有価証券報告書-第182期(令和2年1月1日-令和2年12月31日)

【提出】
2021/03/30 13:48
【資料】
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【項目】
135項目
文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。
(1)経営の基本方針
当社は2019年度に、2027年に向けた新たなキリングループ長期経営構想である「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)を策定しました。また、KV2027の実現に向けた長期非財務目標として、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針「キリングループCSVパーパス」(略称:CSVパーパス)を策定しました。
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」
キリングループは、グループ経営理念及びグループ共通の価値観である“One KIRIN”Values のもと、食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを目指します。

食から医にわたる領域における価値創造に向けては、既存事業領域である「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループならではの強みを生かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げました。「ヘルスサイエンス領域」では、キリングループ創業以来の基幹技術である発酵・バイオ技術に磨きをかけ、これまで培ってきた組織能力や資産を生かし、キリングループの次世代の成長の柱となる事業を育成していきます。また、社会課題をグループの成長機会に変えるために、イノベーションを実現する組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築していきます。


長期非財務目標「キリングループCSVパーパス」
社会課題については、「酒類メーカーとしての責任」に取り組むことを前提に、CSV重点課題「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」に一層高いレベルで取り組みます。
CSVパーパスは、CSV重点課題の取り組みを進めた後の「2027年目指す姿」を明らかにするために策定しています。さらに、CSVパーパスを実現するために、各事業での中長期アクションプランを定めた「キリングループCSVコミットメント」における成果指標を定量化し、目標値を設定しています。
CSV重点課題CSVパーパス
酒類メーカーとしての責任全ての事業展開国で、アルコールの有害摂取根絶に向けた取り組みを着実に進展させる。(Zero Harmful Drinking)
健康健康な人を増やし、疾病に至る人を減らし、治療に関わる人に貢献する。
地域社会・コミュニティお客様が家族や仲間と過ごす機会を増やすとともに、サプライチェーンに関わるコミュニティを発展させる。
環境ポジティブインパクトで持続可能な地球環境を次世代につなぐ。


(参考)キリングループCSVコミットメント
URL https://www.kirinholdings.co.jp/csv/commitment/
(2)中長期的な経営戦略と目標とする経営指標
キリングループ2019年-2021年中期経営計画
KV2027の実現に向けた最初の3カ年計画「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」(略称:2019年中計)では、資産効率に応じた資源配分を徹底し、既存事業のキャッシュ創出力をさらに高めると共に、既存事業の強みを生かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げ、育成を進めてきました。また、株主還元を一層充実させることにより、企業価値の最大化を目指してきました。
2020年に発生した新型コロナウイルス感染症拡大により、事業環境が大きく変化する一方、社会課題がより強く意識されるようになりました。お客様の行動の変化に適応しながら、KV2027で推進するCSV経営により社会課題をグループの成長機会に変えるため、加速・変革・縮小・中止をキーワードにビジネスモデルや収益構造を大胆に変革します。特に、高まる健康意識に応える事業ポートフォリオで成果を創出し、グループの持続的な成長につなげていきます。
(基本方針)
「再生」からステージを上げ、「新たな成長を目指した、キリングループの基盤づくり」を行う。
株主還元の更なる充実を図り、企業価値を最大化する。
(重点課題)
長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」実現に向けた第1ステージの3ヵ年として、成長に向けた3つの戦略を実行します。
①成長の基盤 既存事業の利益成長
食領域:収益力の更なる強化 医領域:飛躍的成長の実現
②将来の成長機会 「ヘルスサイエンス領域」の立ち上げ、育成
③成長の原動力 イノベーションを実現する組織能力の強化


(重要成果指標)
2019年中計の財務指標について、平準化EPS成長による株主価値向上を目指すと共に、成長投資を優先的に実施する3ヵ年の財務指標として新たにROICを採用しています。また、社会・環境、お客様、従業員との共有価値実現に向けて、非財務目標を設定しました。
1.財務目標※1
・平準化EPS※2年平均成長率5%以上
・ROIC※32021年度10%以上

※1 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除く。各事業の重要成果指標には事業利益、ROAを使用。
※2 平準化EPS=平準化当期利益/期中平均株式数
平準化当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益±税金等調整後その他の営業収益・費用等
※3 ROIC=利払前税引後利益/(有利子負債の期首期末平均+資本合計の期首期末平均)
なお、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う事業環境の変化により、キリングループの主要な事業は大きく影響を受けました。2019年中計で掲げている財務目標について、2021年度は、以下のとおり見直しています。
・平準化EPS147円
・ROIC7.6%

2.非財務目標
・キリングループCSVコミットメント
・企業ブランド価値※42021年度2,200百万米ドル以上
・従業員エンゲージメント2021年度72%以上

※4 企業価値ブランド評価にあたっては、インターブランドジャパン社「ブランドランキング」におけるKIRINブランド価値評価を使用。
CSVコミットメントは、2019年中計目標達成に向けて順調に進捗しています。また、企業ブランド価値、従業員エンゲージメントについては、2020年度で既に2021年度目標を超える実績を上げています。
・企業ブランド価値2020年度実績2,236百万米ドル
・従業員エンゲージメント2020年度実績73%

(財務方針)
財務方針についても、基本的な方針は維持しつつ、新型コロナウイルスの影響を踏まえ、一部軌道修正を行いました。
既存事業により創出した営業キャッシュ・フローは、新型コロナウイルス感染拡大が予断を許さない状況であることから、健全な経営を維持する為の手元資金確保、及び平準化EPSに対する連結配当性向40%以上による安定的な配当に対して優先して配分します。投資に関してはグループ全体の資本効率を維持・向上させる観点から規律を働かせると共に、追加的株主還元も最適資本構成や市場環境及び投資後の資金余力等を総合的に鑑みて検討していきます。
事業への資源配分は、将来のキャッシュ・フロー成長を支える無形資産(ブランド、研究開発、情報化、人材・組織)への投資は緩めない方針です。新型コロナウイルスのもたらしたマイナスの影響に対応する為、加速すべき領域への投資は拡大するものの、将来の成長に繋がらない支出は削減していきます。
・メリハリのある設備投資
維持・更新目的の投資は抑制し、資産効率と市場魅力度の高い案件に積極的かつ優先的に投資
・株主還元の充実
平準化EPSに対する連結配当性向の引き上げ(2019年より30%以上から40%以上に)
・規律ある成長投資
優良資産に対する、資本コストを踏まえたNPVとROICを基準とする投資判断
・無形資産投資
イノベーションを実現する組織能力強化に向けた「ブランド」「研究開発」「情報化」及び「人材・組織」への継続投資
・政策保有株式の縮減
資本コストに見合わない持合株は原則保有しないという方針のもと、非事業資産の圧縮
(コーポレートガバナンス)
重要成果指標(財務目標・非財務目標)及び単年度連結事業利益目標の達成度を役員報酬に連動させることにより、株主・投資家との中長期的な価値共有を促進しています。
[業績評価指標]
・年次賞与連結事業利益※5、個人業績評価
・信託型株式報酬※6平準化EPS、ROIC 、非財務評価※7

※5 売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、事業の経常的な業績を測る利益指標です。
※6 業績評価期間の翌年に業績目標の達成に応じたポイントを付与し、原則として、業績評価期間の開始から3年が経過した後の一定の時期に付与されたポイントに相当する数の株式が交付されます。
※7 非財務評価は、CSVコミットメントの進捗及び達成状況の評価とし、4つの重点課題(「酒類メーカーとしての責任」、「健康」、「地域社会・コミュニティ」、「環境」)に応じた取組みを総合的に評価したものです。
(3)会社の対処すべき課題
新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界中で社会、経済、人々の生活が激変し、価値観も大きく変わる中、キリングループはCSV経営を加速します。「健康」、「地域社会・コミュニティ」、「環境」への取り組みがより一層重要になる中、キリングループは、KV2027で目指す「食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる」という『2027年目指す姿』をぶらさず、一層スピードを上げて社会課題の解決に取り組むことが使命だと考えています。2021年は、新型コロナウイルスの影響でますます顕在化した環境変化を新たな成長の機会と捉え、各事業でビジネスモデルや収益構造の大胆な改革を実行します。そして、「食領域」、「医領域」、「ヘルスサイエンス領域」の3領域に事業領域を拡大し、グローバル化を強力に推し進める中で、経営の柔軟性や多様性、ガバナンスを一層強化する事により、キリングループの持続的な成長を確固たるものにしてまいります。
新型コロナウイルスの影響に鑑みて、2019年中計で掲げた定量目標は見直しますが、各事業における重要機能の維持と成長に必要な投資をしたうえで、配当後フリー・キャッシュ・フローがプラスとなるよう財務面での規律を図ります。また、CSVコミットメントの各種目標の達成に向けて取り組みます。さらに、キリングループ各社の「ものづくり」を支える品質保証・SCM、エンジニアリング体制について、中長期的に目指す姿と重点課題を設定し、実行します。
①「ヘルスサイエンス領域」の立ち上げ、育成
世界中で新型コロナウイルスの影響が拡大する中、「ヘルスサイエンス領域」に対する、関心と期待がさらに高まっています。
キリングループには、ビール事業の創業より培った「発酵・バイオテクノロジー」を活かし、酒類・飲料・食品事業に加え、医薬事業を立ち上げ、成功させてきた実績があります。今後もこの技術を最大限に活用し、「食領域」と「医領域」に加え「ヘルスサイエンス領域」を育成し、3領域を連携させて社会課題を解決していくことが、キリングループの存在意義だと考えています。
その実現に向け、研究・商品開発、生産技術、販売チャネル等のさまざまな分野でグループシナジーを創出します。具体的には、キリンホールディングス㈱の“健康素材の基礎研究力や全体統括力”、協和発酵バイオ㈱の“高機能な素材の研究開発力や素材を安価で大量生産する生産力”、キリンビバレッジ㈱の“飲料開発力と製造販売網”、㈱ファンケルの“研究に裏付けされた高い商品力とマーケティング力”、協和キリン㈱の“抗体技術を核にした研究基盤や積み重ねてきた知見”といった各社の強みを掛け合わせます。
2021年は「健康」機能に関するエビデンスを持つ素材をさらに活用します。特に、プラズマ乳酸菌の普及浸透を最優先に活動し、キリングループ各社からの商品販売に加え、プラズマ乳酸菌を国内外の企業に素材として提供し、事業拡大を加速します。協和発酵バイオ㈱が持つアミノ酸やヒトミルクオリゴ糖※1、シチコリン※2のような高機能素材の活用や、個々の「健康」課題に向き合うサービスの開発を進めます。この価値を拡大するには㈱ファンケルとの協働も不可欠であり、昨年進めた協働取り組みを一層進化させ、キリングループと㈱ファンケルでしか解決できない世の中の「不」の解消に取り組みます。
さらに、新規事業探索やコーポレートベンチャーキャピタルの取り組みも進め、「免疫」、「脳機能」、「腸内環境」という3つの重点領域を中心に、お客様の「健康」に関する社会課題を解決していきます。
※1 母乳中の成分で、アミノ酸、ビタミンに続く機能性素材として期待されている素材です。
※2 脳や神経細胞にある細胞膜を維持する働きを持つ、体内に存在する成分で、世界各国で長年にわたり脳疾患の治療薬や認知機能の向上をサポートする健康食品等に利用されている素材です。日本では現在、医薬品に分類されています。
② 既存事業の利益成長
新たな領域を推進するためには、既存事業が盤石でなければなりません。「食領域」では、ブランドの育成と強化を一層推進し、強い収益基盤を築くとともに、新たなビジネスモデルの構築にもチャレンジします。「医領域」では、グローバル・スペシャリティファーマとしての基盤強化を着実に実行します。
キリンビール㈱は、ビール類カテゴリーでは「一番搾り」や「本麒麟」等の主力ブランドを強化します。RTDカテゴリーやノンアルコール飲料カテゴリーでは「健康志向」に応える商品を提案するほか、お客様にとってより高い付加価値のある商品やサービスを提供していきます。
キリンビバレッジ㈱は、“摂りすぎない健康”、“プラスの健康”という価値をさまざまな商品で提案することで成長をけん引し、「ヘルスサイエンス領域」での価値創造にも貢献します。また、「生茶」ブランドを中心に「環境」に配慮した容器包装の導入を加速します。発売35周年を迎える「午後の紅茶」は、お客様接点を拡大しブランドをさらに強化します。
ライオン社では、主要ブランドへの投資と強化を継続するとともに、クラフトビールやハードセルツァー※3による一層の成長を目指します。また、技術の活用やSCMの最適化に向けた、生産性向上プログラムを実行します。
メルシャン㈱では、間口拡大によるワイン市場の活性化と収益構造改革、また「シャトー・メルシャン」での取り組みを通じた日本ワイン文化の育成を進めます。
ミャンマー・ブルワリー社では、継続して拡大する家庭用市場の強化を進めます。
コーク・ノースイースト社では、炭酸飲料市場での存在感や収益力をさらに高めるため、販売力強化や業務効率化を継続し、業務品質向上等による経営基盤の強化にも注力します。
※3 炭酸水、サトウキビ由来のアルコール、果実等を原材料とした、アルコール度数が3~5%程度の「アルコール入り炭酸水(hard seltzer)」です。他の酒類や飲料と比較してカロリーが低いことが特長で、近年、米国を中心に市場が拡大しています。
協和キリン㈱では、2021年より新たな5年間の中期経営計画を公表し、グローバル戦略品の価値最大化による成長を目指します。また、急速なグローバル化が進む中、医薬品を安定供給できる品質保証・SCM体制・本社機能等の強化に取り組みます。また、社会からの医療ニーズの変化に対応するため、「医領域」と「ヘルスサイエンス領域」との接点で生まれる機会の活用も検討します。
③組織能力の強化
成長の原動力となる組織能力を強化するため、2021年はキリングループの全事業で特に「品質保証・SCMへの取り組み」、「働きがい改革」、「DXの推進」を進めます。
品質保証・SCMの取り組み
事業領域が「食領域」、「医領域」から「ヘルスサイエンス領域」に広がる中、新しく拡大したビジネスにおいても、お客様に安全で高品質な商品やサービスを開発しお届けできる品質保証・SCM体制が必要です。キリングループは、創業以来のDNAである「品質本位」で培った経験と技術を生かし、グループを挙げて、常に安全と安心をお届けできる体制を構築していきます。特に、育成を進める「ヘルスサイエンス領域」での品質保証水準の向上と生産体制づくり、急速にグローバル事業展開を進める「医領域」での品質保証・SCM体制づくりに注力します。
働きがい改革
2020年に開始した「『働きがい』改革」をさらに進め、社員一人ひとりが『働きがい』を実感することで、グループの持続的な成長につながる生産性と創造性の向上、個の充実を実現するよう取り組みます。具体的には、①働く場所の選択、②システム/ITツールの拡充、③働き方に関する制度の拡充、④新たなコミュニケーションスタイル、という4つの柱で環境整備を進め、仕事そのものを継続的に見直します。グループのマーケティング人材の育成や、多様な人材が活躍する場づくり、挑戦する組織風土の醸成にも、引き続き取り組みます。
DXの推進
将来の持続的な成長のために、グループ経営や各事業が抱える課題を解決するDXの取り組みを加速します。例えば、現状の業務プロセスの変革による大幅な業務効率性向上、お客様とのより深い接点の創出、お客様のニーズに対応した新たなビジネスモデルの開発等を進めます。
DXの推進にあたっては、社内外から人材を募集し、その育成にも取り組みます。また、安全な業務遂行に向けたセキュリティの堅牢化も進め、グローバル展開を見越したセキュリティ対策を行っていきます。
なお、当社は、ミャンマーの民主化が進展する中、当社の事業を通じてミャンマーの人々や経済に貢献できると考え、2015年に当地への投資を決定し参入しました。その投資先であるミャンマー・ブルワリー社及びマンダレー・ブルワリー社は、福利厚生基金の運用会社として国軍と取引関係のあるミャンマー・エコノミック・ホールディングス社(MEHPCL)との合弁会社です。両ビール会社を通じてミャンマーの経済や社会の発展に貢献することは、今後も変わらず当社が目指すところですが、2021年2月に発生したミャンマーにおける政情激変に伴い、MEHPCLとの提携は解消せざるを得ないと判断しました。当社はミャンマーで事業活動を行う企業としての責任を強く自覚し、課題の解決に取り組んでいきます。
最後に、キリングループは、気候変動や新型コロナウイルスの影響のような顕在化している大きな問題を成長機会と捉え、変革し続けることが大切だと考えています。地球温暖化は農作物への影響や災害を及ぼすだけでなく、感染症の発生や流行を引き起こす可能性もあると言われており、人類への脅威となりかねません。
このような「環境」、「健康」への取り組みに加え、「酒類メーカーとしての責任」、「地域社会・コミュニティ」という社会課題の解決に取り組むCSVパーパスの実現を目指し、CSV経営を深化させることで、さらなる成長を目指します。これらの取り組みを通じて、企業価値の継続的な向上を図るとともに、さまざまなステークホルダーとのエンゲージメントを高めていきます。

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