有価証券報告書-第78期(平成27年1月1日-平成27年12月31日)

【提出】
2016/03/25 14:43
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【項目】
127項目

研究開発活動

当社グループは、持続的成長と新たなグループブランドの確立に向けて、お客様満足と収益力の向上に貢献する技術の獲得はもとより、未来のサステナブル社会の実現を先導する新たなソリューションの創出を目指して研究開発に取り組んでいる。
重点的に取り組むべき領域として、設計・生産の高度化・効率化、安全・安心な社会の実現、まちや建物の環境負荷の低減、活力魅力あるスマートコミュニティの実現、再生医療・バイオ医薬産業への対応を設定し、全社的に技術開発活動を遂行している。
当連結会計年度における研究開発に要した費用の総額は62億円余であり、このうち当社が取り組んだ主な技術開発事例は次のとおりである。
(建設事業)
(1) 設計・生産の高度化・効率化
病院の医師や看護師など医療スタッフのコミュニケーションの発生場所や頻度を設計段階で定量的・客観的に予測し、動画で「見える化」するシミュレーションツールを開発・実用化した。事前に設計効果をビジュアルに検証できるため、お客様のニーズを反映したより優れた計画を導き出すことが可能となった。
鉄筋工事を対象に設計から施工までデータを一貫活用できるBIMソフト「RC一貫生産支援システム RCS」を開発し、事務所や教育施設など9件のプロジェクトに適用した。鉄筋コンクリートの躯体を3次元に可視化することで工事関係者間のコミュニケーションが向上するとともに、データを一貫活用することで鉄筋工事に関わる一連の業務の効率化を実現した。今後もさらにプロジェクトへの適用を進め、品質確保とさらなる生産性の向上につなげていく。
鉄筋コンクリートPCa工法の一つとして、柱と梁の接合作業を省力化した「TT-JOINT」工法を開発し、医療施設に初適用した。「TT-JOINT」工法では、柱と梁の接合部分に機械式定着プレートと鋼繊維補強コンクリート(鋼繊維を分散させた高強度コンクリート)を使用し、従来工法で必要とされる梁主筋の接合やせん断補強筋の配筋作業をなくすことで現場作業の大幅な省力化を実現している。
建設技能者不足の解消へ向けた取り組みとして、建設作業の負担を軽減するウェアをダイヤ工業㈱と共同で開発し、普及促進を図った。昨年開発した男性用の「職人DARWING(ダーウィン)」に続き、女性が考えた、女性のための負担軽減ウェア「職人DARWING小町」を開発し、女性にとっても働きやすい環境整備を進めている。
(2) 安全・安心な社会の実現
液状化対象の軟弱地盤にセメント系固化材を混合・撹拌して格子状の改良体を築く「TOFT工法®」の設計法について、㈱竹中土木と共同で一般評定を取得した。これまで本工法は主に国土交通大臣による性能評価が必要な高層建物や免震建物などに適用してきたが、新たな設計法の確立と一般評定の取得により、中規模建物への適用が容易となった。今後は軟弱地盤の液状化対策や、災害に備えたBCP対策を必要とする建物への適用拡大を目指す。
既存の超高層建物の長周期地震動対策技術として、従来の「デュアルTMD(Tuned Mass Damper)」を改良した「デュアルTMD-NT」を野村不動産㈱と共同で開発し、国土交通大臣認定を取得し、新宿野村ビルの長周期地震動対策工事に適用した。建物の揺れ時間の半減と揺れ幅の大幅な低減に加え、居室部分に影響を与えないなど、更なる居住性向上と安全・安心を提供することが可能となった。
短工期でデザイン性に優れた耐震補強工法「Steel Ivy工法」を開発し、事務所など3件のプロジェクトに適用した。「Steel Ivy工法」は、鋼板でできた耐震要素を建物の外側に設置することで、従来の耐震補強工法の欠点である内部の有効面積の減少を最小限に抑えるとともに、より魅力的な外観デザインを採用することを可能としている。
歩行困難者等の避難安全性を向上させるため、各階の一時避難エリアと非常用エレベーター等を組み合わせた建築防災計画手法を開発し、国内で初めて超高層分譲住宅に適用した。一時避難エリアは耐火性能を有する壁および特定防火設備で区画され、防災センターと相互連絡可能な通話装置の設置により、待機状況等を連絡することを可能としている。
これらの多くの安全・安心技術を統合し、レジリエントな防災・減災機能を完備した高度防災ビル「プレミアムセイフティビル」を商品化し、普及展開を進めている。
(3) まちや建物の環境負荷の低減
NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業により開発を進めてきた「ECM®セメント」を、日本で初めて建築物の躯体に適用した。「ECM®セメント」を使用したコンクリートは、材料由来のCO2排出量を6割以上削減できる(ポルトランドセメント比)。建設時のCO2排出量削減のため、更なる適用を目指して、技術の改善と供給体制の整備を進めている。
近年の環境意識の高まりと、適正な森林管理の観点から、建築分野での木材利用がますます求められている。森林サイクル拡大に貢献する新しい木材利用の方法として、木質耐震ブレース「T-FoRest Light」、LVL(単板積層材)やCLT(直交集成板)を用いた耐震補強工法「T-FoRest Wall」をT-FoRestシリーズとして実用化し、競馬場や教育施設の耐震補強工事に適用した。また、これまで大型商業施設や教育施設等に適用してきた「燃エンウッド®」を初めて医療施設へ適用した。今後、「燃エンウッド®」の更なる適用拡大に向けて、引き続き技術開発を進めている。
既存オフィスのZEB(ゼロエネルギービル)化の普及に向けて、当社東関東支店のオフィスのZEB化改修に着手した。今回の改修では、YKK AP㈱と共同で開発している「高断熱ファサード」、㈱クボタと共同で開発している小型で高効率な「調湿外気処理ユニット」などを活用してエネルギー消費量の大幅な削減を図るとともに、再生可能エネルギーを用いて「ネット・ゼロエネルギービル」を達成、加えてエネルギー供給量が消費を上回る「ネット・プラスエネルギービル」の実現を目指す。竣工は2016年3月、同4月からの運用開始を予定している。
(4) 活力魅力あるスマートコミュニティの実現
当社グループが目指すスマートコミュニティとは、人を中心に建物・地域・エネルギー・情報・サービス・ビジネスをつなげ、「活力魅力」「環境共生」「安全安心」をもたらす持続可能な「まち」「社会」である。その中核技術として、空調や照明、セキュリティや防災、各種センシングなどの設備システムをネットワークでつなげ、情報をクラウドで統合するプラットフォーム「ビルコミュニケーションシステムren.®」の開発を進めており、当社が保有する大手センタービルに導入した。今後はビル内の活動をより便利で快適にするシステムの開発につなげていく。
電力システム改革後の多様な料金メニューに対応した最先端のエネルギーマネジメントシステム「I.SEM(アイセム)」を開発し、子会社である㈱TAKイーヴァックの新砂本社ビルに初導入した。「I.SEM」は、建物の負荷予測に基づき熱源や空調機器などの運転計画を最適化し、計画通りの電力デマンドを達成することが可能である。マネジメント機能を「ビルコミュニケーションシステム®」上に構築することで高速処理を実現するとともに、パーソナル対応のデマンドレスポンスを負荷予測に加味したことで最先端のリアルタイム制御を実現している。
当社が参加する応用脳科学コンソーシアムの「ニューロアーキテクチャー研究会」において、ウエアラブルセンサや環境センサなどを活用した日常連続計測手法を用いた空間快適性評価方法の確立を目指す実証評価実験を行った。今後も人の流れや活動のデータを建物・まちづくりの取り組みに活用し、スマートコミュニティの活力・魅力向上につなげていく。
(5) 再生医療・バイオ医薬産業への対応
政府が成長戦略の柱と位置付ける再生医療・創薬分野に関連する施設の品質と安全性を実証する研究拠点として、技術研究所内に「バイオクリーン・バイオセーフティ実験施設」を新設した。これまでもバイオクリーン施設の無菌環境の構築技術を「バイオセーフ®」として提供してきたが、今後はこれらの技術の更なるレベルアップを目指すとともに、本実験施設を細胞や微生物等を扱う施設の課題を解決する環境制御技術の開発に活用することにより、バイオハザード対策施設のエンジニアリング力の強化に取り組む。
また、子会社における研究開発の主なものは次のとおりである。
㈱竹中土木(1) 安全安心技術既存宅地の液状化対策「スマートコラム工法®」の開発
(2) 品質管理技術トンネルの「セントル養生管理システム」の開発

(開発事業及びその他)
研究開発活動は特段行われていない。