な資産の全部又は一部の処分等に該当する場合には、当該子会社の株主総会決議を要する旨を定めており、この場合も当社取締役会の決議に加え、甲種類株主総会の決議を必要としています。なお、当社の取締役会は、甲種類株主による甲種類株式の議決権行使を通じた拒否権の行使に関して権能を有しておらず、従って甲種類株式は当社の会社役員の地位の維持を目的とするものではありません。
③上記②の取り組みについての取締役会の判断
上記②の取り組みは、我が国向けエネルギー安定供給の効率的な実現及び持続的な企業価値の向上を目指すものであり、上記①の方針に沿うものであります。
また、上記②の甲種類株式は、拒否権の対象が限定され、その議決権行使も令和元年経済産業省告示第37号に定める経済産業大臣による甲種類株式の議決権行使の基準に則り行われることから、経営の効率性・柔軟性を不当に阻害しないよう透明性を高くし、その影響が必要最小限にとどまるよう設計されておりますので、上記①の方針に沿うものであり、株主の皆様の共同の利益を損なうものではないと考えております。