有価証券報告書-第14期(平成27年4月1日-平成28年3月31日)

【提出】
2016/06/27 9:09
【資料】
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【項目】
108項目

研究開発活動

当連結会計年度における研究開発費総額は28,297千円であり、全額が建設事業に係るものであります。なお、主な内容は次のとおりであります。
(建設事業)
(1)亜硝酸リチウムを活用したコンクリート構造物の延命化技術
「ASRリチウム工法」は、コンクリートのアルカリ骨材反応を抑制する亜硝酸リチウムという材料を、同反応により劣化したコンクリート構造物に専用の高圧注入機を用いて内部圧入する工法です。本工法は、これまで不可能とされてきたアルカリ骨材反応を根本的に抑制する画期的なものであり、これにより同反応により劣化したコンクリート構造物の延命化を図ることができるようになりました。
亜硝酸リチウムはアルカリ骨材反応を抑制する効果だけでなく、塩害による鉄筋腐食を抑制する効果もあるため、この効果に着目し、塩害および塩害とアルカリ骨材反応が複合して劣化したコンクリート構造物への適用を目指して研究を進め、「リハビリカプセル工法」として実用化しました。これまで塩害補修の決め手は電気防食工法と言われてきましたが、施工費が非常に高いことや、防食電流の通電による陽イオン集積に起因してアルカリ骨材反応を促進することから、適用に制約がありました。しかし、亜硝酸リチウムを使えば、電気防食工法より安価で、複合劣化にも効果のある画期的な塩害補修工法となります。ASRリチウム工法に加え、リハビリカプセル工法の施工実績も増加しておりますが、現在はさらに工法のコスト競争力を高めるべく安価で簡便な亜硝酸リチウムの内部浸透方法を研究しており、引き続き、新たな浸透工法の実用化に向けた開発を推進します。
(2)フライアッシュを活用したPC桁製造による環境改善技術
電力の安定供給に大きな役割を担っている石炭火力発電所では、微粉砕した石炭をボイラ内で燃焼させ発電させる際、多量の石炭灰(フライアッシュ)が排出されます。産業副産物であるフライアッシュは、セメント原料、コンクリート製品、土工材等に利用されていますが、その利用量は決して多くはなく、環境負荷低減のためにさらなる有効利用が望まれています。一方、フライアッシュを混和したコンクリートは、セメントの水和反応により生成する水酸化カルシウムとフライアッシュとの反応(ポゾラン反応)により、コンクリートが緻密になり耐久性が向上することはよく知られています。このような環境負荷低減や構造物の高耐久化といった社会的要請に応えるため、今年度は、自社江津工場の近隣にある中国電力三隅発電所から排出されるフライアッシュをセメントの部分代替品として活用したプレストレストコンクリート桁の実用化を目指します。
(3)既設構造物の内部補強技術
わが国の社会インフラは高度経済成長期に大量に建設されたため、一般的な構造物の耐用年数と言われている50年を経過した構造物が今度増加することになります。またニーズの変化によって更新の必要に迫られた構造物や、昨今の地震被害を踏まえて改正された新しい耐震規準に適合しない構造物も数多くあります。それら既存の構造物を新たに再構築するには多額の費用を必要とするため、既存構造物を使いながら補強や改築をすることができる技術への需要が高まっています。
そこで、当社グループの得意分野であるプレストレストコンクリート技術のノウハウを活かして、既存構造物の部材内部に配置したPC鋼材にプレストレスを与えて補強する技術の開発を進めています。この技術は部材内部から補強することができるため、これまでの補強技術に必要であった部材外周への補強材設置が不要となる利点があることから、さまざまな制約条件のある既存構造物に対する補強ニーズに応えることができるようになります。これまでの研究により工法実用化の見通しがついたため、今年度は試験施工等を通じて実構造物への適用性確認を行なうとともに、プレストレスの大容量化に向けた研究や管理手法の洗練化に関する研究、公的技術認定の取得に向けた取り組みを推進します。
(4)建設工事における品質・安全性向上技術
近年、総合評価方式入札における技術提案や受注した工事の計画・施工において、発注者の様々な要求に的確に応えることが求められ、とりわけ、構造物の品質向上や安全施工に資する創意工夫・新技術導入は、今や建設事業の持続的な発展に必要不可欠なものとなっています。このような建設業界の動向に対応するため、コンクリートの製造・充填・養生に関する技術、プレストレス導入やグラウト充填の信頼性を高めるための技術、施工時の安全性向上技術等、発注者・請負者が共有する重要なテーマについて、様々な独自技術の開発に取り組んでいます。今年度も、技術開発活動を継続し、そこで得られた成果の現場導入を推進することにより、建設工事の安定受注と施工の高度化を目指します。