訂正有価証券報告書-第166期(2025/04/01-2026/03/31)
有報資料
(リスクマネジメントに関する基本的な考え方)
当社グループは、リスクマネジメント方針・リスクマネジメント基本規程のもと、品質・コンプライアンス・情報・安全・環境等のESGに関するリスクへ対応する全社的に体系化されたリスクマネジメントシステムを整備しております。
成長機会を的確に捉える戦略的なリスクテイク(攻め)と、事業遂行に内在するリスクの顕在化に備えた適切な管理と対処(守り)を両輪として、実効性のあるリスクマネジメント体系を構築することにより、経営の安定性と企業価値の向上を図っております。
(当社グループの事業に関するリスク)
当社グループの事業に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、リスクが発生する可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境に関するリスク
当社グループ及び建設業界全体を取り巻く経営環境の変化に起因し、中長期的な経営課題や事業戦略の遂行に重要な影響を及ぼすリスクを「事業環境に関するリスク」と位置付け、以下のリスク項目に分類しております。
①社会環境リスク
イ.建設市場の動向
当社グループの事業は国内建設事業の占める割合が高く、国内建設市場の急激な縮小や競争環境の激化が生じた場合には、建設事業の受注高・売上高・売上総利益が減少するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、リニューアル分野やエンジニアリング事業、開発事業に注力するとともに、O&M(オペレーション&メンテナンス)事業など施工領域の川上・川下における事業や、当社保有技術を活用した地域連携による市場開拓など新たなビジネスモデルの確立に向けた取り組みを実施しております。また、脱炭素などの環境・社会課題の解決に貢献する技術開発をはじめ、サステナビリティを踏まえた経営基盤の整備を進めております。
ロ.資材価格の変動
原材料の価格が高騰した際、請負代金に反映することが困難な場合には、工事収支が悪化するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、資材価格動向のモニタリングや予測及び予測精度向上に向けた取り組みを継続するとともに、集約購買・国際調達等による原価低減に努めております。また、発注者との契約締結に際しては、資材価格動向を踏まえた価格交渉、約定による物価スライドの採用等に努めております。
ハ.金利水準の変動
金利水準が急激に上昇した場合には、資金調達コストが増加するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、金利関連のデリバティブ等の金融商品を利用するとともに、年度ごとに調達額や調達手段を見直すことにより資金調達コストの安定化を図っております。
ニ.サステナビリティ課題リスク
企業には事業を通じて気候変動等の環境課題の解決に取り組むことが求められており、当社及びサプライ チェーンにおける取り組みや情報開示が不十分な場合には、企業競争力及びステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、当社グループは、環境方針に掲げる「持続可能な環境配慮型社会の実現」に基づき、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を定め、3つの社会(脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会)の実現と、2つの個別課題(森林資源・森林環境、水資源・水環境)の解決を目指しております。
また、企業にはステークホルダーの人権尊重に取り組むことが求められており、その取り組みや情報開示が不十分な場合には、ステークホルダーの人権を侵害してしまうリスクや、企業競争力及びステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、人権方針に基づく人権デュー・ディリジェンスを実施しており、当社グループの事業活動による人権への負の影響に対する予防・軽減、対策の実効性の評価、内部通報制度をはじめとした苦情処理メカニズムの整備及び取り組みに関する情報開示など、サプライチェーンも含めた人権尊重への取り組みを継続的に実施しております。
ホ.人的基盤の確保
建設技能労働者の高齢化や若年入職者の減少等に伴う担い手不足により、施工体制の確保が困難となり、工程遅延や施工品質の低下を通じて、受注機会の逸失やコスト増加を招くおそれがあります。また、少子化や建設業界内外における人財獲得競争の激化により、グループ内における必要な人財の確保が困難となり、施工管理力や技術力が制約されることにより、当社グループの事業競争力に影響を及ぼすリスクが生じます。
このリスクに対応するため、協力会社と連携した担い手確保、教育・研修の充実による技能向上、働き方改革の推進や処遇の改善を含めた労働環境の整備に取り組んでおります。また、グループにおける人財の確保・育成及び定着に向けた各種施策を推進し、人員配置の最適化に努めております。
ヘ.地政学リスク
海外の特定地域が抱える政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりにより、資材価格が高騰するリスクや物流混乱により納期が遅延するリスクがあります。
このリスクに対応するため、契約時における発注者との協議はもとより、資材価格の高騰については、メーカーヒアリングや市場調査等により価格動向を早期に把握し、必要に応じて早期調達や代替品への変更等の措置を講じております。また、物流混乱による納期遅延については、製作地や輸送経路の確認を行い、自然条件・社会条件・法的リスク等を検討するとともに、納期遅延を発生させないよう調達業務の進捗管理を行っております。
ト.先端技術活用リスク
デジタル技術やAI・ロボット技術等の先端技術への投資判断の遅れ、機会の逸失、並びに現場への定着の遅れ等により、生産性向上が十分に実現されないリスクや事業競争力に影響を及ぼすリスクが生じます。
このリスクに対応するため、戦略的に技術開発分野を選定し、その実現に向けた投資計画を策定するとともに、技術開発のマイルストーンを設定し、進捗を適切に管理することにより、先端技術の活用を推進しております。加えて、生成AIをはじめとする先端技術を活用できる人財の育成や、利用ルールの整備に取り組んでおります。
②事業継続リスク
イ.大規模災害リスク
大規模災害が発生した場合には、本社・支店の機能が麻痺し、事業継続が困難となるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、BCP(事業継続計画)を策定しております。例えば、震度6弱以上の地震が発生した場合には、BCPを自動発動し、速やかに対策本部を立ち上げて、被災情報の収集や被災物件の復旧活動等を行うこととしております。
また、本社・支店の非常用発電や通信手段の確保、業界団体や専門工事業者等との連携体制の構築、大規模災害訓練の定期的な実施等によりリスクの低減に努めております。
ロ.感染症流行リスク
感染症の流行に伴い、役職員やその家族、専門工事業者の作業員等が感染し、就業不能となった場合には、事業継続が困難となるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、当社では「感染症発生時における事業継続計画」を策定しております。また、役職員及び専門工事業者へ職場において感染者が発生した場合の対処等について啓発を行うとともに、消毒液・マスク・個人防護具の備蓄を行っており、速やかに感染防止対策を強化できる体制を整備しております。引き続き、事業継続に努め、社会資本整備の担い手として建設業に求められる社会的使命を果たします。
ハ.情報セキュリティ・サイバー攻撃リスク
コンピュータウイルス感染やサイバー攻撃等の外部要因及び役職員のパソコン・スマートデバイス等の紛失・盗難、操作上の錯誤、顧客情報の不適切な取扱い等の内部要因により、システムダウンや当社グループ及び顧客情報等の流出が発生した場合には、事後対応に要するコストの発生や損害賠償金の負担等、事業活動に深刻な影響を受けるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、ウイルス対策ソフトの適切な更新管理に加え、多要素認証の導入、アクセス管理の強化、重要データのバックアップ体制の整備、外部からの不正侵入を想定した監視・検知体制の強化等、情報セキュリティ対策の高度化に取り組んでおります。
これらに加えて、CSIRT(Computer Security Incident Response Team:「シーサート」)を設置し、サイバー攻撃等に対する予防及び早期対応体制の整備を図っております。
また、役職員及び専門工事業者に対して情報管理規程体系に基づく取扱ルール等の遵守を徹底させ、情報漏洩の防止に努めております。
(2) 事業運営に関するリスク
当社グループの事業活動の遂行過程において顕在化しうるリスクであり、未然防止や発生時の対応により、事業への影響を適切に管理すべきリスクを「事業運営に関するリスク」と位置付け、以下のリスク項目に分類しております。
①法令遵守リスク
イ.建設業法等違反リスク
当社グループが、建設業法等に違反し、監督官庁による処分や指導を受けた場合には、営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、建設業法をはじめとした各種関連法令の事前確認を徹底するとともに、役職員及び専門工事業者に対して法令遵守の啓発活動及び遵守状況のモニタリングを実施しております。
ロ.独占禁止法違反リスク
当社グループは、「グループ行動指針」をはじめとするコンプライアンスに関する諸規程を整備し、その遵守を徹底しておりますが、担当者の錯誤等により独占禁止法に違反し、当社グループ又は役職員が刑事罰・行政処分を受けた場合には、営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、入札業務の適正確認手続きに関する社内規程や内部通報制度等を整備するとともに、取引先との対等な関係の構築と公正かつ透明な取引の実現に向けて「パートナーシップ構築宣言」を策定・公表し、各取り組みを推進することにより、違反行為の抑止に努めております。
ハ.不適切な財務報告リスク
当社グループは、財務報告の適正性を確保するために内部統制体制を整備しておりますが、担当者の錯誤等により、財務報告が適正に行われなかった場合には、上場廃止・青色申告取消し等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、規程・マニュアル等の整備、会計処理がマニュアルに則って適正に行われているかのモニタリング、正確な財務報告等に関する啓発教育を実施し、内部統制の実効性確保に努めております。
なお、不適切な財務報告が発生した場合には、速やかな情報収集と正確な状況把握に努めるとともに、不適切な財務報告事例等について管理部門をはじめ関連する部門に水平展開し、適正な財務報告の重要性を周知いたします。また、実行者を懲戒処分規程に基づいて厳正に処分することとしております。
ニ.労働環境リスク
当社グループにおいて、従業員の労働環境・労働条件に関する事業主の義務を十分に果たすことができず、不適切な労働管理、過重労働等が発生した場合には、従業員の健康被害やメンタル不全、エンゲージメントの低下、さらには、法違反の責任追及、損害賠償請求、社会的信用の失墜等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、勤怠管理や健康管理を適正に行うための体制を整備しております。また、過重労働を防止するべく、適正な要員配置や業務内容・配分の見直し等の措置を講じるとともに、休暇取得の促進等を通じて総労働時間の適正化を図っております。これらに加えて、エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、職場環境の状況・課題を把握のうえ、継続的な改善活動に取り組んでおります。
ホ.インサイダー取引リスク
当社グループにおいて、インサイダー取引が生じた場合には、株主や投資家をはじめとするステークホルダーからの信用・信頼を失う等の社会的評価を低下させるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、インサイダー取引の防止に関する規程、正確かつ公平な情報開示を行う体制を整備するとともに、役職員への教育の徹底によりリスクの低減に努めております。
ヘ.反社会的勢力リスク
建設作業所等において反社会的勢力からの接触を受け、錯誤等により何らかの取引を行ってしまった場合には、社会的信用の失墜と営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、反社会的勢力への対応マニュアルの整備や全役職員へのメール発信等により、反社会的勢力への対応方針を全役職員へ周知・啓発しております。
なお、反社会的勢力から不当要求を受けた場合には、速やかに警察等の外部機関に通報し、組織的に対応いたします。また、契約後に相手方が反社会的勢力であることが判明した場合には、必要に応じて警察と協議のうえ、速やかに契約を解除することとしております。
ト.環境法規制違反リスク
建設作業所等において環境関連法規に違反した場合には、刑事罰・行政処分・損害賠償請求等を受けるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、EMS(環境マネジメントシステム)を制定・運用するとともに、環境パトロールによりその遵守状況をチェックしております。
チ.知的財産侵害リスク
当社グループが知的財産権を有する施工技術や建物・設備に関する商品・サービス等が、他者に侵害された場合には、受注機会の逸失・訴訟コスト発生等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、専門部署間において特許関連情報を適時共有するとともに、社内研修の実施や知的財産関連情報の定期的な発信等の啓発活動を行っており、保有財産の保全監視に努めております。
なお、当社グループの権利が侵害された場合には、侵害者に対する警告を行い、必要に応じて法的措置を講じます。また、当社グループによる他者の知的財産権侵害が危惧される場合には、専門部署にて調査・判定を行う体制を整備しております。
②受注・投資判断リスク
イ.与信リスク
建設事業の工事代金を受領する前に取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収遅延・不能のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、組織的なプロジェクトリスク管理体制を整備し、具体的根拠と客観的評価に基づいた与信管理の徹底に努めております。
ロ.契約リスク
当社グループの事業において、発注者や関係者の要求・担当者の契約約款に対する理解不足等から、著しく不利な契約を締結した場合には、過度な義務の負担による工事収支の悪化や工事代金の回収不能等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、不利益条項に対する審査ルールを徹底するとともに、必要に応じて外部の専門家に対応策の検証を依頼する等、営業段階から組織的な契約リスク管理体制を整備・運用しております。また、営業担当者に対して意思決定ルール等を周知教育するための社内研修を行い、リスクの抑止を図っております。
ハ.投資関連リスク
投資案件に関するトラブルや事業環境の変化により、投下資本が計画どおりに回収されなかった場合には、損失発生のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、案件ごとに収益性・資本効率等を総合的に評価し、財務政策において設定したハードルレートに基づき投資判断を行い、投資実行後は収益性・資本効率等の変動について定期的にモニタリングしております。また、財務政策において、成長機会を着実に捉えるための資金配分基準を設定する一方、リスク資産残高について総量規制枠を設定し、特定分野に対する過度な投資集中を抑制することにより、市況の急激な悪化にも耐えうる投資構成を整備しております。
ニ.資産保有リスク
保有資産(不動産・有価証券等)について、市況の悪化等により、資産価値が低下した場合には、業績や財務状況に影響を及ぼすリスクが生じます。
このリスクに対応するため、保有資産の時価や収益性を定期的にモニタリングするとともに、必要に応じて保有資産の見直しを行う等、適切な資産管理に努めております。
ホ.M&A関連リスク
M&A対象事業の市場環境の変化、想定したシナジーの未達、統合の遅延等により、当初計画どおりの投資効果が得られないリスクが生じます。
このリスクに対応するため、M&A実施前にデュー・ディリジェンスを実施し、法務・財務・事業計画等の分析を通じて価値評価を行います。また、M&A実施後は、買収時に設定した事業計画とシナジー創出計画に対する実施状況のモニタリングを実施しております。
③プロジェクト遂行リスク
イ.事故災害リスク
建設作業所において人身や施工物等に関わる重大な事故が発生した場合には、被災者への補償や追加工事費用発生等による工事収支の悪化、指名停止等による営業活動の制限等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、労働安全衛生マネジメントシステムに基づいた安全衛生管理体制を推進するとともに、役職員及び専門工事業者に対する安全衛生教育・指導等を実施することにより事故災害発生防止を 図っております。
ロ.施工不良による品質リスク
当社グループは、品質管理・施工技術に関する業務標準や業務フローを定め、品質マネジメントシステムを運用しておりますが、ルールの不徹底や技術者・作業員の錯誤等により、施工不良が発生し、適正な品質を確保できなかった場合には、手直し工事に伴う追加コストや損害賠償金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、品質管理の統括・指導に特化した独立部門の設置をはじめとした品質管理体制の強化等、品質マネジメントシステムの確実な運用・徹底に努めております。また、品質に関するパトロールの実施や各種教育等により、役職員及び専門工事業者の品質管理力の強化を図っております。
ハ.工程遅延リスク
建設事業では、事前の施工計画等の検討に基づき、適正工期による契約に努め、施工中は確実な工程管理を実施しておりますが、事故・トラブル及び労務不足や資機材調達遅延等により、建物等の引き渡しが遅延した場合には、工事促進に伴う追加コストや遅延損害金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、組織的管理体制を構築し、労務状況の早期把握や関係本部のパトロールによる工程進捗状況の把握を徹底し、確実な工程管理に努めております。
ニ.設計不良リスク
当社グループは、設計管理要領・品質マニュアル等を策定し、設計関連のチェック体制を構築しておりますが、担当者の錯誤等により、設計不良が発生し、顧客の要求水準を充足できなかった場合には、設計や施工の手直しに伴う追加コストや損害賠償金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、QMS(クオリティーマネジメントシステム)等の制定によって設計業務を体系化し、設計業務プロセスの監視を行っております。
ホ.カントリーリスク
海外事業を行う国・地域において、テロ・戦争・暴動・政情悪化等が発生した場合には、当該地域での事業継続が困難となるリスクがあります。また、現地の法律・商習慣への理解不足等から、著しく不利な契約を締結した場合には、過度な義務の負担による工事収支の悪化や工事代金の回収不能等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、事業継続に関しては、役職員の安全を確保する手段や非常時の危機管理体制の確立に努めるとともに、必要に応じて日本政府・現地日本大使館・外部専門家等との連携を図っております。また、その国固有の法制度等に伴う契約上のリスクに対しては、審査ルールを徹底するとともに、契約後は契約条件の履行状況を継続的にチェックし、リスク低減を図っております。
なお、カントリーリスクが発生した場合には、情報を一元化して正確な状況把握に努め、適切に対応します。
当社グループは、リスクマネジメント方針・リスクマネジメント基本規程のもと、品質・コンプライアンス・情報・安全・環境等のESGに関するリスクへ対応する全社的に体系化されたリスクマネジメントシステムを整備しております。
成長機会を的確に捉える戦略的なリスクテイク(攻め)と、事業遂行に内在するリスクの顕在化に備えた適切な管理と対処(守り)を両輪として、実効性のあるリスクマネジメント体系を構築することにより、経営の安定性と企業価値の向上を図っております。
(当社グループの事業に関するリスク)
当社グループの事業に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を以下に記載しております。これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態、並びに社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、リスクが発生する可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 事業環境に関するリスク
当社グループ及び建設業界全体を取り巻く経営環境の変化に起因し、中長期的な経営課題や事業戦略の遂行に重要な影響を及ぼすリスクを「事業環境に関するリスク」と位置付け、以下のリスク項目に分類しております。
①社会環境リスク
イ.建設市場の動向
当社グループの事業は国内建設事業の占める割合が高く、国内建設市場の急激な縮小や競争環境の激化が生じた場合には、建設事業の受注高・売上高・売上総利益が減少するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、リニューアル分野やエンジニアリング事業、開発事業に注力するとともに、O&M(オペレーション&メンテナンス)事業など施工領域の川上・川下における事業や、当社保有技術を活用した地域連携による市場開拓など新たなビジネスモデルの確立に向けた取り組みを実施しております。また、脱炭素などの環境・社会課題の解決に貢献する技術開発をはじめ、サステナビリティを踏まえた経営基盤の整備を進めております。
ロ.資材価格の変動
原材料の価格が高騰した際、請負代金に反映することが困難な場合には、工事収支が悪化するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、資材価格動向のモニタリングや予測及び予測精度向上に向けた取り組みを継続するとともに、集約購買・国際調達等による原価低減に努めております。また、発注者との契約締結に際しては、資材価格動向を踏まえた価格交渉、約定による物価スライドの採用等に努めております。
ハ.金利水準の変動
金利水準が急激に上昇した場合には、資金調達コストが増加するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、金利関連のデリバティブ等の金融商品を利用するとともに、年度ごとに調達額や調達手段を見直すことにより資金調達コストの安定化を図っております。
ニ.サステナビリティ課題リスク
企業には事業を通じて気候変動等の環境課題の解決に取り組むことが求められており、当社及びサプライ チェーンにおける取り組みや情報開示が不十分な場合には、企業競争力及びステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、当社グループは、環境方針に掲げる「持続可能な環境配慮型社会の実現」に基づき、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」を定め、3つの社会(脱炭素社会、循環型社会、自然共生社会)の実現と、2つの個別課題(森林資源・森林環境、水資源・水環境)の解決を目指しております。
また、企業にはステークホルダーの人権尊重に取り組むことが求められており、その取り組みや情報開示が不十分な場合には、ステークホルダーの人権を侵害してしまうリスクや、企業競争力及びステークホルダーからの評価が低下するリスクが生じます。
このリスクに対応するため、人権方針に基づく人権デュー・ディリジェンスを実施しており、当社グループの事業活動による人権への負の影響に対する予防・軽減、対策の実効性の評価、内部通報制度をはじめとした苦情処理メカニズムの整備及び取り組みに関する情報開示など、サプライチェーンも含めた人権尊重への取り組みを継続的に実施しております。
ホ.人的基盤の確保
建設技能労働者の高齢化や若年入職者の減少等に伴う担い手不足により、施工体制の確保が困難となり、工程遅延や施工品質の低下を通じて、受注機会の逸失やコスト増加を招くおそれがあります。また、少子化や建設業界内外における人財獲得競争の激化により、グループ内における必要な人財の確保が困難となり、施工管理力や技術力が制約されることにより、当社グループの事業競争力に影響を及ぼすリスクが生じます。
このリスクに対応するため、協力会社と連携した担い手確保、教育・研修の充実による技能向上、働き方改革の推進や処遇の改善を含めた労働環境の整備に取り組んでおります。また、グループにおける人財の確保・育成及び定着に向けた各種施策を推進し、人員配置の最適化に努めております。
ヘ.地政学リスク
海外の特定地域が抱える政治的・軍事的・社会的な緊張の高まりにより、資材価格が高騰するリスクや物流混乱により納期が遅延するリスクがあります。
このリスクに対応するため、契約時における発注者との協議はもとより、資材価格の高騰については、メーカーヒアリングや市場調査等により価格動向を早期に把握し、必要に応じて早期調達や代替品への変更等の措置を講じております。また、物流混乱による納期遅延については、製作地や輸送経路の確認を行い、自然条件・社会条件・法的リスク等を検討するとともに、納期遅延を発生させないよう調達業務の進捗管理を行っております。
ト.先端技術活用リスク
デジタル技術やAI・ロボット技術等の先端技術への投資判断の遅れ、機会の逸失、並びに現場への定着の遅れ等により、生産性向上が十分に実現されないリスクや事業競争力に影響を及ぼすリスクが生じます。
このリスクに対応するため、戦略的に技術開発分野を選定し、その実現に向けた投資計画を策定するとともに、技術開発のマイルストーンを設定し、進捗を適切に管理することにより、先端技術の活用を推進しております。加えて、生成AIをはじめとする先端技術を活用できる人財の育成や、利用ルールの整備に取り組んでおります。
②事業継続リスク
イ.大規模災害リスク
大規模災害が発生した場合には、本社・支店の機能が麻痺し、事業継続が困難となるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、BCP(事業継続計画)を策定しております。例えば、震度6弱以上の地震が発生した場合には、BCPを自動発動し、速やかに対策本部を立ち上げて、被災情報の収集や被災物件の復旧活動等を行うこととしております。
また、本社・支店の非常用発電や通信手段の確保、業界団体や専門工事業者等との連携体制の構築、大規模災害訓練の定期的な実施等によりリスクの低減に努めております。
ロ.感染症流行リスク
感染症の流行に伴い、役職員やその家族、専門工事業者の作業員等が感染し、就業不能となった場合には、事業継続が困難となるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、当社では「感染症発生時における事業継続計画」を策定しております。また、役職員及び専門工事業者へ職場において感染者が発生した場合の対処等について啓発を行うとともに、消毒液・マスク・個人防護具の備蓄を行っており、速やかに感染防止対策を強化できる体制を整備しております。引き続き、事業継続に努め、社会資本整備の担い手として建設業に求められる社会的使命を果たします。
ハ.情報セキュリティ・サイバー攻撃リスク
コンピュータウイルス感染やサイバー攻撃等の外部要因及び役職員のパソコン・スマートデバイス等の紛失・盗難、操作上の錯誤、顧客情報の不適切な取扱い等の内部要因により、システムダウンや当社グループ及び顧客情報等の流出が発生した場合には、事後対応に要するコストの発生や損害賠償金の負担等、事業活動に深刻な影響を受けるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、ウイルス対策ソフトの適切な更新管理に加え、多要素認証の導入、アクセス管理の強化、重要データのバックアップ体制の整備、外部からの不正侵入を想定した監視・検知体制の強化等、情報セキュリティ対策の高度化に取り組んでおります。
これらに加えて、CSIRT(Computer Security Incident Response Team:「シーサート」)を設置し、サイバー攻撃等に対する予防及び早期対応体制の整備を図っております。
また、役職員及び専門工事業者に対して情報管理規程体系に基づく取扱ルール等の遵守を徹底させ、情報漏洩の防止に努めております。
(2) 事業運営に関するリスク
当社グループの事業活動の遂行過程において顕在化しうるリスクであり、未然防止や発生時の対応により、事業への影響を適切に管理すべきリスクを「事業運営に関するリスク」と位置付け、以下のリスク項目に分類しております。
①法令遵守リスク
イ.建設業法等違反リスク
当社グループが、建設業法等に違反し、監督官庁による処分や指導を受けた場合には、営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、建設業法をはじめとした各種関連法令の事前確認を徹底するとともに、役職員及び専門工事業者に対して法令遵守の啓発活動及び遵守状況のモニタリングを実施しております。
ロ.独占禁止法違反リスク
当社グループは、「グループ行動指針」をはじめとするコンプライアンスに関する諸規程を整備し、その遵守を徹底しておりますが、担当者の錯誤等により独占禁止法に違反し、当社グループ又は役職員が刑事罰・行政処分を受けた場合には、営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、入札業務の適正確認手続きに関する社内規程や内部通報制度等を整備するとともに、取引先との対等な関係の構築と公正かつ透明な取引の実現に向けて「パートナーシップ構築宣言」を策定・公表し、各取り組みを推進することにより、違反行為の抑止に努めております。
ハ.不適切な財務報告リスク
当社グループは、財務報告の適正性を確保するために内部統制体制を整備しておりますが、担当者の錯誤等により、財務報告が適正に行われなかった場合には、上場廃止・青色申告取消し等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、規程・マニュアル等の整備、会計処理がマニュアルに則って適正に行われているかのモニタリング、正確な財務報告等に関する啓発教育を実施し、内部統制の実効性確保に努めております。
なお、不適切な財務報告が発生した場合には、速やかな情報収集と正確な状況把握に努めるとともに、不適切な財務報告事例等について管理部門をはじめ関連する部門に水平展開し、適正な財務報告の重要性を周知いたします。また、実行者を懲戒処分規程に基づいて厳正に処分することとしております。
ニ.労働環境リスク
当社グループにおいて、従業員の労働環境・労働条件に関する事業主の義務を十分に果たすことができず、不適切な労働管理、過重労働等が発生した場合には、従業員の健康被害やメンタル不全、エンゲージメントの低下、さらには、法違反の責任追及、損害賠償請求、社会的信用の失墜等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、勤怠管理や健康管理を適正に行うための体制を整備しております。また、過重労働を防止するべく、適正な要員配置や業務内容・配分の見直し等の措置を講じるとともに、休暇取得の促進等を通じて総労働時間の適正化を図っております。これらに加えて、エンゲージメントサーベイを定期的に実施し、職場環境の状況・課題を把握のうえ、継続的な改善活動に取り組んでおります。
ホ.インサイダー取引リスク
当社グループにおいて、インサイダー取引が生じた場合には、株主や投資家をはじめとするステークホルダーからの信用・信頼を失う等の社会的評価を低下させるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、インサイダー取引の防止に関する規程、正確かつ公平な情報開示を行う体制を整備するとともに、役職員への教育の徹底によりリスクの低減に努めております。
ヘ.反社会的勢力リスク
建設作業所等において反社会的勢力からの接触を受け、錯誤等により何らかの取引を行ってしまった場合には、社会的信用の失墜と営業活動が制限されるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、反社会的勢力への対応マニュアルの整備や全役職員へのメール発信等により、反社会的勢力への対応方針を全役職員へ周知・啓発しております。
なお、反社会的勢力から不当要求を受けた場合には、速やかに警察等の外部機関に通報し、組織的に対応いたします。また、契約後に相手方が反社会的勢力であることが判明した場合には、必要に応じて警察と協議のうえ、速やかに契約を解除することとしております。
ト.環境法規制違反リスク
建設作業所等において環境関連法規に違反した場合には、刑事罰・行政処分・損害賠償請求等を受けるリスクが生じます。
このリスクに対応するため、EMS(環境マネジメントシステム)を制定・運用するとともに、環境パトロールによりその遵守状況をチェックしております。
チ.知的財産侵害リスク
当社グループが知的財産権を有する施工技術や建物・設備に関する商品・サービス等が、他者に侵害された場合には、受注機会の逸失・訴訟コスト発生等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、専門部署間において特許関連情報を適時共有するとともに、社内研修の実施や知的財産関連情報の定期的な発信等の啓発活動を行っており、保有財産の保全監視に努めております。
なお、当社グループの権利が侵害された場合には、侵害者に対する警告を行い、必要に応じて法的措置を講じます。また、当社グループによる他者の知的財産権侵害が危惧される場合には、専門部署にて調査・判定を行う体制を整備しております。
②受注・投資判断リスク
イ.与信リスク
建設事業の工事代金を受領する前に取引先が信用不安に陥った場合には、工事代金の回収遅延・不能のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、組織的なプロジェクトリスク管理体制を整備し、具体的根拠と客観的評価に基づいた与信管理の徹底に努めております。
ロ.契約リスク
当社グループの事業において、発注者や関係者の要求・担当者の契約約款に対する理解不足等から、著しく不利な契約を締結した場合には、過度な義務の負担による工事収支の悪化や工事代金の回収不能等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、不利益条項に対する審査ルールを徹底するとともに、必要に応じて外部の専門家に対応策の検証を依頼する等、営業段階から組織的な契約リスク管理体制を整備・運用しております。また、営業担当者に対して意思決定ルール等を周知教育するための社内研修を行い、リスクの抑止を図っております。
ハ.投資関連リスク
投資案件に関するトラブルや事業環境の変化により、投下資本が計画どおりに回収されなかった場合には、損失発生のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、案件ごとに収益性・資本効率等を総合的に評価し、財務政策において設定したハードルレートに基づき投資判断を行い、投資実行後は収益性・資本効率等の変動について定期的にモニタリングしております。また、財務政策において、成長機会を着実に捉えるための資金配分基準を設定する一方、リスク資産残高について総量規制枠を設定し、特定分野に対する過度な投資集中を抑制することにより、市況の急激な悪化にも耐えうる投資構成を整備しております。
ニ.資産保有リスク
保有資産(不動産・有価証券等)について、市況の悪化等により、資産価値が低下した場合には、業績や財務状況に影響を及ぼすリスクが生じます。
このリスクに対応するため、保有資産の時価や収益性を定期的にモニタリングするとともに、必要に応じて保有資産の見直しを行う等、適切な資産管理に努めております。
ホ.M&A関連リスク
M&A対象事業の市場環境の変化、想定したシナジーの未達、統合の遅延等により、当初計画どおりの投資効果が得られないリスクが生じます。
このリスクに対応するため、M&A実施前にデュー・ディリジェンスを実施し、法務・財務・事業計画等の分析を通じて価値評価を行います。また、M&A実施後は、買収時に設定した事業計画とシナジー創出計画に対する実施状況のモニタリングを実施しております。
③プロジェクト遂行リスク
イ.事故災害リスク
建設作業所において人身や施工物等に関わる重大な事故が発生した場合には、被災者への補償や追加工事費用発生等による工事収支の悪化、指名停止等による営業活動の制限等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、労働安全衛生マネジメントシステムに基づいた安全衛生管理体制を推進するとともに、役職員及び専門工事業者に対する安全衛生教育・指導等を実施することにより事故災害発生防止を 図っております。
ロ.施工不良による品質リスク
当社グループは、品質管理・施工技術に関する業務標準や業務フローを定め、品質マネジメントシステムを運用しておりますが、ルールの不徹底や技術者・作業員の錯誤等により、施工不良が発生し、適正な品質を確保できなかった場合には、手直し工事に伴う追加コストや損害賠償金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、品質管理の統括・指導に特化した独立部門の設置をはじめとした品質管理体制の強化等、品質マネジメントシステムの確実な運用・徹底に努めております。また、品質に関するパトロールの実施や各種教育等により、役職員及び専門工事業者の品質管理力の強化を図っております。
ハ.工程遅延リスク
建設事業では、事前の施工計画等の検討に基づき、適正工期による契約に努め、施工中は確実な工程管理を実施しておりますが、事故・トラブル及び労務不足や資機材調達遅延等により、建物等の引き渡しが遅延した場合には、工事促進に伴う追加コストや遅延損害金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、組織的管理体制を構築し、労務状況の早期把握や関係本部のパトロールによる工程進捗状況の把握を徹底し、確実な工程管理に努めております。
ニ.設計不良リスク
当社グループは、設計管理要領・品質マニュアル等を策定し、設計関連のチェック体制を構築しておりますが、担当者の錯誤等により、設計不良が発生し、顧客の要求水準を充足できなかった場合には、設計や施工の手直しに伴う追加コストや損害賠償金の負担等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、QMS(クオリティーマネジメントシステム)等の制定によって設計業務を体系化し、設計業務プロセスの監視を行っております。
ホ.カントリーリスク
海外事業を行う国・地域において、テロ・戦争・暴動・政情悪化等が発生した場合には、当該地域での事業継続が困難となるリスクがあります。また、現地の法律・商習慣への理解不足等から、著しく不利な契約を締結した場合には、過度な義務の負担による工事収支の悪化や工事代金の回収不能等のリスクが生じます。
このリスクに対応するため、事業継続に関しては、役職員の安全を確保する手段や非常時の危機管理体制の確立に努めるとともに、必要に応じて日本政府・現地日本大使館・外部専門家等との連携を図っております。また、その国固有の法制度等に伴う契約上のリスクに対しては、審査ルールを徹底するとともに、契約後は契約条件の履行状況を継続的にチェックし、リスク低減を図っております。
なお、カントリーリスクが発生した場合には、情報を一元化して正確な状況把握に努め、適切に対応します。